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某国営放送の人気番組にプロジェクトXなる番組があることを知らない人はいないでしょう。楽天でもいろいろな方が題材として取り上げていますが、私はこれに先駆けて同じ趣旨のドキュメントを面白く綴った本を忘れることができません。それはこの日記のタイトルにしている「匠の時代」という本で、著者は内橋克人氏でした。幾つもの新製品開発秘話を入念な取材により、生き生きと描いた実録小説は、プロジェクトXとはまた趣の異なる興奮を伝えてくれる内容でした。面白いことにその語り口はプロジェクトXの語りで有名となったモトロヲ節ととてもよく似ています。順番から言うとこちらのほうがオリジナルかもしれませんが。簡潔で修飾のない言い回しは、技術者の地道な苦労を表現するのには最もインパクトがあります。実際に開発に携わった人が登場して、苦労話を披露するテレビならではの手法は小説では真似ようもありませんが、読んでいるうちに引き込まれてしまうのはその過程にたまらないロマンを感じるからでしょうか。私も技術者のはしくれとして、新しい製品や技術の開発秘話にはついつい感情移入してしまうのですが、そこには単に苦労話を超えた魅力があります。残念ながらと言いますか、当然と言いますか、取り上げられるのは結果的に成功した話ばかりなのですが、不幸にして結実しなかった研究や開発はその陰に山のようにあるはずです。でもそれは失敗したから悪というわけではなく、形を変えて役に立った成果や、成功しなかったが故に大きな教訓となったものが数多くあると思われます。企業にとってはそれが価値のあるものとして広く認められ、利潤を生まなければなんのメリットもないのですが、それが成功するかどうかわからないが賭けてみようという経営者の度量も重要なポイントになります。リスクを承知でチャレンジするのはある意味では大きな企業の社会的役割ではないかとさえ思います。技術者という種類の人間は面白い題材や課題を与えられると、それが難しければ難しいほどついつい熱中してしまうという子供のような性向を持っています。きっかけも様々で、こんなものが出来たら面白いだろうなとか、こんなことが出来たら皆が楽ができるだろうとか千差万別なのですが、物事を成就させるためにはその動機に見合う情熱のようなものが必要です。何とかなるはずだというたゆまぬ挑戦心を持続し、寝食を忘れて熱中する姿勢が一見不可能とも思える難題を克服する力になっているのです。このような微視的に見ると小さなプロジェクトの中での挑戦という姿勢は、マクロで見ると全体の大きな向上心につながるのではないかと私は思っています。近代の日本を本当に支えて発展させてきた力は、政治家でも官僚でもなく、このような企業の中でたゆまぬ努力を続けてきた人たちにあるのではないかと思うのです。さらに、科学技術は今、国境や地域を越えた協力体制の中で地球をよりよく変えていくというグローバルな思想を得ようとしているような気がします。価値観や宗教観、社会体制の違いを吸収できない現状で、とりあえず普遍的な価値をもちうるのはヒューマンオリエンテッドなテクノロジーなのではないのでしょうか。もちろん科学が万能であるとは思いもしませんが、世界が一つの共通認識を持つための方策としてはかなり有効だと感じています。
2002年07月03日
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以前、私は仕事で地中海沿いのリビアと言う国にいたことがあります。製鉄所の建設でしたので、当然現場は海岸沿いで高いところに登ると海を確認することができました。日本人や地元の人はあまり行かなかったようですが、海水浴の出来る海岸もあって、現場で仲良くなったシンガポール人に誘われて泳ぎに行ったことがあります。海水浴をするにはやや傾斜が急だったのですが、人気の無い浜辺でそれなりに楽しんで泳ぎました。深さが数mのところで下を確認してみると、うっそうと海草が茂っています。足をとられたら、溺れてしまうのではないかと思うほどでしたが、これも当時のいい思い出です。某テレビ局の特命リサーチという番組で本日取り上げられていた話題が、地中海の海産資源を脅かすキラー海草でした。これは私の見た海草とは異なるようですが、かなり衝撃的な内容でした。キラー海草というのはイチイヅタという海草の変種で、以前にドイツの水族館で水槽の装飾用に取り入れたものが生態系の中で極めて危険な植物に変質し繁殖したものだそうです。従来のイチイヅタは熱帯種であり非常に美しい緑色をしていて、これが水族館で採用された理由なのですが、地中海で生息するには水温が低すぎて繁殖できないのです。変種イチイヅタは、自分自身を防御するのにある種の毒素を水中に吐き出します。しかも原種よりも大きく成長し、その群生の中には太陽光がとどきません。つまりこの海草の中や付近でプランクトンは生きていけないのです。プランクトンが住めなければそれらをえさにしている小型魚は絶滅するしかありません。食物連鎖の原理で言えば当然大型魚もそのあたりは住めず、付近は一帯ただその海草だけが生い茂る海に変貌するはずです。つまり沿岸漁業に大打撃を与えることはあきらかであり、事実、地中海での沿岸漁業は危機に瀕しているようです。なぜ、このような邪悪な突然変異種が発生したのでしょうか。番組では原因を次のように推定しています。海草は水族館の水槽で使用する際に殺菌をしなければならなかったのですが、その方法として日夜紫外線を浴びせたのです。どうもこれが遺伝子構造の変異を招き、新種を生んでしまった可能性があるそうです。新種のイチイヅタが獲得した能力は、まず耐寒性です。20度以下になると生きていけなかったこの海草が10度まで耐えられるようになったのです。第二に繁殖力の増加、というより繁殖形態の変化です。原種は有性生殖による繁殖を行うのですが、なんと新種は無性生殖という手段を手にしたのです。このへんは私も素人なのでほんとにそんな変化が可能なのかどうかよくわかりませんが、有性生殖などという面倒な手続きを省くことが出来たぶん、イチイヅタは成長により多くのエネルギーを費やすことが出来るようになり、巨大化したというわけです。事の重大さに気づいたヨーロッパ諸国はこの海草の輸入や使用を禁止しました。不幸なことにこの変種は他の地域にも徐々に進出して世界的な問題になるかもしれないとのことです。四方を海に囲まれた日本にとっても他人事ではなく、むしろ温度や地理的な条件から言うと極めて憂慮すべき事態です。実は能登の沿岸部にこの海草が確認されていると言うのです。現在日本近海に多く見られる海洋生命のゆりかごともいえる藻場にこのキラー海草が取って代わる可能性は極めて高いのです。対策はあるのでしょうか?現在、考えられている効果的と思われる方法は天敵の採用です。アメフラシと言う殻のない貝の一種にこの海草を好んで食べるものがいます。繁殖力は旺盛ですが、低温では生息できないので冬場に死滅してしまい、異常繁殖はすることはないであろうと考えれています。私自身がいいアイディアを持っているわけではないですが、どうもこの対処療法は新たな危機を招くようなことはないのでしょうかね?それでもすし屋さんからネタのメニューが半分以上なくなってしまうのも切ないですしね。ところで、人間も異常な繁殖をしてるし環境を単純化して破壊しているし、キラー海草と似たようなところがありますが、ひょっとしたら地球外の生物が地球の環境を変えようとして人間を改造してたりしないでしょうね?どういうやつらかって?もうちょっと二酸化炭素が増えないと呼吸できない生物ですよ。
2002年07月14日
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