BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

鳩の求愛


鳩の求愛 [act.1]









「僕は鳩。









種類は”ドバト”。
でも、少し雑種が入っているかも。ププッ!


趣味:インターネット(うそ)。


名前は”イーグル翼”!

翼君とでも呼んでくれ!



年齢19歳。鳩高校から鳩大学へ進学。ただいま学生(うそ)。

今日も公園にかわいい女の子を見つけに行くのさ!(これもうそ)」







 そう言って翼君は大きな翼を広げた。



ブン!



途端に翼君の身体は空中に浮かんだ。力強い飛行だ。
風を切って大空を飛ぶ。本当に青い空だった。



「ああ、なんて気持ちが良いんだ!」



そしてかっこよく風に乗って滑空飛行。
ギャラリーに魅せながらうまく気流に乗れる鳩の事を、鳩の世界では「サーファー」と呼ぶ。
翼君もサーファーの1人(羽)だった。
空中を気流の流れに身を任せながら、優雅に舞う翼君。






今日も皆が集う「パラダイス」と呼ばれる公園に向かう。
公園内の噴水のある大きな広場は鳩達から「メインストリート」と呼ばれていた。
翼君はそこに着地した。


サッ!


それはまるでオリンピックの鉄棒の選手が着地するかのよう!

「今日も10.0。 ププッ!」




天気はサイコーだった。
そこにはすでに腹を空かせた仲間達がいっぱい集まっていた。

イーグル翼「いるいる、いっぱいいる!でも……”野郎”ばっかりジャン!」


ここは都心の一画にある大きな公園。緑も多いし、水飲み場代わりになる噴水もあった。
毎日多くの人間がここに憩いを求めてやって来る。
その際、鳩にとってはうれしい”餌”を置いていってくれる人もいた。
ここに来れば、食いっぱぐれる事は無い。ある意味”パラダイス”だった。

しかし……、
人間がくれる餌を目当てにやって来るのは鳩ばかりではない……。
野良猫も稀にやって来るのだ。
それがなければ、本当にパラダイスなのだが………。







? 「やっ!翼君!」

そう言って声をかけて来たのは翼君の友人”野上君”だった。もちろん鳩の。

いつも親しく話をする彼が、トントンと公園の赤レンガ敷きの上を歩いて来た。
彼はどっちかというとインテリ系。
何かいつも日影にいるようなタイプで、表舞台にはメッタに出てこない。
翼君は本来あんまりこういうタイプは好きじゃない筈だったが…………、彼とはなぜか気が合った。
これも縁というヤツだろうか?彼とはいつもこの公園で話をしていた。

イーグル翼「ああ、野上君、こんにちは。最近調子どう?!」

野上 「うん。やはりこの餌場が一番だね。
日曜ともなれば、人間のかわいい女の子達が餌を持ってやって来るんだ。ほとんど菓子類だけどね。
でもたまに食パンもあるよ。」

イーグル翼「違うよ。”調子どう?”ってのは、亜由美ちゃんの事だよ。」

野上 「あーーーーーー、亜由美ちゃんかあ…………。」

そう言って野上君は長い首を垂れた。

次に、首をひねって向こうを向いて目を閉じた………。

それっきり瞑想しているみたいに無言なので、翼君は野上君の首筋を口ばしで突付いた。

トントントン!

野上 「あいてててて………。」

イーグル翼「だーかーらーー、”亜由美ちゃんはどう?”って聞いてるんだよ?」

野上 「あ…………………、亜由美ちゃんは…………………、もう諦めた。」

イーグル翼「なんだよ!!またなのか?!」

野上 「だってさ、脈が無さそうなんだもの……。
寄り添って行っても、すぐに逃げられちゃうしさ。
この間は亜由美ちゃんが怒ったんだよ。それで、口ばしで突付かれた。」

イーグル翼「なんだよ!君も”雄”ならもっとピシッとせんかい!!」

野上 「だってまったく反応無いんだもの…………。はぁ~~~~。」

イーグル翼「いいか!自分を”モテ雄”だと思わなくっちゃ!自信を無くしちゃおしまいだぜ!」

野上 「そう言ってくれるのは………、翼君だけだよ」

野上君は励まそうとしてくれる友人の言葉をありがたく思った。

野上 「(ああ、友人っていいもんだ……。)」









鳩の求愛 [act.2]


 その時!

