2003年12月14日
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午後1:30ころ、2:00からのアトリエの準備のため、いつもどおり、ぎりぎりの時間に、急ぎ足で、アートセンターに向っていた。
音楽通りを渡り、押しボタン式信号を突破し、カモシカの駐車場を横切ろうとしたところ、松葉杖をついて、宙をあおいで、くるくると回転しながら、何やらむやみやたらに訴えているおじいさんがいた。
どう見ても、普通でない様子なのに、通行人は、だれもとまらず、だれも振り向かない。
近くまで行くと、このじいさんが、「お願いしまーす!お願いしまーす!」といっていることに気がついたわたしは、同時に、このじいさんが、目が見えないかもしれないことにも気がついた。

「どうしました?どこに行きたいのですか?」

以前から、視覚障がい者に、どう話しかけたらいいのか、不安のあったわたしは、「外出している視覚障がい者は、人が好きな人が多いから、遠慮しないで、話しかけてあげて」などという人の意見を参考にして、今はじめて、視覚障がいのある人に話しかけてみた。

すると、そのじいさん、迷わず
「音楽堂に連れていってください」。

えーこのじいさん、独りでこんなところ、歩いてるってことは、何度も音楽堂いったことあるんじゃないの?音楽堂に行くために上る、紅葉坂の入り口をまちがってしまってるだけで、紅葉坂の入り口=オーバのアートセンターのビルの前まで、連れていったら、後は独りで、行けるんじゃないのかー、、、、?


このじいさんは、左半身マヒしているので、右手にもった松葉づえが、白い杖の代わり。
わたしの腕に寄り掛かるようにして、いっしょに坂をあがりはじめた。

こうしてみると、歩道は本当に狭い。
紅葉坂は、最近改装したので、まだ、新しいのだが、意外に車道側に、電柱や電気関係の入った箱みたいのがあって、松葉杖の人と2人で歩くには、あぶなっかしい。

しかも、このじいさん、かなり、せっかちな性格らしく、紅葉坂の橋も渡らない前から、「ここは、橋の先にある信号か?」って何度も聞いてくる。
だから、坂を曲がるところも間違えて、カモシカの駐車場のほうに入ってきちゃったんだなあ。

やっと信号のところにつくと、ごそごそとかばんから、ハガキを出して来て、「音楽堂の開演時間は何時ってありますか?」
「2:30開演ですが、1:45開場です。今はもう、1:40ですから、ちょうどいいですね」とわたしが、音楽堂方面に信号を渡ろうとすると、
「イヤ!2:30までなんて時間がありすぎて、何もやることがないから、その前に、開洋亭の喫茶店に寄りたいんだ」という。
開洋亭は、音楽堂の道をはさんだ目の前のホテルだけど、音楽堂と開洋亭の前には、横断歩道ないし、音楽堂は、青少年センターや図書館の先にあるし、チケット云々なんてこともあわせると、どう考えてもそんなに時間はありゃしない。
だけど、じいさんがそういうなら、開洋亭に行くしかない。


Q「紅葉坂は、なんで、紅葉坂というか知っていますか?」
A(むかし、紅葉があったから)
Q「掃部山(かもんやま)公園は、なぜ、掃部山というか知ってますか?」
A(井伊掃部頭(いいかもんのかみ)家の跡地=井伊直弼の屋敷跡だから)
などなど。


ヅ「3月3日とは知りませんでした。そういえば、きょうは、赤穂浪士の討ち入りの日らしいですよ」。

Q「では、吉良家は、どこにあったか知ってますか?」
A「成美学園(現横浜英和女学院)の場所です。蒔田の吉良と有名でした」。
えーそれは、知らなかった!ときょうは、その話をいろんな人に教えてしまったが、今、検索してみると、上野介がそこにいたわけではなく、吉良家の一族の中に、蒔田吉良氏という流れがあったということみたいです。
だから、横浜で、吉良家といえば、こっちの蒔田吉良氏が有名だったのね。

そんなこんなで、開洋亭にたどり着き、中のカフェに向うと、カフェのほうから、ボーイ?ギャルソン?が出て来て、「あ、もういいですよ」とわたしにいう。
そして、すぐに、「きょうは、時間ないけど、大丈夫?」とじいさんに聞く。
わたしは、じいさんに、「それでは、失礼します」と声をかけるが、じいさんは、もうカフェに夢中で聞いてない。

って、こんな感じのじいさんでしたから、完璧に、しょっちゅう、音楽堂に行く道のりで、道を見失い、誰かを探しては、開洋亭まで、連れてこさせているのかも、、、、。
実際、紅葉坂は、ひとりで歩くの危険だし、すごくいいアイデア。
だけど、なかなかできないよな、こんなこと。
ってことは、こんなことをできない人で1人で出歩くのが難しい人は、下手すると出歩かないってこと?
自分の好きに生きるってことは、どっちにしても、いろんな障害があるんだなあ。

それにしても、日曜日とはいえ、大抵の人は、遊んでいたって、時間に追われてすごしてるじゃない?
そんなときに、突然、予想外に、「あそこに連れてって」なんて、いわれて、付き合える人がどのくらいいるんだろう?
しかも、障がい者が相手で、正直に断れる人がどれだけいるだろう?

そう思ったら、やっぱり、声をかけずに、無視していってしまうのも、当然の選択かもなあって感じてしまいました。
わたしは、本当に、だめな時には、自分のやれることだけやって、後は、断ることもできると思うから、これからも、何かあったら、声をかけると思うけど、、、。





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最終更新日  2003年12月18日 21時38分59秒
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