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今回は牧場めぐりではないのですが、ばん馬たちと会える話題をご紹介します。まずは、コロナ禍でしばらくお休みしていたPR馬たちによる馬車の幼稚園、保育園への出張が、10月から復活。10月26日にはフクスケが富士保育所を訪れました。帯広南部の農業地帯にある保育所で、馬を運ぶ馬運車と、馬車を運ぶトラック2台で訪れます。競馬場近くだと馬車のまま移動することがあって、偶然街中で見ると感動します。1歳半から5歳までの18人が、馬車に乗り保育所の周りを40分ほど一周しました。残念ながら霧に包まれましたが幻想的。途中、犬が吠えていたのは私たち報道に向かってと感じました…手を振ってくれました! テレビカメラが過ぎたら何人か手を引っ込めちゃったかな(笑)戻ってきました!それからお礼のにんじんプレゼント。背中にも乗せてもらいました。黒っぽい鹿毛のフクスケがおとなしく子どもたちの相手をしている姿を見ていると、ふとリッキーに見えてきて、なんだか泣けてきました。フクスケも先輩に負けじと頑張っています。フクスケが帰るときは、馬運車が見えなくなるまで「バイバーイ!!」と手を振っていました。子どもたちに「いつでも来ていいんだからね!」「自由に暮らしてね」(?)とお言葉をいただいておりました。今年度、10月19日からスタートしたという馬車訪問。コロナ禍でも、「来ないんですか」というリクエストは競馬場にたくさん来ていたそうです。今年いよいよ復活、と案内を送ったところ希望が殺到。抽選で選ばれた7校を順番に訪れました。幼稚園によって反応はばらばらだったそうで、富士は「かわいいー」と喜ぶ子が多め。ある町中の保育所は怖がる子が多かったそうです。札幌にミルキーが行った時、怖がる子が多かったので慣れかなぁ…と思ったのですが、そうでもないようで。世代の特徴なんですね。道路を馬車が走るということは、ドライバーもその景色に出会うということです。横をゆっくり通り過ぎる、という経験をした方も増えたらな…と思います。ここ4年ほど、帯広の子どもたちは馬と触れあう機会が減っていました。これからは、ばん馬がいるマチ帯広で子ども時代を過ごしたことを、記憶に残してほしいと思います。馬車といえばリッキー。4市時代から競走馬として走りながら競馬場で馬車を引き(その後引退)、イベントに参加するなど、ばんえい競馬が大変な時期を支えてきました。20代の地元出身者から「子どものころにリッキー馬車に乗りましたよ」という話を聞くとうれしかったものです。それからミルキー、キングとPR馬たちがばん馬を身近にしてくれました。ムサシコマも、最初のころは「リッキー」と声をかけられていたそうです。ちなみにニンジンをあげるとき、怖いからってニンジンを持っている手を引っ込めたり、ニンジンを落とすと、そのニンジンを食べようとして顔が近づき、お互いびっくり、となります。持っていたら勝手に食べるので、ニンジンを馬がくわえたら手を離すようにすると良いでしょう。近くにあるニンジンを食べられなかったり、その時に怖がったりしていると馬もストレスになっちゃいますので頑張ってあげてください(笑)さて、12月2日、おびひろ動物園の冬季開園に合わせて「馬ふれあい舎」のオープニングセレモニーが開かれました。ふれあい舎では、競走馬を引退したムホウマツゴロウとトラシゲに会うことができます。冬期開園は2月25日までの土日祝日。来年ゴールデンウイークあたりから夏期開園がスタートすると思われます。冬季営業の今は土日祝日の11時~14時と短いのでご注意!普段は放牧されていますが、1日10~20分ほどのふれあいタイムがあり、顔をなでたりできます。こちらの時間はブログに掲載されています。https://ameblo.jp/obihirozooシマウマは短い時間しか展示されていませんのでチェックしてねー。ほかの動物たちもキュートです。年間パスポートもあります。ふれあい舎は動物園の東側、道路沿いにあるので、角度に寄っては道から馬を見ることもできますよ。現在帯広市の街中で「馬車BAR」の馬車を引くムサシコマは、冬の間特別プログラムとして、ますやパンの「麦音」で馬そりを引くイベントに参加しています。1月13日~2月25日の土日祝日に行われる「麦音冬遊びパーク」です。https://fuyuasobipark.com/ほかにもカーリング体験やショップ出店もありますよ~昨年の写真10月、ムサシコマは「とかち観光大使」に選ばれました!十勝総合振興局と十勝観光連盟が選定するもので、人間以外初だとか。関係者たちの努力が広がって、どんどん帯広で馬とのふれあいを楽しめる場所が増えていることをうれしく思います。取材/小久保友香
2023年12月27日
9月1、2日に音更町で、4年に1度の「第18回北海道総合畜産共進会」が開かれ全道から名馬が集まりました。遅くなりましたがその模様をご紹介いたします。以前の牧場便りで紹介した十勝地区の共進会は毎年開かれますが、全道となると4年に1度。2018年は胆振東部地震の影響で2019年に延期となり、2022年もコロナや馬パラチフスの影響で今年の開催となりました。牛部門と馬部門があり、牛は乳牛を安平町で、和牛を十勝で行います。開会式も和牛と馬が一緒に行われました。和牛は道内初の「全国和牛能力共進会」が2027年に十勝で開かれることが決まって大盛り上がりです。そんな中でも「馬は開拓の担い手であった」というあいさつにうれしくなります。開会式の様子馬と牛の兼業農家さんも多いこともあり、ばん馬を見ていると自然と牛にも興味がわいてきます。北海道の家畜全体の発展を願う気持ちになります。こちらがパンフレット。審査基準が掲載されています。馬部門は十勝のほか釧路、網走など各地域の共進会上位馬などが集まりました。全道ならではの特徴は、重種馬だけではなく北海道和種馬(どさんこ)とポニーが出ることです。重種馬は27頭(5頭欠場)、どさんこは8頭(1頭欠場)、ポニーは3頭の計37頭が出品されました。十勝同様、1日目が測尺と1頭ずつの展示。2日目は比較展示です。共進会の流れは十勝の様子をご覧ください。ばんば牧場便り【 Vol.054 】第52回十勝総合畜産共進会 1日目ばんば牧場便り【 Vol.055 】第52回十勝総合畜産共進会 2日目各部門で最高成績の馬を紹介します。北海道和種馬606 白流仙の四(函館市・長谷川繁)どさんこは側対歩という歩様も見ます。白流仙の四(はくりゅうせんのよん)は、馬房に帰るときもばっちり側対歩で素晴らしかった!顔つきがどさんこ。歩様もしっかりしていると満点での1席でした。北海道和種馬とポニーの審査委員である近藤誠司氏(ドサンコの著書も多数!)の講評では「存在こそが開拓の歴史」。だんづけなど、どさんこの馬文化が盛んな函館からさすがの受賞です。ポニー703 マーブルチョコ(釧路管内白糠町・寺沢蒼馬)ポニーです。大の大人がポニーを囲んでたまに笑顔になって審査している姿はとても良いです(笑)。マーブルチョコはまだ若いがとてもバランスがいいとの評価でした。ここまで世話してきたのは小学3年の寺沢蒼馬さん。写真左端の蒼馬くんは2歳のころからポニーばん馬にも出場しています。ちなみにばん馬では父親のエックスとコンビを組んでいます。重種馬を紹介します。1歳牡牝、2歳牝、3歳以上牝こなしと子付きの5部門でした。1歳雌101沙羅2021(網走市・佐藤牧場)1歳雄201琴桜2021(網走市・佐藤牧場)1歳の1等1席は、雌雄ともに前回の全道共進会で最高位を出した網走の佐藤牧場さんでした。佐藤牧場さんの馬はぴかぴかですごい…!!1月生まれで馬格は目立ちますが、その分長く飼養しているということになり、苦労もその分多くなります。ここに向けての仕上げは見事です。琴桜2021については牡馬らしく欠点がないとのこと! 講評を行った重種馬の審査委員、日本馬事協会の山下大輔氏は「全道のトップだった馬が冠獲ってくれたらうれしいなと思います」と述べていました。この2頭、父はトレジャーハンター!素晴らしい馬を出しているようです。佐藤牧場さんは和牛部門にも出品しているので行ったり来たりしていて大忙しです。和牛の方が馬をのぞきに来ることもあり、「あれっ?こっちも出しているの?」と言われていました。休み時間、佐藤さんと、十勝最高位だった鈴木さんが熱く馬について話し合っている姿はとても良かったです……お互い考えは違うところもあるけど認め合っているよう。馬の話をしあうのがすごく楽しいんだろうなぁと思いました。2歳雌302タカラアメイジング(本別町・新津良明)十勝でも1等だったタカラアメイジングです。前駆、中駆、後駆への移行、全体のバランスが良いとの評価でした。3歳以上雌・子付505フレイムサクラ(釧路市・三宮久蔵)釧路地区の最高位馬、フレイムサクラがここでも1等1席となりました。1等2席は十勝の最高位、優姫です。前回の最高位、ウィナーサラは2等。でも4年間これだけの美しさを保っているのは素晴らしいです。フレイムサクラは馬体に加え歩様検査がよかったということでした。また、仔馬もいい歩様だったとのことです。この部門は各地区でいい馬がかなりそろっていたそうです。今回も順列は付けたけど皆素晴らしい馬とのことです。みんなピカピカで、元モデルも多数いる美しいママさん(子も優秀)が集まる会を覗いているようでした……3歳以上雌・子なし403ホワイトマンカツ(帯広市・上見信一)全道では今回からできた部門です。2等は2021年に引退したナカゼンレディーも選ばれていました。1等は純粋ペルシュロン種、ホワイトマンカツ(5歳)です。「ペルシュロン種の美点とされる、前駆の肩の厚み、胸の深さ、中駆の背が長く肋張りが充実。斜尻も広く長く充実している。弱点といわれるところも改良している」との講評でした。そして重種5頭の中でも最高位。それから品種ごと3頭が並んで審査され、馬の部の最高位となりました!出品者の帯広市の上見信一さんは「最高だな。これで勝負だと考えていた」そう。コーネルトップをはじめ、50年以上馬を生産してきた上見さん、8年ほど前から純粋ペルシュロン種を多く生産し始めました。ペルシュロンの魅力は「ごついところ」だそう。帯広畜大の研究に協力している縁で、獣医師や学生が多くサポートしていました。このような関係も素敵です。山下さんによると各地の共進会で好成績でも、その後体調を崩して今回出られなかった馬もいたそう。また、馬パラチフスが出た影響で出品を控えた地域もありました。馬については、全体的に「肉がのっている」というコメントが多かったです。ピカピカにするのにどうしてもふっくらさせてしまいますよね…。何度も、肢蹄管理の大切さについて述べられていました。取材/小久保友香・小久保巌義
2023年12月20日
コロナ禍で中止していた草ばん馬大会も、今年は例年通りに復活。私たち夫婦も各地に出かけて観戦を楽しませてもらっています。ばん馬で出会ってから長年仲良くさせてもらっているのが、奈井江町の川端悟さん(74)です。川端さんの牧場には、種牡馬のアーティーハヤテがいます。空知管内ということで繁殖牝馬も少ない中、グレイスダイマオーなどの子どもたちが頑張っています。繁殖牝馬は2018年のヒロインズカップにも出走したファイトガール。子馬は大谷翔平選手からつけた「翔」という名前で、元気いっぱい。アーティハヤテは元気にファイトガールに声がけ中(笑)奈井江は稲作が中心。昔競馬場のあった岩見沢をはじめとする空知管内は、米どころとして有名です。稲穂の中に馬がたたずむ姿が印象的でした。草ばん馬用のポニーもいますよ。キンセイはばん馬で活躍中です。川端さんは農協職員だったころから馬を楽しみ、45年。「最大で40頭は馬がいたかな」というと奥様が「えっ、そんなにいた?」お孫さんが「ばーちゃんに内緒って言ってなかった?」「それは…」実際はわかりませんが(笑)30年以上前、草ばん馬にはまるきっかけとなった馬がトウシヨウフジ。能検で合格に0.1秒差届かず(当時は頭数でしたがその間に数頭がひしめきます)、あきらめて草ばん馬に使ってからはまったそうです。川端さんと草ばん馬に出場するアーティーハヤテそれからは、エイシンオー、スーパードラゴン、ギンガオーザン、エナジーユウシオなどが、種馬や草ばん馬用のパートナーとして過ごしてきました。冬には近所の幼稚園や祭りで馬そり体験も。草ばん馬に出るギンガオーザン思い出の馬を聞くと、クインエンジュ(黒ユリ賞2着、イレネー記念3着)。その後も8歳まで息の長い活躍を続け、エナジークンシが生まれました。エナジークンシは通算成績84戦26勝と息の長い活躍。(病気で亡くなりました)が、そして、何よりも有名になった馬ゴールデンバージです。一度は競走馬を引退しましたが、川端さんが購入し13歳で復帰。その後活躍を続け「中高年の星」として話題を集めました。2011年にばんえい最高齢となる14歳での勝利をあげ、ファンレターが相次ぎました。隣町の砂川市にあるソメスサドルの馬具をつけて、走っていましたね。昔は川端さんのように、種馬を持ち、草ばん馬に使う、昔ながらの「馬と過ごす生活」を続けていた人が、多かったように思います。取材/小久保友香・小久保巌義
2023年10月12日
7月9日、紋別市渚滑のポニーばん馬に行く途中、いくつかの牧場に寄ってきたので紹介します。昨年馬パラチフスという伝染病が十勝管内で広がったため、念のためにとしばらくはあちこちの牧場に行くことを控えていましたが、だいぶ落ち着いてきたこともあり、消毒液を持参して対処しつつ見学させていただきました。まずは、釧路市阿寒の安藤牧場です。阿寒湖のある旧阿寒町は平成の大合併で釧路市になりました。阿寒湖の近くというよりは、道東自動車道の阿寒インターチェンジあたりを中心に、馬を飼っている人が多い地域です。(とはいえ、旧阿寒町はめちゃくちゃ広いですが…)安藤牧場は弟子屈町へ行く途中の裏道にあり、タイミングが良ければなだらかな丘に馬が放牧されている姿を見ることができます。2代目の安藤浩太朗さんが案内してくれました。乳牛とばん馬がいます。110町の広さがあるそうで、想像がつかないですね。種牡馬のオンリーワンです。鼻筋の形が気に入っている馬で、久しぶりの再会がうれしかったです。暑かったのでずっと中にいましたが…ホウショウやハヤブサリュウなどコンスタントに活躍馬を出している、ナリタボブサップの弟です。ゴールドチップやゲキアツなど、馬名もいいですね!ちょうど獣医師さんが来ていましたお母さんが獣医師さんに診てもらっている間の仔馬フリーダムそれから、弟子屈町の川湯パーク牧場です。今年から、トモエハイセイコーが種牡馬入りしました。けがをしていましたが、だいぶ良くなって種付けもうまくいったそうです。良血トモエパワーの血をつなぐ、ペルシュロン系統の大事な血統です。ユウトウセイも元気でした!美しいたてがみは健在。繁殖牝馬たちのうち何頭かは、乳母として日高を中心とする馬産地に出かけています。観光牧場でもある川湯パーク牧場では、8月からは乗馬体験も再開しました。場内の体験コースのほか、摩周湖、草原トレッキング(要予約)もあります。次は、小清水町の林牧場です。昨年種牡馬入りしたカネゾウの子が生まれていました。芦毛率が高くてうれしい!!元気すぎるほど元気というカネゾウです。女の子大好きで暴れています(笑)。もう1頭、ジェイハーレイも種牡馬入り。向かいにいるカネゾウがライバル心をむきだしにしているそうです(笑)。しかしわれ関せずのハーレイ。裏の放牧地。美しい風景です。えさを持って呼んでくれたのですが、もう囲まれて大変(笑)なぜか船があるのがさすが海の町(?)純ブルトンの種牡馬、脩隼(しゅうしゅん)もいます。とってもおとなしいそうで、親子と同じちゃつにいました。左から母、父、仔の珍しい1枚。仔馬とグルーミングの姿がほほえましい……優しいパパ……林牧場では、近くの小清水原生花園への放牧も始まっていました。道産子と、道産子とばん馬の掛け合わせなどの2グループです。水たまりで水浴びをしたあと、一斉にに大移動。羅臼岳が見える湯沸湖のほとりで暮らす馬と花々との景色に、しばし癒されていました。3件ともファンの方であれば見学は可能とのことです。取材/小久保友香・小久保巌義
2023年08月10日
7月13、14日、音更町の十勝農協連家畜共進会場で「第52回十勝総合畜産共進会」が開かれました。その2日目です。1日目の様子はこちら2日目の午前、肉用牛と合同で開会式が行われました。「昨日今日の努力じゃない。親の代、その前から家族ぐるみで作り上げてきた」との組合長の挨拶に感慨深いものがありました。2027年の全国和牛能力共進会は、十勝で行われます。そのことを期待する声が多かったです。その後、すぐ比較審査に入ります。部門ごとに馬を並べます。過去に何度か紹介していますが、あらためて比較審査の流れについて説明します。部門ごとに馬が、線に合わせて並びます。線は3本あって、最初は一番後ろの線に並び、その場所でしばらく審査。名前を呼ばれると前の線まで出ます。この馬たちは1等か2等。残った馬は3等が決定。その後あらためて審査し、また呼ばれて前に出た馬が1等となります。最後に各部門の1等が並び、最高位を決めて終了です。どこを見ているか関係者の方に聞いたところ「歩様。体が崩れているとどこかが悪いはず」とのこと。「爪なども見るが、全体のバランスも大事。遠くから見た雰囲気」だそうです。今年は家畜改良センター十勝牧場の田中翔子馬係長が審査しました。今回も共進会の馬の評価方法の参考になれば、と講評の一部を掲載します。あくまでも共進会の馬の見方であり、競走馬として走る走らないの見方ではありません。馬名のあとは出品者の名前です。第32部 2歳雌1等3201 タカラアメイジング 本別町・新津良明さんメスらしい品位がある。小柄だが背、肩、腰にかけての移行の美しさがあり肩も充実してバランスがいい。素晴らしい馬。尻高ですが2歳なのでこれからもっと充実するだろう。第33部 3歳以上子なし1等3303 ホワイトマンカツ(純ペルシュロン) 帯広市・上見信一さん横から見ると胸の深さが素晴らしい。肩も充実している。ペルシュロン種は斜尻が多いといわれており、尾付きも高く後躯もいいものを持っている。馬格にあった素晴らしい骨量で(脚の管囲で測ります)、品位の点でも首差しやメスらしい優しい表情で素晴らしい。第34部 3歳以上子付き1等3405 優姫 上士幌町・鈴木義尚さん個体審査ではしっかり立っていたが今日は少し落ち着きがなかった。それでも胸の深みや前方、後方から見た幅が素晴らしい。首差しの良さやメスらしい品位もある。(ちょうどこのころ風が出てきたこともあります)第31部 1歳雌1等3101 桜花 本別町・新津良明さん横から見た中躯の伸びの良さが目につく。後躯の長さ、肩付きの良さもありバランスがいい。尻高なので発育に期待する。2等1席3105 白雄(純ペルシュロン) 帯広市・上見信一さん深みある胸、肋ばりの良さ、以降の良さがある。爪もよく管理されている。(純ペルでいい馬だと思ったのでご紹介します。ペルシュロンらしい胴長です)第30部 1歳雄1等3001 1歳雄 和力 帯広市・川副真姫さん首差しの移行の美しさが目を引く。尻高、トモ高で発育が期待される馬。雄大。5部門の1等がそろいました。その後、これら5頭(+仔馬)がまた同じように並び、最高位を決めます。この中から最高位に選ばれたのは……!!3歳以上子付きの優姫でした!胸の深み、前から見た肋ばりの良さ、後躯の充実ぶりが繁殖牝馬として優れているという講評でした。賞状を渡され記念撮影。上士幌の鈴木さん、2014年に続く2度目の受賞です。鈴木さんは、あちこち馬を見に行った上で自分の馬を評価しているそう。また、いい牧草を選んで食べさせているそうです。仔馬の父はコウシュハウンカイ。4頭出ていた中で一番遅い生まれですが、発育がほかの馬に劣らないということも評価されました。審査を務めた田中さんは「馬産地ならではの、優しい表情で、ゆったりとしたラインのきれいな馬が多かった」と話します。お互いに馬を見合うことで飼養管理の向上につながれば、と共進会の意義を話していました。講評の中では、爪が欠け気味の馬もいたので、当歳、1歳からの護蹄管理に努めてほしいとの話もありました。今年は9月1、2日に4年に1度の全道共進会もあります。昨年の予定でしたが、コロナで1年延期となりました。十勝をはじめ、釧路、別海、網走などから選りすぐりの馬たちが来場する予定です。また、全道では道産子と小格馬の審査もあります。馬に興味があり、迷惑をかけない方なら誰でも見学はできますので、興味のある方は訪れてみてはいかがでしょうか。ちなみに9月3日は本別町でポニーばん馬も行われます。取材/小久保友香・小久保巌義
2023年08月02日
7月13、14日、音更町の十勝農協連家畜共進会場で「第52回十勝総合畜産共進会」が開かれました。肉用牛と種馬の部が開かれ、十勝から18頭(2頭欠場)が出品されました。2回に分けて紹介します。出たのは牝馬が多く種牡馬の意味の種馬はいませんが、共進会では「種馬の部」と呼びます。各町で共進会があり、十勝に代表が来るという流れなのですが、今年は馬パラチフスが完全に沈静化してはいないなどの理由で、行われたのは浦幌のみ。十勝に直接出した馬がほとんどでしたが、町によっては出すことをやめたところもありました。5部門に分け、2歳雌、3歳以上子なし、3歳以上子付き、1歳雌、1歳雄の順で展示が行われました。ぴかぴかの素晴らしい馬たちが登場していました。競馬場と同じようにおしゃれをしている馬もいましたよ。(2日目の展示)1日目は午前に体高や胸囲、管囲を測る測尺、その後開会宣言があって「個体審査」。1頭ずつ馬を立たせ、三角の線の上を歩かせます。今年は家畜改良センター十勝牧場の田中翔子馬係長が審査します。測尺の様子です。個体審査。三角ベースのような線が引かれています。1日目の後、今年は「重種馬の馴致・調教研修会」が行われました。講師はヒロユキモチダホースマンシップ(HMH)の代表持田裕之さんです。ナチュラルホースマンシップの第一人者として各地から講習会に引っ張りだこです。HMHは競馬場でもホースショーを見せてくれますね。乗馬施設は帯広市にあり、土日祝にはホースショーも開催しています。十勝ってばんえい競馬がある以外にも馬のすごい人がいる場所なんですよね…。農協連の方によると、ここ最近、お産の事故を耳にするのが気になっていたそう。繁殖牝馬は昔のように農作業をすることはほとんどなく、だからといって運動はしないと聞いている。「運動している」といっても放牧しているだけだったりする、と。馬の運動として有名なのは、家畜改良センター十勝牧場の「馬追い」。その成果か、十勝牧場で難産だったことは、あれだけ馬がいるのに数える程度だそう。ということもあり、運動の方法や、共進会における馬の立たせ方などがテーマでした。共進会用語で馬を持ってくることを「引き付け」といいます(全体的に牛と同じ用語を使うことが多いです)。「引き付けっていうんだ…」と言っていた持田さん、研修でも自然と「引き付けの時も~」と周りに合わせて説明されていました。腰が低く、さすがだなと思いました。まずは馬の立たせ方です。モデルはホースショーでもおなじみのリーンとマディソンです。サラブレッドを知っていれば、正姿勢で、四肢は重ならず、撮影者側の脚が外側にある、顔は心持ちこちらを向き…などの一般的な撮り方をご存じかと思いますが、ばん馬の場合はなかなかそうもいかず、私らも撮影する時に苦労します。ただ、ばん馬は真横から見て四肢がずれることって難しいようにも思います。昔の方は斜めから撮っていた方もいたそう。たまに斜めから撮った写真を見ることもあります。立たせる練習は、サラブレッドは当歳から行っています。それに比べると、ばん馬は夏には放牧に出すこともありますし、当歳を同じように立たせるのは難しいかもしれません。でも「同様に、若いころから行っていたらどうなるか、面白い」と。撮影する立場からの勝手な思いですが、練習しておいてもらえるとうれしいな…それからは特設の馬場でグラウンドワークです。「馬にとってどこが快適かを提示するのが人の仕事」といい、プレッシャーを与えつつ、丁寧に馬に教えていきます。馬が馬であるために、丁寧に教える人がいるから私たちは馬に接することができます。難しく、尊い作業。馬にかかわる人たちへのリスペクトを大事にしたい、と思います。その後はばん馬も登場。口をくちゃちくゃする考える仕草をしている馬を見ると、ばん馬も馬だなぁと実感します(当たり前ですが)。ばん馬は口向きが固いとよく言われますが、「道産子と似たような感じと思う」とおっしゃられていました。品種は違うが同じ馬、と接する持田さんの姿を見ていると、ばん馬にサラブレッド、乗馬、ポニー……いろいろな馬たちのつながりがもっと深まれば、と思います。おまけ共進会場の厩舎です。農協ごとに分かれ、空いている馬房がそのまま人の休憩所になっています。扇風機は持参。2日目に続きます。取材/小久保友香・小久保巌義
2023年07月26日
3月20日のばんえい記念の日の午前中、帯広市内のホテルで2022年度の優良重種馬表彰式典が2件、行われました。例年ばんえい記念の日に、市内のホテルで表彰があります。式典は4年ぶり。会食はありませんが、賞状授与が行われ、生産者がたたえられました。「優良重種馬生産者表彰」は、生産意欲の向上や重種馬資源の確保を目的に1998年度から日本馬事協会が実施しています。イレネー記念と黒ユリ賞に出走した馬の生産者を表彰しています。一時期はばんえい記念とヒロインズカップということもありましたが、ここ数年は3歳レースとなっています。一昨年まで「優良農用馬表彰」でしたが、昨年から名称が変わりました。日本馬事協会内藤邦男会長の式辞に続き、農水省、帯広市農政部、地方競馬全国協会の来賓の方々から祝辞が述べられました。内藤邦男会長それから1人ずつ表彰です。時期的なこともあり、お産などで来られない方もかなりいらっしゃいました。農協の担当者やご家族が代わりに来場されていました。ミュウの生産者は岩手県滝沢市の斉藤さん。馬事協会で確認していただいたところ、平成25年度から道外の受賞者はいないそう。熊本産馬がJG1を勝ったように、道外産馬が大きなレースを勝つ日もそう遠くないのかもしれません。■優良重種馬生産者賞 受賞者第54回 イレネー記念浅井嘉延(中川郡幕別町)アシュラダイマオー本寺政則(中川郡本別町)マルホンリョウユウ大野信一(足寄郡足寄町)キョウエイプラス佐藤文明(川上郡標茶町)タカラキングダム中村光雄(茅部郡森町)ホクセイタイヨウ岩渕寿和(常呂郡訓子府町)コーワホープ小森唯永(帯広市)ジェイヒーロー岩本国造(旭川市)ジェイライフ守屋博(川上郡弟子屈町)ハゴロモファルコンアシュラダイマオーアシュラダイマオーの生産者浅井様(代理)受賞者・関係者の皆様第48回 黒ユリ賞(株)帯広有機(帯広市)スーパーチヨコ中村弥市(中川郡幕別町)ベニサクラ斉藤晴司(岩手県滝沢市)ミュウ奥泉愛子(足寄郡足寄町)ルイズ宝田浩二(中川郡豊頃町)タカラヴェルベーヌ高野勝紀(檜山郡厚沢部町)ヤマカツレイナ(株)金福畜産(河東郡上士幌町)ココロホマレ山根福司(釧路市)リバティクイーン竹内正昭(空知郡南幌町)ニジイロアオゾラ加藤芳枝(足寄郡足寄町)プレシャスキュンスーパーチヨコスーパーチヨコの生産者(株)帯広有機代表佐々木啓文様受賞者・関係者の皆様順序は逆になるのですが、この前には「優良重種馬多産馬部門」の表彰もありました。こちらは、多くの重種馬を生産し、重種馬資源の確保に功績のあった馬の表彰です。わかりやすく言うと、たくさん子馬を産んだお母さん馬の表彰で、なんと15頭以上!すごいですよね。そのことで、飼養管理技術の研鑽と優良繁殖雌馬の長期利用を推奨し、他の生産者の模範となってこれからも生産に励んでもらいたい、と2018年度から実施しています。コロナ前は研修会で表彰をしていたそうですが、今回は一緒に表彰することとになりました。以前は島根県隠岐諸島の西ノ島の馬もいたそうです。宝竜(ほうりゅう)は、25年間で15頭が血統登録を受けています。デビューはそれよりは少ないのですが、最近ではリュウノカミが活躍しています。ファイヤーガールは16年間で15頭を生産!全頭が血統登録を受けています。リバティクイーンの母親ですから、黒ユリ賞にも出ているのでダブル受賞といってもよさそうです。今年もシマノシンザンの子を出産予定だそうてすよ。お産が軽いそうです。■優良重種馬多産馬部門 受賞者宝竜 厚岸郡浜中町 相馬俊則ファイヤーガール 釧路市 山根富造今後さらに多くの場で重種馬の生産が注目され、ばんえい競馬が発展していくことを願ってやみません。取材/小久保友香・小久保巌義
2023年04月27日