5歳ぐらいのかわいい人間の女の子が、鳩達が集まっている所に向かって歩いて来た。
手には豆のような餌を持って。

バラバラ………。

女の子は自分の周りに餌を撒いた。


とたんに鳩達の目の色が変わった!





バサッバサッ!





羽の音がした。皆いっせいに餌の方に向かって走り出した!









クラッシャー高橋「
餌だーーーーーーーーーーーーーーーーー!!




フライング笹山「
餌じゃああああああーーーーーーーーーー!!




ハリアー鈴木「
それ行けええええええーーーーーーーーー!!







鳩達はまるでブラックホールに吸い寄せられる星々のように(そんなオーバーなw)餌目掛けて集まって来た。






ジャイアント真田「
餌じゃああーーー!!
餌をくれぇぇぇーーーーーー!!






一斉に鳩達が女の子の持つ餌に向かって突進した!





イーグル翼「それ!野上君!

僕達も突撃だーーーーーーーーーー!!!





鳩達は我先にと、地面の上に巻かれた餌と女の子の手の中の餌に突進した!
女の子の手からはさらに餌がこぼれて地面に舞い散った。




クラッシャー高橋「
くれ~~~~~~!!!
腹減っているんやああああああ!!!






バトル河北「
こっちにも餌投げろやああ!!





女の子の手の平目掛けて無数の口ばしが飛ぶ!それはまるで嵐が巻き起こったかのようだった!



女の子「きゃあ、くすぐったい!!!!あはは!」



コツコツコツ!!コツコツコツ!!
コツコツコツ!!
(口ばしで手の平を突付く音)




クラッシャー高橋「
食えーーーーーーーーーーーーーーーー!!
命の限り食え~~~~~~~~!!!!








翼君も激戦区の中に入ろうとしたが……、野上君はその場を動こうとしない。
鳩は餌がばら撒かれると、例えメス鳩に言い寄ってる最中でも目の色を変えてそこに向かうものである。

イーグル翼「どっ、どうした、野上君?!我々も行かなければ!!!」

野上 「僕はいいです……。」

イーグル翼「どっ、どうして?!!!」

野上 「”失恋の痛手”です。はぁ~~~~~~~~~~。」

野上君はまるでエクトプラズムでも吐き出すかのように深いため息をついた。

翼君が人間の女の子の方に目をやると、もう何十羽という鳩が飛び掛るようにそこに群がっていた。
辺りはすでにパニックと化していた!!

翼君は焦った。

イーグル翼「(早く行かねば!餌の取り分が無くなってしまう!!
しっ、しかし、このまま野上君を放って置く訳にも行くまい!)」

翼君は友だち想いであった。
それで、その場に立ち尽くしたままでいた。
不思議な光景である。鳩が餌に向かわないというのは。







その時!








鳩の求愛 [act.3]


女の子「きゃ~~~~~~~~~~~~~~!!!」

突然、人間の女の子が叫び声を上げた。
見ると……、

女の子が鳩の海の中に埋もれていた!
スカートの上はもちろん、頭の上まで鳩が群がっていた。



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作者注:「公園など、鳩の多い所で、鳩に餌をあげようとすると、必要以上に鳩が集まって来て、本当に鳩の海に飲まれたようになる事があります。」



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一度、高まった鳩達の興奮は集団心理でなかなか冷めない。
そこへその女の子の母親がすぐにやって来て、女の子の脇の下に手を入れ、鳩の海から救い出した。女の子がいなくなって、鳩はやっと”もう餌が無い事”が認識出来た。





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作者注:「鳩は、餌をあげる人がいなくなるまで、”その人がまだ餌を持っている”と思っています。」



