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2010.09.05
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カテゴリ: デキゴト



空高く、昇っていった


*****************************

8月の終わりに義父が亡くなった。

身近な人が亡くなることはあったけれど

お葬式をだすのは、私にとっても、主人にとっても初めての経験で

悲しんでいる暇がないほど、忙しい毎日が続いた。



息子は私の実家に預けっぱなしで1週間。

お通夜と告別式のときには、式にだけ顔をだし



こぼれそうな涙をこらえ

私たちと別れて、実家に戻っていった。



父が危篤になったとき

私たちは高尾にキャンプに行った帰りだった。

すぐに病院に駆けつけたとき

父は酸素マスクを口にあて

苦しそうにしていた。

素人の目でみても、

父の死は、すぐそこに迫っていた。



私が抱っこする胸のなかで

息子は、目を閉じて寝たフリをしていた。





見たくないから目をつぶってるんだ」



しばらくすると息子はそう言った。



私は、息子を抱っこしたまま、病室を出て、

休憩所へ行った。



消灯後の休憩所は真っ暗。



大きな窓から見える高層ビルの明かりだけ。



ソファーに腰をかけて、

抱っこした息子に言った。


「あのね、おじいちゃまは、空へ飛んでいく準備をしているんだよ。

もうすぐね、おじいちゃまは体から抜け出して

天女のハゴロモをまとって、空に昇っていくの。

この前、ふーちゃんが江ノ島で手をはなしちゃった風船もつかまえて

空に昇っていくかもね。

でもね、おじいちゃまはいなくなるんじゃないんだよ。

ふーちゃんのここ(胸)には、ちっちゃいおじいちゃまがいるんだよ。

いつもは小さいんだけど、おじいちゃまのことを考えたら、

いつでも大きくなるんだ。

だから寂しくないんだよ」



そこまで言うと、息子は

「ちっちゃいってどのくらい?」

と、聞いた。


私が

「小指の先くらいかなあ」

と、言うと、

「大きくなったら、このボタンくらいにはなるのかな?」

と、着ているポロシャツのボタンを指差して言った。


「うん」

と、言うと、なぜか息子は納得した様子で

「あっちに行く」

と、病室の方に行こうとするのだけど、

いざ、病室の近くに行くと足が止まってしまうのだった。



結局、その日の夜中、父はあっけなく逝ってしまった。



最初は父の死顔を見るのを嫌がっていた息子も

最後には棺に自分が折った風船と蛙の折り紙を入れ

たくさんのお花で飾って、父を見送った。



火葬のとき、息子に見せない方がいいと助言をしてくださる人がいた。

けれど、私は、日本で人が亡くなったとき、普通にすることを

不自然に隠したりするのはイヤだったから、そのままにしていた。

息子は息子なりに理解しているようだった。



「お母さん、おじいちゃまは箱のまま飛んで行ったんだね。

車掌さん(←火葬場の人のこと)が扉開けたら、箱がなくなっていたからね。」



入院中、いつもとは違う雰囲気の父を怖がって

病室に入りたがらなかった息子。

7月の半ば、従兄弟のお姉ちゃんたちがワイワイとやってきたとき

一緒に病室に入って父と握手をしたのが最後の触れ合いだった。



「おじいちゃまは握手しながら

何度も、何度も『ふーちゃん!!』って言ってたんだよ」



家に来るたび、威厳ある強面の顔をでろ~っと緩めて

息子をかわいがってくれた父。

握手をしたときの父の気持ちを考えると泣けてくる。



息子の中にはきっと、小さいおじいちゃんが入ってるはずだ。



父はいまごろハゴロモをまとい、自由に飛び回っていることだろう。

痛みから解放され、自由に。

そして優雅に。





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最終更新日  2010.09.06 02:07:30
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