2022年に引退し、種牡馬となったカンシャノココロ。繋用先が、函館どさんこファームと聞いて驚きました。どさんことかけるの…?その後、代表の池田賢治さんに「輓馬の繁殖も始めた」と聞いて、ぜひ話を聞きたいと函館を訪れました。「どさんこ」とは、馬の世界では一般的に、在来馬である「北海道和種馬」のことをいいます。冬の森でも力強く生きる姿から、寒さに耐え抜いてきた北海道人にたとえられ、北海道生まれの人のことを「どさんこ」といいます。それだけにどさんこ、という言葉が一般的になりすぎて、ばんえい競馬の馬をどさんこ、と言われることも多々あります。この記事を読んでいる方はわかっていると思いますが念のため、ばんえい競馬に出ている馬はどさんこではありません!!と、前置きが長くなりましたが函館どさんこファームは、観光乗馬のほか流鏑馬やだんづけ、騎馬参拝など、どさんこ馬文化の発展に寄与している有名な乗馬施設です。クラブハウスには馬グッズもありました。やぶさめを引退した馬のレイも。愛情たっぷり。まずはばん馬たちに会いに行きましょう。奥のちゃつ(小さな放牧地)付き馬房にカンシャノココロがいました。こっちを見てると思ったら牝馬がん見でした(笑)。春も近づき、そろそろお仕事モードなのでしょうか。「人に悪いことはしない、頭のいい馬」だそうです。2歳のヤングチャンピオンシップから11歳の帯広記念まで、長く重賞戦線を賑わせてくれました。馬名からもファンが多い馬でしたね。日本馬事協会の種牡馬として登録され、函館にやってきました。池田さんは「カンシャ」と呼び、初産駒の誕生を心待ちにしていました。種付けも上手で、牧場にいる3頭のほか、ほかにも道南の数頭につけたそう。妹のナガゼンガキタも活躍しており、血統的に楽しみですね。乗馬に通われている方にもかわいがられているようです。カンシャノココロの馬房と入口の間には、ばん馬の1歳とデビューを控えた2歳がいました。乗馬に来た人たちはこの子たちを見て「大きいー!」。奥にいるカンシャもっと大きいよ~(笑)繁殖牝馬は少し離れたところで過ごしています。黒ユリ賞に出走したキタノヒバリもいますさて、なぜ「どさんこファーム」にばん馬が…?池田さんは父、茂さんが経営するどさんこファームで育ち、子どものころから馬と親しみつつ柔道の選手としても活躍しました。流鏑馬で日本一になった経験もありますし、なんでもできますね…そのため勝負の世界への思いもあり、母方の実家にばん馬がいたことから、ばんえい競馬に参戦。3年が経ちました。「自分でいうのもなんだけど、ツイていると思う」。初年度に申し込んだカンシャノココロが当たるなど、勝負事に大事な運も持ち合わせています。道南はばん馬の馬主さんも多く、環境にも恵まれていると思います。今後の活躍を楽しみにしたいです。さて、函館どさんこファームはドサンコ20頭、乗用馬20頭のほか繁殖牝馬など計70頭ほどがいる牧場です。2018年には近くから牧場を移転、拡充しました。トレッキングはなかなかワイルド。観光都市函館らしく観光客が多いそうで、取材日も福岡から乗りに来ていた人がいました。函館競馬と合わせて訪れるのも良さそうですね。今は雪に覆われていますが、やぶさめの200mコースですクラブハウスには、池田茂会長が作った馬具が並んでいました。流鏑馬と、馬に荷物を積んで運ぶ「だんづけ」に使う道具です。これらの伝統競技は、ばんえいと同じように古い馬具を修理しながら使うのがほとんど。継承者も少なく、イベントで見ても古い馬具が多いです。以前どさんこのイベントを見に静内へ行ったとき、比較的きれいな馬具があったので聞いてみたところ「函館の池田さんが作った」。つ、作った!?池田さんは「馬具を残したい」と研究を重ね、鞍やその周りの飾りを制作しています。丁寧でびっくり…なぜここまで作る…なぜ刺繍までする…器用すぎる…「作り方教本」などが残っているわけではありません。今残されているものを参考に作っているのです。それでも木鞍とあぶみは難しいそう。木鞍は、木が鞍の形に曲がっているのを探すところから始めるそうです。このように歴史を紡ぐ人たちを尊敬します。代々続いてきた馬の歴史を後世に伝える必要性を感じます。さまざまな方面から馬文化を育てている素晴らしい場所でした。その中にばんえい競馬の歴史が息づくことをうれしく思います。取材/小久保友香・小久保巌義
2023年03月29日
競馬場には春からのデビューに向け、トレーニングをする2歳馬が増えてきました。生産者や馬主の中には、自分で馬を調教する人たちもいます。その数は減っているとはいえ、ばんえいらしい部分だと思います。昔から盛んな調教場所が、道南の日本海側に位置する江差町の「五厘沢」地区です。数年前、海岸沿いでそりを引く馬の写真か絵を見てから、ずっと憧れていた景色でした。どこの海で、このようなシーンを見られるのか…。「五厘沢だよ」と教えてもらってから数年。ようやく訪れることができました。以前、ライデンティダなどが調教をつけていた砂浜は八雲町熊石。その少し南側に位置します。五厘沢で調教を始めたのは、40年くらい前ではないか、とのこと。馬運車で30分以上かけ、函館や北斗などからも20数頭が集まっていたこともあるそうです。近隣の馬主さんたち3人が、1月から3月下旬まで毎日(!)2歳馬に調教を付けているとのことで、お邪魔しました。自宅から馬運車に馬を乗せ、10分近くかけて朝早くから砂浜に向かいます。この日は私たちが行くということで気を遣って7時半にしてくれましたが、いつもは6時スタートだそう。今日調教をつける馬主の一人、厚沢部町の高野勝紀さん。一昨年のヤングチャンピオンシップを勝ったヤマカツエースも同じように自身で調教してきました。今日のパートナーはヤマカツレイナの全妹の2歳で、期待がかかります。馬は奥様や子どもたちなど家族皆に愛され、毎日ともに過ごしています。「ペットみたい」と高野さん。駐車場で馬を降ろし、常設のゲートに見立てた棒から厚沢部川の河口まで、約1.5キロを1往復します。馬運車を停める場所は広いことから、盛んであったことが想像つきます。ずらっと馬運車が並ぶ姿を思わず想像。軽めのそりを引いて歩いていきます。自然とできた砂山を登り降り。これは強くなるわ…と力強さに見入ります。高野さんと一緒に運動をしているのは、ばんえいオークス5着のヤマサンブラックの初仔(父フジダイビクトリー)です。牝馬2頭、パワフルに鍛えています。乙部町の澤井節夫さんはタイヨウ、ブラックサファイアの弟(父アサヒリュウセイ)を手掛けています。背が高く、馬運車の頭に届きそう。スーパーチヨコやタカラキングダムなど、多くの活躍馬を手がけた名人です。チヨコは親分になりたがり、とんで歩いていたそうです。あっという間に遠くへ行ってしまいました。雪も降ってきて見えなくなりました…河口手前で一休みしてから戻ってきます。それにしても寒かった!!日本海の荒波から吹き付ける風が強く、そんな向かい風に人馬は向かっていきます。撮る方も大変ではありましたが、それ以上の迫力。荒波をバックに、夢へ向かって黙々と歩く若馬の姿にただ、圧倒されていました。砂浜を歩いてみると、かなり深さがあります。「足首を慣らすのにいい」そうで、歩き方に慣れてくると、砂の歩き方が上手になるとそう。競馬場の調教馬場は固いので、デビュー前は気づかなくても、本走路でいざレースをしてみると本領発揮するのではないか、とも。それもおもしろいですね。生産頭数では十勝、釧路が圧倒的な中、キングフェスタやヤマノコーネルも含め道南の馬たちの活躍がめざましいです。強さについて「血統を選ぶようになったからかな」と話していました。活気があると繁殖馬も増えていくように思います。戻ったころに青空が出てきました。背景には乙部町の観光名所、断崖絶壁の滝瀬海岸がそびえます。その奥には、渡島山地が見えています。山の名前はわからないのですが、中央の高い山はスルカイ岳かな? と、この時お世話になった、水上さん(ライデンティダの調教を付けていた方です)に、あちこちに聞いて調べていただきました…ありがとうございます。ニシンで栄えた歴史ある地域で、この奥には防風林のクロマツ林がそびえています。道南ならではの林です。話は前後しますが、この後上ノ国町にいる、今日調教をつけられていた2歳の母イレマルビリーヴ(栗毛)に会ってきました。子どもたちの活躍、素晴らしい。娘のミーティア(青毛)も戻ってきていましたよ。昔、上ノ国町でも草ばん馬が行われていました。海が見える場所のばん馬はとてもきれいだったなぁ…。それだけ昔は馬が多かったということなのでしょう。ヤマサンブラックがいる、厚沢部町の川村貴樹さんの家も訪ねました。家の物置には馬の絵が。「ペンキ余ったから描いたんだ」とおっしゃっていましたが、器用ですね~。左端のヤマサンキレイが絵のモデルです。さて、五厘沢です。現場には奥様も来られていて、みんなで馬談義。話を伺いました。ちょうどこの日は江差町出身のアアモンドグンシンの復帰戦。「グンシン今日だものね」と、地元馬の活躍も見守ります。「活躍したら、ばんえいグランプリのYouTubeに出るから」。「生産者の祭典」の動画のことですね! こちらの動画の「細かすぎて伝わらないモノマネ」を見せてもらい、笑ってしまった…自分たちの手で馬を作り上げ、活躍を夢見る。ここには、当たり前のように馬優先で生きる生活が根付いています。「活躍すればいいけどね。そう思わないとやってられない」。ばん馬の醍醐味を見せていただきました。道南から、今年はどんな馬たちが活躍を見せてくれるのか楽しみです。取材/小久保友香・小久保巌義
2023年03月08日
10月第2日曜には、道南の北斗市で「田山産業運輸ばん馬競技大会」が開かれます。道内最後の大会で、道内各地のほか青森からも人馬が集まる大きな大会です。ポニーとばん馬、来年デビュー予定の1歳もいます。私たちも毎年楽しみにしており、これに合わせて道南で過ごす馬たちに会いに行きます。まずは、江差町の廣部武士さんの牧場へ。クインフェスタの子、キングフェスタが素晴らしい活躍ぶりですね。コマサンエースもオープン入りし、大崩れのないレースを続けています。ちゃつ(小さな放牧地)には、クインフェスタ1頭がいました。聞くと、今年2月にフクイズミは亡くなってしまったそうです。毎年訪れるたびに、年を取ったな…という感じはしていましたが。今年、ついに立てなくなってしまったそうです。廣部さんも公表できないままだったそうですが、今回ブログ掲載の話をすると、掲載の許可をいただきました。。カネサブラックなどとともに一時代を築き、高齢での繁殖入りとなりましたがそれでも素晴らしい子を遺してくれました。気高い馬でした。お疲れさまでした。昨年繁殖入りしたフクイズミの娘、イズミクィーンは放牧地に移動していて、今回会うことができませんでした。コウシュハウンカイを種付けしたそうです。無事産まれてくれるといいですね。クインフェスタは、と聞くと…「秘密」(笑)。今からお腹の子が争奪戦だそうです。だから誰にも教えないでいるそう。まぁ、そうでしょうね。どの種馬かな?と想像すると楽しみです。ずっとニンジンを食べていたフェスタ。撮影のためちゃつに呼んだけど、何もないとわかるとすぐ帰ってしまいました(笑)もう一つの馬房には、フクイズミの息子、イズミオーがいました。母に似た芦毛、少し白くなったかな。夏には十勝に移動し、今年は10頭ほど種付けしたそうです。初年度は1歳で、隣にいました、イズミオー×クインフェスタです。大きくなったなぁ!昨年のイズミオーくらいのグレーの毛色がきれいです。危険なので外に出してもらうことはせず見ていましたが、大きいな…2頭とも、きつ(飼い葉桶)を鼻でぐるぐる回してかき混ぜていました。親子で似るんですね。来年のデビューが楽しみです。八雲町熊石にある大竹さんの牧場では、種牡馬として過ごすライデンティダに会ってきました。今年の当歳が大竹さんをはじめ、日本海側の牧場で数頭生まれています。昨年、ティダとの子を身ごもっていたキサラキクですが、お腹の子が亡くなってから予後が悪く、母馬も亡くなってしまいました。子馬も芦毛で大きく、いい馬だった、と牧場関係者の方は今でも残念がっていました。ライデンティダは草ばん馬に出るため、トレーニングを積んでいます。朝の砂浜調教を見せていただきました。この日は本当に空と海がきれいで、幻想的でした。秋鮭(あきあじ)の季節、釣り人も多いですが馬の前では釣りざおを振ったりはしない、と馬を調教する水上さんは教えてくれました。ばん馬では障害で手こずってしまい、遅れてゴール。ティダは12歳。今年で草ばん馬は引退だそうです。牧場風景この後は渡島半島を横断し、北斗市の「きじひき高原」を訪れました。きじひき高原には北斗市営牧場があり、馬も放牧されていて見学できますが、今年は馬が少なかったです。多くの馬が少し前に牧場に戻ってしまったそうです。それでも馬と絶景を楽しみました。取材/小久保友香・小久保巌義
2022年10月20日
皆さん、ミタコトナイの名前、見たことありますか?ミタコトナイ? それなら、まだばんえい通とはいえません(笑)。種牡馬として3世代多くの産駒を出し、派手ではないですがコンスタントに活躍しています。ホクセイサクランボ、ホクセイサクラコ姉妹のほか、ミタコトアルという名前もいますね。昨年秋にばんえい牧場十勝から音更町の皆川畜産に移動してきました。ばんえい牧場時代、流れる前髪がすてきなミタコトナイに「かっこいい…」と色気にメロメロになる見学者も。そんなミタコトナイが「当歳馬の面倒を見ている」と聞き、会いに行きました。皆川畜産の代表は元調教師の皆川公二さん(63)。騎手時代は1000勝を挙げ、話題作りがうまく存続運動時代からばんえいを盛り上げてくれました。映画「雪に願うこと」にも診療所のシーンで出演しています。いつも冗談ばかり言って周りを笑わせているので、今回も話半分くらいの気持ちで行きましたが、本当にミタコトナイが子どもたちの面倒を優しく見ていたので驚きました。「普通なら、種牡馬は他の馬を蹴っ飛ばしたりかじったりする」と皆川さん。そのため、他の馬と同じ放牧地に入れることはほとんどないです。ましてや当歳馬なんて。母を失ったり、病気で母と離れていたりする3頭の子馬は、大きなミタコトナイにぴったりくっついて懐いていました。きっかけは、脚が悪いミタコトナイをできるだけ歩かせて血行を促すために、出産時に母を失ったみなしごの「ハッチ」と一緒に入れてみたことでした。するとミタコトナイはハッチをかわいがるようになりました。「かわいそうだと思ってるんだ」と皆川さん。それからも2頭が増えましたが、子馬たちがご飯を食べやすいように動くなど、とても優しい保育士の「みーくん」です。「こういう馬ミタコトナイ!」と皆川さん。さて、現役種牡馬のミタコトナイは、ばんえい牧場時代から種付けの上手さや牝馬好きさ?に定評がありました。今年は17頭に付けて全頭受胎。種付けも一度牝馬に乗るとすぐ終わるので、とても楽だそうです。性格は素直で、受胎率も100%といっても大げさではないのでは、とのこと。ばんえい牧場で、種牡馬になりたてのジェイワンが種付けに苦戦している時に、遠くからその姿を眺めていたミタコトナイが「仕方ねぇなぁ」って顔で颯爽と現れ、一瞬で種付けをして帰っていった姿には感動しました……。いつも牝馬をじっと見つめていたよね…。子どもの面倒見もいいなんてイケメンすぎます…。産駒の特徴を聞くと、気性が良く、荒いくらいだということ。(ばんえいの「気性がいい」とは気性が荒めのことをいいます)「でもミタコトナイはおとなしいですよね」と聞くと「もともと荒かったんだ!」とのこと。ミタコトナイは、1歳時から東北の草ばん馬に出て56連勝の記録を持っているそう。もちろんばんえい競馬でも、と期待は高まります。新馬勝ちし、イレネー記念はテンマデトドケの4着。夏から連勝していざ重賞へ、という時に脚元に不安が生じるなどして休養。「草ばん馬でも1トン近くを引いて勝っていたからばんえい記念も出れたと思う」というほどの馬でしたが、けがに泣かされた競走生活でした。2017年に10歳で引退。父タケタカラ、母父ダイヤテンリユウという良血でもあり種牡馬入りし、昨年、皆川畜産に種付け場ができたことで移動してきました。まだ脚の不安はありますが、強い生命力があります。ミタコトナイを見ていると、ばん馬の生産で重要なのは種付けのうまさ、受胎率の高さだと強く感じます。血統ももちろん大事ですが、実際のところは、繁殖能力の高い馬たちが、ばんえいを支えていると感じます。それが競走馬生産の現実です。皆川畜産は6年前に開業。キタノサカエヒメなど、競走馬上がりの繁殖牝馬25頭がいます。子馬も含め50頭近くの大所帯で、今は繁殖牝馬のほとんどは大規模牧場に放牧しています。キタノサカエヒメ牧場は音更町の農村地帯にあります。河川敷で温泉も近くにあっていいですねーと言うと「春はウグイス。そろそろカケスが来る」。冬は白鳥が真上を飛んでいたので「どこ行くのよ!」と声をかけたら、こっちを見て、その後はルートを変えてしまい二度と上を飛ぶことはなかったそう。こんな調子で、調教師インタビューも笑いすぎでお腹が痛くてなかなか進まなかったことを思い出します……今も競馬場の若者を心配して相談に乗るなど、面倒見の良さは健在のよう。皆川さんが今も競馬場にいたら、どうなっていたかな…とたまに思います。「父の日にもらったんだ!」というTシャツ。厩舎の若者たちからのプレゼントだそうで、父親のように慕われています。生産者が高齢化で減少している昨今、生産頭数が横ばいでいる理由の一つには、十勝管内に新しい大規模牧場が複数開業したという理由もあるでしょう。人馬ともに、生産界からばん馬を支えています。取材/小久保友香、小久保巌義
2022年09月28日
7月20日、音更町の十勝農協連家畜共進会場で「第51回十勝総合畜産共進会」(十勝農協連主催)が開かれました。3年ぶりの開催です。十勝では、足寄、本別、士幌、音更、帯広、浦幌の6カ所で共進会が行われており、上位の馬が集まるのが総合畜産共進会です。今年はコロナ禍と、馬パラチフスが発生したこともあり4箇所が中止。開催された浦幌と音更の上位馬や、他地区の馬が集まって行われました。入り口で検温も行われるなどコロナ対策も実施した上での開催です。馬が少ないことはもちろん、畑や牧草の忙しい時期。それでも、共進会を途絶えさせないという生産者や関係者の努力で続いています。釧路地区でも2週間前に開かれたそうです。牛の共進会も隣で行われています。開会式は合同で、牛と馬が1頭ずつ。馬はフジダイビクトリー産駒の1歳牝馬、五月ノ麗奈です。上位馬にはさまざまな賞品が!アブをとる「アブキャップ」もあります。繁殖牝馬と1歳馬、計16頭(2頭欠場)が出品されました。まずは、体高、胸囲、管囲(脚)の測尺。なかなか枠場に入らない子も…自然と、関係者が手伝いながら進んでいきます。審査は1頭ずつ馬を立たせたり歩かせたりする「個体審査」と、馬を部門ごとに並べる「比較審査」の2種類が行われます。個体審査は、馬事協会の職員らが、立ち姿や歩く姿を確認。この顔に見覚えはないですか?なんと、コマクインが出ていました。子はカクセンキングとの牝馬。立たせてから、三角の線の上を歩きます。以前は速歩と並歩でしたが、今は並歩だけになったそう。終わってから、比較審査です。繁殖牝馬4頭、1歳雌7頭、雄3頭がそれぞれ横に並びます。職員のほか、馬関係者が馬を見定める時間です。それから繁殖と1歳雄は2頭、1歳雌は4頭の番号が呼ばれ、2等賞が決まります。呼ばれなかった馬は3等賞。同様に審査を行い、名前を呼ばれた馬が1等賞となります。上位馬をご紹介します。担当者の講評は、これからばん馬を学ぶ人たちへの勉強になればと載せます。あくまでも共進会における審査方法に基づいているので、競馬で走るかどうかとは別物です。また、毎年共進会に向けた馬づくりをされる方もいるのですが、今年は行われるかどうかがわからなかったこともあり、馬を準備できた方が少なかったかと思います。あくまでも共進会復活のために馬を用意した、という方が多いように思いました。3歳以上雌 子付1等3305 晏松姫(あんしょうひめ) 子の父はジェイワン繁殖牝馬は差がなかった、と前置きしつつ、講評した馬事協の山下氏は、「肋(ろく)に伸びのあるはりがあり、背中は後駆の重量が前に伝わる。肩もほどよい傾斜がある。子は2月生まれとはいえ一番大きい。母の良い所を持っている」とべたぼめでした。2等3301 ルックアップ父芯情の純ペルシュロンです。帯広の上見さんは純ペルを生産し続け、いつも共進会に出品していて楽しませてくれます。子の父はエラン ド ネスクです。「馬格に恵まれた。純ペルにしては大きい。子も良い発育。ただ、トモの歩様に少々乱れがあり次点とした」とのこと。3302 コマクインは3等賞。「16歳だがバランス崩れていない」。ただ、裂蹄がありました。あれだけ活躍馬を輩出していて、この評価は素晴らしいですね。1歳雌1等1席3101 凛(父ミンナノマルゼン、母夢)とても雰囲気のある子でした。講評は「馬がきれいに仕上がり、前駆、中駆、後駆への移行が素晴らしい。立ち馬も、馬が調教されており良く見せている。生産者の努力が伝わる」とのことです。1等2席3102 初夢(父アローファイター、母ワタシノユメ)ぴしっと立っていて「ぴくりともしない従順性。馬体の移行もすぐれている」とのことでした。1等の2頭は同じ生産者(3101の出品者は別)。生産した本別の新津さんは「共進会があるかどうかわからなかったから、ただ、競馬に向けて育成していただけです」と話していました。2等の3105汀明(父スギノハリアー、母汀勝)の美しさは目を引きました。上位2頭に比べると「肩の深み、厚みに劣る」といい、少し細かったかな。これからの成長が楽しみです。1歳雄1等3003 力哉(父マルニセンプー、母ウィナークイン)雄は2等の3001が大きくとても目立っていたのですが、この子も雰囲気があり、共進会にでる1歳牡馬かっこいい!! とほれぼれします…講評は「体高などは3001に劣るが、後駆の充実が素晴らしい。背中に対する移行や肩の状態が良く、4つ足で体重かけている。歩様はNo.1で品位も一番よかった」2等3001 虎鉄(父カネサテンリュウ、母富士子)「重厚感があり、牡馬らしい」という通り、馬格の良さは目を引きました。この後、各部の1等が並び最高位を決定します。そして最高位に選ばれたのが、繁殖牝馬の晏松姫でした!「子の発育がいい。抜群。子どもたちが競走馬になったと聞いて納得」とのコメント。繁殖牝馬としての良さなので、子どもの発育も大きなポイントです。「当歳馬も、来年の全道も楽しみ」とのこと。今年は11月に当歳馬展示会を開催予定。来年は4年に1度の「北海道総合畜産共進会」が行われます。今年の当歳は両方に出られるので、楽しみですね。ちなみに全道では農用馬は同じく繁殖と1歳、参加がなかった2歳と、ポニーと道産子も参加します。三角屋根の建物は、競馬場の向かい(厚生病院のある場所)に建てられていた歴史ある施設です。アグリアリーナの隣にある家畜市場は2025年に向けて新設予定で、秋には現在地の南側で工事が始まるようです。ただ、現在の施設も使っていくそうです。取材/小久保友香、小久保巌義
2022年08月24日
7月16日、草ばん馬と草競馬の「鹿追町競ばん馬競技大会」が3年ぶりに開かれました。役員の高齢化などにより、残念ながら60回大会を区切りとし、幕を閉じることに。今年3月には唯一の馬主さんが亡くなり、1月には主催する鹿追町競馬会の会長だった、鹿追町の乗馬振興に貢献された三井福成さんが亡くなりました。いろいろな意味で区切りだったのかもしれません。会場の「鹿追町ライディングパーク」は鹿追町瓜幕地区の「道の駅うりまく」の中にあり、乗馬施設のほか、1周1000メートルの競馬コースとU字形のばん馬コースがあります。ここを起点として、馬の長距離耐久レース「エンデュランス」の大会もいくつか行われています。町内にはウエスタンの乗馬施設がいくつかあり、9月3、4日にはウエスタン乗馬の大会Cowboy Challenge Cup (CCC) が町内のDaisy's Ranchであるので、興味のある方はぜひ行ってみてください。神田日勝記念美術館では日勝が描いた馬を見ることができ、小中学生を対象とした「馬の絵展」も開催するなど、鹿追はさまざまな馬の町。ただ、ばん馬に限っては生産馬は2015年ころからいませんでした。今年も小雨。いつも雨が降るんだよなぁ…出迎えてくれたこの看板も最後。同大会は1928年、瓜幕地区の農業者が始めたのが起源とされ、第1回は1959年に開催。主催していた瓜幕競馬会が解散したことで一時期は開催も危ぶまれましたが、2014年からは町内の有志によって「鹿追町競馬会」を結成。今日まで続けてきました。プログラムの表紙は第1回の写真十勝管内の草ばん馬は鹿追のほかは清水町旭山は休止中。本別町でポニーばん馬があるだけでという状況です。ばんえい競馬がある十勝に草ばん馬が少ないのはちょっとさみしいですね。新型コロナウイルス感染症防止の観点から、出走馬の馬主は十勝管内に限る縮小開催となりました。ばん馬は、ばんえい牧場十勝から1歳馬4頭と、競馬場から6頭。道内で盛んなポニーが少ないという、珍しい大会です。1R ばん馬A級2R 1歳ばん馬3R ポニーばん馬B級4R ポニーばん馬A級5R 和種馬速歩決勝6R 2歳ばん馬決勝7R 3歳ばん馬決勝8R F1速歩決勝(9R ロール転がし)10R トロッター繋駕決勝11R ばん馬B級決勝12R オープン駆歩決勝13R ポニー重量決勝14R ばん馬重量決勝現役競走馬はレースの7日前入厩が原則ですが、草ばん馬のための外出は5日前入厩の特例があります。これは以前から変わらないのですが、必ず引率しなくてはいけない調教師か厩務員の移動が限られてしまうため、最近は草ばん馬が行われても競馬場の馬たちは出走しにくい状況でした。今回は競馬場からも近い鹿追ということで移動しやすいということがあります。関係者の1人は「ばんえいがつぶれそうになった時は協力してもらったのに、こっちがなくなるって時に協力しないわけにはいかない」と。競馬場から来たテンリュウフジ、準備中駆歩レースに出る子たち、待機中1Rはばん馬からスタート。大会によっては、早いうちにトップホースが出て、午後からの決勝に備えることがあるのでばん馬は1Rから見ましょう(笑)次は1歳によるレースです。ばんえい牧場十勝の馬たちが参戦しました。1歳馬の練習の場として草ばん馬がありますが、最近は大会が少ないので1歳も少ないですね…ポニーばん馬も。「競ばん馬」とは競馬とばん馬を合わせた造語。珍しいのが競馬です。今、北海道の草競馬は別海と鹿追のみだったので、ついに別海のみになってしまいました。今回は芽室町の乗馬施設「D-base」や、趣味で馬を楽しんでいる方が出走。速歩、駈歩、2輪馬車で走る繋駕競走などを楽しみました。いつもはばん馬と競馬を平行して行いなかなかカオスでしたが、今回はレース数も少ないのでそれぞれがゆったりと行いました。8RのF1とは交雑種のこと。ドサンコと乗用馬などです。途中、みんながレースに行ってしまってさみしいよ~という馬が馬房から飛び出して走ってました(笑)騎手もみんな笑っています。このようなおおらかさが草競馬の良さですね。珍しい繋駕レース。海外では人気で、昔は中央競馬や道営などで開催されていました。子馬がくっついていくのがかわいい。軽トラに乗せて道具を運んでいました参加者は「これだけの施設はもったいない」と今後集まって何かで使えれば、と話していました。みなさんのタイミングが合う時に、小さな大会ができるといいですよね。楽しんでいる人たちはいるので、できそうな気がします。草ばん馬についても、これだけの施設があるからデモンストレーションなどができたら、と地元の方は話していました。馬の町、このままでは終わらないと思います。さて、アトラクションの「麦稈ロール転がし」! 第2障害の手前からロールを転がす競技です。平らな部分を下に置いているので、転がるように倒すところから始まります。これ、もっと流行っていいように思います(笑)イラストは毎年かわいらしい動物の絵が描かれていて、今回は最後なので全部馬にした!と、絵を描いた方(乗馬関係でいろいろ奮闘されている方)。草ばん馬でしか使わない障害ですから、活用してみんなに楽しんでほしいなぁ。最終レースはばん馬の重量戦。最後に一番強い馬が出るのはどこも同じです。今回は競馬場からセンリョウボスとテンリュウフジが出走しました。オーナーが草ばん馬に理解ある方とのこと。草ばん馬はいいリフレッシュになる、という考え方もあります。使いたくない、という方もいるし人それぞれです。レースはセンリョウボスの優勝!!そしてレース後は餅まき!道東にある昔からのばん馬ではよく見ます。これも昔ながらのイベント。袋に入った、紅白の餅がまかれて大人も必死(笑) 私は恐怖の餅まきと呼んでいます(笑)まぁ、転がってきたり隣の人からもらったりして、たいてい手に入ります。雨は残念でしたが、無事大会は幕を閉じました。瓜幕の大会は終わってしまいましたが、草ばん馬好きな人たちはまだまだいます。ここが馬文化の拠点であることは変わらないので、この素晴らしい場所を生かした楽しみ方があればと思います。願わくば、ここの会場で草ばん馬を開催してほしいのですが…。そして、名物女性アナウンサー、田中照子さんの名(迷?)調子が聴けないのは残念…。鹿追町競馬会の方々、携わってこられた方々、ありがとうございました。取材/小久保友香、小久保巌義
2022年08月17日
