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■宇宙から還りし王(山稜王改題)第31回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 地球意志はその時ゼノウ将軍を端子としていた。 アゴルフォスはもう完全に過去に投下させている。 「あのうらみ、ここではらしてやる」アゴルフォスは手を動かし始めた。 ケインもまた「地球意志」に動かされている。ゼノウになりきっていた。 「アゴルフォス、また同じあやまちをくりかえすのか」 「だまれ、ゼノウ、サイキックの恨みを知れ」アゴルフォスは手を振った。 「ぐわっ」叫び声をあげたのはアゴルフォスの方だった。右手が吹き飛んでいた。 「わからんのか、フゴルフォス、君の空気切りの技など私にもっかえる。君の空気切りはその一瞬、そこの空間に真空状態を作り出すことはわかっている」 「くそっ、アゴルフォスの最後の力を見ろ」 それでも、アゴルフォスは、血を吹き出しながら残りの左手を持ちあげていた。 「死ね、ゼノウ将軍」 アゴルフォスの眼は悲しみをたたえていた。 ケインは地面に倒れていた。巨大な空気の圧力が彼を地面にはいつくばらせていたのだ。 が、アゴルフォスの首の部分が切れて飛びあがった。胴体から大量の血が一度に吹き出し、あたりの大地を朱に染めた。やがて、天ご空から吹き飛んだアゴルフォスの首がころがり落ちた。 ネイサンはその首を愛しげに胸にいだいた。 「くっアゴルフォス」ネイサンは涙を流していた。そしてケインの顔をにらみつける。 「「地球意志」、君は楽しいかね。君の通ったところには、血のにおいがいつもするではないか。「地球意志」、お前は征服欲の権化だよ。我々はハーモナイザーはそれを許せるわけがない。 君はマーガレットの一部となり、アンバサダー号に隠れ、頭脳部位となり中央脳ににせの地球の位置のデータを与えた。それでアンバサダー号は幽霊船となったのだ「そう、私はマーガレットとしてアンバサダー号が地球帰還するのを阻止し、君がふ化するのを防いでいた。 そして今は、君と、この世界樹を滅ぼすためにここラシュモアヘ来たのだ」 「もう、話しあいの余地はないというわけだな」 「それは、君もわかっているだろう。タンホイザーゲイト以来、君と戦っているのだから」 「ケインの体にいう。「地球意志」と離れろ、君もわかっているはずだ。君の体は地球意志のおかげで血にまみれていることがな。君は反乱鎮圧特殊エージェントだった。古代の小説「ケイン号の叛乱」からそのコードネームがとられたのだ」 ケインは憶い出していた。彼がいかに多くの宇宙軍を抹殺してきたかを。そして反乱鎮圧特殊エージェントとして働いてきたかを。 「ケイン、幽離しろ」 ネイサンが叫んでいた。 その言葉の直後、一条の雷が、ケインの体を貫く。ケインは大地に倒れた。■ 白髪の紳士が歩いてくる。このフロント街をなりわいの場所にする移動ブッカーのトロリーは、その服装から上客だと眼をつけた。さいわい、フロント街はもうすぐデモ隊が来るとの事で、人影がない。移動ブッカーの「本」は、昔の時代の麻薬のように、人類の感覚を打ち震わす。心は、そのシーンにトンデ行ってしまうのだ。移動ブッカーのトロリーは、その紳士の前に飛びだす。 「だんな、いい本がありますぜ、ネイサンの新作です。通常の本屋より安くて、刺激ベルト付きにしときます。この刺激ベルトを頭につけるとネイサンの本がよく体験できますぜ」 「ネイサンの新作だって、タイトルは何だ」 「「タンホイザー・ゲイト」という本です。ほらほら、タンホイザー=ゲイトって、だんな御存じでしょう、ネイサンが行って還ってきた所でさあ」 トロリーは、その紳士の様子がのんだかおかしいのに気づく。「だんな、まさか宇宙省のエージェントじゃないでしょうね」「残念ながら、宇宙省のものだ」「ま、まって下さいよ。これは冗談、冗談ですよ。許して下さいよ」「君ね、もうこんな移動ブッカー商売はやめろよ」「わ、わかりましたよ。持っている本はすべて、ほらこの通り、捨てます」 トロリーは、本を道ばたに投げすてた。後ずさりし、やがて後を向いていちもく散にかけだした。 宇宙省長官ジェームズ=スターリングは、ためいきをつき、その本をI冊ひろいあげた。本は、道路の水にぬれている。タイトルをながめる。 「タンホイザー=ゲイトか」スターリングはひとりごちた。ページをめくってみる。最初の一行はこうだ。「この宇宙の始まりに、木が存在した……」ぐっと感覚に入ってくる。ふーう危ない危ない、、 本をながめるスターリングの耳に、向こうから来るデモ隊の声が聞こえてくる。「タンホイザー・ゲイトに我々の船を翔ばせろ」「人類にハーモナイザーを開放しろ」 デモ隊のデジタル液晶のプラカードも、そう読みとれた。 スターリングは本をとし、道ばたにあった「危険物自動焼却」用のダストシュートに投げ込み、フロント街のデモ隊をさけ、宇宙省の建物へ向かって歩き始めた。■完071027改定版■
2014.01.31
宇宙から還りし王(山稜王改題)第30回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ ケインの意識は瞬時、現在の山上宮殿へと戻る。「ケインよ。君は『地球意志』と戦え、君は独立した人格なのだ。そしてこの世をハーモナイザーによって統一しよう」 しかし、ケインの意識は過去に戻り、地球に向っている宇宙船アンバサダー号へとまい戻る。ネイサンはコフィンの中で一人眠っている。『ネイサン』ネイサンの意識の中で叫ぶものがある。「誰だ、私を呼ぶのは」『私よ、マーガレットよ』意識と意識の会話だった。『マーガレットだって、君はホールの中で消滅したはずだ』「ええそう。でも、私の意識の一郎この船に残留思念となり残っているわ」『君はハーモナイザーに同化しなかったのか』「ほほ、ハーモナイザーに同化ですって、ネイサン、あなたはハーモナイザーで、地球を汚すつもり」『地球を汚すだって、地球を浄化するのだ』「ネイサン、あなたには死んでもらう」「何だって」『あなたをそのまゆから羽化させないわ。あなたがそのまゆから出れば、地球を滅ぼすかもしれない」 「マーガレット、君は船のどこにいるんだ」 『さあ、どこでしょう。あなたの意識で探してごらんなさい。とにかく私はあなたを地球へ行かせない」 ネイサンとマーガレットとの意識同志による10年に渡る戦いの始まりだった。「ゼノウ将軍」アゴルフォスは急に、ケインに向かってどなっていた。現実の山上宮殿である。 アゴルフォスは思い出していた。ゼノウ将軍がおごりたかぶってシャナナ宮殿へ乗りこんで来た時のことを。アゴルフォスは知らないうちに『地球意志』にあやつられている。 「サイキック帝国、ここに滅ぶか」ゼノウは王座を踏みっぶした。アゴルフォスはそれを再度見ている。 サイキック帝国は超能力者集団であり、その超能力により人類が居住不可能な惑星を自ら開発し住んでいたのだ。人類とは没交渉だったのだが。ゼノウ将軍率いる宇宙コマンド軍団が不意を突いたのだ。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.30
