kazuya satou6980のブログ

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2026.08.12
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テーマ: ニュース(96878)
カテゴリ: カテゴリ未分類
https://youtu.be/iCLrk2nI0Xc
第2章 殺人鬼
2026年3月3日 午前0時45分
日本・青森県 山間部
雪は降っていなかった。
杉の木々は風に揺れていた。
枝と枝が擦れ合うたびに、低い音が森の中へ流れていく。
四人の中国人ユーチューバー――神霊短径団のメンバーは、廃村の中を進んでいた。
先ほど発見した女は、少し離れた場所に立っている。
何も話さない。
何も尋ねない。
ただ、村の奥を見つめていた。
四人のうち一人がカメラを向ける。
画面の中に女が映る。
青い長袖ハイレグレオタード。
光沢のある生地が、暗い森のわずかな光を受けている。
袖は手首まで伸びている。
脚の部分は大きく開いたハイレグの形になっており、一般的な競泳水着とは明確に異なる衣装だった。
足元には靴がない。
女は裸足だった。
冷たい地面に直接、素足をつけている。
泥が足裏についている。
それでも女は寒そうな様子を見せなかった。
四人は、その姿に奇妙な違和感を覚えていた。
こんな山奥。
廃墟。
午前0時。
その場所に、青い長袖ハイレグレオタードを着た女が一人で立っている。
しかも、何も話さない。
「……彼女は何者なんだ?」
誰かが小声で言った。
返事はない。
女は村の奥を見つめ続けている。
その視線の先には、古い民家があった。
屋根は崩れ、壁も一部が倒れている。
窓は黒い穴のように見えた。
「この家を調べよう」
リーダーが言った。
四人は女を残して進んだ。
その直後だった。
森の中から、別の音が聞こえた。
――カサッ。
枯れ葉を踏む音。
一度。
そして、もう一度。
――カサッ。
四人が振り返る。
女は動いていない。
青い衣装のまま、同じ場所に立っている。
「動物だろう」
一人が言った。
その瞬間。
女の視線が横へ動いた。
四人ではない。
森の奥へ。
そして、何かを確認したように歩き始めた。
裸足の足が、枯れ葉を踏む。
一歩。
二歩。
三歩。
その歩き方には迷いがなかった。
「待って!」
一人が声をかける。
女は止まらない。
そのまま廃屋の陰へ消えた。
四人は顔を見合わせた。
「追う?」
「……追おう」
彼らは女の後を追った。
だが、廃屋の裏へ回ったとき、女の姿はなかった。
「どこへ行った?」
「いない」
「そんなに遠くへ行けるはずがない」
周囲をライトで照らす。
杉。
廃屋。
崩れた石垣。
そして、古い道。
何もない。
そのとき。
遠くから悲鳴が聞こえた。
「――!」
四人は凍りついた。
悲鳴は一度だけだった。
その後、静寂が戻る。
「今の……」
「人の声だ」
四人は走った。
声が聞こえた方向には、一軒の古い家があった。
扉は半分開いている。
リーダーが中へライトを向けた。
「誰かいるのか?」
返事はない。
一歩入る。
床には古い家具が倒れている。
壁には黒い染み。
さらに奥へ進む。
すると、一人の男が倒れていた。
神霊短径団のメンバーではない。
この村にいたはずのない人物だった。
「……死んでる」
男の首筋に手を当てる。
反応はない。
誰かがスマートフォンを取り出した。
「警察に――」
その瞬間。
背後で扉が閉まった。
――バタン。
四人が振り返る。
暗闇の中。
そこに女が立っていた。
青い長袖ハイレグレオタード。
裸足。
長い黒髪。
無表情。
手には何も持っていない。
それなのに、四人は動けなかった。
女は死体を見た。
次に、四人を見る。
何も言わない。
「あなたが……やったのか?」
沈黙。
「答えてくれ」
沈黙。
女はゆっくり歩いた。
一歩。
そのまま男の前を通り過ぎる。
そして、部屋の隅へ向かう。
そこには、別の人間が隠れていた。
村へ侵入していた別の男だった。
男は震えながら後退する。
「来るな……」
女は止まらない。
「来るな!」
男が立ち上がった。
女は何も言わない。
次の瞬間、部屋の中で激しい物音が響いた。
男の身体が倒れる。
神霊短径団の四人は悲鳴を上げた。
しかし、女は声を発しなかった。
ただ、倒れた男を見下ろしている。
数秒後。
女は再び歩き始めた。
「逃げろ!」
リーダーが叫んだ。
四人は扉へ向かった。
しかし、そのときにはもう、女は彼らを追っていなかった。
彼女の目的は逃走ではない。
村から出ることでもない。
この場所に入り込んだ人間を見つけること。
そして、殺すこと。
それだけだった。