7月上旬、小清水町の林牧場で今年から種牡馬になったカネゾウに会いに行きました。林牧場がある小清水町はオホーツク海に面し、原生花園が有名な、花と鳥の町です。JRA小島太元調教師・騎手や、ホッカイドウ競馬の千島一巳元調教師や伝説の名騎手、千島武司さんの出身地でもあります。カネゾウといえば、きれいな連銭芦毛。健在でしたよ!撮影のためにちゃつ(小さな放牧地)から出してくれたのですが、今時期に外に出されるといえば種付けしかないですよね…。お仕事モードになってしまいなかなか撮影できず(笑)(あとはご想像ください笑)でもそれは、種馬としては優秀ということでしょう。時間をかけずに種付けができるのは、お互いの牧場にとっても助かります。上手で、受胎率も良かったそう。立ち上がっていくほどだそうです!競走馬時代から、この気性の良さ(ばん馬では激しめのことを良さ、といいます)が特徴でしたね。人には優しく、余計なことはしないと、林英明場長(56)も絶賛です。今年は17頭に種付けしたそうです。今年は馬パラチフスが十勝管内の牧場に出たこともあり、馬の移動を避けていたため他の牧場にあまり付けられなかったのが残念だといいます。父カネタマルの貴重な血筋。母は純ペルシュロンです。(母・弥生姫の写真は、ばんブロVol.28にあります)林牧場は、林さんの父、林正男元調教師が開いた牧場です。家には農耕馬がおり、山の木を伐ったり出したりする「やまご」(山子)、運送などの「馬車追い」の延長としてばんえいに世界に入りました。以前はそのような人が多かったといいます。調教が上手だった林さんは、なんと小島太調教師の父、竹次郎さんに誘われて、牧場を買い取ったそうです。この場所が、小島太さんの生家だったとは!!「サクラ」の馬たちのファンだった私は驚きです…。牧場は和牛との兼業。ばん馬のほかに道産子や中間種など、さまざまな馬がいるとても大きな牧場です。サイズ感がわからなくなる(笑)道産子12頭にまで減った牧場を、現在の代表・林秀明さん(56)が、正男さんが亡くなられた8年前から牧場を継いでいます。そこからどんどん馬が増えていきました!「(馬を)好きでやる人がいないと。できることはやりたい」と情熱を燃やします。今では繁殖牝馬は、レースを目指す用の重種馬は20数頭で、交雑種の肉馬用を含めると約60頭にまで増えました。ということは子馬も含めると100頭以上がいることになります。種馬もカネゾウを含め5頭います。昨年まではカミノシズクもいましたが、亡くなってしまったそうです。肉馬についてはいろいろ考え方があるかと思いますが、肉用に生産される馬や、用途変更される馬がいて回っている社会です。ばん馬は特に肉馬とのつながりが深いです。林さんはばん馬の発展のために「肉の消費も増やしていきたい」と幅広く馬を手がけ、牧場を離れるその時まで、めいっぱいの愛情をかけて育てます。カネゾウのファンであれば見学は可能とのことです。マナーを守って見学してください。さて、たくさんの馬たちは夏の間はどこに放牧されているかというと、海に近い原生花園と涛沸湖の間の放牧地にいます。ここは、自然の花々が咲き誇る観光スポット、小清水原生花園の一部。今はエゾスカシユリやハマナスなどがきれいでした。すぐそばをJR釧網本線が走り、今時期は「原生花園駅」もあります。原生花園の丘にエゾスカシユリ。斜里岳と道路の間が馬の放牧地(去年の写真です)放牧地は道路と濤沸湖の間で、大きく2箇所に分かれています。野鳥観察デッキ側には道産子が20頭ほど。木道もあります木道から。奥に見える建物が道路を挟んだところにあるインフォメーションセンターと原生花園駅です。その少し東側にある駐車帯や、今は使っていない展望牧舎側にはばん馬や交雑種が30頭ほどいます。私たちが行った時は、2箇所とも道路側に馬が来てくれていました!以前は遠~くにいて、豆粒…。ちょっと買い物して戻ったら手前に移動していてうれしかった(笑)。こういうのって運なんですよねー。以前は周りの牧場の馬と一緒に放していたそうですが、今では農家も減り、林さんの馬だけになったそうです。林さんの馬が増えたことで「馬のいる景色」も増えました。多くの観光客は北海道の景色として喜んで、風景に溶け込んだ馬たちと記念撮影しています。放牧は5月から11月までとのことです。今年の能検を受けたメイホウもいました。おなかにはカネゾウの子がいます!きれいな芦毛が出てほしいなぁ~。(許可を得て撮影しています)取材/小久保友香、小久保巌義
2022年07月27日
2014年帯広記念の勝ち馬、ホリセンショウ。2016年に引退し、釧路市阿寒で種雄馬となりました。5歳世代が初年度産駒で、ジェイカップや4歳のミラクルクイーンなど、コンスタントに産駒を輩出し続けています。2年前に、平取町に移動してきました。実はその直前に取材させていただこうと阿寒の牧場に話をすると「移動したよ」と言われ、今日までかかってしまいました…17歳ですが元気そうですね。黒ユリ賞3着のミラクルクイーンやジェイカップなど、頭数は多くないながらも、コンスタントに活躍馬を輩出しています。「おとなしいんだ」と樫野元一さん。今年は20数頭に種付けしたそう。樫野さんも含め町内の10数頭のほか、道南や空知からも種付けに来たそうです。牧場には10頭の繁殖牝馬がいて、6月からは町内の牧場に放牧されているそう。今時期のばん馬は放牧シーズンです。突然走り出したのでどうしたのかと思ったら、隣の家に来たトラックを見ていなないています。どうやら種付けの馬運車だと思っているそう(笑)。じっとトラックを見ているホリセンショウ平取はサラブレッドの名門牧場もありますし、ポニーもいて、ばん馬もいる。牛が有名な町ですが、いろいろな馬が活躍しています。ファンの見学も受け付けているとのことです。取材/小久保友香、小久保巌義
2022年07月21日
キタノキセキの初年度産駒が2頭生まれたと聞き、本別町の「ばんえいアズキとコムギ牧場」を訪れました。4月に生まれた3頭の子馬のうち2頭がキタノキセキ産駒。ユリネの子がソバコチーズの子がミモレットと名付けられました。父に似た流星ですね。もう1頭はアズキの子(父カクセンキング)、ボタモチ(右)。構ってちゃんでした夫がファンだった名牝アンローズの息子、キタノキセキ。代表の梅村智秀さん(46)は血統的魅力から、別海町までキタノキセキを種付けに行ったそうです。ファンからみれば良血、と簡単に言えるけれど、実際種付けをする立場から研究した結果、キセキ君を選んだというのはとてもうれしいです。2頭とも生まれた時は小さめの馬体でしたが、急速に成長してかなり大きくなりました。期待も膨らみます。同牧場は2017年開業。馬に全くゆかりのなかった梅村さんは、十勝に魅せられ、馬に魅せられ、馬主になり、ついに牧場まで開業しました。札幌で自動車販売、修理の会社を経営する梅村さんは、仕事で道内を巡るうち、人や温泉の良さから十勝ファンになりました。何度か十勝を訪れ、ばんえい競馬は「面白いなぁ」くらいの気持ちで見ていましたが、競馬場で生産者と会い、さまざまな縁がつながり「まさかこんな展開になるとは」。つくづく、馬は人生を変える生き物だなぁと思います。2014年、すぐに馬主資格を取り、所有した馬が2012年生まれの牝馬、コムギとアズキです。おわかりかと思いますが、梅村さんは十勝の名産を馬名にしています。ほかにもチーズ、バターなど、かわいらしく身近に感じる名前ですね。アズキさて、新馬勝ちして黒ユリ賞を目指していたコムギですが、途中でけがをして闘病生活へ。梅村さんは「最期まで面倒を見る」と、牧場を開設しました。その後、コムギは亡くなってしまいましたが、牧場を天からずっと見守っているでしょう。フジダイビクトリーの全妹という良血のアズキは5歳春まで走った後、繁殖牝馬として暮らしています。競走馬となったアズキの子の名前はエリモとホマレ、両方小豆の品種です。爆睡するエリモを見守る梅村さんさて、牧場開設には大きな壁が幾つもはだかりました。周りに馬の知り合いもおらず、0からのスタート。新規就農したいといっても、生産者が減り続ける時代に馬を始めるなんて「何か企んでいるんじゃないか」と思う人もいたそうです。正直「なんてことを言うんだ」と思いますが、実際、知らない世界に飛び込むというのはそういうものかもしれません。逆境に負けず、人に話を聞いて学び、説明し、信頼を得て開設にこぎつけました。「地域の人に支えられた」と梅村さんは感謝しますが、当時から見てきた私は、すごいバイタリティーだな、と感心しきりでした。ビジネスセンスもあるなぁと。写真奥にある小さな放牧地が、最初の放牧地。それがここまで大きくなりました。今では繁殖牝馬は5頭にまで増えました。これまでの経験を、馬と暮らしたい人や、就農したい人にアドバイスしていきたい、と相談や研修に応じています。馬との生活に向け、一歩を踏み出した1人が春から研修している奥村明加さんです。愛知県出身の奥村さんは、3年前に旅行で訪れたばんえい競馬を見た時、途中で起き上がれない馬を見て泣いてしまったそう。そのことを親に話すと「ばん馬は開拓に大きな役割を果たしてきた。一部だけ見てかわいそう、と反対するな」と言われ、それからばんえいについて知る努力をしてきたそうです。そのときに目に入ったのが、梅村さんが研修を募集しているというツイッターの書き込みでした。仕事をやめ、思い切って北海道へ。出産や種付けなど、生産を学びながら梅村さんの右腕として活躍しました。もう研修は終わってしまいますが「名残惜しい。帰りたくない」と、今後、どうやって馬に携わるかを考えているそうです。牧場も、広くして調教コースを作ったり、民泊ができる場所を作ったりするなど、夢は広がります。出産馬房を見られる部屋も馬房横に作りました。奥村さんは「馬小屋スイート」と呼んでいます(笑)。いいなぁ!板張りの厩舎もおしゃれですよね。梅村さんによると、ばん馬の生産は「自分のペースでできるのがいいところ」だといいます。もちろん病気の馬がいる場合などはずっと面倒をみることもありますが、基本は、えさを置いておけば出かけることもできる。イメージ的に「朝早いんでしょ」と言われるが、実はそこまででもない。ただ「兼業を推奨する」といいます。また、施設や機械を新しく買うのは現実的ではないが、シェアはできるし、今の時代ならワーケーションという手もある。いろいろなやり方はありますがまずは「雰囲気を感じてほしい」といいます。「馬は中毒になるじゃないですか」。その通りですものね。はじめは、生き物に対する理想もありました。でも「現場を見ないとわからない」。肌で感じて、人から教えてもらって、自分の頭で考えて、できることとできないことを理解しながら馬と向き合う、その学びのチャンスを作り出して後世に伝えようと、行動しています。「誰に何が刺さるかわからないから、やれることをやる」と梅村さん。私も「自分がやっていることって意味あるのかな?」と思うことがありますが、自分も頑張らなきゃとパワーをもらいました。追記~牧場に向かう途中には軍馬鎮魂碑があります。戦時中、このあたりには軍馬補充部があり、ここで調教された馬たちが戦地へ送られました。取材/小久保友香、小久保巌義
2022年06月30日
釧路産駒特別に出走した10頭のうち、スピードフジ産駒の3頭を出走させたのが弟子屈町の守屋博さん。産駒の生産馬で、スピードフジを繋養する守屋さんの牧場を訪れました。博さんは昨年2月に亡くなり、今は娘の直美さんが厩務作業を行っています。以前は、馬以外の仕事をしながら朝晩だけ馬の世話をしていたそうですが、今は馬一筋。お母様とともに、12頭の繁殖牝馬とスピードフジの面倒を見ています。ばん馬の牧場は、女性生産者も多いですね。釧路産駒特別に出た3頭は偶然並びました。④クリスタルコルド(2着)、⑤チャチャクイーン(8着)、⑥ツガルノヒロイモノ(3着)翔雲賞には④クリスタルコルド(3着)①ツガルノヒロイモノ(5着)の2頭が出走。クリスタルコルドの母、桜姫ツガルノヒロイモノの母、フジノミユキ子どもたち、母親にそっくり!!チャチャクイーンの母、華姫は昨年亡くなったそうですがそっくりの顔をしていたそうですよ。桜姫、おとなしい馬でした。2014年、釧路の共進会で1等賞1席を取り(弟子屈町では最高馬)、全道共進会に駒を進めた馬です。共進会の時の写真夏の間は弟子屈町の共同牧野に放し、冬の間は牧場にいます。その間、ばん馬にしては珍しく、毎日馬を引いて馬房に入れているそうです。ばん馬は昼夜放牧させたり、ちゃつ(小さな放牧地)と馬房を自由に出入りできるところに馬を置いたりしている牧場がほとんど。サラブレッドほど訓練の必要はないとはいえ、手間をかける利点がありと考えます。「うちの馬は触らせる(他人が手入れしやすい)んです」と直美さん。夫婦で繁殖牧場に行くと、馬は夫の方に寄っていくことが多いんです。夫が動物に好かれる人なのか、といつも悔しい思いをしていますが、ある牧場の方に「牝馬は人間でもオスに寄る」と聞いて納得(無理やり納得させた)。でもここでは、馬たちは私の方に寄ってきました\(^o^)/直美さんが丁寧に世話をするから、女性に近づくのかな、と思いました。直美さんには、3頭の子馬時代の写真も見せてもらいました!!生産牧場の方ってあまり写真を残している方が少ないので貴重です…!!チビクリスタルコルドクリスタルコルドの独特の細い目は当歳時から。「いつもああいう目をしている。怒っているかと思った」。チビツガルノヒロイモノチビチャチャクイーン守屋さんの家では、もともと切り出し(馬搬)を行っており、その後ばんえい用の馬の生産をはじめました。過去の種馬にはキタノビックエースとキタノフジノボリがいます。5年ほど前までは、近くで観光牧場も開いていました。国道沿いを通るたび、馬がいる、と気になっていた場所です。桜姫の母、第二力姫は博さんが一番気に入っていた馬だったそう。博さんが亡くなった4日後に、おなかの子と一緒に、後を追うように亡くなったそうです。「悲しいというより、親子を助けられなかったことが悔しかった」と直美さん。この時「馬の神様に『馬とともに生きるのか』と問われ、試された気がした」そう。目の前の馬たちは自分しか守れない。と馬の世界で生きることを決めたそうです。その後デビューしたスピードフジの初年度産駒が大活躍。馬の世界は不思議ですね。こちらがスピードフジ。直美さんは「フジオ」と呼んでいました。おとなしい~2018年に引退、種牡馬入り。現3歳が初年度産駒で、生まれた6頭のうち5頭がデビュー。活躍はご存知のとおりです。現役時のスピードフジ今は新型コロナウイルスや、馬の伝染病の防止のため出入りは制限しています。落ち着いてからは、あらかじめ連絡をしてくれればファンの見学も受け付けているそうです。取材/小久保友香、小久保巌義
2022年02月23日
今年3月に引退し、種牡馬となったコウシュハウンカイに会いに、幕別町の村田さんの牧場を訪れました。ラストランのばんえい記念と引退式馬によっては、仕事を終えてすぐは痩せたり見栄えがよくなかったりします。そのためシーズン後、取材をしても大丈夫な状況か確認すると「元気元気!腹立つほど元気」と。さすが…結局取材までは半年ほど経ってしまいました…牧場に着き、村田さんを探していると、馬をつないだトラクターに乗る村田さんと、コウシュハウンカイが戻ってきました。トラクターでゆっくりと馬に歩調を合わせながら運動、というのはばん馬ではたまに見る光景です。このトレーニングを撮影したかった…(笑)。このように毎日30分ほど運動しているそうです。牧場付近は寒い地域で、冬毛が出てきてもおかしくないのですが馬体はつやつや。競走馬時代とはまた違った馬格の良さにほれぼれします。いい馬ですね…。引退し、種馬や使役馬になると競走馬時代よりは馬体が締まります。お相撲さんが年寄になると痩せるイメージ。「馬らしい格好にしてやる。そのほうが長生きする」と村田さん。しかし、このことを「小さくなった、痩せた」と捉える人がいるのも事実。そうじゃないんだよ、と伝えていきたいです。元気の良さは健在!他の馬をじーっと見てはたまにいななきます。手入れをする村田さんにちょっかいをかけます。競馬場にいたころも他の馬にけんかを売るなど元気だったそうで、相変わらずといったところでしょうか。村田さんも「気性と品格の良さ」が魅力だと話していました。そういえば、サラブレッドで「気性がいい」というと穏やかな馬ですが、ばんえいの場合、サラブレッドでいう「気性が荒い」に近いくらい元気なことをいうようです。最初は混乱しました…。競走馬としての気性がいい、ということなんですね。ばんえい記念を終えて種牡馬入りしたコウシュハウンカイ。次の日から始めた種付けもスムーズだったそう。繁殖牝馬にもすぐ乗り、仕事のスピードも早い。「牧場主にとって一番理想」と村田さん。春から、コウシュハウンカイは種付けが上手という話が伝わっていました。十勝はもちろん釧路や函館など道外からも繁殖牝馬が集まり、約50頭くらいに種付けしたそうです。場内には、種馬入りした時のお祝いの袋が貼られていました。その中に「安着祝」と書かれた封筒がありました。無事種付けがうまくいくようにというお祝いだそうです。コウシュハウンカイの馬房の隣にはマルニセンプーがいます。産駒のタカナミが翔雲賞を勝ち、ついに重賞ウイナーの父。最近好調ですね。アオノゴッドやマオノダイマオーなども活躍しており、種付けも増えているそうです。病気で亡くなったインフィニティーの分も、2頭の子どもたちが今後、競馬場を沸かせてくれそうです。ファンの見学も受け付けています。すでに何人か訪れているそうですよ。歴史などは以前の記事をご覧ください。 ばんば牧場便り【 Vol.005 】インフィニティーが暮らす村田律雄さんの牧場取材/小久保友香、小久保巌義
2021年12月16日
11月13日、帯広市内で「令和3年度 第2回馬の担い手養成研修会」が開かれました。重種馬生産の担い手を養成、確保するために日本馬事協会が主催。対象は「重種馬生産に興味のある方」で、興味があれば誰でも参加できる講座です。参加者が10人ほどと少なかったのは残念。今後コロナも明けて、行き来ができるような時期に行われるといいですね。最初は馬文化について、NPO法人とかち馬文化を支える会の専務理事で、馬関連の著書もある旋丸巴さんの講演「十勝の馬文化」です。「馬、といったらどんな場面を思い浮かべますか」。初心者対象といっても、会場は馬にかかわる人が多くマニアックな答えが出ましたが(笑)、一般の方は競馬や乗馬など、馬の背中に乗る「騎馬」のシーンを思い浮かべるのでは、と思います。でも実は、馬が家畜化されたとされる6000年(諸説あり)の歴史のうち、騎馬の歴史はというとそう長くはない。最初の騎馬民族といわれるスキタイが存在したのが2800年前とされ、すぐ馬に乗ったとしてもそのくらいの歴史しかない。それならば、それまでの間は馬は何をしていたのか―というと、それは牽引文化なのだ、ということにつながります。ばんえい競馬が文化といわれる所以なのですよね。次に十勝の馬の歴史を、昔の写真とともに説明していただきました。馬耕をしながら子馬が近くをうろうろしている写真、かわいかった。資料館などでも馬耕をする馬は母馬ですよね。話を聞いた方からは「子馬が畑荒らして大変だったー!はははー!」と言いながらも、子供は母が働く姿を見ているので馴致をしやすかった、という話も教えていただきました。木材を運ぶ馬搬では、手綱のない馬の写真を見せていただきました。馬が自分で働いているんですね。たまに馬そりに乗ったお嫁さんの写真を見ることがあるかと思いますが、これが必ず冬。馬車ではなく馬そりなのはなぜか、というとほとんどの方が農業をされているので農閑期しか結婚式はできなかったということからです。大津漁港でも馬は船を引き上げるのに活躍します。帯広の町中を、馬車が走ります。「本当に馬なしでは生きられなかった」と、大げさな話ではなく、多くの方が話していたと聞きました。産婆が来るのも、誰かが亡くなったというときも。今、帯広競馬場ではNPOが主催した思い出の写真コンテストの入選作が展示されています。場内には資料館もあります。最初は「昔はこうだったんだなぁ」と感じるだけかもしれませんが、馬について知っていくうちに、1枚の写真から生活とのかかわりなど、いろいろなものが見えてくるかと思います。道内の資料館ではほとんどの地域で、馬が開拓した歴史を残す道具や写真が展示されています。インターネットでも探せば出てくると思いますので、新たな視点で見ていければ、と思います。それからは出前事業の紹介もありました。NPOでは長年出前授業を行っているので、そりに乗って喜ぶ子どもの写真を見たことがあるかと思います。ただ、あくまでも「授業」。馬の歴史や文化について授業を行ったうえで、馬と親しんでいるとのことです。馬文化を残すのに、ばんえい競馬は必要ないんじゃないか、と言われることもあるそうです。それでもなぜ、ばんえい競馬が存在しているか。それは、ばんえい競馬自体が産業として成り立っている(資料だけを残すとなると莫大な費用がかかる)。そしてさまざまな技術も残ります。馬の扱いだけではなく、馬具、診療技術、などもそうですね。「『文化です』と自信を持って言える理由を学んでいってほしい」とおっしゃられていました。「十勝には歴史財産が残っているのだと皆に語っていってほしい」とも。「馬の担い手」というと直接馬に触れ合うことばかりを考えてしまいますが、文化を知ることもその一つ。重種馬生産が増えてほしいけれど、どうしても馬に触れ合うことができる環境にない、という方はこちら方面で学びを深めていくのも一つの手かな、と思います。そしていろんな人に語っていく人が増えれば…と思っています。次はストレートに「ばんえい競馬について」という講演。帯広市農政部参事で、前室長の佐藤徹也さんによるお話で、ばんえい競馬のトップにいる方直々に解説してくださいました。佐藤さんは、ばんえい振興室に来たのが2007年度。新生ばんえいになってからずっと競馬を見続けている貴重な方です。実は平地競馬のファンだったそう!思い出の馬はレガシーワールドだとか(笑)。最初に画面に出てきたのは、競馬法第1条。どのような内容かご存知ですか。「この法律は、馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与するとともに、地方財政の改善を図るために行う競馬に関し規定するものとする。」地方財政の改善を図るための競馬なのです。「今年ようやく寄与できるようになりました」との一言に重みがあります。成り立ちなどの歴史についてはここでは割愛します。ばんえいホームページからダウンロードできる10周年記念誌などをご覧ください。2007年(平成19年)、一市開催になってからの流れも紹介いただきました。「5、6年はどうすれば赤字にならないかのみ考えていた」。そして平成23年に転機が訪れます。それは3連単のスタート。それまでもナイター競馬という取り組みがありました。そしてネット売上が増加します。平成19年は2割だったというのが今では、92%をネットが占めているそうです(コロナの影響もあります)。これまでのPR活動、経済波及効果のほか歳出内訳、振興課の取り組みについても紹介していただきました。平成27年度から生産者賞をスタートし、厩舎や駐車場のライン引きなどの改修。最近は「明るい競馬場へ」ということで、イルミネーションが増えています。いいことばかりではありませんでした。本来馬券を買ってはいけない厩舎の人間への処分。今年の能検の件(電話が殺到したが市民からはなかったそう)。そしてコロナ禍。ここで「来場者増」から「来場のない」中での運営へと、経営方針を変更します。なかなか聞くことのない、競馬運営の話をざっとまとめると、努力や苦労などの気づきがありました。そのうえで、競馬が行われていることを実感できます。ファンみんなに知ってほしい内容でした!そして最後は、十勝管内の生産者によるパネルディスカッションが開かれました。十勝馬事振興会の佐々木啓文会長(帯広)、宝田浩二副会長(豊頃)、青年部部長の川端陽一さん(音更)の3人です。進行役は家畜改良センター十勝牧場で馬を担当している田中翔子さんです。かいつまんで紹介します。会話内容は前後している部分もあります。馬事振興会は、今は130人の生産者がいるそうです。以前は500人いたころもあったそうで、道東地区の他の振興会と集まったり、内地の競馬場を見たりしているそう。当初からの目的は「仲間づくり」。馬の世界は人とのつながりが大事だと、生産地にいくたびに思います。青年部ができたのは平成4年ですが、当時は50人以下でそれだけ跡継ぎがいなかったと。青年部の活動としては、いつもばんえい記念の日にスタンド入り口近くで馬券の買い方講座を行っています。今年4代目となった川端さんは「気軽に来てくれれば」と話していました。生産に興味がある方は話しかけてみてください。まず最初は「繁殖牝馬の交配相手をどうやって決めているか」。これについて佐々木さんは「人間関係が強い」。その市町村で種馬を扱う人がいて、その人たちとの絆が強いということ。ばん馬の血統をよく見ると、その町にいる父馬が、その町のいろいろな牧場の繁殖牝馬と交配しているのがなんとなく見て取れるかと思います。川端さんは「種馬を飼っている方に手取り足取り教えてもらっている」そうです。これぞ「担い手育成」ですよね。馬の売買について、市場か、庭先取引か、という話も出ましたがみなさん庭先が多いとのことでした。「人脈がないなら市場を使う手もある」と。「生産していて嬉しかったこと」という質問に、佐々木さんは「ばんえい記念に出したこと」。オイドンですね。ばんえい記念に限らず、生産馬がレースに出るのは「子供が運動会に出るような気持ち」といいます。「何にも代え難い経験ができるのは間違いない。儲けるなら難しいし、金目的ならやめたほうがいい」。宝田さんも「佐々木さんの言う通り」。そして「今日まで続けられたことが嬉しい」。一緒に馬を始めた中で、残っている人は周りにそういないそう。川端さんは「馬主に買われ、レースを走って上位に行くのを見ていくこと。考えていたより高い値段で買われたこと」。出産には事故もつきものです。今年も辛い経験をされたそうで「元気な馬を生産して行きたい」とのことでした。参加者からの質問で、交配は人工授精か、本交か(サラブレッドのような馬と馬との交配)、という話が出ました。ばん馬は人工授精も認められているのです。今回の参加者3人はほとんどが本交。それは、最初の話にも出たように交配相手ば人付き合いによるものだから、ということがあります。佐々木さんは人工授精はやらない理由として、創業者である祖父から「馬は因縁の強い家畜」と言われてきたことがあると話していました。生命の尊厳に対する礼儀である、と。考え方は人それぞれですが、気持ちはわかりますね。ここで、十勝牧場の田中さんから、純粋種の人工授精を十勝牧場で行っていることについて説明がありました。牧場には技術者もいて受胎率は8割と高い割合であるそうです。ここ最近はヤマトタイコーやアルジャンノオーなど、十勝牧場出身の親から生まれた産駒が競馬場でも活躍していますね。また、話の中で佐々木さんは「今やっていることが正しいんだと思わないこと」。血統も、育成方法も変わっていきます。今は競馬場で働く人が少なく、馴致にも時間がかかる。夏は広い放牧地に馬を放しますが、みなさん「クマが出て移動した」「クマがいるようだ」という話になりました。北海道の山なので、いるんですよね……。さて、私からもばんブロで紹介するにあたり「これから生産をやってみたいという人にアドバイスを」とお願いしました。佐々木さんからは、「腰を据えて生産してほしい。今回のような会で人間関係を作り、いろいろな人に聞けば、始める切り口はいくらでもある」。そして「馬好きなら。金好きはやめたほうがいい」。昔「馬は儲かる」と聞いて入ってきた人はある程度経ったらいなくなっていったそう。そういうのを繰り返し、人が減ってきたのを見てきたこともあって勧めるのにも慎重な様子でした。宝田さんは「必要なのは、土地、資産、技術、人脈」。そして「財力は間違いなくいる」。土地があれば夢を持てるかもしれないが、馬では食べていけないし、生産は24時間必要だから、時間の使い方も考えなくてはいけない。人脈を使っても、片手間にできない。素人が手を出すものではない。と、なかなか厳しい意見でした。それだけの覚悟は必要ということですよね。厳しいけれどおっしゃるとおりだと思います。馬が好きなら自分で生産をしなくても、人に預ける手もあるという話もしていました。川端さんも「本業あっての生産。馬を飼うのは難しい。経費がかかる、それに尽きる」。話を聞きながら、20年以上前、私がサラブレットや乗馬の世界で話を聞いたときも、このような雰囲気だったなと思いました。サラブレッドの世界では就業応援サイトの「BOKUJOB」開設など以前よりは体制も整い始めているとはいえ、それでも人不足。難しい問題ですね。人脈が必要というのは強く思います。どの世界でもそうですが、人の縁を信じ、話を聞いて受け入れていく柔軟性がある人はすっとその世界に入っていくなぁと思います。全ては行動力。20年前、そのような状況の中、競馬の世界に入っていった人たちが活躍している話を聞くたび、ばんえいの世界でも…と思います。馬の担い手を増やすための企画はこれからも行われていくと思いますので、今後も紹介していきたいと思います。取材/小久保友香