宇宙から還りし王(山稜王改題)第29回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 光点がある。ネイサンは見た。その樹木状のものが空間に浮んで いて、そこにすべての乗組員がぶらさがっている。宇宙服も何もか もはぎとられている。裸体のまま、彼らはまるで磁石に引き寄せら れたようにはりついているのだ。眼は閉じられていて、皮膚はもう 血がかよってはいなかった。まるでまゆか何かの様な白い菌糸状の ものでうっすりと被われていた。 「ネイサン」その樹木状の物体がネイサンを呼んでいた。「我々の仲間になれ」 瞬間、ネイサンの後からマーガレットの発射したミサイルが飛来してきた。 マーガレットはアンバサダー号破壊より、敵の壊滅をねらったのだ。 ミサイルは一瞬、消滅する。空間に浮んでいたネイサンはその探査艇も消滅するのを見た。最後にマーガレットの驚きの表情が見えた。 「今のは何だ、まさかマーガレットが…」 ネイサンは思わず独りごちていた。 「そういう事だ。マーガレットが私を破壊しようとしたのだ」 「私とは」 『私はハーモナイザー。宇宙の精神共同体だ』 「なぜ、マーガレットはあなたを」 『彼女は地球意志の一つの端子だったのだ。彼女はワイラーが船の破壊に失敗したときの安全弁だった」 「地球意志だって」 『そう君も知っているだろう。地球連邦評議会の上位に位置する存在だよ」 「そんなものが評議会の上に」 「この私、ハーモナイザーのところへ船をつかわす様に命令したのも「地球意志」だよ』「それじゃ、我々はその『地球意志』にあやつられていたのか」「そういうことだ」 ケインの意識は今、混濁していた。ある時はこの時のマーガレットの意識となり、またネイサンの意識の投下されたものとなっている。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.29
宇宙から還りし王(山稜王改題)第28回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 宇宙服をつけてはいない。が彼は生きて空間に浮んでいるのだ。足の下の方には、先刻のCRTで見たように何かの生物の死体が勤めいている。暗闇の中でもネイサンはそれを感じることができた。 ネイサンが気づくより早く、アンバサダー号から小型探査艇が発進していた。中にはマーガレットが乗り込んでいた。マーガレットは船員のすべてが気を失なったまま、ホールヘひき寄せられるのを見ていた。彼らは宇宙船の壁を通り抜けてしまうのだ。マーガレットは『地球意志』の命令のまま動いていた。 ワシリー船長がアンバサダー号の破壊に失敗した今となってはマーガレットがその仕事をするしかなかった。 爆発は確かにおこったのだ。船体はバラバラに吹き飛んだ。がホールの中心から光があたり、その光の中でアンバサダー号は再生されたのだ。 小型探査艇には小型核ミサイルが積み込まれていた。マーガレ。卜は敵を倒すこと。そして地球の存在を証明する証拠を残さない事を頭の中に刻みつけられていた。 マーガレットはアンバサダー号から少し離れ、ミサイルのスイッチを押した。ミサイルは直進し、爆発光が見えた。がそれは先刻逃げ出していたパットーオブライェンの救助艇だった。 もう一度、ミサイルを発射しようとする。がアンバサダー号は急激にホールヘ引き寄せられた。マーガレットの目の前でアンバサダー号はホールヘ突入した。マーガレットもアンバサダー号の後に続いた。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.28
宇宙から還りし王(山稜王改題)第27回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/「ポール、だめなんだ、艇が操船不可能だ」 ナノウが泣き出していた。「ワイラー、ワイラー、俺達を助けろ」 返事がかえってこない。「くそっ、本船との連絡もできんぞ」 探査艇は、ホール内へすべり込むようにすいこまれていく。光点に近づく。 光の中心は木だった。いや木にみえるだけだろう。先刻から聞こえている音源はこの木のようだった。 がそいつは木に似ているだけで地球上の植物とはまったく異なったものだ。そいつは急に限石くらいの大きさに膨張した。探査艇はその木に着艇する。 「こいつは何だ」 そのあと、ナノウとポールの絶叫が本船のモニターから流れた。 「ポール、ナノウ、応答しろ」 「だめです。連絡できません」 「信号もとぎれました」 「ワイラー船長、アンバサダー号もホールの方へ流されつつあります」 「何だと、誰がエンジンを始動しろと言った」 「違います。何かわけのわからぬ力に船が引き寄せられているのです」 「くそっ、奴らの仕わざか」 医療班のパト=オブライェンは救助艇に忍び込んでいた。 もういやだ。なぜ30年間も地球をはなれる決心をしたのだろう。それにさっきのワイラーのしゃべりを聞けば、我々は実験材料じゃないか。タンホイザーゲイトが人類に対してどんな反応をするかの。俺は逃げてやるぞ。 オブライェンは救助艇の発射ボタンを押す。 が救助艇は、急速にカーブを描き、ホールの方へ吸い寄せられていった。 ワシリーはスイッチを押そうとした。「船長、そのスイッチは自爆スイッチです」 オペレーターのジャービスが止めようとした。「わかっている」冷たくワシリーは言った。「なぜですか」不審な顔でジャービスは止める。「奴らに地球の情報を与えないためにだ」「奴らですって」 ジャービスは船長の右腕を押さえていたのだが、ワシリーは左腕のひじをつかって自爆スイッチを押した。 衝撃が船体を襲う。 ネイサンはショックで気を失しなっていた。ようやく目ざめる。いったいアンバサダー号になにが起ったのか、ネイサンは理解していなかった。先刻まで話をしていたマーガレットの姿がなかった。 それ以上に驚いた事に、船内に誰の姿もないのだ。急いでコックピットに入り、船内の生命反応を見る。ただ一つだけだった。ネイサンの反応だ。 船は自動的に動いている。タンホイザーゲイトのホールヘ向かい直進していた。 もうホールは目の前だ。衝撃が再びあり、ネイサンは床にたたきつけられた。アンバサダー号もタンホイザーゲイトのホールをくぐったのだ。 ネイサンは自分の体がアンバサダー号をつきぬけて、空間の中に浮んでいるのに気づく。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.27
宇宙から還りし王(山稜王改題)第26回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ その星の中心部から音が聞こえていた。空気もないのにその音はアンバサダー号の内に鳴り響いていた。がそれは音でありえない。心の中に感じられるらしい。 「ロバート、この音は」マーガレットが聞く。 「まるでタンホイザーの曲の様に聞こえるが、空気振動ではない」ネイサンは答える。 「というと何なのかしら」マーガレットは再びネイサンに尋ねた。 「わからんが、何か脳の音感域を刺激する何かが発せられている様だ」 タンホイザーの中央部に存在するホールは光の投下をこばむ。ホールの中はこちら側の宇宙に属していない様に、ポールとナノウには思えた。ホールの直径は2Kmくらいだろう。二人の耳にも、その音は響いていた。その音は、そのホール内部から来ているようなのだ。 ホールの中にポールとナノウの探査艇を進めていく。 「暗いなポール」ナノウが叫んでいた。 「OK、サーチライトをっけろ」 「何か、内壁に見える」 「少し、一方の壁に近づけてみる」 サーチライトの中に浮びあがってきた内壁は地球人の理解を越えていた。 「こ、こいつは」というがはやいか、ボールはせまい艇内で、はき始めていた。 『もう少し、カメラをズームしろ』ワイラー船長の声がCRTの中からどなっている。 が、やはり思っていた通りの光景だ。ホール内面全部が死体の山だった。腐敗しかけだ死体やまだ勤めく胴体、あきらかに人類以外の宇宙人の死体が山の様になって内面壁に付着し勤めいている。その動きは大腸のぜん勤をおもわせた。 「ここは」ナノウは、不思議な光景を見て、もう普通の神経をしていない。 ホールの中央部にやがて光点が見えた。 「その光点へ向かえ」ワイラーが命令している。が探査艇の安全機構は警告音をあげていた。 「安全ラインをもう越えています」 「かまわん、君達が、そのホールに飲み込まれようとも、映像は、確実に人類に届ける」ワイラーもわめいている。彼もまた狂っている。 「我々を何だと思っているんだ、ナノウ、船を戻せ」ポールが叫んでいた。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.26