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そして……、

餌の時間は終わった……………。

鳩達の闘いも終わった……………。












イーグル翼「きゅ~~~~~~~、ぐるるるるるる~~~~~~~~~~。(お腹の音)

(はっ、腹へったぁ~~~~~~~~。) ( ̄□ ̄;)」

野上 「いいですよ、翼君。僕なんかに遠慮しなくっても。皆と一緒に食べに行ってください。」

イーグル翼「でも、野上君!そんな事じゃやってけないよ!
鳩の世界は闘争本能だけの世界だよ。餌でもメスでもみんな奪い合う!そうだろ?」

翼君がふと、さっき鳩が集まっていた場所を見ると………、公園の椅子の手すりに亜由美ちゃんが止まっていた。
そこへ、クラッシャー高橋が飛んで来て、亜由美ちゃんの身体に自分の翼をすり寄せた。
亜由美ちゃんは嫌がって横に平行移動して逃げる。

イーグル翼「(クラッシャー高橋!いつもながら大胆なヤツ!人目もはばからずに言い寄るなんて!!
ヤツの脳みそは筋肉で出来ているのか?!
それにしても…………、
亜由美ちゃんが他の鳩に求愛されるなんて様子、野上君には見せられないな!)」

翼君はさっと翼を広げ、ばたばたと羽ばたいた。
しかし、野上君はその羽の間から奥の方を見てしまった。



野上 「ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!」




野上君は落ち込んだ。

イーグル翼「なっ、なんで見るんだよ!!人がせっかく隠したのに!」

野上 「だって………、翼君はいつも見せたくない物があると翼を広げるんだもの。」

イーグル翼「……………………。」








鳩の求愛 [act.4]


 クラッシャー高橋の求愛行動を見てしまった野上君はがっくりと首を垂れた。
そしてフラフラとどこかに歩き始めた。

イーグル翼「おい、野上君、どこへ行く?!」

野上 「いいえ、別に……………。」

野上君はヒドい落ち込みようだった。
その後姿を、じっと心配そうに見つめる翼君。

イーグル翼「(そう言えば野上君。亜由美ちゃんの前は麗華ちゃん、その前は理佐ちゃんと、今年に入って立て続けにフラれていたからなあ………。
だけどさ、鳩の世界とはそういうもんさ。なかなかペア(つがい)にはなれない。
でもまあ、あのクラッシャー高橋だって今までに何十回とアタックして全部フラれているんだ!」



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作者注:鳩の雌が雄をすぐにダンナと認める事は少ないみたいです。たいていの場合は必死に求愛行動をしても無視されるようです。



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その時、翼君のお腹の音が鳴った。


イーグル翼「きゅ~~~~~~~、ぐるるるるるる~~~~~~~~~~。(お腹の音)」










 野上君はそのまま下を向いて地面を歩き続けたので、別の鳩にぶつかってしまった。

? 「きゃ!」

ぶつかった相手からかわいい鳴き声がした。

野上 「あっ、すっ、すいません!!」

野上君が顔を上げると……、そこには全身真っ白な鳩がいた。若いメスの鳩だ。

野上 「はっ!Σ( ̄□ ̄;)」

野上君も驚いたが、それを離れた所で見ていた翼君も驚いた。

イーグル翼「(こっ、これはいったい…………?今まで見た事も無い鳩だ!……、しかも超絶なぐらいかわいいメス鳩だ………。)」

目を疑うほどの綺麗な羽毛。そしてその透き通るような白さ。
宝石のように輝く瞳。ネイルアートのような艶の口ばし。
さらにピンク色のハリのある足。
しかもその仕草の一つ一つのかわいい事。身体はきゃしゃそうで、他の鳩より少し小さめだった。



イーグル翼「こっ、これは………………、”親離れ”したての若いメス鳩?ゴクッ」

野上君はすでにトランス状態に陥っており、目がハートマークだった。
そして、あまりの美しさに、この鳩に声をかけようとした。

野上 「あっ、あの、貴方はいったい……………、」



ムギュ!




その時!