2021年11月25日
八雲町熊石から南下して、江差町の廣部武士さんの牧場へ。フクイズミとその娘イズミクィーン、クインフェスタが過ごしています。クインフェスタは息子のキングフェスタがナナカマド賞を制し、今後の活躍が期待されます。長男コマサンエースも活躍中で、すでに繁殖としても名牝といえるでしょう。1ヶ月前訪れた時には、クインフェスタとイズミクィーンは放牧地にいました。馬房とつながった小さな放牧地で、3頭は仲良く過ごしていました。気の強いフクイズミとクインフェスタは、それぞれがお互いを認めあっているのか、喧嘩することもなく対等。そこにイズミクィーンが遊びに来る。ここまでいい関係があるか!? というくらい、穏やかで緊張感のあるように感じました。3頭とも来年の出産はないので、この関係がしばらく続きそうですね。近くには、フクイズミの息子で種牡馬となったイズミオーがいました。少し白くなったかな…?今年は数ヶ月十勝に行き、10数頭に種付けをしたそうです。どのような子が生まれるのか楽しみです。イズミオーの隣にいたのが、クインフェスタの当歳馬(父イズミオー)。キングフェスタの半弟になります。生まれた時からかなり大きかったようで、成長が楽しみです。かなりやんちゃなところを見せ、廣部さんを手こずらせていました(笑)ファンの方の見学は受け入れています。この後、江差から東に向かって渡島半島を横断し、北斗市の「きじひき高原」を訪れました。展望台からは絶景が広がります!右側には函館市街地や函館山、津軽海峡、北海道新幹線の高架橋が、左側には駒ケ岳や大沼が見えます。この日は遠くに羊蹄山まで!きじひき高原には北斗市営牧場があり、馬や牛が放牧されています。近年馬が増えていて嬉しいです。一般的な公営放牧地は一般には開放されておらず、馬を見にいくのはなかなか難しい。しかしここは展望台のそばに放牧されているので、柵沿いから広大な景色とともに馬が放牧されている姿を見ることができます(6月~10月頃まで)。なぜ馬を放牧するのかはこちらをご覧ください。ばんば牧場便り【 Vol.26 】夏の放牧 https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/202006240000/取材/小久保友香・小久保巌義
2021年10月28日
10月に北斗市で行われる草ばん馬大会に合わせて、道南の馬たちに会いに行くのが恒例になっています。今年会った馬たちを2回に分けてご紹介します。まずは八雲町熊石にある大竹さんの牧場にいる、種牡馬のライデンティダと繁殖牝馬のキサラキクに会ってきました。ティダはばん馬大会に出場するため、牧場から2~3キロ先の砂浜まで馬運車で移動して調教をつけています。大竹さんとの縁ですっかりばん馬好きになった、近くに住む水上さんが、娘さんと親子でティダの手入れをします。毎日、水上さんは「ざぶとん」といわれる、ガラの下に敷く馬具を手縫いで作っていました。優勝旗のようなひらひらがかっこいいですね。ぎりぎりばん馬大会に間に合い装着! ほぼぴったりです。きらきらと輝く日本海を背景に、ティダは砂浜を歩きます。釣り人は少なかったなぁ。坂を使って障害練習撮影のために私たちもひたすら歩きますが、重い馬場に脚を取られて疲れます…。このようなときは、海水に濡れた砂を歩くと楽です。コースの軽馬場、重馬場と同じ理屈ですね。競走馬はは軽いとスピードレースになるので違う疲れが出るそうですが、私たちは軽いからといって走りません(笑)。このあたりはいい温泉が多く、湯の花を脚につけて皮膚を保護しているそう。もぐもぐと美味しそうにご飯を食べるティダを見ながら、水上さんは「前にいた馬もそうだけど、ここ(大竹さんの牧場)に来た馬は幸せだ」。本当、そう思います。ティダ、草ばん馬大会でも優勝!! 高重量戦は2着でした。牧場の近くのある放牧地には、キサラキクがいました。なかなか受胎しなかったキクちゃんですが、今年はティダの子を宿しています。妊娠するために周りの方々はさまざまな努力を続けてきました。当たり前のように子馬や産駒のデビューを見てきますが、実は大変なことなんですよね。健やかに過ごしてほしいです。ファンの方の見学は受け付けています。以前の牧場便り。調教について紹介してますばんば牧場便り【 Vol.031 】八雲町・大竹さんの牧場https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/202011250000/ばんば牧場便り【 Vol.010 】キサラキクがいる八雲町・大竹さんの牧場https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201905300000/取材/小久保友香・小久保巌義
2021年10月21日
オホーツク牧場めぐり、訓子府町の次は網走市へ。網走監獄や流氷が有名な観光地です。看板を目印に、能取湖沿いにある佐藤牧場さんにお邪魔します。牛舎がずらっと並び、入ってはみたものの…佐藤さんはどこに?!広すぎて電話してしまいました。こちらには昨年から種牡馬入りしたトレジャーハンターがいます。2012年ポプラ賞、2013年ドリームエイジカップを制し、ばんえい記念にも出走していますがスピード馬のイメージもある馬です。兄インフィニティー、妹クインフェスタも重賞勝ち馬という名血です。筋肉が目立つかっこいい馬を発見。トレジャーハンターでした。とてもおとなしい。佐藤さんによると「隣にいる牝馬とグルーミングするんだ。珍しい」と。その牝馬は、昨年ナナカマド賞を制したアバシリサクラの母、琴桜だそう。種付けのときはパワフルだそうで、オンオフがはっきりしているのですね。今年生まれるはずのトレジャーの子は流産してしまったそうなので、来年に期待です。トレジャーハンターが来たのは昨年春。種牡馬として導入した理由は「ほっぺすごいでしょう。あごの張りがすごい!」また、血統的な理由ももちろん。きょうだいが走っていることと、タカラコマが入っていることが魅力だそう。「帯広で、いかにオープン馬を作るか」。今の活躍馬を見ると、帯広ではパワーだけではなくスピードも必要ですよね。「サラブレッドと同じように血統を大事にすることで、安定した馬づくりにつながる」といいます。いい馬はどうしてできるのかな、と日々考え続けているそうです。その佐藤さんが「私以上に血統を求めた」というのがウンカイを生産した帯広三井牧場・三井樹雄さん。「今は血統を語れる人が少なくなった」と話していました。繁殖牝馬は6頭。生産馬のほか、タカラコマの血を引く馬など、血統的魅力のある馬たちが大事に育てられています。「障害力は遺伝が多いな」とのこと。2019年の第17回北海道総合畜産共進会で最高位を受賞したウィナーサラも元気でしたよ! https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201910020000/このときの記事でも書きましたが、サラが引退した2018年は、ばんえいが存続できるか心配で、3歳で黒ユリ賞4着の活躍馬が引退することに驚きました。ばんえいが続くと信じ生産を続けた佐藤さんの勇気が実を結んだと感じます。1歳馬は買った馬も含めて3頭いました。体力が付きそうな山の上の放牧地と下とを行ったり来たりしていました。この山の上に放牧地があるそうです肉牛を営む佐藤さんは1972年に網走市内から、今の場所に移動。最初はお父様が馬、佐藤さんが牛を中心に営み、30年ほど前は馬が80頭ほどいたこともあったとか。「(重賞の)肩掛け30本だよ!」今では200町の牧場に600頭近くの和牛がいる大牧場です。息子さんが社長となった今は、佐藤さんが熱心に馬の面倒を見ます。佐藤さんは共進会でも1等が多く、とても丁寧に馬を仕上げられます。十勝のグランドチャンピオンとなったニュータカラコマもはじめは佐藤さんの馬でした。部屋に所狭しと並ぶ馬の写真を見ると、引退時は違うオーナーだったような…?という活躍馬が多く、この馬の話を聞いてもいいのかな?と思うのですが「その馬が一番高いときにどうするか、なんです。経済を回す」。ばんえいの世界は、馬の売り買いが盛んに思います。そのようにして、経済を回していくのが昔ながらの馬社会なのかな、と感じます。以前は「ウィナー」という冠でしたが、網走市内の牧場が佐藤さんだけになってしまったということで、今は「アバシリ」。今は少なくなってしまいましたが、網走、北見は名馬が多くいた地でした。二世ロッシーニがいたのも網走市藻琴。楓朝(ふうちょう)は紋別市、タカラコマがいたのは、網走市の東、北見市常呂町でした。「タカラコマの子は全部テスト(能検)受かったんだ」。北見競馬のレース名にもなったペルシュロンのオナシスは網走の卯原内にいたそう。オナシスの産駒には、初めて牝馬でばんえい記念を勝ったダイニミハル、その前年の優勝馬カツタローなどがいます。過去のばんえい記念優勝馬を見ていたら、父がオナシス、楓朝、二世ロッシーニとこのあたりの馬たちが並んでいました。ここからは想像ですが、オホーツク地区は林業が盛んだからパワータイプの馬が多く、結果ばんえい記念を勝つ馬が多かったのでしょうか…?さて、馬が走り出したのは、コロちゃんという捨て犬が数十年前に家にやってきてから。漁師町らしく、アラをコロちゃんのために魚屋に頼むなど大事にしてきたそうです。その後もいろいろな犬が佐藤家にはいたそうです。守り神なのでしょうね。猫もたくさんいました。馬は「生きがい」。「夢をいかに追い続けるか」と80歳の佐藤さんは話します。牧場の見学は可能で、すでにファンも訪れているそうです。網走のアプト・フォーという商店街には、直営場外馬券場「アプスポット網走」があります。網走市出身の七夕裕次郎騎手(浦和、岩手で限定騎乗中)の情報も展示されていました!取材/小久保友香・小久保巌義
2021年08月12日
今月、訓子府町の岩渕寿和さん(71)の牧場を訪ねました。ここには種牡馬として大活躍中のレットダイヤがおり、会うのを楽しみにしていました。帯広から北上し、陸別町を過ぎると訓子府町です。玉ねぎなど畑作が有名。ご当地グルメは「訓子府たれカツ丼」です。岩渕さんは馬の生産のみ行い、息子さんは畑作農家さんだそうです。牧場に着いて岩渕さんにご挨拶すると、目の前にいた馬を差し「シリウスだよ」。2015年の黒ユリ賞、ばんえい大賞典を制したシリウスが繁殖入りしていました。仔馬はまだのようですが、種馬を見るたびにヒヒーンとアピールしていました(笑)。元気そうです。まずは1歳馬たちにご挨拶。「これから高柳さんも来るって」と、レットダイヤの競走馬時代のオーナーであり、アルジャンノオーなどの活躍馬を持つ高柳稔オーナーが隣の北見市から来られるそう。恐縮しているいると「毎日来てるから(笑)」と。いつも馬を見に来られるのですね。1歳馬は7頭。レットダイヤと、もう1頭の種馬フクノカミカゼの子らが、ちゃつ(小さな放牧地)元気に遊んでいました。1歳にしては大きく感じます。前日、頭に装着する「もくし」を全頭につけたそうで「命がけだった」と。近くの馬好きが来て手伝ってくれるそうです。高柳さんも到着。子どもたちに目を細めていました。さて、2015年に引退したレットダイヤ。2歳が4世代目となります。ご存知の通り、3歳世代は能力検査も出走馬が上位を占め、アルジャンノオー、シュトラール、ニュクスなどの活躍馬を輩出。2歳もグリフィスが今年の能検1番時計。残念ながら種牡馬にはなれなかった、ホクショウマサルの半兄でもあります。姿を見るのは引退式以来。種馬になるとここまで風格が出てくるのか!! かっこよかった。元気に過ごしてほしいですね。岩渕さんによると「扱いやすい。若い牝馬にはうるさいかな」とのこと。骨が太いのが特徴で、それを引き継ぐ子が多いので大型に出るのでは、という話でした。レットダイヤのオーナーは高柳さん。岩渕さんが預かることになってからの縁だそうです。高柳さんは自ら持った馬の子や孫を大事にして、今でも持つことが多いですね。やりたくてもなかなかできないこと。その子がここまで活躍するなんて夢のようですね。もう1頭の種馬フクノカミカゼは、父はフクイチ、母は純ペルシュロンの出夢七世(いでゆめななせい)で、名牝「イデユメ系」。ペルシュロンの血を濃く持ち、血統的な人気があります。「血統の改良にいい」と岩渕さんも魅力を語ります。2014年、12歳で50勝目の有終の美で引退し、5世代がデビュー。産駒には、母はレットダイヤの妹(フオルトプリンセス)というレッツゴーリータンもいますね。ギンノカミカゼが今年の能検2位のタイムで合格し(岩渕さんの種馬が違う馬でワンツーだったんですね)、これからに期待、というところで病気で亡くなってしまいました。「レットダイヤは活躍していて、ついにフクノカミカゼの時代が来た、というところで…」と残念がる高柳さん。これからもフクノカミカゼの産駒に期待したいです。さて、こちらはなんだと思いますか?実は岩渕さんのもとにはもう1頭種馬がいました。この子です。この子が大きさの違うポニーに種付けするときに使うんですって。ポニーなどの小格馬の場合は、馬の大きさが違うから種付けも大変ですよね。いろいろ考えられているんだなぁ。昔から家に馬がいた岩渕家は、昭和50年代に「マゴロツシーニ」を導入したのが種牡馬としてのスタート。その名の通りロッシーニの孫で、父は名種牡馬二世ロッシーニです。この頃は、この地域で楓朝(ふうちょう)やタカラコマが活躍していた時代。競馬が盛り上がっていた時期ですね。種馬として過ごしていたタケノタイトルの子で今年から種牡馬となったホンインボウも生産馬。ギンガリュウセイも生産し、母の北富士は26歳まで繁殖を続けた名牝だったそうです。母馬の多くは、放牧中ということで会えませんでした。岩渕さんも、夏は町営牧場に馬を放しているそうです。ファンの見学も可能とのことです。「今は(放牧していて)馬が少ないよ」とのことでした。さて、昨年12月から、岩渕さんは自らデビュー前の育成をはじめました。「馬がいて競馬場に入れても、育成する厩務員がいない」と。つなぎ場とタイヤ付きそり生産者は支援が増えて賞金もつくようになってきたが、厩務員が少ないのはなんとかならないか、と高柳さんも嘆いていました。どこも人不足。生産牧場でも、岩渕さんのように種牡馬を扱うのは簡単ではありません。牧場近くの育成場にある小屋には肩掛けや盾が飾られていました。「これがほしくてやっている。お金で買えるわけじゃないんです」と高柳オーナー。ここでは、馬談義で盛り上がります。そういえば、2歳に「キタミサンブラック」がいますよね。こちらは岩渕さん生産(訓子府産ですね…)。「青毛(ブラック)だし、(生産地特別戦も)北見産駒になるから」とにやり。ナイスネーミングです!小屋にいると、近くの馬友達が集まってきました。育成も手伝ってくれるそうです。牧場と、それを支える周りの人たちの存在を感じられる旅でした。ビート畑を前にシュトラールの全弟と母美鈴北見市の場外発売所「ミントスポット北見」にも寄ってきましたよ。取材/小久保友香・小久保巌義
2021年07月29日
ナナノチカラの子が生まれたと聞き、足寄町の加藤信一さんの牧場を訪れました。昨年「ハチ」が生まれ、今年はフジダイビクトリーとの男の子「キュウ」が3月に生まれました。父に似た栗毛流星で、もうなつっこくて…(笑)。さすが男の子だな、という元気っぷりです。ナナはずっとご飯を食べていて、なかなかこっちを見てくれず…引っ張ってきてもらいました汗体が小さい馬ですが、子どものためにと一生懸命ご飯を食べ続けているのでしょうか。「いつも食べている」そうです。ナナノチカラは今年、コウシュハウンカイの子を受胎しているようです!楽しみですね。メヂカラとフジダイビクトリーの子も生まれていました!プレシャスリンとの子は草に埋もれています……今年のフジダイビクトリーの子は栗毛流星が多いですね。フジダイビクトリー、昨年、今年と50頭以上はつけているそう。1歳となる初年度は引退した年で移動もありそんなに頭数はいないようですが、だんだんと増えるのは素晴らしいですね。加藤さんの牧場にはライデンロックのほかに、もう1頭種牡馬が来ていました。江差にいたイズミオーが、繁殖シーズンということで十勝に移動してきていました!ここは父カネサブラックがいた牧場。父以上の活躍、となるでしょうか。イズミオーを種付けするために、メメノチカラとアアモンドノースが嫁入りに来ていました。メメノチカラ別海のメメちゃんとノースは前回の牧場だよりで紹介しています https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/202104070000/珍しく両目が魚目(さめ)のメメちゃん、子どもも片方ですが魚目。すぐ隠れてしまってこの写真ではわかりにくいかな…また、この日はセイコークインがいる上士幌町の金福畜産を訪れました。セイコークインはフジダイビクトリーとの子を出産。セイコークインの放牧地には3組の親子がいました。セイコークインに2頭栗毛流星の子馬がくっついていて、子どもはどっちかな?と思ったら、遠くで寝ていた鹿毛の子がやってきて、お乳を飲み始めました笑。みんな入り乱れて仲良しでしたね。セイコークインは今年もフジダイの子を受胎しているそうです。11歳まで現役を続け、草ばん馬でも活躍していたニューカツタローも種馬として元気に過ごしています。おとなしい馬なんですよね。取材/小久保友香・小久保巌義
2021年06月23日
アンローズという牝馬をご存じでしょうか。名種牡馬ウンカイの妹で、2002年のダービーとオークスのほか2004~06年岩見沢記念3連覇などの記録を残す名牝。名門三井牧場の出で見た目も美しく、「ご令嬢」という表現がぴったりでした。唯一の息子、キタノキセキが種牡馬になったということで、別海町の粂川正幸さんの牧場を訪れました。牧場便りの写真を担当している小久保巌義はアンローズのファン。(文章担当は妻の小久保友香です)生まれたころからキタノキセキを追いかけていました。「かわいかったんだよ」と言ってますが、今はすっかり12歳のおじさん笑。それでも長く競走生活を続けることができました。ウンカイの種牡馬が増えている今、種牡馬入りしたことは嬉しいです。粂川さんに案内されて、キセキ君の馬房へ。ちらっとこっちを見たあとはじーーっと横を見たまんま。「覚えているか~」と言っても、ちらっと見て、それからまた横をじーーっ。目線の先には牝馬がいました。すっかり種牡馬の性格になってしまったようです(笑)。良いことです!牧場に到着した時は、汗をかいて、ご飯もなかなか食べないなど緊張していたそうですが、だいぶ慣れてきたのでしょうね。父は純ペルシュロンのトウカイシンザン。試験種付けも上手だったといいますし、花嫁も決まっているようで、産駒の誕生を楽しみに待ちたいです。それにしてもファン目線ですが、キタノキセキ、いい馬だなぁと惚れ惚れしてしまいます。「(祖父の)マツノコトブキがこんな感じだった」と粂川さん。本当ですか!! ファンへのリップサービスかなと思いつつ嬉しいですね。マツノコトブキの母初姫は、「サラブレッドみたいに小さい馬だった」そうです。帯広競馬場南側に展示されている「生産者の祭典」パネルで、ウンカイのパネルの下にマツノコトブキと二世ロッシーニの立ち写真がありますので、競馬場に来ることのできる方はご覧ください。粂川牧場といえば、ばんえい競馬初の1億円馬、キンタロー(1977生)の生産牧場でもあります。母・宝玉(ほうぎょく)から取り上げたとき、粂川さんも「これは大きい」と思ったそう。宝玉は当時は甲乙丙の「乙」と評価されたそう。しかしキンタローをはじめクメワカやクメチカラといった牡馬も繁殖入り。娘キタミヒメも血をつないでいます。お腹にキンタローが入ったまま草ばん馬にも出走し、かなり強かったそうですよ。昔は繁殖馬たちもよく草ばん馬に出ていました。キンタローは16歳のときの子。27歳まで生きた、元気なお母さんだったようです。3歳特別を勝った時のキンタローの貴重な写真。その下には引退式や共進会のレイがありました。2006年の蛍の光賞(定年制があった時代に定年の11歳牡馬、8歳牝馬によるレース)を勝ったクメノビューティーは、祖母がキンタローの妹キタミハナさて、キンタローの父は純ペルシュロンの二世ロッシーニ(1966生)。マツノコトブキの父も二世ロッシーニですね。2006年までは名を冠にしたレースもありました。網走にいた二世ロッシーニは、流星がきれいで胴長。ひふが柔らかく「ポコポコ歩く馬だった」そう。当時、近くには「楓朝(ふうちょう、1968生)」がいたため、そんなに人気はなかったそうですが、サロマシンザンなどの活躍馬を出し、年間120頭ほど人工授精を行ったそうです。二世ロッシーニが亡くなった時は、馬では珍しい農協葬が執り行われました。ちなみに「2世ロッシーニ」(1969生)という数字の馬もいます。純ペルシュロンの青毛で、阿寒にいたので「阿寒ロッシーニ」と言う人もいますね。馬事協会のページで検索をすると(すべて大文字の「ロツシーニ」です)、「ロッシーニ二世」という子どもや牝馬の「二世ロッシーニ」などいろいろいますね…。粂川さんは年に数回、帯広競馬場で馬車体験を行っているはまなす乗用馬生産組合などの会長でもあります。牧場にはポニーや乗用馬、道産子もいます。キタノキセキが来る前まではトウリュウがいたのですが、1月に亡くなってしまったそう。いろいろな馬の話を聞かせていただき、勉強になりました。粂川さん、ありがとうございました。牧場にいた1歳馬それから「すぐ近くだよ」と聞き、車で10分ほど走り(北海道の「近く」には気をつけてください!)、町内の坂脇牧場さんへお邪魔しました。メインは牛の牧場ですが、こちらにはメメノチカラやアアモンドノースがいます。現役時の2頭です珍しく両目が魚目(さめ)のメメちゃんは4月下旬に出産予定だそうです。坂脇さんは浜中町のクラブで乗馬にハマり、そのうち「乗るなら北斗の拳のような重種馬に」とばん馬を飼いはじめたそう!馬を置ける場所があることや、周りに馬を飼っている人がいるという強みはありますが、馬が好き、という情熱と行動力で、馬と住む夢を叶えた方がいるのですね。取材/小久保友香・小久保巌義
2021年04月07日
皆様はじめまして!帯広畜産大学・大学院生の矢野と申します。現在、私は楽天競馬様と共同でばんえい競走馬を対象に「飼料」「微生物」「疾病」の3つの要素に着目し、これらの相互関係を調査することで競走馬をより健康に管理するための基盤データを構築することを目指した研究に着手しています。今回は、太田アナウンサーより私たちの研究をご紹介する機会をいただきましたので簡単にではありますが、1. この研究に取り組む目的2. どうして「微生物」の解析を?3. この研究が今後のばんえい競走馬に対してどの様に役立つか4. 現在の進捗状況といった内容を書かせていただきます。1. この研究に取り組む目的上述した様に、この研究の目的はばんえい競走馬を健康に管理するための基盤データを集めることです。では現行の飼養管理は不健康な管理なのか!?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう訳ではありません。実際、競馬場のほとんどの競走馬は1シーズン通してレースに出走し、我々競馬ファンを楽しませてくれています。ですが、その中には蹄葉炎(蹄の病気)や疝痛(腹痛)といった病気になってしまう子達がいるのも事実です。この様な病気は穀物飼料などの高栄養価飼料を多給する管理形態が一因とされていますが、レースで高いパフォーマンスが求められる競走馬においては穀物飼料の給与は不可欠です。大切なのは健康を害さずに能力を最大限に発揮させることができる給与飼料のバランス。しかしながら、ばんえい競走馬においてはこれを実現するためのデータがサラブレッドと比較して不足している現状にあります。この様な状況下で、ばんえい競走馬を管理されている厩務員さんは、担当馬の状態を見極めながら、これまでの経験をもとに飼料設計を組まれていることだと思いますが、今のところ明確な基準はなく、さじ加減はそれぞれの厩務員さんや調教師さんに委ねられています。想像してみてください。もしも、馬体重が○○ kgで運動強度が△△のウマには□□の飼料を×× kg給与、といった様に飼料設計が標準化されていれば、飼養管理はうんとやり易くなると思いませんか!?こういった情報を蓄積し、整備するのには膨大なデータと時間を要しますが、私たちが現在進めている研究はその基盤として必ず役に立つものだと思っています。2. どうして「微生物」の解析を?ばんえい競走馬を健康に管理するのだから飼料や疾病データを集めるのはわかるけど、どうして微生物?と思われる方も沢山いらっしゃると思います。端的に言うと、ウマの栄養獲得において消化管内に共生する微生物は必要不可欠だからです。ウマは自身の消化酵素では摂取した牧草飼料などを分解・利用することができないので、その役割は消化管内の微生物が担っています。一口に微生物と言ってもその種類は多岐に渡ります。牧草を分解するのが得意なヤツ(繊維分解菌)もいれば、穀物を分解するのが得意なヤツ(デンプン分解菌)もいます。ばんえい競馬でも障害は苦手だけど降りたら速いキタノサムライみたいな子もいれば、直行でも登坂できるけど降りてからはゆっくり歩くヤマノホシみたいな子もいますよね。ウマの教科書を開くと、繊維分解菌が・・・、デンプン分解菌が・・・、と書かれていますが、大まかな分類はできても飼料の分解能力やウマのエネルギーとなる物質の特性は微生物の種類によって大きく違います。そんなヤツらがばんえい競走馬の消化管内には何千種類と居て、互いに協力・競合しながら絶妙なバランスを保ちウマのエネルギー源をせっせと作り出しています。この様に、ウマが摂取した飼料分解の大部分を担う彼らの特性を紐解いていくことはウマの栄養獲得や健康状態を理解する上でとても大切なことなんです!「待てよ、飼料の分解を担うのは微生物で、しかもそいつらには得意不得意がある・・・じゃあウマが食べる飼料によって微生物の種類とか存在比率が変わるんじゃないか??」と思った方がいるかもしれませんが・・・その通りです!微生物は宿主が摂取した飼料の種類によって組成が変化します。そしてこの変化が悪い方向に行くと、上述した蹄葉炎や疝痛の発症に繋がってしまいます。だからこそ、「飼料」「微生物」「疾病」の3つの要素を統合的に解析していく必要があり、給与する飼料の種類や量が異なるウマのデータを集める必要があるのです。3. この研究が今後のばんえい競走馬に対してどの様に役立つかずーっと先の未来の話を書かせてもらえるのであれば、微生物動態を起点とした健康かつ強い競走馬作りのための飼養管理基準の構築に役立つ研究です。先述した「馬体重が○○ kgで運動強度が△△のウマ・・・」ってヤツですね。とは言っても、この研究は3ヶ年計画で進めている研究なので、できることには限りがあります。ですから、第一段階としてはこれまで取り組んできた「飼料設計の差異が微生物叢構成に与える影響」や「微生物叢構成の差異と疾病罹患頻度の関連」に関する研究をより規模拡大したうえで実施し、より正確で汎用性の高いデータを集めていくことが当面の課題になるかと思います。そのうえで、穀物飼料の適性給与量や疾病の発症に関与する細菌群を特定できれば、今まで以上に健康なばんえい競走馬の維持・確保に役立てることができます。そして競馬場だけでなく、生産牧場にもデータを応用させ、健康な競走馬資源の確保や引退して競馬場を去った後も種牡馬や繁殖馬としてより長く活躍できる環境整備に役立てていきたいです。また、ばんえい競走馬だけでなく、飼養管理者に対しても役立つ研究だと思っています。具体的には、「エンバク〇〇 kg以上給与すると体調崩すからダメ」ではなく ↓「エンバク〇〇 kg以上給与すると、消化管内で△△や□□の菌が増えて××になるからダメなんだよな」という風に、一連の流れを理解し、説明できるための知識を深めていただく絶好の機会だと思っています。4. 現在の進捗状況新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、当初の予定通りに研究を進めることができていませんが、先日本研究にご賛同いただいている厩舎を数件訪問させていただき、厩舎で使用している飼料を少しばかり拝見しました。具体的な給与量等はこれから調査させていただきますが、やはり厩舎によって使用する飼料に違いがあり、同じ厩舎でも競走馬によって若干変える場合もあるとのこと。他にもサンプリング時間を統一できなかった場合を想定し、異なる飼料条件下で管理されているばんえい競走馬の糞便内細菌叢構成の経時的変化を調査させていただきました。一定の時間内であれば糞便内細菌叢構成は大きく変化しないという解析結果が得られたので、今後の試験設計に活用していきます。やるべきことはまだまだありますが、できる範囲で少しずつ研究は進めております。これから忙しくなっていきますが、体調に気をつけながら精一杯頑張りますので応援のほどよろしくお願い致します!