宇宙から還りし王(山稜王改題)第25回 ■(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/「ケインよ、お前は想像できるか、地球人類の叡知をはるかに越えた存在を」「それをお前は、タイホイザーゲイトで見たわけか。なぜ地球へ還ってきた」「還ってきた。そうではない。私は使徒として地球へ派遣されたのだ。この地球をハーモナイザーに同化させるためにな」 「お前は、そのハーモナイザーに支配されているわけか」 「そうではない、ケイン、ハーモナイザーは支配するという認識など持ってはいない。ケイン、お前も我々の仲間になれ」 「お前の仲間だと」 「そうだ、我々は一種の精神共同体だ。お前が、今見た、頭は何でもない。ある種の精神残留装置だ。彼らは死んでいるわけではない。 つまり、私もネイサンという一個のパーソナリティではない。タンホイザーゲイトで出合ったハーモナイザーは我々を精神共同体としてまとめたのだ」 「一介の出版エージェントにすぎない私には理解を越える事だ」 「ケイン、いやコードネーム、ケイン。君は今、一個の個体であり、同時に『地球意志』という巨大存在の一分子だろう」 「君は私について感違いしている」 「感違いだと、白々しい事を言うな。それなら君の目的を言ってやろう。ここへ来た目的の一つはこの世界樹の抹殺だ。この世界樹により、私が新しい作品を生み出し、それが地球人類の意識変革を行うなっている事が君、「地球意志」にわかったからだ。 そして、私ネイサンが君の事を覚えていて私の作品の中で、あのアンバサダー号事件を発表しないかどうかを極端におそれているはずだ」 「アンバサダー号の秘密だと、私はそんな船には乗っていない」 「ケイン、君という個体ではない。別の名の個体で『地球意志』は乗り込んでいた。君『地球意志』のもくろみは何だか言ってやろうか」 「何だというのだ」 「君『地球意志』はタンホイザーゲイトで知的生命体と遭遇する事を予想していたはずだ。そこでいくつかの行動オプションがあった。 まず一つは、肢らを捕獲し研究すること。肢らが地球人類より下等ならば、彼らの世界を占領すること。 彼らの能力が地球人以上の場合は、アンバサダー号を破壊し、地球人類の存在を彼らに知らしめないこと。 が彼らは思ったより早く行勤し、乗組員全体を掌握してしまった。君の体は危険を感じ、宇宙船アンバサダー号の金属部位のどこかに逃げ込んだはずだ。そうだろう『地球意志』、君は確かあの時……まあいい。 とにかく私の体には世界樹の種子が生み込まれていた。 宇宙船内のすべての機械が私の成長の養分として同化された。到着時の私はまゆだったのだ」 「消えてしまったアンバサダー号の乗組員も養分にして成長したのだな」 「それは君が一番よく知っているはずだ。しかし、彼は私という代表者と一身同体となったのだよ。彼らの精神は私の体に同化されたのだ」 シグナルが船体に鳴り響いていた。到着地についたのだ。冬眠チューブが賦活し始める。 アンバサダー号はその生命をふきこまれつつあった。 大航海時代のナビゲーターですら感じた事のない感動が、眠りからさめた乗組員の心を揺り動かしていた。 「我々はやりとげたのだと」 タンホイザーゲイト。かつていかなる地球人も到達しなかった場所。新宇宙の始まりといわれる場所。あるいはブラックホール。 「マーガレット、ついに我々はやってきたんだ」ネイサンが宇宙文明学者のマーガレットに言った。ケインは、これは幻想だとわかっていても、同じような感動を追体験していた。 アンバサダー号はタンホイザーゲイトの側に停止していた。これ以上本艇を近づけると危険と考えたワイラー船長は、タンホイザーゲイトの第一回調査をボールとナノウに命令していた。 タンホイザーゲイト。巨大な恒星でありながら、その星の中心にあらゆる宇宙の光を収斂するブラ。クホールが存在していた。そしてその中に新宇宙への人口が存在する。星間望遠鏡のデータ解析の結論だった。(続く)20140320■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.25
宇宙から還りし王(山稜王改題)第24回 ■ (1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/「ケイン」山陵王が呼んでいた。 「ケイン、よくここまでやってきたね」 山陵王はケインに手をさしだした。二人は握手した。力強い握手だった。 「それでは、ケイン、私について来たまえ」山陵王はケインに先立ち、宮殿へと入っていく。そこには多くの人々がいた。皆、生き生きした眼をしている。長い回廊を歩かされる。どうやらドームの中心部にむかっているようだ。この宮殿の中はドームの中にあるにもかかわらず、植物が原生していて、自然の風さえも吹いている。おまけに天井を見あげてもドーム壁がまるで見えなかった。空が、そのまま見えている。 「ケイン、この木を見てくれたまえ」ネイサンが指さしていた。その木はドーム中心に見えていた木だろう。このドーム内の中で一番巨大で、空あるいは宇宙を枝でささえている様にも見えた。 その木には一種の精神感応力があるのではとすらケインは感じた。 「この木はいったい」ケインは思わず口から言葉がこぼれでていた。 「この木かね、世界樹というのだ」 「世界樹? どういう意味が」 「この地球そのものをシンボルした意味だ。ケイン君、その樹の根元を見てみたまえ」 ケインは根元にさわる。そいつは息づいている。まるで人間の血管にふれた様な感じがする。 「これは何ですか」 「いいから、少し掘ってみたまえ」ネイサンはケインにレザーシャベルを渡す。 やわらかい皮膚の様な木の根元だ。少しずつ掘ってみる。やがてレザーシャベルが何かを焼き切った。こげくさいにおいがする。たんぱく質が燃焼しているにおいだ。ケインはそこに手をあてて、土をはらってみる。人間の皮膚そのものだった。その異物にそって手を土の下へ掘りさげる。 瞬間、ケインは驚きで目がくらみそうになる。そこには眼があった。まぎれもない人間の眼だ。 しかもそいつはまばたきもしないでケインをにらんでいた。ケインは急いでその部分を掘りおこした。 人間の頭部だ。首から下はゴム管の様になり世界樹につながっている。そいつはにやりと笑う。「ようこそケイン」そいつはそう言った。 ケインはあわてて土の上へ投げすてる。そいつは笑った。笑い声は一人のものではなかった。土の中から何百人もの声が響いてくる。 ケインはその顔に記憶があった。アンバサダー号の乗組員の1人だった。 ケインはネイサンの方を向いて立ちあがった。「あなたは何をしたのだ。アンバサダー号で」「その質問はおいおい答える。その前にりリーファーの姿を見ただろう、ケイン」「リーファーをあの鳥の姿に変えたのはあなたなのか」「そうだ、リーファーは、君と同じ様に出版エージェントを装い、私に近づき、私の小説世界の源泉を知ろうとした。それで彼に変貌してもらったのだよ」 ネイサンは少し言葉をおいた。(続く)20140213■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.24
