北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

2009.11.22
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最近日本のマスメディアなどでも、盛んに中国のEコマースが取り上げられています。
確かに、中国のインターネット・ユーザーは3億3,800万人(09年6月・CNNIC発表)、Eコマースの市場規模は1,800億RMB(約2.5兆円・iResearch2009年予測値)で、毎年2倍近い成長を遂げています。国土が広大な中国マーケットをカバーするには、オンライン・ストアなどの無店舗販売のシステム構築が効率的でもあります。

オンライン・ストアは、多数の実店舗や小売店網を整備する必要が無く、販売スタッフも用意する必要が無いので、一般的には参入障壁が低いと考えられています。もちろん、自社でシステムを用意したり、物流(納品の仕組み)を整備したりするには、それなりの覚悟が必要ですが、楽天市場のようなショッピング・モールなどに出店するのであれば、個人でも零細企業でも簡単に販路を拡大することが可能です。
ご存知の通り、中国ではTAOBAO(淘宝網)がEコマースのプラットフォームとして最大かつ最強です。TAOBAOの一日の取引高は、中国最大の百貨店チェーンやいまや中国最大のDSチェーンといえるウォルマートの一日の売上を上回っています。

こうした中、数多くの日本企業からTAOBAOに出店したい、とのお話が舞い込んできます。またネット上には「TAOBAO出店代行」をうたったサービスも数多く出現しています。
でも、はっきり申しあげましょう。現時点では、 中国に現地法人を持たない外国企業はTAOBAOに出店できません 。厳密に申しあげれば、"個人"の資格として出店することは不可能ではありません。ただ、会社のビジネスとして出店するのはきわめて難しいと思ったほうが良いでしょう。

TAOBAOは元来C2Cのプラットフォームなのです。つまり、個人による出店販売、購入者個人がリスクを持った上での購入が原則でした。つまり、ヤフオクみたいなものです。しかし、粗悪品、まがい物、詐欺などがあとを絶たず、企業による品質保証を受けられるサービスを求める利用者の声に押され、2年前にB2CプラットフォームであるTAOBAOショッピングモール(淘宝商城)をオープンさせたのです。
TAOBAOショッピングモールはブランドショップとも呼ばれ、正規販売権を持つ企業しか出店できませんし、見込み客からのお問合せ対応やアフターサービス体制に対して厳しい条件がつきます。その分、利用者は安心して利用できますし、何よりも中国の公給領収書の発行を受けられますので、会社や役所の経費で何でも揃えることの多い中国の人たちにとっては利用し易くなったのです。


TAOBAOショッピングモールは、正規品とアフターサービスを保証するB2Cのプラットフォームですから、普通のTAOBAO(C2Cプラットフォーム)のお店よりも断然集客力がありますし、売上も上がります。そうでなくとも、日頃からフェイク(偽物)やコピー商品、並行輸入品(非正規ルート販売品)に悩まされている日本企業であるならば、そうした怪しげな商品が並ぶ普通のTAOBAO(C2Cプラットフォーム)に出店するのでは意味が無いので、B2CのTAOBAOショッピングモールへの出店を望むはずです。

ところが現時点で、TAOBAOショッピングモールには、中国国内で小売販売ができる資格を持った企業でなければ出店できません。ですから、少なくとも中国に現地法人を持っていなければ日本企業は出店できないのです。更に申しあげれば、中国国内で小売販売ができる資格というのが、外資系企業にとっては獲得しにくい状態になっています(厳密には、無店舗販売ライセンスと言う外資企業では更に取得しにくい資格すら必要と言えます)。

もちろん、TAOBAOショッピングモールに出店するのではなく、自力でECサイトを立ち上げることも不可能とは言えません。けれども大きな覚悟が必要です。

第一に、 中国からアクセスできなくなる ことを覚悟しなければなりません。
日本(中国国外)にホスティング(サーバーを設置)する場合、まず課題になるのは中国からのアクセス速度。ご存知の通り、中国にはゴールデン・シールド(金盾)というインターネット上の情報を検閲・制限するシステムがあるので、国外へのアクセスにボトルネックが存在します。ですから中国国内のサイトの場合、中国の利用者が快適にショッピングができません。
更に怖いのは、いつアクセス禁止になっても文句が言えないのです。
サイトに中国当局が秘かに定めるNGワードが含まれていたり、中国当局にとってよろしくないサイトがリンク先に含まれていたり、或いは中国当局に目をつけられているネットユーザーが頻繁に訪れたりすると、いつの間にか中国からアクセスできなくなったりします。
極端な例ですが、ある日本企業のオンライン・ストア(日本でホスティング)は、トラフィックが急激に伸びた途端、中国からアクセスできなくなってしまったこともありました。

第二に、 売上代金を受け取れなくなったり、突然中国当局に税金を請求される 覚悟をしなければなりません。

PaypalやVISAなど国際クレジットカードによる決済であれば、日本で代金を受け取れる可能性もより大きくなりますが、これらの決済方法を利用できるのはAlipay利用者の10分の1くらいですから、Alipayを導入しなければ売上も伸びない、というのが現状です。
税金の問題は、輸入関税ではありません。日本から小口で直接購入者に商品を送るのであれば、一般的には個人輸入と判断されます。税関審査で輸入関税を求められることがありますが、数百元(日本円なら数千円)くらいの商品であれば、見逃される場合がほとんどです。課税を求められたとしても、中国で受取る側つまり購入者が納税することになります。購入者が納税せずに商品を受取らず、返品になるというリスクはあります。
けれども、より大きなリスクは営業税や増値税(付加価値税)などの間接税や企業所得税などを中国側から請求される危険性があるということです。アメリカのAmazonに対して日本の国税当局が噛み付いたのと構造は一緒です。売買と言うビジネスが日本で発生したのか中国で発生したのかという解釈の問題ですが、下手をすると中国からの売上に対して中国での所得と言いがかりをつけられて、後になってから税金を払え、と言われかねません。

このように考えていくと、日本からの遠隔操作で中国向けECでビジネスを行うのはリスクが大きく実入りが少ないお話ということになります。
つまり、本格的に中国でオンラインでモノを売りたいというのであれば、中国に現地法人をセットアップして現地でのオペレーション体制を整えていくことが肝要だということです。それにはお金も時間も労力もかかりますが、広い中国に実際の販売網を築くことに比べたら、うんと安上がりなのです。
面としてカバーしなければ、中国マーケットの魅力は激減 してしまいます。"僻地のゲリラ戦"を生き抜くためには、拠点を押さえても勝ち得ません。
そうした点において、 広大な中国全地域に中間層向けの販売網を構築するのと同義のオンライン・ストアは、なお低リスクで高リターンが見込める戦術ですし、インターネットは極めて有効なマーケティング・ツールなのです

日本から遠隔操作でこそこそ行うようなものではありません。参入障壁は高くても、真剣に取り組むべきだと思うのです。





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Last updated  2009.11.22 22:08:09
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