2021年03月16日
青森県の下北半島北東端にある尻屋崎には、「寒立馬」と呼ばれる大きな馬が放牧されています。20数頭の繁殖牝馬がおり、夏は種雄馬も加わって、自然に過ごす姿が観光資源となっています。寒立馬の光景として目に浮かぶのは、雪の中じっとたたずむ姿ではないでしょうか。カモシカが雪の中じっとしている姿を、マタギの言葉で「寒立ち」といいます。1970年、尻屋小中学校の校長先生が詠んだ句「東雲に 勇みいななく 寒立馬 筑紫ケ原の 嵐ものかは」が「寒立馬」の由来です。寒立馬の撮影のため、2月にフェリー(ほとんど人がいない!)を使って東北へ向かいました。冬季は「アタカ」と呼ばれる越冬地で過ごしています。南部馬を先祖とする田名部馬にブルトンやペルシュロンを掛け合わせ、大型化してきました。ばんえいの競走馬ほど大きくはないですが、ずんぐりむっくりとしてかわいらしく、それぞれ名前がついています。天気予報を見て、雪が降りそうな日を狙ったのですが、寒くて細かい雪は強い風に飛ばされてしまいました。寒立馬は観光地ということでもちろん見学可能です。馬たちは草原や林の中、海沿いなど広い場所をを自由気ままに移動しているため探すのに一苦労。見つけるとたいてい固まっているのですが…。インターネットの検索窓に「寒立馬」と入れると、「寒立馬 いない」と出てきます(笑) 探すのが楽しい!それに比べると、アタカにいる時期は探しやすいです。海沿いにもやってきましたさて、種馬はどのような馬かというと、ほとんどが家畜改良センター十勝牧場出身の馬たち。放牧されていない時は近くの村営牧場にいます。昨年までは、競走馬の血統表でも見かけるペルシュロンの士令でしたが、昨年亡くなったとのことで、今年新しくペルシュロンの「得圭」がやってきました。まだ3歳。若くて元気!遠くから走ってきて、びっくりさせる、というのをやってきます笑少し前に種馬だったブルトン種「蛉鎧(れいがい)」もいました。これまで種馬にはブルトンが多かったため、繁殖牝馬となった馬たちも栗毛が多いです。これからはペルシュロンを継ぐ、芦毛や青毛の馬が増えてくるのでしょう。さて、アタカの帰りに六ヶ所村にいるファーストスターに会ってきました。ファーストスターといえば、ばんえい記念に出走した2015年、時間をかけながらの感動的なゴールを覚えている方も多いでしょう。大藤工業の敷地内にいるファーストスターは、青森や道南の馬力大会で活躍。昨年はコロナ禍でほとんど大会が中止。大藤工業が主催する大会も中止になってしまいました。道南の草ばん馬に登場しました。そりには乗らない「東北方式」。活躍の場がなかったのでは……と思っていたところ、昨年から種牡馬生活をスタートさせたそうです。コロナ禍ということもあり遠くまで種付けには行けなかったそうですが、今年初仔も生まれる予定です。ばん馬の種馬はスリムになります! 種付けも上手とのこと。「ホシくん」と呼ばれ、かわいがられています。三沢では、ファーストスターが2012年の天馬賞を勝った時のオーナー小向さんに、当時の写真や馬具を見せてもらいました。名前入りの背吊りと頭絡!かっこいい。ばんえい記念でもつけていたそうです。愛情を感じますね。大きな写真とレイが飾られています。取材/小久保友香・小久保巌義
2021年03月10日
ばん馬の牧場では夏の間、繁殖牝馬を広い放牧地で過ごさせることがよくあります。詳しくは以前の記事をご覧ください。ばんば牧場便り【 Vol.26 】夏の放牧https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/202006240000/夏に放牧するということは、冬が近づくと馬たちは牧場に戻ってきます。と書くと簡単なことのように思えますが、想像してみてください。広い広い放牧地にいる馬たちを集めて、1頭1頭馬運車に乗せるということを…サラブレッドのように、毎日馬房と放牧地を行き来していれば、ある程度慣れもあるかもしれませんが、年に1回、野生に近づいた馬たちの収牧がどれだけ大変なことか。しかも子馬は成長しています。山々も冠雪。中央の噴煙が上がる山は雌阿寒岳。11月のある日、馬運車が放牧地にやってきました。馬を預けている牧場の方々と、またお手伝いとして舘澤騎手が登場です。牧場の方にも「助かるわぁ」と言われていました。まずは、馬を水飲み場があるところに追い込むそうです。馬たちは、山の中腹で固まっていました。人間を見つけて、わらわらと集まってくる馬たち。……と思っていたら、そのうち山の一番上に行ってしまいました(汗)。あらためて、20頭近くいる馬の中から、ボスに君臨している馬を捕まえて引っ張っていきます。一度馬を間違えてしまって引っ張ったら、馬はばらばらになってしまったそう。ボスってすごい統率力…馬は人に引かれて、ゆっくりと戻ってきました。そろそろ家に帰るってわかるのかな? 我先にと走る馬たち。そのうちみんな水飲み場に集合。すごい。柵を立てて、外に出ないようにします。ここでは、ラッセルクインやヤマトジャパンなどの母・良姫とマサタカラの母エポナビューティーがボスとのこと。舘澤騎手は騎乗したこともあるエポナを「愛馬。」となでなでしていました。左がエポナビューティーばんえいの世界では、小さめの放牧地のことを「ちゃつ」といいます。何語かも漢字もよくわからない独特の言葉。通路のような道を通り、馬たちをちゃつに入れて、ここから馬を引っ張り馬運車まで連れていきます。みんなちゃつに入ってる。戻れるってわかっているのかなぁ。馬運車まで引っ張っていく前に、馬の頭に無口頭絡をつけることが必要。そうしないと馬を捕まえられないですからね。親は比較的すぐできますが、子馬は難しい。そのため、この枠「地獄」に入ってもらい、無口をつけます。右の枠が「地獄」入れるの大変だろうなと思っていたら、子馬はなぜか自分で入っていくんです(笑)ちなみにこのような放牧地は基本的には牛用。地獄などの設備も牛用です。周りを囲って無口を付けて、手前のドアをオープン!それからは、馬運車に乗せるという苦労が待っています。「一回乗ったべや」「みんな乗るんだって、おまえだけじゃないんだって」とかなだめながら馬を入れていきます。途中で引き手が外れた子もいましたが、お母さんに付いていってました(笑)なんやかんやありながら、無事みんな馬運車に乗り、牧場へと帰っていきました。「今日は思ったより早く済んだ!」と牧場の方。この牧場ではまだしばらく親子一緒に過ごしますが、牧場によってはこのタイミングで離乳させるところもあります。十勝は馬を下げるのは10月末~11月ころですが、暖かい道南は12月まで馬を置いておくそうですよ。取材/小久保友香・小久保巌義
2020年12月23日
田山産業の草ばん馬競技大会に合わせ、道南にいるばん馬たちに会ってきたときの話、2回目です。ライデンティダがいる八雲町熊石から車で30分ほど南下し、江差町へ。牧場についても、牧場主の廣部武士さんが現れないな、と思っていたら電話で「山田さんとこにいる」。ということで、すぐ隣(といっても車で3分ほど)にある、アアモンドグンシンを生産した山田常雄さんの牧場に移動しました。グンシンの母、サトミクインなどの繁殖牝馬は放牧されているということで今回は会えず。ちなみに、サトミクインの母はヨウテイクイン。以前ご紹介したニセコ町の堀牧場の生産です。堀牧場があるのが「里見」という地域なので付けられた名前だそうです。山田さんの牧場では、アサヒリュウセイが種牡馬入りしていました。アアモンドヤマトもいました。前髪が立派で、特徴の星が見えなかったのでかきわけて撮影(笑)アアモンドヤワラは亡くなってしまったそうです。裏の放牧地には放牧地に移動していない繁殖牝馬が何頭かいました。繁殖入りしたばかりのテツアズマも牧場にいましたよ。山田さんの牧場は「第32回ばんえいグランプリ 生産者紹介動画」でも紹介されています。今回行けなかった放牧地も映っています。道南の方言はかなりきついのですが、山田さんばりばり!(笑) https://www.youtube.com/watch?v=EdHqCc2SB48山田さんは今年のばんえいグランプリの生産者表彰の際、記念品としてもらったブルゾンを着ていました。写真撮らせてもらえばよかった! またの機会に。競馬場や市場で着ている生産者の方をたまに見かけて、目立ってかっこいいんです。2人の話は尽きません。こうやってつながりができ、「道南血統」ができていくのだと思います。ばんえいの血統は地域性が特徴だと思っています。帯広一市開催となっても、地域の血脈を受け継ぐ人たちがいます。さて、廣部さんの牧場に移動しました。ここではフクイズミとクインフェスタ、名牝2頭が過ごしています。フクイズミの子、イズミオーもつい最近種牡馬入り!重賞12勝のフクイズミ浅田達矢騎手とのコンビでヒロインズCを制したクインフェスタ3歳のイズミオーはまだ芦毛の色が濃いですね以前、「フクイズミとクインフェスタは仲が良くないから牧場と放牧地を分けている」と聞いていたのです。お互いトップホースですからプライドが高いのでしょうか。でも今回はずっと一緒にいました。「仲が良くなったんだ」とのこと(笑)。良かったです。クインフェスタはイズミオーの子がお腹にいるとのこと!「(仲が良くなったのは)お腹に子がいるからかなぁ」とも話していました。イズミオーは元気にはしゃぎまわっていましたよ!脚元の不安もあり、あまりレースには出走できませんでしたがその代わり名馬の血を残していってほしいです。道南には素晴らしい種牡馬が増えてきましたね。廣部さんの牧場もファンの方の見学を受け付けています。取材/小久保友香、小久保巌義
2020年12月16日
田山産業の草ばん馬競技大会に合わせ、道南にいるばん馬たちに会ってきました。その時の様子を2回に分けてご紹介いたします。まずは、日本海側の八雲町熊石にある大竹さんの牧場へ。キサラキクが繁殖入りしています。昨年訪れた様子ですばんば牧場便り【 Vol.010 】キサラキクがいる八雲町・大竹さんの牧場 https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201905300000/そのキサラキクは、今時期は熊石から少し南にある厚沢部町の共同牧野に放牧されているそう。「草ばん馬に出る馬を、海岸で運動しているよ」と聞いたので、まずは熊石へ。以前もご紹介しました通り、海岸調教は美しくて大好きな景色です。夜明け前の午前5時。つなぎ場に1頭の馬が。真っ暗な中ライトを頼りに馬具をつけています。草ばん馬に出るということは1歳馬なのかな? と思っていましたが、1歳にしては大きなシルエット。近づいて見ると……この特徴は。ライデンティダでした!道南で種牡馬入りしていたのですね。こちらの馬運車で運動場所まで移動します。ここからスタート少しずつ明るくなってきました。熊石の町並みをバックに、砂浜を歩きます。大竹さん(左)も一緒についていきます障害練習は自然の砂山。かけ声とそりを引く音、波の音だけが響きます。この日は前日なので軽めの調整でした。終わって人馬ともに一休み。海水で脚を洗い、家ではシャワーもしてもらって、明日に備えます。結果、草ばん馬では見事1着を取りました!大竹さんの牧場は見学も可能とのことです。さて、キサラキクは厚沢部町の放牧地で過ごしています。今回、取材のため許可を得て撮影させていただきました。夏にばん馬が放牧する理由についてはこちらをご覧くださいばんば牧場便り【 Vol.26 】夏の放牧 https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/202006240000/この日は熊石から南下して、江差町にいる馬たちに会ってから厚沢部まで行きました。江差の模様は次回お伝えします。厚沢部では、近隣の牧場の仲間たちも合わせて20頭ほどとの共同生活。この放牧地、かなり坂が急なんです…。馬は見えているのに、ここにたどり着くまで息切れ…。馬たちはここで歩いて運動し、体を鍛えていくのでしょう。いた! キクちゃんは見えているのに、1つ谷を越えて向かわねばなりません。小川も流れていて馬にはいい環境なのですが、泥に埋まって大変(汗)キサラキク。残念ながら流産してしまったそう。今はゆっくり過ごしてほしいです。みんな、キンミズヒキの実をいっぱいつけておしゃれしていますね。大竹さんの牧場にいるドウナンカツヒメ。魚目と流星の形、短い脚などが特徴的でかわいいです。突然大移動! せっかく山超えてきたのに、軽々と戻られてしまったよ~(笑)十勝だと11月には牧場に戻りますが、暖かい道南は12月を過ぎてもまだ放牧地にいるそうです。この後、渡島半島を横断して北斗市の「きじひき高原」に行こうと思ったのですが雨が降ってきてしまったので断念。天気が良ければ、展望台からは津軽海峡や函館山、駒ヶ岳、北海道新幹線の高架橋などを望める絶景が広がります!しかも、ここには馬が放牧されているのです。昨年の写真。このときはたまたま展望台近くに馬が放牧されていました。放牧地の多くは奥地にあるし広すぎて、外から馬を見られるチャンスはそうないのてすが、きじひき高原は馬を見られる数少ないスポットだと思います。(頭数はそんなに多くないですが…)毎年位置はばらばらですが、たいてい馬がいる姿を見ることはできました。取材/小久保友香、小久保巌義
2020年11月25日
10月11日、道南の北斗市(旧大野町)で、田山産業運輸の「ばん馬競技大会」が開かれました。ばん馬のほかポニーもいます。 今年で24回目。毎年10月第2日曜に行われるこの大会が、いつも北海道のラストを飾ります。全道各地のほか、青森からも参加者が来る、にぎやかな大会です。(青森はこの後、県内で感染者が増えたため今年最後の馬力大会が中止になってしまいました。結果、この日がラストの方も多かったと思います…)スタート地点で出走前の準備。参加者が皆で手伝います馬の背もお手の物 例年北海道では10数カ所で行われる草ばん馬ですが、今年は中止が相次ぎました。町村の祭りに合わせて行うところが多いため、祭りが中止になればばん馬も中止になってしまいます。個人で行う大会は、新型コロナウイルス対策を万全に行った上で、7月から開催されました。田山産業以外は全て日程を延期しての開催です。 最初は7月26日に行われたむかわ町穂別のポニーばん馬。5月の予定が延期になりました。久しぶりのばん馬仲間たちとの再開、懐かしくて涙が出そうだったなぁ。最初に行うのは勇気がいったことと思います。 ちなみに穂別のばん馬は、2019年公開の、馬と人間を描いたドキュメンタリー映画「馬ありて」でも紹介されています。http://horse-beings.com/ その次は紋別市渚滑で8月9日。その後9月13日の富良野市「フラノトレッキングサポート遊馬」、旭川の大高牧場は6月が中止になり、その後10月4日に急遽開催。これらは全てポニーのみでした。 ポニー以外のばん馬は、9月27日に今回と同じ場所で行われた渡島家畜商商業協同組合北斗大野支部の大会が初。いつもは7月第1週日曜日でした。頭数が少なく、午前中で終わったそうです。 というのも、ばん馬は帯広競馬場から連れてくる現役馬が多いから。今年はコロナ禍で、馬を連れてくる厩務員や調教師が来られないため、来ることができませんでした。 さて今回は、1歳馬や種馬のほか、馬主が自ら連れてきた馬が参加。ばん馬はのべ24頭。ポニーを合わせると、のべ71頭で18レースが行われました。こんなに集まるとは、と田山社長も感謝していました。(2走する馬もいるのでのべ数としています) 田山社長は、8時間近くかかる道東の別海町や、青森のばん馬にも馬を連れていきます。すると各地の主催者が「こっちも行かなきゃ」。そのようにしてお互いが草ばん馬を盛り上げていきます。スケジュール(☆はポニー)1R 1歳ばん馬2R 1歳ばん馬23R ☆ポニーA4R 2流5R 2流6R ☆ポニーB6Rー1 2歳16Rー2 2歳27R ☆ポニーC8R 3、4歳(昼休み)9R ☆ポニーD10R ☆ポニーE11R ☆ポニー2歳A12R ☆ポニー1歳A12R-1 ☆ポニー1歳B13R ★しまうま14R ☆ポニー重量15R 重量 通常なら、昼休みには歌手を連れてきての歌謡ショーや、チャグチャグ馬コの展示を行っていますが今年は中止となりました。 さて、コースは200mの直線。トロッコの動力はトラクターです。うまく引っ張ります 1歳馬。来年のデビューに向けて一歩リードですね。 今回は道南で種牡馬になったライデンティダが出走していました! 牧場を訪れたときの話は次回のばんブロで。 今回はエキシビジョンとして、シマウマと馬の異種交配「zorse」が登場! 新冠のスターファームさん生産の1歳馬2頭で、牡馬が母ハフリンガーのしまじろう。牝馬が母アパルーサのしまみ。ロバみたいな鳴き方をするんですよ! 穂別、紋別、北斗と回数を重ねるごとに、ばん馬らしい? レースをするようになってきました。馬(シマウマ?)の成長力は素晴らしい… 最後を飾る重量戦は、800キロのそりを引き、ばんえい記念さながらに刻みながら進みます。 午後3時ころに終了。田山社長の馬、ブラックニセイとドウナンジローは、歩いて奥の厩舎に戻っていきました。 田山社長はこの近くの馬場で馬を運動させているそうです。来年は、通常通りなら5月に道南の森町か厚沢部町からスタートします。普段どおりに行われることを願っています。以前の草ばん馬の記事ばんば牧場便り【 Vol.011 】旭山ばん馬競技大会ばんばhttps://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201906260000/ばんば牧場便り【 Vol.015 】第58回鹿追競ばん馬競技大会https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201908290000/「ばん馬大会情報」で今後の情報を載せていますFacebook https://www.facebook.com/kusabanba/Twitter https://twitter.com/kusabanba北海道の情報一覧 http://banbaphoto.blog.jp/archives/16223667.html文/小久保友香写真/小久保巌義
2020年11月11日
「蝦夷富士」と呼ばれる美しい羊蹄山の麓に広がるニセコ町。スキーや温泉が楽しめる観光地として有名です。羊蹄の麓にあるのが堀忠一さんの牧場です。ニセコクイン、ヨウテイクインの重賞勝ち姉妹とコトブキクイン、名種牡馬ダイヤテンリュウが生まれた牧場。これらの母、名牝の名は「トツカワ」といいます。生産馬の姉妹制覇に憧れ、堀さんの牧場を目標として挙げる生産者は少なくありません。私も初めて訪れた15年前。羊蹄山とニセコアンヌプリを望む放牧地の美しさに息を呑みました。まさに、名門牧場ここにあり。ニセコは農業も盛んな町。昔は畑を馬で耕したり、牛乳を馬で運んだりしていたそうです。堀さんの家にも農耕馬がいて、馬好きな堀さんは毎週のように地域の草ばん馬に出ていたそう。当時は真狩、倶知安、蘭越とあちこちで行われていたそうですが、今は共和町を残すのみとなってしまいました。近隣町村のばん馬の牧場も、2、3年前に1件がやめて今では堀さんだけです。今は草ばん馬出ないんですか?と聞くと、出したくても装蹄師がいないので、調教もできないといいます。堀さんが競走馬の生産を始めたのは、なんとトツカワが牧場に来てから。ばん馬の縁で岩見沢競馬場をよく訪れていた堀さんは、関係者と雑談していた中である日トツカワを薦められたそうです。近親にタカラフジ、ニューフロンテアがいる良血だからというのが理由だそうですが、初年度のダイヤテンリュウから大活躍。すごいですね。「ダイヤテンリュウの子は、小ぶりだが障害がうまい」と話していました。種牡馬の話題でもう一頭。母父で活躍馬を出している種牡馬「第三竜王」も堀さんの生産馬。東北の草ばん馬で活躍していたそうで、競馬場デビューをしていないからこの名前なんですね。さて、牧場では種牡馬のホンベツイチバンを繋養しています。初年度産駒が1歳です。現役時代から健康な印象のある馬でしたが、今も相変わらず元気です。この辺りには種牡馬も少なく、石狩、空知方面にまで種付けに行ったそう。15頭ほど種付けしたそうです。ホンベツイチバンは母父がダイヤテンリュウなので、「トツカワとくぐるんだ」。インブリードのことを「くぐる」と言うんですね。その前はホッカイヒカルとタカラボーイがいました。3頭とも日本馬事協会の馬です。ホッカイヒカルは2歳と3歳世代のみ。疝痛で命を落としてしまったそうです。今年の黒ユリ賞4着のニセコヒカル、夏の休養明け2連勝した2歳馬ヒカルファンタジーが活躍しています。放牧地を案内してもらいました。堀さんは一時期体調を崩されたこともあり、馬は数頭を残すのみ。ヨウテイクインのひ孫にあたるヨウテイヒカルが繁殖入りし、血をつないでいます。ちなみに、牧場のあたりは里見地区といいます。「サトミクイン」聞いたことがありませんか?アアモンドグンシンの母親ですね。サトミクインはヨウテイクインの娘です。ホンベツイチバン産駒の1歳馬2頭は、来月からトレーニングが始まります。牡馬2頭、元気いっぱいですね。ロケーションがいい場所に堀さんが馬を連れていってくれました(笑)「後ろ追い」という、手綱を付けて歩く運動は堀さんが自ら作った練習馬場で行っています。調教するために、海砂を運んできたそうですよ。堀さんは農業も営んでおり、この時期はカボチャが積まれていました。馬もぼりぼり食べるそうです(笑)。この近辺の馬は、名産のスイカやメロンも食べるのでなかなかグルメです。農場で研修されている方がニセコヒカルの応援サイトを作っています https://www.facebook.com/NisekoHikaru/文/小久保友香写真/小久保巌義
2020年10月21日
8月上旬、オホーツク海側にある紋別市で行われたポニーばん馬を見に行きました。今年は草ばん馬大会も中止が相次いでいます。紋別に行く途中、滝上町にある2つの牧場を訪れました。滝上町といえば、5月下旬から咲く芝桜が有名な町です。まず、佐藤節雄さんの牧場にお邪魔しました。タキニシダイヤとトウカイシンザンの種牡馬2頭と、繁殖牝馬5頭、ポニーが過ごしています。トウカイシンザンは純ペルシュロンとして貴重な血を残しています。現在21歳。佐藤さんの牧場に来る前は、帯広市にあった三井牧場で過ごしていました。アンローズなどに会うため私たちはよく三井牧場を訪れており、のんびりとして優しいトウカイシンザンをすっかり気に入っていました。久しぶりの再会です。たてがみは少し減ったけれど元気そうで、食欲も旺盛とのこと。大きな病気もないそうです。年とともに繁殖能力も下がってはいますが、これからも牧場で余生を過ごせそうとのことで、ほっとしています。同場で産まれたタキニシダイヤは、5歳で引退して種牡馬として牧場に戻ってきました。現在9歳、若々しくてかっこいいですね。初年度が2歳。まだデビューした馬はいませんが、これからです。父はダイヤノホシで、タキニシダイヤは唯一デビューした馬。ダイヤノホシはサダエリコ(センゴクエースの母)の弟でもあります。カネゾウの母、弥生姫さん。純ペルシュロンのきれいな芦毛です。子どもとともに2011年のオークス馬、アグリコトブキもいました十勝や釧路以外は、競馬場がなくなったこともあり馬産農家が減っています。滝上町は現在3軒だそう。地域の特徴というのもばんえいの魅力ですが、種馬も少なく、繁殖相手も限られます。馬をいつも見ているという獣医師や装蹄師も多くありません。でも、そんな中からの活躍馬は応援しがいがありますね。次は、芝桜高橋牧場を訪れました。コーネルトップやセンショウリなどの大種牡馬を扱う名門牧場として活躍馬を送り続けてきました。以前は種牡馬3頭、繁殖牝馬30頭ほどがおり、種付けのために来ていた牝馬を含めると100頭ほどがいたこともあったとか。今は牧場を縮小し、繁殖牝馬2頭を残すのみとなっています。代表は高橋敏さん。以前はなんとサラブレッドの世界にいました。道営競馬から錦岡牧場へ。そして開業当初からいたレックススタッドではカツラギエースやダイナガリバーを担当していたそうです。ヤマニンアピールが馬生活のはじまりだそうです。障害馬として名を馳せた同馬の貴重な平地勝利の写真ですねそして30歳で、馬で丸太の切り出しなどを行う父の牧場に戻ってきました。ばん馬とサラブレッドの違いを聞くと「ばん馬は楽! サラブレッドは神経質だから」。両方大変だと思いますが……休憩室にあるポスター。サラブレッドでよく見られるタイプのポスターですね。ばん馬ではあまり見かけません1997年ばんえいグランプリなど重賞8勝、マルミシュンキなどを輩出し、帯広一市開催となった頃のリーディングサイヤーだったコーネルトップを種牡馬として繋養していました。コーネルトップ、種付けが大嫌いだったそう! なかなか繁殖牝馬に乗らず、2時間ほど立って待っていたこともあったとか。そのうち「仕方ないなぁ…」と種付けを行うそうです。しかし「乗れば一発」。ご飯もいやいや食べるそうで、めんどくさがりだったのかなぁ笑。こんな馬だったとは!レイをたくさんかけたコーネルトップと、ばんえい大賞典を勝ったキクスピードの写真むしろ種付けが好きで、毎年120~30頭近くをこなしていたのはセンショウリ。スミヨシセンショーなどを輩出しています。血統表でもよく名前を見かける馬です。「食べる量が違う!」比例するものなのかな。ばん馬は種馬が馬運車に乗って回ることが多いですが、高橋さんは種付け希望があればその繁殖牝馬を自分の牧場に運んで種付けを行っていたそうです。そして、私が好きだった馬、重賞13勝のサダエリコが繁殖牝馬として過ごしていました。「こんなうるさい馬いなかった。横っ飛びするんだから」。かなり敏感な馬だったようで、それが強さの理由でもあったのでしょう。最初に種付けを行ったのは、当時牧場にいたサロマオーカン。そんなに大きな馬ではなかったのですが、大きなサダエリコに向かって「片足で這いつくばって種付けしていた。感激した」そう。そして産まれたのがサクセスクィーン。残念ながら脚が悪く、子どもは遺せませんでした。サダエリコは子煩悩で、おっぱいを自分で飲ますほど子どもを大事にしていたそうです。ただ、アブを払うのが下手で、刺され放題だったとか。3番仔となるセンゴクエースを産んだ年に、頭を蜂に刺されて命を落としてしまいました。一度牧場で会いたかったな…。さて、センゴクエースの幼少時は「手のかからないおとなしい馬だった」。途中半年育成に出し、デビュー年の3月まで牧場にいたそうです。普段は褒めることのない、当時90歳近い装蹄師がべた褒めしていたそう。思い出に残るレースは、と聞くと「(取り消した)ばんえい大賞典!!」と悔しそう! 帯広に向かい、三国峠を走っていたら連絡が来たそうです…。逆にうれしいのは「菊花賞。やられたと思った」。素晴らしい差し脚でしたね。初めての挑戦で優勝したばんえい記念。工藤元騎手が調教をつけたとき、オレノココロと同じ量の荷物を積んでもこたえずに障害を上がり「力あるんだわ」と話していた、と教えてくれました。さて、サダエリコのほかに2003年のヒロインズCなどを勝ったコスモカップも引退後しばらく牧場にいました。オークス馬2頭!2頭とも安産で「脚が出た、と思ったらスポーン!って。腹筋違うのかなぁ」と。馬によるのでしょうが…。さて、滝上町では郷土館にも寄りました。北海道の郷土資料館は馬が多く、楽しいです。滝上の周りの町は林業が盛ん。ということは、馬搬が多く行われていたということですね。1954年(昭和29年)9月の「洞爺丸台風」で倒木被害を受けた後にも馬が活躍しました。1960年には町内に1448頭の馬がいたそうです。鞍やハミ、馬搬に使うバチ橇やタマ橇などの展示もたくさんありました。馬の剥製もリアル!図書館には、町出身の作家、小檜山博さんと加藤多一さんのコーナーがありました。お二人の小説には、馬とともに過ごした記述が多く、開拓時代の馬について知ることができます。加藤多一さんは特に馬をテーマにした児童文学が多く、当時の雰囲気がよくわかります。文/小久保友香写真/小久保巌義