宇宙から還りし王(山稜王改題)第23回■(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 宇宙省のビルだった。スターリング長官が前にいた。「いいかね、君が頼みの綱なのだ」 ケインは至上命令で、本省へ呼びもどされていた。 椅子にかけたケインヘ、スターリングは質問する。「ケイン君、君は『山陵王』の本を読んだことがあるだろう」「もちろん、あります。禁書を読んでおかねば、反対勢力の動向がわかりませんからね」 「それでどうだね、「山陵王」は」 「確かにあの本は危険です。あの本の言葉は言語メディア以上の力を持っています。私ですら、あの本によって心の琴線を動かされました」 「そう、それがこわいのだよ。ケイン君。それがね。それじゃ、君に山陵王を倒せと命令すればどうだね」 「山陵王は実在するのですか」 「そう、山陵王とはゼルシアに居るネイサン自身なのだ」 「それではネイサンの動きをふうじろというわけですね」 「他に方法はない。奴を処分しろ。が、充分注意してほしい」 「といいますと」 「宇宙省に限らず、情報省のエージェントが、ゼルシアで精神障害を受けたのだ。おまけに行方不明者もでている。君の友達のリーファーくんだ」「あの切れ者、りーファーがですか」「そうだ。いいかね。ケイン、『地球意志』が君を選んだのだ。名誉に思いたまえ」 ケインは地球連邦評議会ビルヘ連れて行かれ、地下で『地球意志』がケインの精神に投下された。 誰かが頭を揺さぶっている。ゆっくりとケインの眼が開く。肩を揺さぶっていたいたのは、、アゴルフォスだった。ケインはようやく夢から脱し、現実世界に戻れたのだ。 「ケイン、目的地についたぞ」 アゴルフォスはニヤリと笑う。どういう意味の笑いだ。挑戦か、あるいは…。 しかし、ケインは、、その山上宮殿の美しさに、眼をうばわれていた。デジャビュ(既視感)があった。先刻のリーファーの夢にでてきたのだ。 宮殿は、まるで一個の生物だった。密林の中に生きている一個のけもの。しかしそれは世の中に存在する一番美しいけものだろう。そして、それは同時に植物でもあった。巨大な樹の影がドームを被っている。 (続く)20140213■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.23
宇宙から還りし王(山稜王改題)第22回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ケインのまどろみはやがて先刻のシアリー絶壁とつながる。 アゴルフォスは先程と同じ様に、彼を黄泉の船に乗せる。 やがてその船は山上宮殿に辿りつく。そこはいかなる想像力もおよばない建物であった。地球上の過去の王が作りあげた宮殿とも異なっていた。ドーム型をしていて、中心から巨大な木がはえ出て、ドームの上をすばらしい枝ぶりで被っているのだ。ドームの表面はさながら宝石の様にみえた。がそれは刻々、光ぐあい、色彩、紋様が動いていく。そしてあきらかにそのドームの表面は生き物の様に波うっていた。あるいは心臓の音さえ聞えてきそうなのだ。 アゴルフォスは回廊を通り、山陵王の前につれだしていた。山陵王は奇妙な椅子にすわっていた。その椅子もまた息づかいが感じられるのだ。 ネイサンはデータの通りの顔だった。 「君は、何をしにきたのだ」ネイサンが尋ねる。 「私は、先刻、言いましたように山陵王に原稿をいただきに来たのです」「笑わすなよ、お前の顔には宇宙省のエージェントと書いてあるぞ」アゴルフォスが言う。 ケインは脇に装着していたメーザーガンを発射しようとする。がメーザーガンは作動しない。「どうしたね、私を殺すつもりだろう、リーファー君」山陵王が言う。 リーファーだと。俺はケインだ。ケインは夢の中で叫んでいる。そしてこの知覚が現実のものではないと知る。ケインは今、アーなのだ。「なぜ、私の名前を知っている、ネイサン」「私はネイサンではない。私は山陵王なのだ」 山陵王が眼をのぞきこむ。 一瞬、ケインはシアリー絶壁から、ころげ落ちる、、自分の首を、、感じた。それはリファーの首であり、またケイン自身の首でもあった。「うわっ」ケインは夢を見ながら叫んでいる。ケインは過去の自分の回想に今や、とらわれていた。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.22
宇宙から還りし王(山稜王改題)第21回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ケインはまるでそこ宇宙ステーションDELにいて、アンバサダ一号を見ている一人になっている事に気づく。 アンバサダー号からの唯一の生存者はネイサンだった。彼は年をとっていない。果して生命保持チューブから一歩でも足を出したことがあるのか。なぜ彼だけが生き残っていたのか。 他の生命チューブは破壊されていたが、死体は残存していなかった。 船体に設置されていたカメラはすべて破壊されていた。あきらかに何者かの手によって壊された事は歴然としていた。 船体の各部位にあったサブコンピューターのメモリーも意味をなさなかった。 ステーション司令部、中央脳へ地上のコンピューターから送り出されたネイサンのディティールがCRTに映し出されていた。「ロバート・H・ネイサン身長192m。体重85キロ。乗船させることはないのだが。アンバサダー号出発一年前、ネイサンはジェット機事故により、彼の両親、愛妻、子供達を失なっていて、失意のどん底にあった。彼はこのアンバサダー号に乗ることを切望していた。この時、彼は37歳だった』 チューブから解放された彼の体は、生体チェックの結果、37歳と判断された。 ネイサンはしかし、深い眠りの中にあった。 アンバサダー号にセットされていたすべての記憶機構が役に立だない事がわかった時、すべての科学者の眼はネイサンに注がれた。彼の回復が期待した。 初めての恒星間旅行から還ってきた男は何をのべるのだろ・っか。 が眠れる男の心はまた空白であった。 ネイサンの心をスキャナーやイメージリーダーでくりかえし、担当セクションはのぞき見たのだが。彼の記憶もまた出発時の時点できれいに消滅されているようだった。何者かが彼の心にどんな処置を設したのか、わかり様がなかった。 ただ、彼の頭の部分に高密度に集積されている肉腫があった。 彼の処置にこまった宇宙省は、ラガナ砂漠のリハビリテーションセンターに送り込んだ。 彼の変態が始まったのはしばらくたってからだった。ケインの頭にそんなストーリーがむりやりにつめ込まれている。アメリカ大国人。ヨーロッパ連合、アンダルシア地方生まれ、両親はアメリカ大国人であったが、文化人類学者であり、地球中を旅行していた。彼らはスペイン、アンダルシア地方に別荘を持ち、休暇をすごすのを常とした。そこでロバートが生まれた。彼は両親の感化で幼ない頃よりヨーロッパ語すべてを話すことができた。パリ、ソルボンヌ大学卒業後、マサチューセッツエ科大学に学び、外惑星言語学を修める。NASAにおける最初の外惑星コミュニケーション担当官であった。 通例、NASAでは彼クラスの学者を何年もかかる恒星間船に乗せる。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.21