野上君は何者かに頭を踏まれた。それで彼の頭は地面にくっ付いてしまった。
踏んだのは……………、



翼君だった。



翼君の目もハートマークになっていた。もう他の事は何も見えていなかった。


そしてそのメス鳩の所へフラフラと歩いて行った。

イーグル翼「あああ、あの……。」




ムギュ!




しかし翼君も頭を誰かに踏まれた。
踏んだのは……、





”クラッシャー高橋”!





クラッシャー高橋はマッチョな鳩で胸板が厚い。鳩胸だ。
体格は他の鳩の1.3倍はある。
彼は自信に満ち溢れた歩き方で一歩一歩そのメス鳩に近づいて行った。








鳩の求愛 [act.5]


翼君が頭を上げる。

イーグル翼「おい!コラ!」

それを聞いてクラッシャー高橋が振り返る。

クラッシャー高橋「なんだ……?!」

イーグル翼「人の頭踏みやがってえーーーーー!!!」

クラッシャー高橋「フン!」

クラッシャー高橋は鼻先で笑い、後は無視してメス鳩の方に向き直った。

イーグル翼「おっ、おのれえ~~~~~~~!!」

翼君は起き上がった!そしてクラッシャー高橋目掛けて突進する。
地面を思いっきり蹴って走った。くちばしを低く構え、それで相手を刺すつもりだ!




バババババババ!





接近する足音に気付いてクラッシャー高橋が振り返る!

クラッシャー高橋「やるか?!」

クラッシャー高橋も翼君目掛けて突進する。




















バババババババ!



















ガッキーーーーーーーーーーーーーーーン!



















ひゅ~~~~~~~~~~~~~~~。 (風の音)。



















バタッ!



















翼君は倒れた。




















野上 「つっ、翼君……!」

野上君が翼君の元に駆け寄った!

クラッシャー高橋「ふふふふ!弱いヤツは引っ込んでな!」

イーグル翼「くくく……、覚えてろ、クラッシャー高橋!身体がデカいだけの鳩!」







クラッシャー高橋はすぐにそのメス鳩の右手(翼)を取ろうとした。

クラッシャー高橋「お嬢さん、はじめまして。
わたくし”クラッシャー高橋”と申します。以後お見知りおきを。」

すると、そのメス鳩はさっと身をかわした。

クラッシャー高橋「どっ、どうかしましたか?」

メス鳩は逃げて空へ飛んで行ってしまった。
クラッシャー高橋もそれを追いかけて空へ舞い上がった。



イーグル翼「くっ、くそーーー!クラッシャー高橋のヤツ!」









 それから1週間後………。

あの綺麗なメス鳩は、その後野上君の熱心な調査で”渚ちゃん”という名前だとわかる。
この一週間、野上君は渚ちゃんの姿を追い求めて、この公園を探し回っていた。
そして何度か話しかけたらしい…。
しかし……、

野上 「はあ~~~~~~~~~~~~~。」

まるで紅茶のティーバッグから、紅茶のエキスがにじみ出るような感じの深いため息をつく野上君。

イーグル翼「今度はどうしたんだ?」

野上 「僕、”あの子”を好きになってしまった…………。」

イーグル翼「はっ! Σ( ̄□ ̄;)」

翼君にはすぐに”あの子”とは誰の事なのかわかった。

イーグル翼「(ぼっ、僕も…………、あの子は気に入ったのにーーー)」

翼君も深いため息をついた。
しかし、野上君の最近の落ち込みようを知っていた翼君は、

イーグル翼「(いや、しかし……、

ここは友人の野上君に譲ろう。彼の方が今は彼女の事を想っている。
それに、アタックしたからといって上手く行くとは限らない。成功する確率は非常に低いのだ。それが鳩社会……。)」

それで翼君は野上君の気持ちを確かめる為に聞いた。

イーグル翼「野上君、君はたとえ猫が来ても彼女を守り切れるのか?渚ちゃんを守り通せるのか?!」

野上 「……………………。」

野上君は答えなかった。
でも、それはオーバーな嘘を付くよりも真実味があった。
猫と戦う事は鳩にとっては死を意味したのだ。

イーグル翼「まあいい。とにかく、渚ちゃんにアタックしてこいよ。」

野上 「え?」

イーグル翼「当って砕けろだ!」







鳩の求愛 [act.6]