四人は廃屋から飛び出した。
森の中を走る。
後ろを振り返る。
女の姿はない。
「走れ!」
「車まで戻るぞ!」
「早く!」
枝が顔に当たる。
息が切れる。
足元の泥に靴が沈む。
しかし、彼らは止まらなかった。
やがて道路が見えた。
そこに黒いワゴン車が停まっている。
「車!」
一人が叫ぶ。
四人は車へ向かった。
ところが。
運転席のドアが開いていた。
「……?」
嫌な予感がした。
車内を覗く。
誰もいない。
運転席には、血のような赤黒い染みが残っていた。
「運転手はここにいたはずだろ?」
「さっきまで一緒だった」
四人の中で、最も若い男が震えた。
「じゃあ……誰が車を開けた?」
誰も答えない。
そのとき、後方から足音が聞こえた。
――ペタ。
裸足の足が地面につく音。
四人は振り返った。
暗い杉林。
何も見えない。
もう一度。
――ペタ。
そして、木々の間から女が現れた。
裸足のまま。
青い長袖ハイレグレオタードを身につけている。
衣装には泥と赤黒い汚れが付着している。
長い髪が顔の一部を覆っている。
女は歩いている。
走ってはいない。
ゆっくりと。
しかし、確実に四人へ近づいている。
「……来るな」
一人が後退する。
女は止まらない。
「来るな!」
男が叫ぶ。
女は答えない。
ただ近づく。
リーダーが車のドアを閉めようとした。
その瞬間、女がドアを掴んだ。
男の腕が震える。
「離せ!」
女は無言だった。
車内と車外。
ドアを挟んで、互いの力がぶつかる。
やがて女の手が動いた。
ドアが開く。
男が後ろへ倒れる。
女は車内へ入った。
そして、短い時間の中で襲撃が始まった。
叫び声。
金属音。
ガラスが割れる音。
暗い山道に音が響く。
しかし、女の声だけは聞こえない。
彼女は一言も発しない。
怒鳴ることもない。
笑うこともない。
悲鳴を上げることもない。
ただ、目の前にいる人間を一人ずつ襲っていく。
車内から一人が飛び出した。
森へ逃げようとする。
女は追った。
男が転ぶ。
起き上がる。
走る。
しかし、女の足音が近づいてくる。
――ペタ。
――ペタ。
男が振り返る。
女が立っている。
その顔には感情がない。
男は何かを叫んだ。
女は答えなかった。
そして、男の姿が闇の中へ消えた。
残った二人は、車の反対側から逃げ出した。
一人は廃屋へ。
もう一人は杉林へ。
女は迷わなかった。
まず廃屋へ向かった。
扉が閉まる。
数秒後。
内部から物音がした。
そして静かになった。
女は外へ出た。
次に杉林を見る。
もう一人の男が木の陰から様子を見ていた。
女はその場所へ歩いていく。
男は息を殺した。
来るな。
そう願う。
しかし、女はまっすぐ歩いてくる。
彼女は男の存在を知っていた。
逃げ道も知っていた。
男が走り出す。
女も動く。
数分後。
森から音が消えた。
杉沢村は、再び静寂に包まれた。
女は一人で道に戻った。
裸足の足には泥が付いている。
青い長袖ハイレグレオタードにも、戦いの痕跡が残っていた。
それでも、彼女の表情は変わらない。
女は村の中心へ戻っていく。
その先には、古い看板がある。
女は看板の前で立ち止まった。
看板には、かつて誰かが刻んだ文字が残っている。
この先、入るな。
女はその文字を見た。
そして、初めて顔を上げた。
杉林の向こう。
そこには、先ほどの四人とは別の人間の気配があった。
女は歩き出す。
誰かがいる。
村へ入ってきた者が、まだ残っている。
彼女は逃げない。
この村から離れるつもりもない。
ここが彼女の狩場だからだ。
やがて、闇の中から一人の人影が現れた。
女は立ち止まった。
人影も止まる。
二人の間には、数メートルの距離がある。
人影がライトを向ける。
女の姿が照らされる。
青い長袖ハイレグレオタード。
裸足。
長い黒髪。
無表情。
その姿を見た人影は、息を呑んだ。
「……あなたは」
女は何も言わない。
ただ、その人物を見ている。
そして、ゆっくりと一歩踏み出した。
その瞬間、杉の枝が風に揺れた。
月明かりが消える。
暗闇。
再び光が戻ったとき。
そこに女の姿はなかった。
残されていたのは、地面についた裸足の足跡だけだった。
一つ。
二つ。
三つ。
その足跡は、村の奥へ続いている。
そして、その先には――
まだ誰も調べていない一軒の家があった。
杉沢村の最奥。
かつて大量殺人が始まった場所。
女はそこへ向かっていた。
殺人は終わっていない。





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Last updated  2026.08.12 15:43:35
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