宇宙から還りし王(山稜王改題)第20回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 「こいつはまるでジャングル密林の中だ。コードというつたが機械という枝や 根を包みこんでいる」ラマが言う。 その時、解析士が叫んでいた。 「生体反応あり」 「どのあたりだ」ラマは別のCRTをONした。 アンバサダー号の立体設計図がプロジェクトされCRTに同化された。「中央部、冬眠チ『一Iブ付近です』「冬眠チューブだと、古いタイプだな、通称「コフィン」だな」「解析官、これを見て下さい」「何だ」「これは上部からコフィン付近を見た分析図ですが、何かおきづきになりませんか」 「というと、うん、コードがすべて一つのコフィンにつながっているな」 「というよりも、私にはコフィンから全てのコードが生え出ているような気がします」 「なぜ、こうなっているんだ。アンバサダー号、中心頭脳にリサーチしろ」「中心頭脳端子発見しました」「よし、探素子を端子へ入力」「入力OK」「可動しているか」「死んでいるようです」「刺激を与えてみろ」「ラジャー」高圧電流が放電された。「どうやら可勤し始めた様です」「で、中心頭脳の情報はひき出せるか」「やってみます」 宇宙ステーションDELの中央脳に、アンバサダー号中央頭脳の情報が転位された。 「転位OK。終了しました」 「じゃ、遭難時の情報をひきだせ」 ョーマンはコンソールを操作する。が思ったような答えがCRTに現われない。何度もその作業をくりかえす。別のアクセスを次々試みる。 「ラマ解析官。だめです。遭難時のデータが出力しません」 「なぜだ」 「この頭脳の情報は答えています。アンバサダー号は遭難していないと」 宇宙ステーションDEL司令室はとりあえず、宇宙船アンバサダー号の冬眠チューブをとり出すことにした。マニュピュレーターにより、通称コフィンが、コードから次々に切りはなされる。「生体反応、異常はないか」「OKです。変化なし」 生命維持コフィンは、船体アンバサダー号から切りはなされるのをいやがっているように、ョーマンには見えた。がこんな事を口に出すべきではない。 モニターを見ている他のステーションの乗組員は、その風景を一種畏敬の念を持ってながめていた。 生体反応はその一つだけ。つまり生体反応が人間とすれば一人だけ生きていることになる。 そのモニターを見ていた人々はフンバサダー号の一片、わずか19平方の板がすべり落ち、マニュピュレーターの裏に隠れて、宇宙ステーション中に侵入したのに気づいていなかった。その金属片は、生き物の様に居住区を通りすぎ、地球行きのシ々トルの中へ潜り込んだ。 見物人たちは息を飲んだ。いよいよコフィンが無菌室へ運び込まれた。 アンバサダー号には25人の乗員が乗り込んでいた。そして地球を出発して30年の月日が立っている。その間、アンバサダー号に何かがおこったのだろうか。そしてタンホイザーゲイトには辿りつけたのだろうか。 コフィンの中をカメラが映す。ネームプレイトがその男の胸につけられていた。人々はモニターを通じ、その男の名前を口にしていた。 「ロバート・H・ネイサン」(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.20
宇宙から還りし王(山稜王改題)第19回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ その船を発見した時、マシューは自分の眼の錯覚かと疑った。しかしレーダーの光点はまぎれもなく、その船の存在を証明している。 マシューは地球防衛軍の単座戦闘艇に乗っている。 モニターに映っている船は″幽霊船″だった。これは伝説の船、10年程前から、太陽系をうろついている幽霊船だ。 その船が、なぜここ地球絶対防衛圏まで、他の船に発見されずに、流れついたのか不思議だ。 船は、病原菌に犯され、腐敗している汚物の様に見えた。マシュ 「あったぞ、ハロルド、どうやらこれらしい。ナンバーを読むぞ。NASA-にこに∞w7瓦」 「OK、マシュー。モニターTVでも確認できた。データをメインバンクでサーチする」 「NASAとは何だね」 「おいおい、マシュー、大丈夫かね。アメリカ宇宙局の略だ。アメリカ大国宇宙省の前身じゃないか。よし、データが解析できた。その船は……」ハロルドが言いよどんだ。 「どうしたハロルド」 「その船はアンバサダー号だ」 「何だって」マシューはしばらくして言った。 「子供の頃、俺は何かの本かVTRで見たことがある。人類初の恒星間船、そしてタンホイザーゲイトを目ざした船のはずだ」 「そう言う事だ。こいつはえらい事になった」 ケインの意識はまた、マシューのイメージを読みとっていた。が何かしら、ケインの体を見られているような、カメラで映されている様な変な気分だった。 アンバサダー号は宇宙ステーションDELまで曳行され、調査された。 DELは地球上空に多数浮かんでいる宇宙省のステーションの1つだ。 内部透視解析によって船体がサーチされる。 「これは……」解析士ョーマンは声をあげ上役を呼んだ。「解析官、このモニターを見て下さい」 上役の解析官ラマも声はうわずっていた。 「これはコードなのか」 「どうやらそのようです」ョーマンが答えた。 アンバサダー号の内部はコードで一杯だった。まるでコードをアンバサダー号という入れ物で包んだという感じだ。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.19
宇宙から還りし王(山稜王改題)第18回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ ネフターは狐につままれた気持ちでブルックリンにある自分のアパートへ帰った。 虚脱状態だった。あかりのスイッチを入れ、先刻手渡された原稿を肌の上に置く。 だまされたのではと思いながら、その原稿を読み始めた。やがてページをめくるネフターの手はふるえていた。 手はテレビフォンにかかった。相手が出る。「どうした。ひどい顔だぜ、ネフター」「たいへんだ。すごいヤマをあてたぜ」「おいおい、寝ぼけるのはまだ早いぜ」「だまれ、今からお前のところへ行く」、印刷機オペレーターを呼んだ。 かくして、ネイサンの作品「空間のかなたへ」が発行された。そしてベストセラーとなった。 ネフターが初めてネイサンの作品を発行した瞬間の喜びをケインは味わっていた。(続く)宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.18
宇宙から還りし王(山稜王改題)第17回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■出版社が並らんでいるヤルタ=ストリートをネフターが歩いていた。頭はほとんどはげていて、後頭部にすこしまき毛が残っている。いつも体を折りまげて歩いている。年齢は57歳で独身だった。東欧共同体からの亡命者で、今はアメリカ大国に住んでいる。 ネフターは出版エージェントとしては二流だった。彼はこのヤルタ=ストリートで数々のベストセラーが生まれていくのを指をくわえて見ているだけだった。彼と契約している作家たちはベストセラーになるのにはおこがましい三流の作品ばかりを書いていた。彼が育てようと努力した作家は、売れる作品を書きだすと、ネフターとおさらばして別の出版エージェントにくらがえした。 「この恩しらず」と彼はその作家にどなりつけ、本の山をなげつけた。 東欧共同体から逃げ出した時、彼には語学の才能しかなく、最初はしがない翻訳書のゴーストライターとして糧を得ていた。 やがて彼の訳した本が何冊かベストセラー近くまで行った時、彼は出版エージェントの仕事に乗り換えた。