 しかし、クラッシャー高橋がまだ渚ちゃんを追いかけていたので、野上君は渚ちゃんのもとに行けなかった。







渚ちゃんはそれからいろんな所に移動した。公園の街灯の上、電線、ベンチの雨避けの上。
それはクラッシャー高橋に追いまわされていたからだ。
どこに行ってもクラッシャー高橋は渚ちゃんについて回った。






そして……、
渚ちゃんは古びた公園のベンチの腰掛け部分に舞い降りた。
そこは大変古くなっており、壊れていた。もう人間は誰も使っていない。
あちこちビスがゆるくなっていた。危ない。早く撤去して欲しいものである。

渚ちゃんから少し離れた場所にクラッシャー高橋が降り立った。
すると、その座席部分がブルンブルンと大きく震動した。
渚ちゃんの身体も揺れたが、渚ちゃんはクラッシャー高橋の方を見なかった。

クラッシャー高橋「よう!渚ぁ!どっか行かねえか?」

渚 「ツン!」

渚ちゃんは向こうを向いた。

クラッシャー高橋「なんだよ!それはよーーー!つれないジャン!ボートでも乗ろうぜ!」




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作者注:『「ボート乗り」とは公園内の人工池に浮かぶ足漕ぎ式のボートの天幕に勝手に便乗する事。
カップルになった鳩がよくこうする(ホントかい!)。』




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クラッシャー高橋「よ~~~~、渚ちゃんよ~~!行こうよ~~~~~!なあ~~~~!」

そして羽毛に包まれた身体を摺り寄せてきた。

迷惑そうにしている渚ちゃんの姿を見かねて、空中から渚ちゃんの友人のメス鳩”早苗ちゃん”が降りて来た。
そして、クラッシャー高橋に向かって、

早苗 「あっち行けよ、シッシッ!アンタなんかいらないって言ってるよ!」

クラッシャー高橋「なっ、なんだ、コイツは?」

早苗 「私は渚ちゃんの友達の”早苗”だ!」

クラッシャー高橋はマズいのが現れたと思った。

クラッシャー高橋「ああーーー、チミに話しかけてない。
俺、そっちの”美少女”に話しかけてる。
チミとは話してない。さようなら。」

早苗 「その美少女はアンタを嫌がってる!」

クラッシャー高橋は羽の内側からどこぞで拾ったおもちゃのクシを出してきて、自分の髪(頭のてっぺんの羽毛)をとかした。

クラッシャー高橋「”嫌がる”?
フゥーーーーーー。
まあ、俺の魅力に一度気付けば…、そんな事も言ってられなくなるんだが……。」



その時!クラッシャー高橋の魅力に気付いた別の”女の子”がいた。
その”女の子”はベンチ近くの植木の影に身を隠していた。





ガサガサ!




草の擦れ合う音がした。


クラッシャー高橋「はっ?!!!」

早苗 「はっ!」




女の子「にゃーーーーーー!!」




そう、その”女の子”とは、若いメス猫の事だった!








鳩の求愛 [act.7]


クラッシャー高橋「ぎゃああーーーーーーーーー!!!」

早苗 「はっ!」




猫の気配に気付いたクラッシャー高橋と早苗ちゃんは、慌てて空へ飛び上がった!

早苗 「早く逃げなきゃ!」

ところが!





