広い意味での医療保険は、文字通り通院や入院で掛かった医療費(診察・検査料、薬剤費)をカバーするものなのだろうが、世界に冠たる国民皆保険のわが国では、入院したら1日1万円、手術したら一時金20万円、などの保険を指す。入院するような病気になったら、せめて大部屋でなく個室に入りたい、とは誰もが思うところだろう。その場合でも、恐らくは1日2万円もあれば差額ベッド代を払えるはずだ。もっとも、医学ジャーナリスト仲間に話したら「聖路加病院は、1日30万だからなあ」という事例が出された。ま、それは例外と考えるべきだろう。
手術の一時金は、最近まで「健康保険の高額医療費補助で賄えるので、要らない」と考えていた。二兄が最近、心臓近くの動脈瘤手術をカテーテル技法で受け、その技法が先進的・実験的医療で保険の適用外になっており、40万円を別途支払う必要に迫られる実例にぶつかり、これについては少し考えが変わった。
最近の医療保険販売攻勢は、高齢者が増えたことを背景に「80歳まで入れます」などを前面に打ち出している。中には「告知不要」とうたっている商品もある。極論すれば、入院しそうだと分かってからでも入れるのだ。
しかし、一番の問題は、保険会社が「入院給付は多ければ多いほどいい」というムードを煽っていることだ、と思う。保険と貯蓄は違うのだ、という根本を押さえないと、おかしな方向に行く。入院すれば給付金が出るが、逆にいえば「入院しなければ出ない」のである。個室に入るだけのお金が出ればいいのだ。まさか、お金が欲しいから病気になる人はいないだろう。
そんな当たり前の判断を、わざとかどうかしらないが、混乱させているのが「病気にならなければ、ボーナスを出す」という保険だ。保険と貯蓄の垣根をあいまいにし、消費者を惑わせている。不安心理に乗じているとしか思えない。
それに、大部屋の歴史が長いわが国の病院では、個室を希望したからといって必ず希望が通るとは限らない。思い病気でない限り、大部屋に回される確率は高いのだ。
単純な理屈から言って、保険の利回りが貯蓄商品のそれを上回ることはありえない。入院で必要な額以上の保険を掛けるよりは、貯蓄に回した方が得策だ。新聞、雑誌のマネーライフに関する記事が、どうしてそれをきちんと説明しないのだろう。
医療保険の販売攻勢、PR攻勢を冷静に分析しよう。
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