がヤルタの出版界はそう甘くはなく、いまだにベストセラーの鉱脈にはつきあたらず、年月を重ねてきたのだ。 背を丸めて歩いているネフターを呼びとめる声がある。 「ネフター、ネフター」ネフターは空耳かと思った。 「ネフター、お前だよ、私が呼んでいるのだ」ネフターは歩を止めた。声はヤルタ通りの横の暗がりから聞こえている。 「おい、俺は金はもっていないぞ、追いはぎをするなら他の奴を選べ」心なしかネフターの声はふるえていた。「追いはぎだと、バカをいうな。逆に君を金持ちにしてやろうというのだよ」声は冷やかだった。 「金持ちだと、俺をからかうのをやめろ」ネフターは逆に怒りにとらわれて、声のする方へ進んだ。眼があった。 その眼は人間の物とは思えない。人間以上の何かだった。 「ネフター、私の原稿を出版したまえ」 男だった。その男の前でがくと思わずネフターは足がくだけ、膝をついている。 男の声はネフターの心にしみいり、頭の中でもこだましていた。それは有無を言わさぬ力強いものだった。あらがいようもない。 「わかりました。出版社に交渉いたします。で、あなたのお名前は」丁寧な口調でついしゃべってしまう。 「ロバート・H・ネイサン」男は静かに言った。 「あとの連絡はどうしたらよろしいでしょう」 「私の方から君にする。それでいいな」 「わかりました」 男はくるっと後を向き、闇の奥へ消えた。うす暗がりに続く者がいた。ネフターの方をふり向きにやりと笑う。ネフターは背すじがぞくっとした。そいつは「キメラ獣」だった。(続く)宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.17
宇宙から還りし王(山稜王改題)第16回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ キーンはネフターの肩に手をおき、「リゲル産の酒だよ、どうだね」 「キーン、その酒は」 「わかっているよ、ジェームス、この酒が特殊なのはわかっている。さあネフター君、この酒を飲みたまえ」「いや、それは・こネフターは三人の背広姿の男達に押さえつけられている自分を発見する。口を開けさせられ、無理やりにリゲル酒が流し込まれる。「窓を開ろ」ネレトバが男達に命令する。地上45階の窓は三重窓になっていた。ようやく全開される。 「いいか、ジェームズ、こ奴は、事故で死ぬ。リゲル酒を飲みすぎて、頭がおかしくなり、窓から飛び降りたのだ。ジェームズ、わかっているな」 「わかった。キーン、君にまかせる。君の好きなようにしろ」スターリングは自室を出ていこうとして、ドアの所でふりかえる。 「いいかね、キーン。こんな事は、今度からは君の部屋でやってくれ」スターリングはドアを閉めた。 ネフターは背広姿の三人の大男にさからっていたが、勢いをつけ、窓の外へ放りなげられた。 「うわっ」ネフターの目の前で、空港の光や街の光がくるくると廻る。風が急激にネフターの体をおそう。落下しているネフターは気を失ないそうになる。その瞬間、ネフターは上から肩をつかまれた。落下がとまる。ネフターはゆっくり上を見上げた。そこには見知らぬ男の顔があった。が下は鳥の姿なのだ。ありえない。これは悪夢だ。ネフターは気を失なった。下の階へのストリ。プHエレベータ-に乗っていたスターリングは叫び声をあげていた。「リーファーー」 ■ケインはまたもや、意識がスリップしている事に気づく。初めはネフターで、あとはりリーフアーの意識だ。 (続く)宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.16
宇宙から還りし王(山稜王改題)第15回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ ケインは、ある時はアゴルフォスの意識となり、ヘリのパイロットとなり、さらに長宮室の空気ともなっている自分に気づく。 が、ケインの夢の旅は終りそうにはない。これは夢ではなく、過去の出来事を山陵王が再現しているのかもしれんと、ケインは思う。「ネフター君、ネイサンの作品を出版するのをやめていただきたいのだが」 出版エージェント、ネフターは、出版社でネイサンの本についての会議中、強制的に宇宙省ビルにつれてこられた。 この宇宙省ビルからは、夜中でも光が輝き、真昼の様に見える宇宙省ビルから「ニューアーク宇宙空港」がよくみえる。いくせきかの船が飛び立っていき、また戻ってくる。ネフターは、その光景をながめ、前に座っている老人に答えた。 「とおっしゃいますと」 「彼の作品は地球人類に悪影響を与える」 宇宙省長官ジェイムズ=スターリングは、大きなチーク材の机にすわっていた。 「21世紀の禁書というわけですね、長官。でも民衆の声を無視するわけにはいかんでしょ」 スターリングは白髪で学者然として60歳の精力的な男だ。 「というと、君はネイサンの作品を地下出版ででも出すつもりかね」 「そうです。いいですか。ネイサンの言葉はいまや神の言葉なのですよ」 ネフターの返事には力がこもっていた。そう俺はひょっとしてネイサン教の伝導者かもしれん。ネフターはそう思った。 「それがこまるのだよ」別の声がする。横のドアから2mくらいある長身の男が現われた。 「キーン、登場するのが早すぎるのじゃないか」スターリングはその男に言う。 「いやいい、ネフター君、自己紹介しておこう。私が情報省長官、キーンネレトバだ」 「わかっております。あなたが、我々の出版界を『地球意志』の下におこうということは充分にわかっております」「君の理解力はすばらしいよ、ネフター君」 キーンはスターリングの酒棚から持ってきたリゲル酒をグラスに(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.15
宇宙から還りし王(山稜王改題)第14回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ マリナ市フロント街、にある「宇宙省」長官室。 二人の男が深刻な顔でCRTをながめていた。 「ここが問題の場所だ」白髪の男が言った。 彼らは探査衛星から採取したVTRテープを見ているのだ。 CRTの画像上で、リハビリテーションセンターの建物が瞬時に、収斂し、次の瞬間には消滅していた。 「これが、ネイサンの仕わざというのかね。ジェイムズ」ブラウンヘアの長身の男が言う。 「そうとしか考えられんよ、キーン」 白髪の男は立ちあがり、テーブルの上のコップにリゲル酒をついだ。 「センター内のカメラアイは本部に、アゴルフォスが逃げ出し、兵士達をなぶり殺しにする所までは送信していた」 「で、それからアゴルフォスは」 「ネイサンの収容室へ入り込んだようなのだ。そこからカメラが破壊された」 「考えられる逃げ場所は」キーンと呼ばれた男が尋ねる。 「わからん、ネイサンには係累はない」 「わからんだと、それではどこかの空間へ逃れたかもしれんのだな、ジェイムズ。それならば、『地球意志』に報告せねばなるまい」 「そうだ。それに彼の抹殺指令も出してもらわねばな」二人の男は情報省長官、キ-ン=ネレトバと宇宙省長官、ジェイムズ=スターリングだった。二人は地球連邦軍評議会ビルヘ向かう。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.14