渚 「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」






渚ちゃんの美しい尻尾は壊れかけたベンチのシートとひん曲がっていた肘掛のパイプの隙間に挟まって抜けなくなった。
パイプがかなり痛んで変形していたからだ。
渚ちゃんの尻尾はしっかりと挟み込まれてしまった。







渚 「痛いーーーーーーー!!!!」






渚ちゃんの叫び声に野上君が気付いた。
見ると少し離れた所で渚ちゃんがバタバタもがいていた。
そして、さらによく見ると、植木の中から猫が背を低くしてゆっくり近づいて行くのが見えた。





野上 「あーーーーーーーーーーーーーー!!渚ちゃんが!!!」






翼君もそれを見て状況を把握した。




イーグル翼「くそーーーーー!!!」




翼君と野上君は空に舞い上がった。そして渚ちゃんの所へと急いだ。

メス猫は渚ちゃんが飛び立てずにバタバタもがいているのを瞬時に理解した。
そして……、渚ちゃんに飛び掛ろうと背をいったん低くした。ジャンプをする前の体勢だ!

イーグル翼「いかん!!!助けに行くんだ!」

野上 「で、でも……!」

イーグル翼「”でも”も、へったくれもない!」

野上 「でも、猫に捕まったら……、僕達も食われちゃうよ!」

イーグル翼「そんな事言ってる場合かああーーーーー?!!
今が彼女を助けるチャンスじゃないかああーーーーーーーーー?!!」

翼君は野上君の背中を押した。








ドン!








野上 「 ぎゃ~~~~~~~~~~~!!!!








押された野上君はそのまま失速して、渚ちゃんの近くの地面に落っこちた。
まさかこうなるとは思っていなかった翼君は片手(翼)で思わず目を覆った。





野上 「はっ!」




メス猫は地面にべったりと羽が広がった野上君の方に目を移した。
そして、舌なめずりをした。


野上 「Σ( ̄□ ̄;) はわわわーーーー!!」


メス猫は野上君を見てうっとりしている。そのエメラルド色の瞳が怪しく輝いた。
そして……野上君に飛び掛った!!!





野上 「 ぎゃーーーーーーーーーーーーー!!





たまらず野上君は起き上がり、空中へと飛び上がった!!!








鳩の求愛 [act.8]


 猫はその動きを追いかけ、ダイビングキャッチのような形でジャンプした。
しかし…、からくも野上君はその爪先から逃げおおせた。





着地した猫はくやしがって、上空の野上君を目で追っていた。

イーグル翼「野上君!なんとかして助けなきゃ!渚ちゃんがやられちゃうよ!」

野上 「だって!うかつに手を出したら……僕らもやられちゃうよ!!!!」

その様子を遠巻きで見ていたクラッシャー高橋。

クラッシャー高橋「”助ける”ったって………、それは命あってのモノダネさ!」

クラッシャー高橋も猫には手を出せないでいた。






 猫は視線をまた渚ちゃんの方に移した。
そして舌を出してぺロッと舌なめずりをした。
渚ちゃんはそれを見て酷くおびえた。




渚 「はわわわわわ……………………。」






イーグル翼「ダメだ!」

翼君は思い切って急降下した!!

そして猫に向かって真っ直ぐに飛んだ!
猫の後頭部に「口ばしアタック」を一発お見舞いした!




メス猫 「ぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~!!!」




野上 「やった!」


翼君はそのまま足の爪で猫の首筋をしっかりつかみ、さらに口ばしで突付いた!

イーグル翼「この!この!この!」




ガス!ガス!ガス!




しかし、メス猫は首を後方によじった。

野上 「危ない!」

すると今度は全身をねじって両手で翼君につかみかかった!

それをかわして、からくも空中へと逃げる翼君。
またしても猫はそれをダイビングキャッチでつかもうとした!



バサバサバサ!



だが翼君が上昇する方が早かった。






イーグル翼「ふ~~~~~~!」

野上君が翼君のもとへ飛んできた。

野上 「翼君!今のは危なかったよ!」

そういう野上君の言葉に耳を貸さず、翼君は渚ちゃんがどうなったかを見た。
すると、メス猫はやっと空中の翼君を諦め……、渚ちゃんの方に目を移した。



渚 「はあああああ~~~~~~!!」



メス猫「ぐるるるるる……………!」



猫は興奮してお腹を鳴らした。
翼君はまた再び降下した。そして猫の視線のかなり前に墜落した。
そして……動かなくなった!

