世界で一番愛する人と国際結婚

出会い~ときめき





横断歩道の手前に立つ彼と、その彼にゆっくりと近づいていく私。

青の信号が、早く赤に変わってくれないかと念じていた。

横断歩道に差しかかる寸前、上手い具合に信号が赤になってくれた。


私は微笑を浮かべて、再度彼のほうをチラッと見て彼の横に並んだ。


すると、その男性が私に挨拶してきた。

「Bonjour.」



私はチャンス、とばかりに笑顔で訊いた。

「Bonjour. ここで、どなたか待っているのですか?」



彼は、私の質問には答えず、

「さっき日本食スーパーにいた方ですよね?」

と聞いてきた。



「はい、そうです。あなたもいらっしゃったのですか?」

としらじらしく聞いてみた。



「うん。買いたいものがあったのだけど、見つからなくて。
僕、日本食が好きなんです。
あなた、日本人ですよね?」


「そうです。」


「僕はノアール。あなたは?」


「プルメリアです。」



私達はその場で10分くらい立ち話をした。

その間、信号は何度も青に変わり、何人もの人が通り過ぎていった。



「よかったら、コーヒーでも一緒にいかがですか?
時間ありますか?」


「ええ、少しなら大丈夫ですけど。」


私は腕時計を見ながら、もったいぶってこたえた。


内心、

『時間ならありますとも、ありますとも、何時間でも!!』

と狂喜の声をあげながら。



彼はすぐ側にある、ドイツ系の小さな会社で働いている人だった。
パリ生まれのパリ育ちのパリジャンで、私とは逆側のパリの西、
16区に住んでいた。


日本の映画が大好きだったり、日本の歴史に詳しいことに驚いた。


日本に1ヶ月間ホームステイをして、日本語学校に行ったことが
あるそうで、少しだけ日本語も話せた。


アメリカにも仕事で5年ほど住んだことがある彼は、
流暢な英語が話せることが分かった。


私達は、英語4割、フランス語4割、残り1割簡単な
日本語の単語を織り交ぜながら、長い間会話を楽しんだ。



いつの間にか、すっかり日も暮れてしまっていた。



私達はお互いの電話番号を交換し、カフェを後にした。



私は、久しぶりに地に足がつかない感触を覚えた。
メトロの中で、顔がにやけないようにするのが大変だった。




フランスに来て以来、何人かのフランス人男性とデートをしたが、
彼らときたら、会ってすぐに手をつないできたり、すぐにキスを
しようとしてくる。挨拶の空気へのキスではなく、唇にだ。

パリの男性ときたら、こっちの気持ちなどお構いなしなのだろうか、
といつも思っていた。



でも、ノアールは最寄の駅まで送ってくれた後、握手をして別れた。


それから、フランス人はナンパをしておきながら、お茶代すら出して
くれない人が多かった。テーブルチェックの時に、自分の分のお金だけを
置くのだ。


『私って、安い女だと思われている?』


心配になって、他の日本人女性に聞いてみたところ、ナンパをして
きたにも関わらず、やはりお茶代や食事代は、割り勘にされることが
多いともらしていた。


フランス人は、恋人になったり奥さんになったりするまでは、
割り勘にする男性が多いのでは、という結論にいたった。


『なんだ、私だけじゃなかったのか。』


安心すると共に、『フランス人=ケチ』 という公式ができていた。


でも、ノアールは私の分も支払ってくれた。


外見が私の好みで、話が弾んだ。


それに加えて、この2つは非常にポイントが高かった。



絶対に彼をものにしてやる。彼の恋人になってやる。
そう決心した私は、家に帰るなりノートにメモをした。


・彼から電話があるまで、自分からは連絡しない。

・電話があっても、長引かせないで用件を終えたら切る。

・自分からデートに誘わない。でも誘ってくれたら、できるだけ
間を置かないで、他の予定を変えてでも早めに会う。

・もしその後付き合うようなことになったら、彼から2回電話が
あれば、私から1回かけてあげるくらいの割合にする。

・彼が強く誘ってきても、最初の1ヶ月は絶対に部屋に泊まらない。

・私はきれい、私は愛されるに値すると毎日唱える。



この頃は『The Rules』のことは知らなかったが、今まで何度も辛い恋を
繰り返してきた私は、自分の失敗を基に、体で覚えたルールを作っていた。
そのメモを目に付く所に貼って、彼の電話番号は机にしまった。


つづく

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