宇宙から還りし王(山稜王改題)第13回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 空間に男が浮んでいる。眼はとじられ、身動きしない。心微音も聞こえてこない。肌は血はかよっていなくまるで石の肌だ。見知らぬ者が見れば、そいつは空間に浮んでいるキリスト像に見える。男の体は光っていて、光球の中にいる様だ。その石像から心の声が聞こえる。 『ようやく、米たか、アゴルフォス』「あ、あなたは神なのか」 『神ではない。がこの地球ではもっとも神に近い存在だろう』 「あなたは死んでいるようにも見えるが」 『死んでいる。生きている。そんな地球的尺度からは、私は超越している』「石像の様に見える」アゴルフォスはうめいていた。心なしか体がふるえている。『いいか、君の見ている私の体は、固いコアに包まれているのだ。いわば羽化直前のさなぎと考えてくれ。それゆえ私の意志の力ではなく肉体的な君の力が必要なのだ』「わかった。ネイサン、あなたに従おう」 リハビリーテーションセンターから本部への連絡がとだえ、2時間たつ。ラガナ砂漠の上をジェットヘリが飛んでいる。 「本部、どうぞ、こちら探索ヘリです」 「リハビリテーションセンターは見えたか」 「いえ、それが今だに発見できません」 「何だと、座標をチェ。クしろ」 「それが何度、チェックしてもその位置には建物が存在しないのです」 ヘリの飛び廻っている場所は他と変らぬ砂漠だ。そこには建物の 残骸も残ってはいない。 (続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.13
宇宙から還りし王(山稜王改題)第12回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/■ ラガナ砂漠に砂嵐がおこっていた。この季節にはいつも砂嵐が吹いている。近くの町からは数100h一離れた宇宙省のリハビリテーションセンターに収容されている人は何かしらいわく因縁があるといわれていた。 リハビリテーションを守備している兵士は外に対してではなく、内に対して警備しているのだ。 ここにはシャナナ宮殿のキメラ獣、アゴルフォスが収容されていた。彼は超能力を持つので対ESPバリヤーがはりめぐらされ部屋にいた。『アゴルフォス』彼を呼ぶ声がした。『誰だ、我輩を呼ぶのは』アゴルフォスはベッドから頭をあげる。声は精神内の声だった。 『お前の近くに収容されている男だよ』 『名前は』 『名前か、名はネイサンだ』 『そのネイサンが、我輩に何の用かおるのだ』 『お前、ここから出たいか』 『あたりまえだ。我輩はこんな場所に居るべき輩ではない』 『ふふ、キメラ獣が何をいうんだ』 『ネイサンとやら、我輩を見くびるではない。我輩はシャナナ宮殿にいたキメラ獣だぞ』 『あのサイキック帝国にいたキメラ獣というわけか』 『そうだ。もし、このバリヤーさえなければ、我輩のすばらしい能力を見せてやれるのだが』 『ふふ、所詮は大の遠吠えだ。いいか、アゴルフォス、もし私がバリヤーをこわしてやったら』 『何だと、お前はただのアストロノーツではあるまい』 『私はネイサン、聞いたことがあるだろう、タイホイザーゲイトから遠ってきた男だ』 『記憶喪失の男か』 『私が単なる記憶喪失の男かどうか』 「ぐわっ」アゴルフォスはうめいた。頭の中心部がしめつけられるようだ。頭の中に膨大なデータ、人智を越えた知識が一度に送りこまれた。頭のラインがオーバーランしそうだ。アゴルフォスは白眼をむき、だ液を口からたらしている。鼻血が流れ始める。眼も充血して飛び出してくる。体のあちこちの血管が皮膚からぼこぼこと浮き出してくる。血液が沸騰していた。 「や、やめてくれ、発狂する」 『どうだ、アゴルフォス、私がどれ程の力を持つかわかったか』「わかった。ネイサン、あなたはただの人ではない」 『私を収容室から連れだせ。お前を一緒に連れていってやる』 「このリハビリテーションセンターから出してくれるというのだな」 『そうだ』 「その前に、この部屋のバリヤー装置をこわしてくれ」 『わかった』 アゴルフォスの部屋が振動した。ほこりが舞う。壁にひび割れがおき、壁面が内側にやぶれ倒れてきた。壁に埋めこまれていたバリヤーマシンがむきだしになった。そいつが火を吹き出し、爆発する。瞬間、大声がアゴルフォスに聞こえてくる。 『いいか、アゴルフォス、私の呪縛を解け』 「ぐわっ」アゴルフォスが咆啼する。長年の拘束から、彼も解放されたのだ。 地球連邦軍によって、ミュータントによる「サイキック帝国が滅ぼされて以来、初めて自由になれたのだ。体じゅうの筋肉がびゅんとはりつめた。とぎすまされた神経がよみがえってきた。体じゅうに力がみなぎっていた。 『アゴルフォス、早く、私を肋けるのだ。お前の怪力が必要なのだ』 「わかった。どこなのだ」アゴルフォスの頭の中にネイサンの居る収容室の場所が示された。 アゴルフォスは回廊に飛び出す。兵士が武器を構えていた。アゴルフォスが片手をふりあげる。兵士とアゴルフォスの間は5m程あいているのだが。兵士の両手が体からちぎれて飛んだ。血が天井まで吹きあがる。更に手を動かす。頭がちぎれて天井にはねあがる。脳しょうと体液が天井から廊下におちてきた。廊下はまるで死体解剖室だ。 「ふふっ、久しぶりの快感だ。空気切りの技」 次々と兵士が送られてくる。アゴルフォスはいとも簡単に兵士達を処理した。回廊はばらばらになった人体の手足や、内臓がころがっている。 アゴルフォスはネイサンから示された部屋のドフを破壊する。ネイサンの収容室へ足を踏み入れた。瞬間、アゴルフォスは水りついた。眼がみひらかれる。「こ、これは何んという」アゴルフォスは青くなった。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.12
宇宙から還りし王(山稜王改題)第11回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 「いいか、今日からは、私が山陵王だ。世捨て人の諸君、私の命令に従いたまえ、そうすれば、今までよりもすばらしい桃源境をここに出現させ、君達を解放してさしあげる。ここにいれば、「ドラガ」によるトリップよりもすばらしい精神的恍惚感を味わさせてあげよう」 その時のネイサンの声は人々の耳に甘美に響く。音に香りがあり、味があるような気がした。彼の声は一人一人の耳を通じて、頭の中心部にパルスとなって伝えられて、人間の五感を刺激するようだった。 「私の片腕を紹介しておこう、アゴルフォスだ」 醜い顔をしたシャナナ宮殿のキメラ獣が出現していた。人々は驚きの声をあげた。■ ケインは、世捨て人の一人に自分の意識が投下されているのを発見 する。アゴルフォスがこちらを見てにやりと笑っている。これは夢 なのかヽ現実なのか・山陵王ネイサンは私に何を体験させようとい うのだ。ケインは思った。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.11