2020年08月19日
今回は、芽室町・加納友喜さんの牧場で過ごすコマクインをご紹介します。今年14歳。重賞制覇はなりませんでしたが、柏林賞、はまなす賞、ヒロインズCで2着。鼻白でかわいらしい顔、スピードっぷり、2障害を頑張って越える姿などが人気の馬でした。2014年に引退。ウンカイとの初仔コマサンブラック(牡4、青毛)が7月25日現在15勝。2019年ばんえいダービーに出走2番仔のコマサンダイヤはイレネー記念馬。今年デビューした3番仔コマサンタカラは1勝しAクラス入り。子どもたちが活躍を続けています。コマサンダイヤは今週2日の3歳三冠レース1冠目、ばんえい大賞典に出走しますね。加納さんも芽室町の名産スイートコーンなど、農業を営みながら25年、ばん馬を育ててきました。十勝は今、秋小麦の収穫シーズン。ジャガイモは品種ごとに白や紫の花を咲かせています。放牧地の前には畑が広がりますばんえい大賞典、ばんえいオークスを制したワタシハスゴイや今も元気に活躍中のキタノサムライを生産しています。2010年、キタノサムライの仔馬時代!コマクインは現在、4番目の仔となるスギノハリアーの仔がいます。5月生まれなのに大きい!「よくこの腹から出てきたなってくらい大きかった」そう。デビューした3頭は父ウンカイに似た青毛。当歳もスギノハリアーと同じ栗毛と、父馬の特徴を引き継ぐ馬を出す名牝です。そして全て牡馬。驚くことに、コマクインは昼に一人で産んでしまうそう!「夜はちゃんと(出産しないか)見ているんだよ…」といいますが、日が昇り、加納さんが畑に出ると一人で仔馬の世話をしているそうです。サラブレッドに比べてばん馬は体が大きいため、人の介助が必要になることが多いですが、毎年安産というのはファンとしては安心ですね。今年は10時頃、空をトンビが回っていたので、娘さんに聞いて見てもらうと脚が出ていたとか。「キツネが近くで待ってるんだよ」。出産時に「後産」と呼ばれる胎盤などは栄養があるので、キツネのごちそうとなります(しかしキツネを介した病気の原因になるのですぐに処理しなくてはいけません)。後産は馬プラセンタの原料として、業者に引き取られていますね。道南出身の加納さんはもともと馬好き。仕事で十勝に来た時にも、牧場で馬の世話などを手伝っていました。そして加納さんの結婚が決まると「結婚祝だ」と馬が贈られたそう! そこから馬との生活が始まったそうです。今はコマクインのほかに、コハルとインフィニティーの仔の親子2組。自宅そばの放牧地で過ごしています。コマクインはコハルの仔にもお乳をあげるそう! 母馬はほかの仔が近づいてくると耳を絞って追い払うことが多いですが、優しい馬なのですね。とても懐っこくてかわいいです。コハルも仔馬たちもです(笑)以前は夏の間、近くの河川敷に放牧されていました。とても美しい場所でしたが、2016年8月の台風10号が直撃、河川敷は流木がなだれ込みました。このときは台風直前に避難して親子3組の馬たちは無事だったそう。「汽車ぽっぽで運んだんだ」。これは道南で昔行われてた、馬の荷物を運ぶ駄載(だんづけ)でよく行われる、しっぽと無口をつなぐ方法のことです。道路を馬が並んで歩いていたらびっくりしますよね。放牧地と牧場を移動する時は、いつもこの方法だったそうです。5年前、河川敷放牧地のコマクインだいぶ当時の爪痕は目立たなくなりましたが、美しい放牧地でした。今の放牧地も小川が流れるきれいな場所です。加納さんの目標は、「ヨウテイクイン、ニセコクインを出したニセコの堀忠一さんのように、生産馬できょうだい対決を見たい」。近い将来見られそうですよね。コマクインのファンの方なら見学OKとのことです。文/小久保友香写真/小久保巌義
2020年07月29日
夏に道東の山道を走っていると、広い放牧地にばん馬がいる姿を見つけることがあります。牧場によっては、仔馬の登録や繁殖牝馬の妊娠鑑定が終わった6月頃から10月末頃まで、夏の間のみ繁殖牝馬や1歳を自然放牧させています。個人が持つ広い放牧地のほか、地方公共団体や農業組合、農業団体が管理する「共同牧野」に放牧します。共同牧野は地域の畜産振興のため、集団による家畜(主に乳牛)の育成が行われます。ちなみに、馬はいませんが日本一広い公共牧場は、上士幌町のナイタイ高原牧場。北海道を感じられる景色として観光地になっています。レストハウスは昨年リニューアルしました。ばんえい観光ができるようになったらこちらも訪れてみてはいかがでしょうか。 https://www.kamishihoro.jp/sp/naitai/00000138家畜改良センター十勝牧場も、夏になると放牧地に馬を放ちます。基本的に見学禁止ですが、観光地として入ることのできる、白樺並木から展望台までの道路沿いに馬がいることがあります。見つからないこともありますが… http://www.nlbc.go.jp/tokachi/visitorsinfo/index.html北斗市のきじひき高原には馬がいますよ。昨年秋は展望台から見えました。 https://www.city.hokuto.hokkaido.jp/docs/1959.htmlいずれも防疫に気をつけ、放牧地の中に入らない、馬に触らない、ごみを捨てないなどのマナーを守ってください。さて、今年も放牧の季節がやってきました!その前にワクチンを打つため、獣医師が捕まえやすいよう1歳馬の頭に「もくし」をつけます。これがまた大変。捕まえられて自分の頭になんか付けられるのは嫌ですよね。しかも、つけられる時って、大抵注射とか獣医師が来る時なので嫌な予感がします。この日は音更町の牧場で、わがままっ娘にもくしをつけるため、競馬場から舘澤騎手がお手伝いに来ていました。競馬場で働く人たちは若くて体力があり、馬のことをよく知るプロ。生産地を支えています。もくしをつけてこの日は終了。6月に入り、ある牧場の馬たちは馬運車で浦幌町の放牧地に移動します。今回は取材のため、許可を得て放牧地の中で撮影させていただきました。私たちが着いたとき、この日の第1陣の繁殖牝馬4頭が馬を放し終わったあとでした。先にいたほかの牧場の2頭と、今日の4頭がなんとなく分かれて一緒にいます。クラス替えの初日みたいなもので、そのうち仲良くなったり、なんとなく分かれたままだったり。「私が強いのよ」と蹴りを入れたりして、上下関係を築いていきます。ここは芦毛ちゃんが先頭を切って移動していますね。(数時間でボスに)耳を絞って(後ろに倒して)怒ります。馬たちは、美味しく食べられる草を選んで食べます。丘の上は、涼しい風が吹きます。雨の日は、木の下に移動。いつも歩くところは「馬の道」(けもの道)ができています。ここは地元の農協が管理し、管理人さんも在駐しています。放牧地は5つに分かれ、草の状態をみながら移動していきます。管理人さん、一人で馬を全部移動させるのだそう。「1頭を引っ張ればみんなついてくるよ」と言いますが、すごい技術です。牛もいる放牧地も含めて、柵や家畜の状態を確認して回っています。水飲み場と、ミネラル補給の塩も管理します。ここは野生の花がたくさん咲いていました。アヤメやスズランがきれい!! これらの野草は毒があって馬は食べないので美しく残っています。牧場の方に放牧する利点を聞きました。まずは、牧草費の節約。朝は朝露に濡れ、水分のある草をたっぷり食べられますね。栄養価の高い青草を食べることでいいボディコンディションを維持できるそうです。そして傾斜があるので、アップダウンすることで仔馬に筋肉が付き、鍛えられます。繁殖牝馬もいい運動になって繁殖成績が良くなり、長寿にもつながります。実際、腰の悪かった馬を放牧に出したら治ったこともあると聞きました。(すべての馬が治るわけではないです)私は疲れました……ばん馬はかなり昔から行われていたことですが、サラブレッドが運動量や精神力をつけるために、夜間放牧や昼夜放牧が一般的になってきたのと似たような理由でしょう。牛も同じように、体力作りだそうです。気持ちのいい風、木陰など、避暑にもなりますね。「太陽の光や緑など、生活にメリハリがあることでストレス発散や健康維持になるのでは」と牧場の方は話していました。自然に近くなるというのは健康に近づくのでは、と思っています。野生生物への対応力もプラスに働くように思いますが、もちろん怪我や熊に襲われるリスク(そんなに多くはないですが、北海道の山なのでどこかに熊はいます)もあります。午後、この日の第2陣がやってきました。1歳馬たちです。くねくねした細い道を、馬運車は何事もなく走ってきます。すごい…また舘澤騎手が手伝っていました(笑)自由になって、とりあえず草を食べ、るんるん~と馬たちのところへ行く馬、マイペースな馬、強い馬たちの洗礼を受ける子、年上のお姉様に向かっていく馬など、いろいろ(笑)「こんにちは~!!」と向かっていく馬秋まで、数軒の牧場の馬たちが群れをなし、それぞれが社会生活を営んでいきます。秋には下牧、といって馬たちは牧場に戻ります。放牧地は閉鎖されます。私は初めて見ましたが、自分の馬を集めやすいようにと、今日放した牧場の馬たちは前髪をぱっつんと切っています。確かに見つけやすいですよね。それを見た他の牧場の方が「それいいな」と。みんなでやったらわからなくなるよ~(笑)夫は風景撮影のために放牧地によくお邪魔するのですが、ちょっとモデルにはなりにくいかなぁ(笑)管理人さんが「秋にはだいぶ伸びてるけどね」とぽそっと。さて、それから数日後。こちらは足寄町の放牧地に向かう馬たちです。親子馬ですね。これから自由な時間!!秋、すっかり広い放牧地になじんだ馬たちを、どうやって集めて、馬運車に乗せるのか?!ここにも苦労があります。あらためて、お知らせできればと思います。ヒントはこの枠。「地獄」と言われています。すごいネーミング(笑)文/小久保友香写真/小久保巌義
2020年06月24日
繁殖シーズンも終盤を迎えています。ファンへの開場が待たれるばんえい牧場十勝を訪れました。タナボタチャンも無事ミタコトナイを受胎。メムロコマチもフジダイビクトリーを受胎して牧場に帰ってきました。キサラキクが、ジェイワンを種付けするためにばんえい牧場に嫁入りしています。キサラキクがいる間に牧場の見学が可能になればいいですね。アアモンドセブンはこの写真を撮影した次の日に初めての子どもが生まれました。この時は「まだ先かなぁ」と言っていたのに(笑)アアモンドセブンとヒメサマ、クレッシェンドです馬は春にしか発情の来ない「長日性季節繁殖動物」。種付けから出産まで11カ月前後なので、仔馬は春に生まれます。出産、種付けと忙しい季節。ある日、牧場に行くと獣医師の方が来ていました。サラブレッドの牧場が多い場所のように、馬専門クリニックというのはほとんどないので「NOSAI(農業共済組合)」や開業した獣医師の方です。ばんえい牧場では、この時期は週に2回来ているとのこと。何をしているのか、話を聞きました。繁殖牝馬に対し、一般的に行うのは直腸検査です。略して「直検」。直腸に手を入れて直腸壁から卵巣や子宮を触診、またはエコー検査などで、妊娠しているか、種付けに適した状態かを確認します。まずはボロを出してから。ボロを入れる用の一輪車がそばにあります左手で直腸にモニターを入れ、右手でモニターを見ます卵の鑑定は、略して「卵鑑」(らんかん)。種付けは排卵に合わせて行いますが、排卵前から発情が始まるのでそのタイミングを、卵の大きさから見計らいます。重種の場合、個体差はありますがおおよそ卵胞が5~6センチで発情、6~7センチで種付け。大きさを見て、これから種付けしていいよ! とか、まだかなぁ、という話をします。エコー検査も行います。「これ」と言われるけどわからない…発情の周期は3週間ほどで、1週間ほど続きます。発情誘発剤を打つこともあります。重種の発情が長いというのは、十勝牧場の馬の担い手研修で聞きました。仔馬はフリーダムに歩き回ります。ほかのお母さんにちょっかい…種付けを終えた馬が、ちゃんと妊娠しているかを確認するのは「妊娠鑑定」、略して「妊鑑」。妊娠していることを「妊鑑+(プラス)」と表記し、このまま市場の名簿に記載されることもあります。最終種付けから15~19日、30日、50日と確認します。流産予防の注射も打ちます。 慣れたもので余裕の注射…ではなく、注射器のキャップを加えていますので念のため(笑)一頭一頭丁寧に子宮の様子をメモし、順調な種付けや胎児の生育をサポートしています最後に、検査をした場所を牧場の方がきれいに洗います。ここが大事で、ばんえい牧場の方はすごく上手! と獣医師の先生のお墨付きでした。人間も同じですが、当たり前のように生まれているように見えて、そこまでには繁殖牝馬や牧場スタッフ、獣医師やさまざまな人の大変な苦労があるんですよね。サラブレッドに比べると、大きなばん馬は特に人の手が多くかかっているように思います。流産や命を落とした話を聞くたびに、このような事故が少しでも減れば、ばん馬の生産頭数も上がるのに、と思います。楽天競馬の「ばんえい十勝応援企画」では生産振興策として帯広畜産大学と連携し、獣医畜産学の観点からも生産数増加に向けた取り組みを検討していく予定です。身ごもった、または残念ながら受胎しなかった繁殖牝馬たちは、これから広い広い放牧地に移動し、夏を過ごします。ばんえい牧場の馬たちも、6月に入って市内の放牧地に移動しました。ばん馬特有の放牧について、次回あらためてご紹介します。文/小久保友香写真/小久保巌義
2020年06月11日
ナナノチカラの初仔が生まれたと聞き、足寄町にある加藤信一さんの牧場を訪れました。2016年のばんえい記念馬、フジダイビクトリーが昨年6月末から種牡馬として過ごしています。今年のばんえい記念直前企画でフジダイビクトリーを取材した記事・動画はこちらフジダイビクトリーはすでに50頭ほどに種付けを行ったそう。前回も話していた通り、人の言うことは聞き、馬には厳しく色気が強いとのことで、種牡馬としては理想的ですね。ばん馬は種牡馬が繁殖牝馬のもとに行くことが多いですが、フジダイビクトリーは近くの牧場にだけ行き、函館や釧路など道内各地から「嫁入り」している牝馬がたくさんいます。モテモテですね。もう一頭の種馬、ライデンロックに種付けしにきた牝馬もいますよ!!10数頭の馬たちがいて、今が一番にぎやかです。牧場には、2016年ヒロインズCなど重賞5勝のナナノチカラがいて、自由に出入りできる小屋がある放牧地で過ごしています。今年3月末に、初仔となるカネサブラックの牝馬を出産しました。人懐っこく、膝の上に頭を載せて寝てしまうそうです。相性はナナの仔だから「ハチ」。雨が嫌いで、雨が降ったら小屋に入ったり、庇の下に入ったりするそう。かわいいお嬢様ですね。ナナのお腹にはフジダイビクトリーの仔がいるそうです。おそらくカネサブラックの血を引き青毛でしょう。青毛は仔馬の頃、グレーっぽい毛に覆われます。銀色に輝いているようです。なんとか、左から(ライデン)ロック、ナナ、ハチ、を並べて撮ったつもり(笑)ナナは馬房の中にいます。隣の放牧地には、今年繁殖入りし、すでにフジダイビクトリーを受胎したカツフジヒメとプランセスもいます。青毛がオークスなど重賞に出走したプランセス。栗毛、カツフジヒメのかわいらしい前髪は現役時のままです2018年クインカップを制したメヂカラも、今年のヒロインズCを最後に引退し、繁殖入りしています。以前加藤さんの牧場にいたカネサブラック。ラストクロップとなる今年の仔は8頭生まれているそうです。最後に種付けをしたという、プレシャスリンの仔に会うことができました。草に埋もれていますね(笑)。みんな元気に育ってほしいです。今年生まれた仔たちは早くて2年後、2022年にデビューです。文/小久保友香写真/小久保巌義
2020年05月27日
2月26~28日に、日本馬事協会の主催で「馬の担い手技術者養成研修会」が開かれました。12月に前半となる1回目が行われており、その参加者が対象です。前回の内容はこちらのブログをご覧ください。ばんば牧場便り【 Vol.020 】馬の担い手技術者養成研修会・前期 その1 https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201912250000/ばんば牧場便り【 Vol.020 】馬の担い手技術者養成研修会・前期 その2 https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201912250001/すべて家畜改良センター十勝牧場で行われ、21人が参加しました。今回行われた座学はすべて獣医師によるもので、深い内容で大変ためになりました。難しかったけど…初日は「馬の防疫について」。十勝家畜保健衛生所の小林主査から、感染症や予防対策、衛生管理についてお話いただきました。重要な4つの感染症「馬鼻肺炎」「馬パラチフス」「馬インフルエンザ」「ロドコッカス・エクイ感染症」について学びました。いずれも感染馬の隔離や人による媒介、馬房などの施設、馬体を消毒するなどの対策が必要。消毒薬の効果的な使い方や種類についても解説していただきました。最後に、家畜の衛生管理として、農水省が定めた「飼養衛生管理基準」8項目の紹介。こちらは以下にPDFファイルがあるので、興味がある方はご覧ください。 https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_shiyou/午後からは「重種馬の蹄管理」。よく馬の世界では「蹄なくして馬なし」と言われますね。大学時代は馬術部という、十勝牧場の廣澤獣医師による講義でした。図を使い、覚えておいたほうがいい脚や蹄の名称について教わりました。重種馬の特徴は、距毛(脚のふさふさ)があって見にくいとのこと。確かに!代表的な疾病について教わりました。「挫跖」「白線病」「蹄叉腐爛」「蹄癌」(人間でいう腫瘍性疾患の癌ではないです。重種馬に多い)「裂蹄」「蹄膿瘍」「蹄軟骨化骨症」「蹄葉炎」。蹄葉炎はよく聞きますね。イラストで説明してくれたのでよくわかりました。蹄の疾病を見るときには、歩行に異常がみられる「跛行」をしているかどうかを確認します。跛行や熱がある場合は獣医師を呼び、「いつから痛いのか」「傷はあるか」「治療歴はあるか」「自家治療はしているか」「最後に削蹄をしたのはいつか」を説明。触ってみるとき、痛いのが右なら左も触って比較することが大切です。それから外に出て、実習です。蹄を管理するときに、軽種の場合は手で脚を持ちますが、重種馬は重いし力が強いので持てません。そのため、枠場にロープで脚をくくりつけます。爪切りも見学しました。十勝牧場の馬たちはみんな放牧されていて自然にすり減るため、人間が切ることはそんなにないそうですが、それでも年3、4回は切るそうです。ナイフを使って結構豪快に切るんです。猫が遊びにきました。廣澤先生によるとこの「にゃんこ先生」はネズミ捕獲長だそう。2日目は引き続き、獣医師による講義と実習です。午前の講師は、帯広競馬場の診療所「アテナ統合獣医ケア」の福本奈津子獣医師。十勝牧場に勤務していたこともあります。テーマは「重種馬の疾病について」。個人的には重種馬、ばんえいの競走馬について知ることができて大変興味深かったです。重種馬の特徴は、もちろん「馬体サイズが大きい」こと。そして「温厚」「痛みに強い」「蹄のトラブルが多い」。さらに、ばんえい競走馬の特徴は、呼吸器病、蹄葉炎や裂蹄、疝痛、喘鳴症、外傷が多い。筋肉が豊富なので、獣医師は力がいると話していました。蹄葉炎の説明では、ミルキーの写真が使われました。ミルキーも診ていた福本先生の説明で、想像以上の重症から立ち直ってくれたことがわかります。脚は血液循環のポンプ作用を行うため「第2の心臓」といわれます。毎日ずり引きをしていても、それだけでは運動不足だそうで、競走馬には脚が腫れる「慢性進行性リンパ浮腫」が多いそうです。疝痛、食道梗塞(のどつまり)のほか、寄生虫性疾患についてもは回虫の素敵な写真付き(笑)で教えていただきました。お産のトラブルとしては、早期胎盤剥離や産褥熱などがあります。仔馬の疾患についての説明もあり、生後1週間までは様子の変化に注意とのことでした。大事なのは、かかりつけの獣医師を何人か見つけておくこと。広澤先生と同じように、診察の際、獣医師に伝えることをまとめてくれてました。それから実習です。脚です。もちろん模型まずは体温測定。デジタル式体温計を肛門に入れるとすぐ体温がわかります。1分待ったりはしません。馬の平熱は38度前後。やってみたけど、低かったな…。糞に刺さっていたかも。計れてないぽいです。聴診器をあてて、音も聴きました。腸は位置によって「ゴーーーッ」「ゴボコボ」「ゴロゴロ」と聞こえてきます。心音は場所を見つけるのが難しかったです。口腔粘膜を見て、駆虫薬を入れるところも見せていただきました。頬と歯の間に入れます。鼻ねじと耳ねじも見ました。鼻ねじをすると首筋が張るそうで、実は注射しにくくなるんだとか。午後は座学「重種馬の繁殖について」。十勝の名門牧場の診療経験がある、北海道NOSAIの研修所所長、三木渉獣医師です。重輓馬の繁殖特性としては、発情持続時間が長いこと。よく知られているように、妊娠期間は330~340日で、双子は育たないということ、分娩が夜間に集中すること、などを挙げてもらいました。季節によって変わる発情持続時間の話から、排卵、発情を促進させるためのホルモン剤投与、ライトコントロール(排卵促進)についての説明も受けました。子宮の形や卵胞の大きさ、分娩管理や仔馬の疾患についても写真を見ながら説明していただきました。かみ砕いて説明していただきましたが、獣医学の講義ってこんな感じなのかな、と……集中していないと頭に入らず、授業をサボっていたけどテスト前に慌てて出席した授業みたいな。懐かしい感覚でした(笑)。久々に頭使った-!3日目はロープワークでした。十勝牧場の方々が講師です。4班に分かれて、馬の頭につける「無口頭絡」を作ります。「もくし」といわれるものですね。マニラロープやサイザルロープといわれる、麻のロープを使っています。1人1つ、もくしを作りました。作り方の動画です。十勝牧場の方々は、もくしを作ったり細い紐から縄を作ったり…なんでも手作りしてしまいます。使う人がいないから売っていないという現状もあるのでしょうが、それだけにこの伝統も受け継いでいかなくてはと思いました。思っただけで、もう忘れてる…(汗)それから実際に、もくしを馬に装着してみました。また、あらためて12月に行ったロープワークについても復習。このあと、牧場の方の配慮で生まれたばかりの仔馬を見せていただきました。ご飯を食べるお母さん馬たちと、仔馬たちこの時期は、コロナウイルス感染拡大防止のため、イベント等が中止になりはじめた最初の頃でした。あと少し遅かったら研修は中止になっていたかもしれません。先が見えない状況で、それぞれがもやもやした感情の中、馬たちが心を癒やしてくれました。以上、2回に分けて6日間の研修が終了しました。幅広く、深く馬について学ぶ機会をいただき、感謝の言葉しかありません。来年度十勝牧場では、人工授精の講習会と、高校生向けの研修会を検討しているそうです。今後、さらに重種馬、馬の世界が発展していくことを願っています。取材/小久保友香
2020年03月30日
最後に訪れたのは、音更町の赤間清美さんの牧場にいるナリタボブサップ。大きな馬体と優れた障害力と末脚が特徴的でした。出迎えのシーンに驚き!!大きな馬体のボブサップですが、性格はすごくおとなしいそう。画面からもかわいさが伝わってきます。「なついてくれる、言うことを聞いてくれるとうれしい」。赤間さんに限らず牧場の方って、普段は照れなのか、馬への愛情の言葉を口にすることはないたげに、動画にはぐっときますね。背中に乗って、馬を引いて運動させているそうです。疝痛が怖いので、食事に一番気をつけていると話していました。過去にはニュータカラコマなどの父ナリタビッグマンや、カゲオー、カネサスピードがいました。「馬は寿命が短いのでお別れがある」。長くて10年、短い馬だと1、2年ということも。辛い思い出もあるのでしょうが、それ以上の馬の魅力があるのだと、ボブサップとの関係から感じられます。ばんえい記念には6回出走し、最高成績は2010年、2012年の3着ですが、1トンを一腰で上げた2010年のレースは伝説。競馬ブックの定政さん、鈴木恵介騎手も驚いた、と当時の話を聞かせてくれています。2013年に引退し、産駒は4世代目までが走っています。昨年はメムロボブサップが3歳三冠を達成。シンエイボブやオールラウンダー、トワトラナノココロなどが活躍していますね。大滝さんがなんとボブサップの背中に!! 背中からの貴重な映像もあります!!赤間さんの牧場を訪れた時のばんブロです https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/202001300000/ばんえい競馬は、サラブレッドほど血統が重視されてはいません。しかしばん馬にも同じように父、母がいて、脈々と受け継がれた血統があります。それは、世界で唯一のそりを引くレースで結果を残すため、掛け合わされたここにしかない血筋。最高峰レース「ばんえい記念」を勝った馬、出走できる力を持った馬たちは、彼らの父と同じように、これからのばんえい競馬の歴史をつないでいきます。文/小久保友香写真/小久保巌義ばんえい記念が近づいてきました。3月21日(土)第9レース17:20発走予定。本当に楽しみです。無観客の中の開催となりましたが、楽天競馬ではニコ生特別番組を配信いたします。ぜひご覧ください。また、楽天競馬サイトでは「春のばんえい十勝まつり!帯広重賞購入でばんえい記念グッズプレゼント」と題してキャンペーンを行っております。上記の動画も同様に公開中。ぜひ皆さんご参加ください。
2020年03月18日
2016年の優勝馬、フジダイビクトリーは現在、足寄町の加藤信一さんの牧場で種牡馬として暮らしています。足寄町は松山千春さんのふるさととして有名。私は高橋菓子店のパンが大好きなんです!焼き上がりには行列ができます。とても広い町で、「平成の大合併」の前までは日本最大の面積を持つ市町村でした。現在でも町として最大、北海道の市町村では北見市に次ぐ2位です。加藤さんの牧場も、足寄町市街地から車で30分ほどのところにあります。昨年3月のばんえい記念3着後引退し種牡馬入り。馬は種付けしておよそ11カ月で子どもが生まれますから、初産駒はこれから。3月7日にはばんえい牧場十勝で、ジェイツーとの初産駒が誕生しました!昨年5月、加藤さんの牧場にいたカネサブラックが急逝し、その後ばんえい牧場十勝にいたフジダイビクトリーは加藤さんの牧場にやってきました。フジダイビクトリーのファンという荘司さんは牧場に着くなり「あっ、フジダイビクトリーだ!」とわかったそう。特徴的な顔をしていますね。ウンカイは青毛ですが、なぜウンカイ産駒には栗毛流星が多いんでしょう。「ウンカイの栗毛流星は走る」といわれるくらいになりました。(他の毛色でも走っていますが…)フジダイビクトリーは「人にはおとなしいが牝馬にはうるさい」そうです。産駒については「背が高い馬が出そう」と加藤さん。まだ産駒は見ていなくても、馬にかかわる人間がわかる感覚ってありますよね。加藤さんに話を聞くたびに、本当に馬が好きなんだなぁ、と感じます。加藤さんがそう言うなら、きっとそうなんだろうな、と思います。牧場には、カネサブラックとの子を受胎しているナナノチカラもいます。おとなしくてかわいいんですよ~。加藤さんは「同じ繁殖牝馬でも違う子が出る楽しみがある」と、生産の喜びを語ります。「あと5年、70近くなったら種馬は引退かな」と加藤さん。ばん馬の場合、牝馬ではなく牡馬がトラックで移動して種付けをします。馬運車に乗せるところから種付けまで全て一人。力と技術がいるプロフェッショナルの仕事です。女性もいますよ。馬に関わる人は実年齢より若く見える人が多くて驚きますが、それだけに技術を受け継ぐ人材が増えてほしいと心から思います。フジダイビクトリーを管理していた金山明彦調教師にも話を聞いています。「幅と重みがあり、競走馬として最高の体形をしている」。性格も素直で真面目だったといい、良いところを受け継ぐ子の誕生が楽しみです。カネサブラックがいた当時、加藤さんの牧場を訪れた時のばんブロです https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201809270000/文/小久保友香写真/小久保巌義楽天競馬サイトでは「春のばんえい十勝まつり!帯広重賞購入でばんえい記念グッズプレゼント」と題してキャンペーンを行っております。上記の動画も同様に公開中。ぜひ皆さんご参加ください。
2020年03月16日
楽天競馬では、ばん馬の生産地を応援しています。今回、過去のばんえい記念を優勝した馬や出走馬のふるさとを訪れました。第1弾は、2014年の優勝馬インフィニティーです。インフィニティーは2014年、浅田達矢元騎手とともに初出走で優勝。浅田騎手のガッツポーズが印象的でしたね。2016年に引退し、現在は幕別町の村田畜産で種牡馬として過ごしています。昨年産駒がデビューし、主な活躍馬にゴールデンペガサスやアオノソルテがいます。産駒は最近少しずつ結果を出し始めている気がします。映像の中では、騎手を引退後競馬場内で働く浅田さんによる思い出話や、再開シーンも。サプライズもあります!でも、浅田さんより案内人・荘司典子さんの姿にはしゃいでいるように見えたのは種牡馬だからでしょうか(笑)。場長の村田律男さんは生まれた時から周りに馬がいて「馬が家族」とおっしゃられています。村田畜産には、過去にはキンタロー、ニシキダイジンなどばんえい記念優勝馬をはじめとする名馬が数頭過ごしていました。「それに負けないだけの産駒を」とインフィニティーに期待がかかります。開業当時からさまざまな名馬に関わってきた父、義雄さんは昨年5月に亡くなられました。今は律雄さんが歴史を受け継ぎます。さて、映像をよく見ると、人や馬が歩くときに「キュッキュッ」と音がしますね。寒い時に雪を踏むと、このような音がします。牧場のある糠内地区は寒さが厳しい場所。陸別や足寄の北十勝といい、寒さが厳しい地域は名馬が多く、馬産が盛んな気がするのは偶然でしょうか。映像内でも紹介している幕別町の杉野菓子店には「キンタロー」というお菓子があります。梅の甘露煮を包む白あんと、求肥とのバランスが絶妙なんですよ! 消費期限が短く要冷蔵ですが、包装紙もかわいいので機会があれば食べてみてほしいです。以前村田畜産を訪れた時のばんブロです https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201810310000/インフィニティー文/小久保友香写真/小久保巌義楽天競馬サイトでは「春のばんえい十勝まつり!帯広重賞購入でばんえい記念グッズプレゼント」と題してキャンペーンを行っております。上記の動画も同様に公開中。ぜひ皆さんご参加ください。
2020年03月13日
北海道東部、摩周湖と屈斜路湖の間に位置する川湯温泉街近くの「川湯パーク牧場」は、ばん馬のほか乳母や和牛を生産し、乗馬体験を行っている牧場です。http://www.big-hokkaido.com/park-bokujo/二代目、長谷川義晃さんの名前で2015年のばんえいオークス馬ホクショウモモなどを生産。三代目となる長谷川義信さんに話を伺いました。長谷川義信さん弟子屈市街から川湯温泉方向に向かい、硫黄山に向かうT字路に牧場はあります。国道沿いの放牧地から、繁殖牝馬とポニーを見ることができます。かわいいポニーですが、草ばん馬の活躍馬や種馬もいるんですよ。中に入り、トラック中央にいるのは乗馬。小さなアメリカンミニチュアホースからサラブレッド、アパルーサ、ウエストファーレンなどの中間種、そして大きなばん馬まで、100頭近くのさまざまな馬がいて楽しい!!弟子屈町は明治時代から馬が活躍し、南部の標茶町には軍馬補充部もありました。馬の歴史がある地域ですが、戦後まもなく疎開してきた長谷川家が馬事業を始めたのは1974年。比較的歴史は浅いのですが、長谷川義晃さんは摩周湖や硫黄山など、北海道観光の人気スポットを馬で盛り上げてきました。冬は乗馬体験はお休み。摩周湖の展望台まで、山道を馬で行く唯一のコースもあります。馬でしか見られない摩周湖の眺望、見てみたいですよね。現在ばん馬の繁殖牝馬は約40頭います。ぶち毛もいますよ!「(義晃さんが)派手好きだから」。競馬場ではタカラマルヒメとその子インデアンがデビューしています。中央がインデアン乳母用の馬は、連絡が来たらすぐに貸し出せるように、と出産を終えた馬が数頭いました。今年初めて子馬を見た!3歳の現役馬ペルチャンは、子馬の頃はお母さんが乳母の仕事に出ていたので、人口哺乳で育てられたそうです。乳母の子どもたちもデビューして頑張っているのですね。仔馬は生まれてしばらく経つと目の周りから毛が抜けてパンダみたいになります。この子は冬毛の状態で抜けていて、モコモコですね(^^)さて、ばんえいに詳しい方は聞いたことがあるかと思いますが、実はばん馬の中にはサラブレッドの血が入っている馬がいます。その繁殖牝馬が、まさにここにいるのです。ホクショウマックスやホクショウサスケ、ホクショウモモの母、福花。2009年ばんえいダービー5着のキンノカミの姉でもあります。3代母の虹湯は父がペルシュロンの虹裁、母はサラブレッドのハクヨウチカラ(父シンザン)です。しかも、ハクヨウチカラの3代母は、高峰三枝子さんが馬主だった二冠馬スウヰイスー。シンザンやスウヰイスーの血が、ばんえい競馬に流れているのです!貴重な虹湯の登録証明書!!「サスケの鋭い末脚は、もしかするとサラブレッドの血かもしれないね」と長谷川さん。スピード競馬の帯広一市開催になったことで、これらの血統が生きるようになったのかもしれません。馬を始めた頃は、働き手として人気がある高値のばん馬の繁殖はなかなか手に入らなかったそう。ニホンピローエースが弟子屈町にいたことや、長谷川さんが浦河町の谷川牧場と交流があったことから、サラブレッドの牝馬を導入。サラブレッドにばん馬をかけることで、乗馬用に生まれた馬たちはおとなしく、強くなっていったそうです。その後もばん馬の血統をかけつづけた結果、だんだんとばんえい競馬でも活躍できるパワーのある馬が生まれるようになったそう。「5代くらい経てばばん馬っぽくなる」そうです。タケタカラにブライアンズタイム、マルゼンスキーの血統も!現在も乗馬用のサラブレッドにばん馬をかけているそうです。険しい山道を登る摩周湖展望台への乗馬も、ばん馬の血が入った強い馬が活躍しています。サラブレッドのお母さんにばん馬をつけるというと「破裂しないのか」と言われるそうですが(笑)、おなかの中では子どもが入る分しか大きくならないので大丈夫ですよ。今の母馬の中には、ステイゴールド、シンボリクリスエス、ゼンノロブロイ、スマートファルコンを父に持つサラブレッドがいます。そのうち「ステイゴールドの血を引くばん馬」などが、競馬場でデビューするかもしれません!ステイゴールドの牝馬種牡馬は2頭いましたが、アサヒセンショウが昨年12月26日、タケチャンパワーが今年1月16日に急逝。タケチャンパワーは昨年も摩周湖の草ばん馬で馬車を引いていました。見た目がものすごく若く、長生きしそうだと思っていたのに。前日まで種付けをして、ご飯も残さず食べていたそうです。昨年9月、摩周湖ばん馬大会のタケチャンパワーその代わりに、今年の春から2頭が牧場入りします。まずはセンゴクエースと世代戦を争ってきたキンメダル! 今年の「日本馬事協会有種雄馬」です。ブルトンの鉄鯉にベルジャンのジアンデュマレイとマルゼンストロングホース、ペルシュロンは二世ロッシーニに楓朝と、錚々たる名が血統表に並びます。楽しみですね。ユウトウセイも種牡馬としてやってきます。タケチャンパワーに負けないインパクトのある馬、ということでたてがみが長く、名前がいい馬ということで選んだそうです。「同じような長いたてがみの子が生まれるといいなぁ」とおっしゃられていました。優等生馬車、乗りたいなぁ。さて、思い出に残る馬を聞くと「タカラハナ」。タカラムテキなどの産駒を出しました。昭和50年代に種馬をはじめて2、3頭目の馬がタカラハナ。この産駒がばんえい競馬で活躍し始めたそうです。父はタカラコマ。タカラハナは7月生まれ、ということは8月に種付けをしたということ。情熱を感じます。基本的に観光牧場なので見学は可能。電話をしてくださいとのことです。さて、長谷川義晃さんは2009年、廃止しかけた「摩周湖ばん馬大会」を有志で復活させました。「続けていかないと、祭典ばん馬(1歳馬決勝大会)がなくなってしまう。お披露目の場がなくなり、1歳を調教する人がいなくなる」。ばんえい競馬にとっても文化としても大切な草ばん馬を守り続けます。今年も9月の第4週目に行われる予定です。長谷川義晃さんそして町内の道の駅「摩周温泉」では、2月29日まで、摩周湖ばん馬大会フォトコンテストの写真展を開催中。道の駅の売店では第1回~5回のコンテストの優秀作を集めた写真集を販売しています。弟子屈町出身の元横綱、大鵬の写真もあります。長谷川義晃さんの同級生なんですよ。川湯パーク牧場のそばには観光地「硫黄山」(正式名アトサヌプリ)があります。そのため、この付近は硫黄の匂いがします。明治時代に硫黄を運んでいた「安田鉄道」の鉄道跡を馬そりで巡るツアーも行われています。今年はタケチャンパワーが急死してしまったので行われませんが、いろいろな形で、馬の存在をアピールするために幅広く尽力されているのです。取材/小久保友香、小久保巌義
2020年02月06日
今年18歳となったナリタボブサップ。現在は音更町の赤間さんの牧場で種牡馬として過ごしています。現役時代は2010年ばんえいグランプリや2008年帯広記念など重賞6勝。カネサブラックやニシキダイジンなどのライバルとしのぎを削りました。「ボブ・サップ」の名の通り、1200キロ台の大きな馬格が特徴。障害巧者で、1トンを一腰で上げた2010年のばんえい記念は伝説。鋭い末脚も魅力でしたね。2013年3月の引退式の様子2歳時(2004年)、ホクレン賞(2着)のナリタボブサップ。若い!2013年に引退し、産駒は4世代目までが走っています。メムロボブサップが3歳三冠を達成。シンエイボブやオールラウンダー、トワトラナノココロなど、活躍馬が増えています。子どもたちも障害の上手な馬が多いように感じます。また、チャームポイントの鼻白も、引き継いだ子どもたちが多くてすばらしい(^_^)ばんえいダービーで史上5頭目の3歳三冠馬となったメムロボブサップ赤間牧場の開業は約40年前。種馬専門で繁殖牝馬はおらず、和牛も飼っています。過去にはニュータカラコマなどの父、ナリタビッグマンやカゲオー、カネサスピードがいました。1頭で過ごしていますばん馬の場合、種馬になると馬体重が減ってスリムになりますが、ボブサップは「今でも1トンはあるのではないか」と赤間さん。ものすごーくおとなしい!! 「孫たちが来たら乗せてやるんだ」。体重の重いばん馬はひづめにかかる負担も大きいですが、特に馬体重の大きなボブサップも同様で、現役時代からひづめへの負担には気を遣ってきました。夏などは幾度か、脚の状態が悪くなった時期もあったそうで、少し腫れた跡も残っています。牧場の馬は蹄鉄を履かない馬がほとんどですが、ボブサップは今でも蹄鉄をつけて過ごしています。これからは種付けシーズン。春から7月上旬までは種付けに出かけるため不在が多いですが、その後は見学も受け付けているとのことです。過去には、北海道の距離感覚がわからずに遅刻したり、前の日飲み過ぎて来なかったりというファンもいたそうです…。飲み過ぎは言語道断ですが、牧場を訪れる際にはその牧場の方や北海道の人に聞くなどしてから、余裕を持ったスケジュールで、安全運転でお願いいたします。楽天競馬では、3月のばんえい記念に向けて「ばんえい記念に出走した馬たち」を追いかけた動画を製作中。ナリタボブサップも取材していますので、楽しみにしていてくださいね。「未婚の人が乗るといい」と赤間さんに言われて(理由は不明)、背中に乗せてもらった大滝アナウンサー!!ボブサップは人なんか気にせずに草を食べ、マイペース(笑)大滝アナウンサーに感想を聞くと「高くて怖い、と思ったのは最初だけで、温かくて安心した」とのこと。ボブサップの背中は居心地がよかったそうで、そういえばカメラを持ってずっと乗っていましたね。現役時の鬼脚のイメージがあったそうですが、乗る前に目を見たとき「優しい顔なんだぁ」と感じたことが、背中の感覚よりも印象に残ったそうです。取材/小久保友香、小久保巌義
2020年01月30日
12月16日~18日に行われた「馬の担い手技術者養成研修会」その2です。2日目の午後からは、音更町の家畜改良センター十勝牧場で実習を行いました。ロープワーク、引き馬に続き、馬を識別するための「特徴」の見方を教わりました。特徴は顔や脚の白い場所、旋毛で判断します。日本馬事協会のサイト「毛色と特徴の記載要領」にPDFファイルがありますので興味がある方はご覧ください。https://www.bajikyo.or.jp/regist_04.html旋毛があれば全て数えるわけではなく、細かく定められた部分にあるものを特徴として示します。汐行さんの旋毛。珠目という位置に二つあるので「珠目二」です。十勝牧場の馬は当歳時に「TS」という烙印を押します。今は冬毛が生えてわかりにくくなっていますが、わかりますか?共進会で何度か紹介した、体高、胸囲、管囲のはかり方も確認しました。胸囲を測っています。それから種馬見学。ブルトンのウルマ ドゥ スーケン、ペルシュロンのユネスコ ド テューレを出してもらいました!ウルマ ドゥ スーケンユネスコ ド テューレ3日目は生産農家の見学ということで、帯広市内の生産牧場、帯広有機(旧帯広ファーム)を訪れました。十勝馬事振興会の佐々木啓文会長が社長を務めています。ばんえいアワード2018では最優秀生産者賞を受賞しました。本業は肉牛ですが、代々「馬は守り神」という歴史があり、稼業として馬を大事に育てているそうです。現在は牧場に56頭の馬がおり、当歳と1歳の牡馬と牝馬、繁殖牝馬と種雄馬を見学させていただきました。当歳は150キロほどで、夏に放牧に出し、11月頃に戻って来るときには350~400キロ。1歳は700~800キロほどあるそうです。そのほか、飼料なども説明していただきました。検査や治療を行う場所です。種雄馬はオイドンとテンカムソウがいます。オイドンオイドンは引退の原因の一つであった肺の調子があまりよくないらしく、種付けも制限しているとか。でも「功労馬なので大切にしたい」と話していました。テンカムソウテンカムソウはミサキスーパーの血をつなぐ貴重な種馬で、今年は20数頭に種付けを行ったそうです。ミサキスーパーはもちろん、スーパーペガサスやミサイルテンリュウなど名馬の父であったヒカルテンリュウの血統をつなぐ貴重な存在です。最後に、馬の生産は割に合わない仕事だが「子どもが運動会に出ているのと同じ。お金に換えがたい喜びがある」と生産の喜びを語ってくれました。以上、2回に分けて研修について紹介させていただきました。充実した3日間でした。サラブレッドについては研究も進み、資料もたくさんあってファンも触れられる部分が多くあります。しかし、それいがいの馬、特にばん馬については未研究の部分も多く、ファンが知る方法も確立されていません。今回、幅広く門戸を広げた研修会が行われたのは画期的なことだと思います。ここから、より多くの方に馬が身近な存在になれば、と願ってやみません。取材/小久保友香、小久保巌義
2019年12月25日
12月16日~18日に、日本馬事協会の主催で「馬の担い手技術者養成研修会」が開かれました。馬の飼い方や文化についての研修で、来年2月に後半の研修会があります。現在、今後馬を飼養・生産する予定のある人や学んで将来に生かしたい人を対象ということで、私もばん馬について学び、取材活動に生かせればと思い参加してきました。1日目は帯広市内で講義が開かれました。農林水産省生産局畜産部競馬監督課の渡邉弘樹さんからは「重種馬をめぐる情勢」と題し、馬や農用馬の飼養頭数や市場取引状況、国が関わる改良増殖目標や畜産振興事業などについて解説していただきました。個人的には、ここ最近増えている農用馬の生産者に対する補助事業や、人工授精の状況が勉強になりました。この時に参考にしたデータの一部は、農水省や馬事協会のサイトから見ることができます。http://www.bajikyo.or.jp/regist_05.html次は十勝牧場の廣岡俊行さんより「馬事文化について」。馬の歴史や品種についての話でした。あらためて歴史を振り返ると、ばんえいへの見方も変わる気がします。雑学が面白かったです(笑)。その後は帯広競馬場に移動し、ばんえい競馬を「視察」。いつも遊びに行く競馬場に「視察」というのは気分がいいですね(笑)。初心者講座を受けることで、初めての方にはこうやってばんえいを教えてあげればいいんだ、ということを学ぶことができました。今回の参加者は30人。もともと10人程度を予定していたそうですが、道内各地、東京から1人が参加。年齢層も19歳から60歳までと幅広く、帯広畜大や東京農大、北大などの学生が3分の1を占めていました。夜は懇親会でしたが、私たち夫婦はホクショウマサルの29勝タイ記録達成を取材していたので途中からの参加になってしまい、あまり皆さんと話せなかったのが残念です。これだけ馬にかかわっている人、馬を飼いたいと思っている人、興味を持っている人がいるんだな、と感じました。参加者の皆さんのこれからの活躍が楽しみです。2日目は音更町の家畜改良センター十勝牧場で講義と実習です。新ひだか町三石にある飼料会社「北海道ホースフィード」の稲垣健一さんから、「馬の飼養管理と栄養」と題し、飼料の栄養やエネルギー、バランスについて説明していただきました。飼料については実際関わっていないとピンとこない部分なので、細かく説明していただき興味深かったです。妊娠馬への給餌や子馬への人口哺乳など幅広く勉強になりました。ボディコンディションスコア(BCS)の話も出ましたが、こちらは軽種馬に対するもので、ポニーやばん馬だとどのように判断すればいいのか難しいような気がします。それでも今後、発展していくことを願っています。また、重種馬に関わる人間がどのような商品を求めているかを聞いたところ「カロリーや糖蜜の少ないもの」だそう。逆のような気がしますが、普段取りすぎていることを自覚しているからなんでしょうね。腸内環境を整えるような飼料も希望があったそうです。さて、講義途中で「『うるかして』って何ですか?」と質問がありました。北海道弁で水につけておくことを言いますが、ここではみんな当たり前のように使っていました(笑) 場が和みました。午後からは重種馬の取り扱いと施設見学の実習を5班に分けて行いました。防疫上の理由から、全員が指定されたつなぎと長靴を履き、ヘルメットをかぶります。参加者を乗せたバスも消毒をします怪我をするのは馬同士のケンカに巻き込まれる時が多いということ。蹴るときに重種は「耳を絞る→頭を下げる→蹴る」だが、サラブレッドはノーアクションで突然蹴るという話を聞きました。私の班を担当してくれたのは、芦毛のペルシュロン7歳、汐行(せきこう)さんです。馬の頭につける「もくし」の付け方や、重種馬の枠場へのつなぎ方を実践しました。力の強いばん馬が逃げないようにしっかりと結びます。私はローピングが苦手で…と話すと、人に教えるときは、1000回くらい練習して体で覚えさせるそう。私も家で練習します…。じっとロープワークを見る私……今、頭の中は???と混乱中(笑)。もくしは牧場の方が自分たちで作るそうです引き馬も行いました。私は乗馬をしていたときから馬にはなめられがち…。汐行さんにも帰ろうとされるのですが「調教の時は声も厳しくするが、それ以外で甘えてきたらそのままでいい」と。普段から厳しく接して、人が上なのだとわからせないとだめなのかな…と思っていましたが、そうとも限らない。ケースバイケースなのでしょうね。体を寄せてくる汐行さんの温かい体温が伝わってきました。「馬が怒って耳を絞るとき、このくらいまで耳が倒れます」という説明。十勝牧場の馬たちは本当におとなしく、触られ放題です(笑)。その2に続きます。取材/小久保友香、小久保巌義
2019年12月25日
11月8日、音更町アグリアリーナで「十勝当才馬展示会」が行われました。十勝管内で生まれた当歳馬数頭が、毎年この時季に展示されます。パンフレットには目的について「輓系馬の改良と生産意欲を高めるため」「改良育成技術と馬産経営の向上に寄与するため」とあります。20年ほど前に市場価格が暴落した際に、ばん馬たちを競走馬として走らせるためにどうすべきか勉強会を開こう、というのがスタートだそう。馬房に一緒に入ってる(^^)展示の流れは、以前ご紹介した共進会とほぼ同じです。ばんば牧場便り【 Vol.017 】第17回北海道総合畜産共進会https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201910020000/ばんば牧場便り【 Vol.014 】音更町アグリアリーナ「第50回十勝総合畜産共進会」https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201908220000/午前8時50分から測尺と撮影。出品される馬だけあって、当歳にしてはおとなしく撮影もそれなりに順調。何頭かは、友達と一緒じゃないといやだというので2頭一緒に引っ張って撮りました(笑)。9時半から開会式が行われて展示がスタートしました。佐々木啓文十勝馬事振興会長の挨拶 1頭ずつ立たせ、歩かせる個体展示。その後牡馬と牝馬に分かれて一列に並びます。(比較展示)審査と、コメントを述べる指導員は、日本馬事協会と家畜改良センター十勝牧場の職員。管理状況や馬体審査で、金、銀、銅に分けます。牝馬は15頭(1頭欠場)が出品されました。金賞を受賞した3頭を紹介します。馬名のあとは出品者です。102 鈴成(父インフィニティー 母エビータ)帯広・帯広有機馬格を褒められていました。もう少し活発ならなおいいとのこと。104 白ばら(父ユネスコ ド テューレ 母仁策)帯広・上見信一さんこちらの牧場では純血ペルシュロンを生産されています。ここ最近、共進会にも出品されていて評価が高いですね。古くからのばんえいファンや農家の方には、ペルシュロンファンが多いです。私も高貴なイメージがあって好きなのでうれしいですね。110 鈴姫(父マルニセンプー 母ウイナークイン)幕別・村田律雄さん「スラっとしたきれいな馬。来年を楽しみにしたい」と評価されていました。牡馬は8頭で、3頭が欠場。「甲乙付けがたい。この中からばんえい記念を獲る馬が出てほしい」とコメントされていました。金賞は1頭のみです。204 吉の春風(父インフィニティー 母ヨシノサクラ)芽室・丸毛清美さん4月生まれだけれど体高があり、バランスがすばらしいとのこと。半兄にキタノリュウキがいる血統です。銀賞も2頭紹介します。201 富平(父テンカムソウ 母トロピカルロゼ)帯広・帯広有機きれいな馬で、品があると評価されていました。1月生まれという点で204に比べると不利だったのかな。202 能平(父テンカムソウ 母アビリティー)帯広・帯広有機当歳馬ということもあり、成長はまだまだこれからです。「足りない分は飼料で補えるところもあるので改善して、競馬場に入れてくれたら」とコメントされていました。長くこの展示会が続き、競馬場のある十勝から、ばんえいの将来を期待できる日々が続いてほしいと思います。会場では佐々木会長の「佐々木畜産」のもつ煮が振る舞われていました。さて、趣のあるこの建物ですが。(写真は開会式)帯広競馬場の南側で(現在帯広厚生病院がある場所)に、せり場として使われていたものを移転したそうです。何度か来ていますが、由来について書かれたこの看板、知らなかった!開催前には競馬場内にポスターも掲示されます。次は来年になりますが、将来の活躍馬を見に訪れてみてはいかがでしょうか。取材/小久保友香、小久保巌義