宇宙から還りし王(山稜王改題)第10回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/自分の眼をこすってみた。ありえない。最初は幻かと思った。がその男は、まぎれもなく存在していて、リャンの宮殿の方へと歩を進めていた。 部下達が、その男を制止しようとするが、逆に部下の体が静止して動かなくなる。 見ている内に、男はもうリャンの横たわるベッドの前に立っている。 見知らぬ男は長身で、その眼は冷たい湖を思わせた。 「今日から、私が山陵王だ。リャン、ここを立ち去れ」 「何だと、笑わすな、誰かはしらんが、俺に対して冗談を言った瞬間が最期だと思え。ところで、お前、どこからここまで辿り着いたのだ」 男は空を指さす。 「上からやってきた」 「空からだと」リャンは笑いころげる。 「お前は何さまのつもりだ。第一ここラシュモア山には、どんな飛行物体も近づけるわけはないのだ」 「が現に私はここにいる」 「だから不思議なのだ。お前は何者なのだ」 「だから、先刻から言っている。山陵王だと」 「もう、お前のおふざけにはつきあっておれん、こやつをとらえろ」 部下は侵入者を取り押えようとする。 「やめろ」その男は叫ぶ。手下たちの体は勤けない。その男の言葉が頭の中でトゲの様につきささり、その声で命令を受けているようなのだ。 「リャンを葬れ」その来訪者は皆にむかって言った。手下達はその言葉を夢見ごこちで聞き、言葉に従おうとする。 リャンはあわてて「こら、お前達は何を考えている。俺は山陵王、敵はあやつだ」 「むだだよ、リャン、君の山陵王としての役割は終りだ。今日、この日から、私が君にかわり、山陵王となるのだ」 リャンは侵入者の顔をやっと思い出した。 「お、お前の顔は、ニュースで見た事がある」 「記憶がいい男だね、リャン」 「お前はネイサンだな、お前ら、こいつは犯罪人なのだぞ」 リャンの言葉はあとが続かなかった。リャンの体は手下たちによってなぐられ、けられる。今までのリャンの圧政に対する報復なのだ。リャンに対する反発や怒りが集中されていた。しばらく後リャンの体は骨がくだけ、皮膚は破れている。 「リャン、静かに眠りたまえ」 ネイサンが言った。リャンは夢の中にいる気分だ。夢の中でリャンの姿は子供になっていた。故郷の花畑の中で遊んでいる。リャンは考える。一体、俺の一生は何だったのだ。その時、ネイサンのとどめがリャンの心臓を直撃し、リャンの意識を闇が包みこんだ。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.10
■宇宙から還りし王(山稜王改題)第9回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 中華人の「リャン」は自分自身が作りあげた、この山上宮殿が気にいっていた。ここちよい風が美女達があおぐ扇で送られてくる。この宮殿からのながめは最高で、部下達が丁寧に育てているドラガの畑を眺望できた。 ドラガの畑は、実りの季節を迎えている。それは彼リャンに莫大な利益を与えてくれるのだ。 リャンは、この南国、ゼルシアの闇の帝王であった。 彼が、この国にもたらす闇の金がなければ、この国ゼルシアの経済はなりたたないといわれた。幸い、彼の領土は地球自然保護地区にあり、地球連邦に関するカモフラージュにはうってつけなのだ。 リャンは中華共同体の貧しい農民の五男として生をうけ、若年の内は苦労が多かった。が上海の宇宙空港の苦力として務めてからは道が開けた。空港は一昔前の上海港の様に、闇の経済が支配していた。彼はそこで宇宙ドラッグシンジケートの下働きとして出発し、上の地位へと登りつめていった。 が、日本ヤクザと大韓民国暴力団との抗争事件にまきこまれ、上海から姿を隠さなければならなくなった。リャンはゼルシアに密入国した。幸いにも、この国のクライムシンジケートはリャンの舎弟で、同じ省出身のコンファがにぎっていた。コンファの勢力をバックに、彼はゼルシア内に宇宙塵麻薬「ドラガ」の栽培地を求めた。それが、この地ラシュモア山であった。山の名は、ゼルシアがアメリカ大国によって解放された時、当時のゼルシア大統領ゼーランジアが、アメリカ大国にごまをすり、名づけたのだ。現在ここは地球唯一の自然保護地域となっていた。 ドラガはこのラシュモアの気候に適合し、一大繁殖した。ドラガがリャンにおとす金は天文学的数字であった。コンファを裏切り葬り去った後、いつしかリャンはこう呼ばれていた。「山陵王」と。 山陵王となってからのリャンは身辺の防備に異常な程気をつかっていた。つまり、このラシュモア山は別の意味で金山だった。誰かがリャンの寝首をかけば金山はそいつの手にころがりこむのだ。 ラシュモア山の各所には、防衛ラインが張られていた。シアリー絶壁を登るのは至難のわざであり、さらに上からよく見える下の間道は手下ががっちりとおさえていた。 リャンのまわりには南国ゼルシアの美女達が集められていた。リャンの金力でゼルシア中から狩り集められた美女ばかりだった。彼女らは彼のまわりにはべり、身のまわりの世話をした。ゼルシアは、また美女の産地でもあったのだ。リャンの頭の中には中国の昔の英雄のイメージが思い浮んでいた。 彼はベッドに横たわり、わきのテーブルの上に、山と積まれた南国産の果物に手をのばし、それを食しようとした。 その時だった。ドラガ畑の真中に、一人の男が出現するのをリャンは見た。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.09
■宇宙から還りし王(山稜王改題)第8回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/声は続ける。 「他人の過去をとやかく言うではない」 アゴルフォスは上の方を向いて答えた。 「でも、山陵王、こやつは、」 「いいんだ、その人は、私から原稿をもらうためにこられた方なのだ」 声はケインヘの質問に変っていた。 「そうだね、ケイン君」 ケインはその声に圧倒され、答えている。 「そ、そうです。あなたが山陵王なのですか」 「でも、山陵王、こやつの正体は」アゴルフォスが横から口を入れようとした。 「やめろというのだ、フゴルフォス」 突然、空が曇り、稲妻が走った。大きな音がする。何度目かの稲光りが、ケインの目の前におちた。アゴルフォスの体が白熱する。 「ぐわっ」 アゴルフォスは前のめりに倒れる。体は黒こげになっている。がしばらくして顔をあげる。 「山陵王、な、何をなさるのですか」 「お前が、私の命令に従わないからだ」 「が、こやつは、山陵王の秘密をねらっております」 「だまれ」怒りの声は、アゴルフォスの体をふるえさせた。が山陵王の姿はまったく見えないのだ。 先刻よりも大きな光が、アゴルフォスの体を包んだ。 「わかった、アゴルフォス、私の命令は絶対なのだ」 アゴルフォスは身動きしない。ケインは今度こそアゴルフォスが死んだかとも思った。 「さて、ケイン」 声はケインにしゃべりかけてくる。 「お前は、私の原稿が必要なのだな」 「そ、そうです」 「ケイン、その船に乗れ」 ケインの前に、突如、川が出現している。その川は山の中央部にむかって流れていた。迷流しているのだ。その川の岸にある小船を声は示しているようだった。 「この船は一体」 「この「黄泉の川」を辿って、私の山上宮殿に辿りつくための船だよ。「夢想船」とも言う。舵はアゴルフォスがとる」 「では、この船であなたの元へ行けるわけですね」 「そういう事だ」 ケインは船にのった。ケインにとっては初めて体験する密林の川なのだ。が彼は今、ロケットの内部にいて、機械類に包まれているような幻想を感じた。 安心のせいだろうか、ケインの眼じりが重くなる。警戒心があれば、眠れるわけなどないのだ。がケインは船の中に横たわる。上からアゴルフォスが言った。 「安心しろ、ケイン、山陵王がああ言われる以上、山上宮殿までは安全だ。我輩はお前を攻撃はしない」 アゴルフォスはにやりと笑ったように感じた。それがケインの意識が最後に見たシーンだった。 「これから、精神攻撃が始まるのだよ、ケイン。君の過去に立ち戻ってね」アゴルフォスがほくそえみながら、ケインの寝姿を見ていた。アゴルフォスは黄泉の川へと船を出した。(続く)■宇宙から還りし王(山稜王改題)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2014.01.08
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