2019年11月27日
9月14、15日に道東の別海町で「馬事競技大会」が行われました。土曜は競馬や繋駕で、日曜はばん馬レース。2日間にわたる馬のお祭りで、毎年夫婦で訪れるのを楽しみにしています。「別海町産業祭」に合わせて行われており、さまざまな海産物や牛乳、乳製品が並んでいました。詳細はまたあらためて、紹介いたします。それに合わせて、根室の下内畜産を訪れました。「アアモンド」の冠でおなじみの、下内美繪子さんの牧場です。今年からは白と黒のぶち毛で人気のモノクロチャンが繁殖入りしています。根室の馬事振興に貢献した下内勝さんが開場。勝さんは10数年前に亡くなりましたが家族が引き続き馬を育てています。近くにある北方原生花園に馬を放し、笹だらけになっていた花園に花を復活させたのも勝さんでした。(馬は毒のある花を食べないから、アヤメなどのきれいな花だけが残ります)今は花は終わっていますちなみに冠名の「アアモンド」の由来はというと…その昔、4月に行われる2歳の能力検査には千頭近くが登録し、3日間行われた時代もありました。この名簿の中から自分の馬を探すのは大変。と、1番から並ぶ冠を考えた結果「アアモンド」になったそう!アイデアマンですよね~。繁殖牝馬は11頭。1歳馬は少しずつ競馬場に入厩し、取材時は7頭がいました。1歳馬たち種雄馬はアコガレとアサノカイリキの2頭。アサノカイリキはハクタイホウの父ですね。来たばかりのアサノカイリキは、モノクロチャンと子連れの馬にやたら声を掛けていました(笑)。遠くでアコガレが「俺の女に手を出してんじゃねーよ!!」と言わんばかりにいなないていました(笑)アコガレ、遠くの放牧地にいたので小さいですが、いななきは聞こえてきました(笑) 牝馬を見ています…モノクロチャンは少しずつ牝馬たちの群れに慣れてきたそう。親子馬と一緒にいることが多かったように見えます。もう1頭いるぶち毛は愛永姫といって、ブチオやカレンの母、アローマドンナのお母さんです。ちょっと遅めですが、この日に無事出産したそうです!「アアモンド」の馬にはぶち毛が多いですね。馬のほか酪農も営んでいた勝さんは、赤(茶色)と白の牛など変わった毛色が好きだったそうです。さて、勝さんは共進会やばん馬大会に力を入れていました。奥の家を案内されると、トロフィーがたくさん!! 賞状は天井にまで所狭しと貼られていました。ばん馬大会の景品だというスクーターもありました。酪農と両立をしながら、かなりの苦労をしてここまで馬を育てあげてきたそう。黒ユリ賞に出走したアアモンドオリューや、草ばん馬で活躍したジョウセイハトップ(草ばん馬ではノサップ)のほか、ばん馬、競馬、繋駕で優勝したという小格馬のターザンなど、地域の有名馬がいました。中でもネムロリキは17連勝をしてテレビ番組「本物は誰だ」に出演したそうです。もともと山で「丸太出し」をしていたそうで、山が上手だとか。息子さんが小学生の時に乗ってハンディを300キロつけられ(軽いからってつけすぎですよね笑)、1300キロで悠々と勝ったそうです。しかし、勝さんはばんえい競馬では「肩掛けは取れなかった」そう。初重賞が2010年はまなす賞のアアモンドヤマト。その後アアモンドグンシンの活躍はご存じの通りです。十和田の絵馬師、三浦啓秀さんが描いたというモノクロチャンも飾られていました。プレゼントされたそう今では「自家生産にこだわらない」といいます。生産者賞などもありますが、あえて物事を広く考えているそう。「生産馬は生まれてくれるだけでいい」とのことでした。納沙布岬の近くにも馬が放牧されていますそれから中標津にある大西さんの牧場に行き、種雄馬のニシキエーカンとキョウエイボーイに会わせてもらいました。ニシキエーカンは今年度馬事協会から配属された馬。35頭くらいに種付けを行ったそうです。種付けの時など「バネがすごい」とそう。パワーを受け継ぐ子の誕生が楽しみですね。キョウエイボーイもおとなしく、逃げたポニーが入っていても2頭でおとなしくしていたとか。2016年1歳馬決勝大会で優勝した、ヒメオリュウの父もキョウエイボーイでした。ここで、大西さんからお知らせ。10月22日に釧路市大楽毛で「乗用馬オークション」が行われます。https://www.jouba.jrao.ne.jp/wp/information/5660/ここ最近、春はノーザンホースパーク、秋は大楽毛で乗用馬市場が開催されています。草ばん馬を見ていると、ポニーばん馬があったり、乗馬競技があったりするので、幅広い馬文化に触れることができます。帰りには、2013年まで行われていた「標津・中標津連合馬事競技大会」の会場跡地を見てきました。まっさら……ここは高倉健さん主演の映画『遥かなる山の呼び声』のロケ地「南中競馬場」でもあります。それだけに廃止は残念でした。文・小久保友香、写真・小久保巌義
2019年10月16日
前回の牧場便りで高野さんも書かれていた通り、9月7、8日にアグリアリーナ(十勝農協連家畜共進会場)で「第17回北海道総合畜産共進会」が行われました。4年に1度行われる、全道各地の馬が集まる共進会。昨年行われる予定でしたが、胆振東部地震の影響で今年に延期となりました。41頭(欠場1頭)が出品されました。7月の十勝共進会の様子はこちらhttps://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201908220000/1日目は測尺と個体審査、2日目は比較審査という流れは十勝と同じ。審査員を含め、スタッフは多いですね。農用馬が1歳雄雌、2歳雌、3歳以上雌子付、と分かれているのも同じ。今回は北海道和種馬とポニーも出品されています。ポニーの測尺は、枠場に入らないから外。ほのぼのします。ポニーは審査員の人たちもニコニコ。実際、ポニーは愛玩用ということで「かわいさ」も審査の重要な条件なのです。「ドサンコ」といわれる北海道和種馬の特徴は、速歩の時に同じ側の前後肢を同時に前後する「側対歩(そくたいほ)」。側対歩ができているかどうかも個体審査で確認します。ここに来る馬はさすがにみんな上手でしたね。個体審査の時には三角に引かれた線の上を歩きます。なぜなのか審査員の人に聞いたら、昔からそうなのですが、農用馬の共進会が行われているフランスのパン種馬場が、同じように歩くそうです。それに合わせているのではないかとのこと。審査のあとは、1頭ずつ写真撮影を行います。ばん馬や小格馬は、写真を撮る機会はほとんどないので、全道大会ならではですね。朝からはじまり、午後5時過ぎまでかかり1日目は終了しました。2日目。この全道共進会は、隣のアリーナで肉用牛部門も開かれています。合同の開会式はこの日に行われました。十勝と同じように線が引かれ、名前を呼ばれた上位馬は前に出ます。では、一等一席、二席の馬たちを紹介します。まずは、北海道和種馬とポニーから。講評は、北海道和種馬保存協会の近藤誠司会長からです。北海道和種馬 静晴(父北の力 母生静)出品者 函館市・池田茂 繁殖者 新ひだか町・北大静内研究牧場北海道和種馬は「全体のバランスとボリュームを見る」とのこと。静晴(しずはれ)はそれが良かった、ということですね。この毛色は「月毛」です。ポニー さつき(父コータロー(シェットランド・ポニー系) 母リリー(日本ポニー))出品者 別海町・菅原恵美子 繁殖者 別海町・菊地辰夫評価の基準は「かわいらしさと力強さ」。2席の馬も良かったけれど、爪の手入れが劣っていたとのこと。「子馬がかわいいからではないですよ」と北海道和種馬保存協会の近藤会長も笑いながら話していました。北海道和種馬とポニーには見事な旗が渡されます!そして、農用馬部門です。家畜改良センター十勝牧場の廣岡さんが講評しました。第1部 1歳雌1席 光富士(父カネサテンリュウ 母ヒカルロマン)出品者 足寄町・村上孝三 繁殖者 足寄町・辻虎男2席 琴宝(父トカチタカラ 母琴桜)出品者 網走市・佐藤牧場 繁殖者 池田町・江口勇光富士は今年のはまなす賞、銀河賞を勝ったキタノユウジロウの全妹となります。「雄大な馬格で牝馬らしい雰囲気があり、欠点が少ない」とのこと。琴宝はちょっと元気すぎる子でした(笑)。第2部 1歳雄1席 銀太(父カネサテンリュウ 母富士子)出品者・繁殖者 足寄町・大野信一2席 勇栄(父イサムフジ 母あまちゃん)出品者・繁殖者 標茶町・板鼻要一4頭のみでしたが、「発育はそんなに差はない」とのこと。銀太は「骨量と雄らしさ、力強さがある」との講評でした。第3部 2歳雌1席 イトサン(父カネサテンリュウ 母金姫)出品者 帯広市・帯広有機 繁殖者 足寄町・後藤有弘2席 栄華(父カゲツカサ 母栄姫)出品者・繁殖者 白糠町・江崎勝三こちらも4頭のみでしたが「いい馬ばかり」。イトサンについては「体重が四肢にバランス良くかかのり、しっかりしている。皮膚も薄く、繁殖に向いている」との講評でした。「骨量にあった肉をつけなくてはいけない。繁殖の時に留意してほしい」との一言も。2歳ですが、ここに出る馬は競走馬ではなく、繁殖に向けて審査されているということもあるそう。生産の世界なので、そういった視点なのですね。さて、ここまで見て気づきましたか?1歳と2歳の一席は全て、カネサテンリュウ産駒だったんです!もともと評判は聞いていましたが、キタノユウジロウの重賞連覇や負け無しの2歳馬キョウエイリュウの活躍など、ここ最近結果が出てきていますね。第4部 3歳以上雌(子付) 1席 ウィナーサラ(父トカチタカラ 母セブンフラワー 子の父カネサブラック)出品者 網走市・佐藤牧場 繁殖者 陸別町・七戸光次2席 サンノハルミ(父ダイヤキンショウ 母サンノエイカ 子の父キタノオーロラ)出品者・繁殖者 釧路市・三宮久蔵全てが終了した後、農用馬の一席、馬部門の一席を決めていきます。トロフィーや肩掛けです農用馬と馬部門の一席。そして小格馬を含めた審査で、最高位賞にに輝いたのは、4歳牝馬のウィナーサラでした!!馬格については「雄大で、頸から腰にかけての流れがスムーズ。子馬の発育もいい」とのこと。そしてなにより「馴致、調教しているのが伺える。爪もしっかりしており、管理も行き届いている。ここに臨む意気込みを感じる」。佐藤牧場の佐藤裕之社長は「最高位は念願でした。一席は何度もあったが、最高位はなかった」。今回に向けて、馬を作り上げてきた結果ですね。先代の佐藤久夫会長は「子どもを育てるように、手いっぱいの愛情をかけて馬を育てて来た。馬に一生をささげてきて、(自分の)馬が認めてもらえた。人生で最高の喜び」と喜んでいました。共進会とは?と聞くと、「馬の美学」。その通りの美しい馬でした。ウィナーサラは競走馬としても活躍していました。昨年の黒ユリ賞は4着でしたが、そのシーズンで引退し、繁殖入り。「スケールの大きさに繁殖馬としての期待をかけた。そしてカネサブラックの子を取りたかった」ということでの、若くしての引退だったそうです。佐藤会長は「子どもが次々と競馬場に行って、活躍するような馬を作りたい」とおっしゃっていました。数年前はばんえいが存続するかどうかわからず、若くして繁殖に上げる馬は多くありませんでした。早い引退はファンにとって寂しさもありますが、繁殖の将来が見えるようになったことはうれしいことです。さて、比較審査には楽天競馬の「第2回ばん馬生産牧場見学ツアー」が行われました。ツアーの様子https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201909180000/共進会や市場など、生産界の行事は一般ファンではなかなか知ることもできず、オープンにしているとはいえ行きにくいものですよね。私たちメディアでもなかなか知ることができません。貴重な経験ができたのではないかと思います。最後に、家畜改良センター十勝牧場の廣岡さんに今回の共進会について話を伺いました。全体的に「いい発育の馬が多かった」そう。「みんな『自分の馬が一番』と思っている(笑)が、地域によって育成が上手、繁殖が上手、という違いがある。見比べることで情報交換の場になれば」とのことでした。今回、農用馬の出品は十勝、釧路、根室地区がほとんどでオホーツク地区が1頭。道東のみということになります。北海道和種馬は農用馬よりは広い範囲とはいえ、道北、上川、空知地区はいませんでした。「北海道どこでも見られた馬の景色」の範囲が、狭くなっている影響が現れているのかと思うと切ない気持ちになります。秋からは生産地別の2歳馬戦も始まりますので、今まで以上に生産地に思いを馳せていただければと思います。取材/小久保友香、小久保巌義
2019年10月02日
(前回)https://plaza.rakuten.co.jp/baneiblog/diary/201903140000/ばんブロをご購読の皆様、初めてお目にかかります。「私設ばんえい競馬資料館」(http://banei.no.coocan.jp)をいうWebサイトを運営している高野直樹と申します。この度、9月7日(土)~8日(日)に行われた、楽天競馬超テラ盛り会員対象の「第2回ばん馬生産牧場見学ツアー」に同行をさせていただく機会に恵まれました。その様子をご紹介させていただきます。ばん馬生産牧場見学ツアーですが「ばん馬をさらに好きになっていただき、将来の馬主候補を増やすと同時に、競馬ファンと生産牧場とのコミュニケーションを増やすこと」を目的としているとのこと。今春3月に第1回が開催され、今回は2回目となります。今回の参加者は10名。北海道外にお住まいの方が多く、ばんえい競馬やばん馬を実際に観るのは初めてという方も多くいらっしゃいました。まず最初に向かったのはとかち帯広空港のすぐそばにある「ばんえい牧場十勝」。「ジェイ」の冠名でおなじみ小森唯永オーナーが所有する牧場で、繁殖牝馬の数は約40頭。ばん馬の生産牧場としては北海道最大級の規模です。牧場スタッフの案内で牧場内を見て回ります。来年のデビューを目指す1歳馬たち。馬房にいたのはホクショウクインの仔(1歳)。父は豪脚ホクショウダイヤ。リフレッシュのため生まれ故郷の牧場で休養していたジェイファーストです。馬房から出していただきました。小森オーナー自ら説明をしてくださいました。今期はすでに7勝と絶好調。オーナー曰く「もっと上を目指せる」とのこと。今後の活躍に期待です。こちらは同じく休養中の4歳三冠馬マルミゴウカイ。ばんえい牧場十勝では種牡馬も繋養しています。今年2月に惜しまれつつ引退したジェイワン。父カネサブラック(重賞21勝)母ウィナーサマー(重賞2勝)という良血。馬格もあり産駒が楽しみです。こちらはフランスからやってきた純血ペルシュロン種のファルコ。一般的に純血ペルシュロン種の種牡馬は、競走馬上がりの種牡馬に比べると小さ目なのですが、このファルコはとっても大きい!ミタコトナイは蹄鉄の交換中。当歳馬(とねっこ)と繁殖牝馬もいました。クレッシェンドと当歳牝(父ミタコトナイ)。こちらは花姫。ニュータカラコマを筆頭に多くの競走馬を競馬場に送り出した名繁殖牝馬です。花姫の当歳牡。父はナリタボブサップ。ばんえい牧場十勝。大きく分けて2つの区画があり、全部を見て回るとしたら2時間近くかかるとのこと。今回は時間の都合で第1分場のみの見学となりましたが、当歳馬に1歳馬、繁殖牝馬や種牡馬と、多くのばん馬を間近に見ることができました。なお、このばんえい牧場十勝ですが、予約無しで来訪して自由に見学することができます。とかち帯広空港から至近でレストランも併設(十勝羊カレーが絶品!)。十勝・帯広にお越しの際には訪問場所の一つとしてご検討いただければ幸いです。詳細は同牧場のWebサイト(http://baneibokujo.jp)でご確認ください。※今シーズンの牧場公開・見学は10月31日までの営業だそうです続いてツアーは帯広競馬場に移動、ばんえい競馬の観戦です。プレミアムラウンジでじっくり予想をしたり、パドックやエキサイティングゾーンでばん馬を間近に眺めたり。思い思いのスタイルで競馬観戦です。この日のメインレースは「第2回楽天競馬ばん馬ツアー記念」。表彰式ではツアー参加者がプレゼンターを務めました。勝利したのは4歳馬ハマノダイマオー。松井調教師、藤本匠騎手に賞状を手渡しました。翌日の9月8日。朝調教見学ツアー(希望者)の後、今ツアー2つ目のメインイベントへ。音更町で行われている「第17回北海道総合畜産共進会 馬部門」の見学です。この全道共進会(品評会)、各地域の共進会で優秀な評価を得た馬が集まり、その中からさらなる優秀な馬を選ぶ大会です。馬部門については4年に一度行われます。本来は昨年開催となるはずだったのですが、2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震の影響で中止、今年の開催となりました。※この北海道総合畜産共進会の様子については、後日、小久保巌義さん&友香さんがこのばんブロで紹介してくださる、とのことです審査は2日間に渡って行われました。1日目は各馬の体格を測ったり(測尺)歩様を確認したりをする個体審査。私達ツアーが見学をしたのは2日目の比較審査。一堂に会した出場馬を審査員が比較し、審査を行います。2歳雌馬。イトサン(父カネサテンリュウ;母金姫)1歳雌馬で一等一席(最優秀)に選ばれた光富士(父カネサテンリュウ;母ヒカルロマン)。先日はまなす賞を制したキタノユウジロウの全妹です。北海道和種(ドサンコ)の審査も行われました。静晴。こちらはポニー。さつき。各部門の優秀馬を選出した後にはその優秀馬同士でも比較審査を行います。すべての馬の頂点に輝いたのは3才以上雌部門のウィナーサラ(左)。父トカチタカラ母セブンフラワー。現役時代は25戦3勝、黒ユリ賞4着にも入っています。一緒にいるのは当歳馬(父カネサブラック)。この北海道総合畜産共進会。生産関係者以外の一般客も見学可能ではあるのですが。開催に関する情報はなかなか得られませんし、会場は公共交通機関が通っていない場所ということで。私達のようなファンにとってはなかなか敷居が高いところであります。今回のツアーでここを訪れることができたのは、大変貴重な機会になったかと思います。共進会見学の後は競馬場に戻ってランチタイム。場所は競馬場前のミリオンサンテ(http://million-sante.com/)。実況番組でもおなじみ実況アナウンサー太田裕士さんと競馬ブックトラックマン定政紀宏さんをゲストに迎えてのランチ懇親会。定政さんにはレース予想もしていただきました。メインレース「マロニエ賞」を ◎コウシュハウンカイ(1番人気) 1着 ○ミノルシャープ(4番人気) 2着とズバリ的中! さすがです。ランチの後は再び競馬場へ。昨日に引き続き、参加者それぞれ思い思いのスタンスで競馬を楽しみました。以上2日間、「馬づくし」のばん馬生産牧場見学ツアー。ばんえい競馬が行われている帯広競馬場と、そこで活躍するばん馬を送り出してくれる生産者さん達が働く現場の一端を見ることが出来ました。「馬」をより深く知ることができれば「競馬」をより深く楽しむことができると思います。ただ、ばん馬やばん馬の生産に関わる情報量は、サラブレッドのそれに比べたら少ないのも事実です。ばん馬生産の現場に直に接することができるこの「ばん馬生産牧場見学ツアー」という取り組み、素晴らしいものだと感じております。文・写真/高野直樹
2019年09月18日
7月13日、十勝の北部にある鹿追町で「鹿追競ばん馬競技大会」が開かれました。十勝で行われている草ばん馬は旭山、鹿追、本別の3ヶ所。鹿追は十勝で唯一、草競馬も行われています。競ばん馬、とは競馬とばん馬を合わせた造語です。北海道和種馬=どさんこ、とポニーによる速歩レースです会場は「道の駅うりまく」。ここには乗馬クラブの「鹿追町ライディングパーク」が併設されています。鹿追はエンデュランスやウエスタン乗馬の施設が複数ある、すてきな馬の町。この付近は、馬産地でよく見かける「馬横断注意」の標識もウエスタン調なんですよ。鹿追のばん馬も一時は開催が危ぶまれましたが、5年前に「鹿追町競馬会」を発足させて存続し、今年で58回目。U字型のばん馬コースと、パークゴルフ場(十勝はパークゴルフが盛んです)の周りを走る、1周1000メートルの競馬コースがあります。当日はあいにくの雨でした。近年は雨の日が多く……誰だ雨男!(笑)ベニヤ板に貼られる出走表は防水加工が施されていて完璧です。草ばん馬は手書きの出走表が貼られます。たまに貼られないところもあります。基本的には自分たちが楽しむ競馬。雨だからなのか出走数も少なく、30レースの予定は21レースになりました。今回のレースをご紹介。頭数の多いポニーは18レースが3つあります。臨機応変にやっているので3Rが2つとか細かいことは気にせずに。これが草ばん馬のいいところです。1R 1歳ばん馬決勝(牡・牝)2R 1歳ばん馬決勝(牡・牝)3R 十勝なつぞらレース 和種馬・ポニー速歩決勝 10003R ばん馬C級4R ばん馬B級5R ばん馬A級11R 十勝なつぞらレース 和種馬・ポニー駈歩決勝 100016R 十勝愛馬会 ポニー繫駕速歩決勝 100018-1R ポニー1歳決勝C18-2R ポニー1歳決勝B18-3R ポニー1歳決勝A19-1R ポニー2歳決勝B19-2R ポニー2歳決勝A20R 十勝愛馬会 ポニー繫駕駈歩決勝 100026R ポニーD級決勝28-1R ポニーC級決勝B28-2R ポニーC級決勝A30-1R ポニーB級決勝B30-2R ポニーB級決勝A32R ポニーA級決勝33R ばん馬重量決勝ばん馬競走は6レース。1歳馬も草ばん馬に出てくる馬はそれなりのレースをしています。これなら、1歳馬決勝大会の活躍も納得です。生まれて1年ちょっとの馬が、よくここまで…と関心します。さて、よく見かける馬運車があってびっくり! 今年から帯広市内を回っている「馬車BAR」のムサシコマが来ていました。マネージャーの永田剛さんによると「草ばん馬も十勝の馬文化だから、広く盛り上げたい」と参加したとのこと。ばんえいの格好も、久しぶりでうれしい気がするのはばんえいファンだからかな。久しぶりに引いたそりはどんな感じだったのでしょう。馬車BARのSNSを見ると騎手の鈴木御者は「コマはもう競馬を忘れてる。馬車の様にのんびり走る」と話していたそう。来年も参加予定だそうです。いい気分転換になったかな?A級では、オープン馬のシンザンボーイとカンシャノココロも出走していました。現役馬も参加するのが草ばん馬の特徴。馬の気分転換や、ばんえいのルーツである草ばん馬を盛り上げる、という理由で出走します。検疫は草ばん馬に限り5日間なので、土曜に出走予定があっても、次週のレースにも間に合います。シンザンボーイほとんどのばん馬で最後に行われるのが、一番荷物の重い「高重量戦」です。「重量引き」ともいいます。このレースに出て、勝った馬が一番強い馬、ということになります。雨で軽馬場とはいえ、すごい重量ですね。道具をつけるなどの作業は、参加者が自然に集まって作業を手伝います。スタート! 手前はカンシャノココロです。シンザンボーイは出走しませんでした。優勝したのは、草ばん馬の常連ブラックニセイ!!左端がブラックニセイスピード勝負のポニーばん馬は11Rありました。旭山でも優勝したキングパワーがまた優勝!キングパワー、8月27日の釧路輓馬大会でも優勝しました。強い!手前がキングパワー以上ばん馬のご紹介でした。さて、草競馬は中標津や浜中など道東で盛んですが、今回は都合が付かず参加は十勝のみでした。中標津と浦河で行われていた草競馬が中止になり、道内では鹿追と9月中旬に行われる別海の馬事競技大会のみ。中でも珍しいのが、1人乗りの2輪馬車による「繋駕(けいが)速歩競走」。繫駕は中央競馬や道営競馬で行われていたこともあります。フランスでは今でも人気だそうですね。今回は音更からの出走だけとなりましたが、ほかにも中標津や浜中町で楽しんでいる方がいらっしゃいます。繫駕の馬車はどうするのか聞いたところ、今回参加した方は、昔家で使っていたものを使い続けているそう。以前道東の方に聞いたら、盛んな国から輸入しているそう。「ニュージーランドは長く細い。フランスは太く短い」そうです。レースでは「ポニー繫駕駈歩」もありました。繫駕は速歩だけだと思っていましたが、駈歩の繫駕もあるんですね。午前最後のレースは「麦稈(ばっかん)ロール転がし競走」でした夏に北海道を訪れると、放牧地にゴロンと牧草の塊がありますよね。お菓子のコロンみたいな。あれを「麦稈ロール」といいます。こちらをかわいくラッピングしてごろごろと競走!!レースが終わると、もちまきです。草ばん馬大会では何件か、締めくくりにもちまきをするところがあります。私は「恐怖のもちまき」と呼んでます!なぜなら、大人も容赦なく子どもを押しのけてもちを拾うから(笑)もちろんそんな方ばかりではないですが…笑写真は昨年のもちまきです北海道の草ばん馬も終盤に入ってきました。ばん馬大会の情報は以下のページで紹介しています。ばんえい競馬と違う、でもはじまりの文化。近くでご覧になってみてはいかがでしょうか。https://www.facebook.com/kusabanba/9月1日は十勝で行う今年最後の草ばん馬、本別町のポニーばん馬大会です。ウンカイを管理していた樋口さんがコースを作るなど尽力されていますので、ぜひ観戦して盛り上げてください!「本別きらめきタウンフェスティバル」の一環で、食べ物も充実!!今年は純烈と岡本真夜さんが来ます。すごいですよね…取材/小久保友香、小久保巌義
2019年08月29日
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