イーグル翼「(いてえ、口ばし打ったあーー。
しかし、今はそんな事言ってる場合じゃない!
死んだフリをしなくては!
死んだフリをすると、きっと猫はつかまえやすい僕の方に来るだろう!)」

猫は遠くから翼君の様子を伺っていた。
そして死んだものと判断した。


そして……、


先に渚ちゃんの方を狙った!
飛び掛ろうと上体を低くした。

野上 「うわーーーーーー!!!動かなくなった翼君はもう逃げないから、先に渚ちゃんの方に行ったんだあーーーー!!」







鳩の求愛 [act.9]


 それを察知した翼君!

イーグル翼「やばい!この作戦は失敗だ!!!」

渚ちゃんが狙われているので、翼君は猫に向かって飛んだ。そして再び口ばしアタック!!
しかし猫は反撃!爪を出して翼君を捕まえようとした!




バサバサバサ!




翼君の風切り羽が何枚か周囲に散乱した!




野上 「あーーーーーーーーーーーーーーーーー!!翼君!」




だが、からくも空中に逃げおおせた翼君!





しかし……、

突然その身体は空中で失速してフラフラとなった。
高く飛べないようだ!風切り羽を少し失ったせいか?
そして木の葉が落ちるような感じで、地面に落ちた。




ドサッ!



野上 「あーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

しかし、今度はバサバサと翼を羽ばたかせてもがいた!

野上 「(うわあ!あれは演技なのか?それとも本当に飛べなくなったのか?)」

野上君は奮起一発!急降下して翼君を助けに行った。




スイーーーーーーーーー!!




猫の後頭部に口ばしアタック!




カツ!カツ!カツ!






メス猫「にゃーーーーーーーーーーーーー!!」






しかし、すぐに猫は野上君につかみかかろうとした。
野上君は緊急上昇!





翼君はこれでもかというほど翼を震わせながら、公園の中にある噴水の所まで這って行った。そしてその壁面に何とかよじ登った。
壁面の高さは50センチもあった。
ここから滑空してその反動で空へ飛び立とうというのだろうか?
そして……、その縁の上にたどり着き、猫目掛けてこう叫んだ。




イーグル翼「やーーーーーい!ここまで、来れんのか!
このスカポンタンネコ!!」




するとメス猫はニヤリとチャシャ猫のように笑って、翼君の方に向かって突進した。









そして、 じゃーーーーーーーーーーーーーんぷ!!








サッ!







その瞬間、翼君は大空へと舞い上がった!















メス猫「にゃ???」














ザッブーーーーン!!!












猫は噴水の水の中に落ちた!










メス猫「にゃにゃにゃ!!!!!!

ぎゃーーーーーーーーーーーーーーー!!!









ドプン!!ザバア!




何とか猫は泳いで、噴水の縁をつかんだ。そしてそこから脱出した。
地面に着くなり、いきなり目もくらむばかりのスピードで走り出して逃げ去った。





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作者注:『猫は何かに驚くといきなり走り出して逃げます。』



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そして、その姿は見えなくなった。








鳩の求愛 [act.10]



イーグル翼「ふーーーーーーーーーーーーーー!!」



翼君は飛べるようではあるが、力が抜けて地面に降下した。
そしてそこにべったりとうつ伏せになった。

バサバサ!

すぐに翼君の所へ野上君が舞い降りて来た。

野上 「翼君!大丈夫か?!!」

イーグル翼「うう……、何してる野上君!早く渚ちゃんを助けに行かなくっちゃ!」

見ると、クラッシャー高橋と早苗ちゃんが木の枝を持って来て、渚ちゃんをはさんでいるベンチのシート上に降り立っていた。
そして、その枝をテコのようにしてパイプを持ち上げ、必死に渚ちゃんを救出している所だった。

クラッシャー高橋「もっと力入れろ!もし、今別の猫がやって来たらどうする?!」

そして…………、
2~3枚尻尾の羽は抜けたが、何とか渚ちゃんはそこから脱出できた。
その後、大空へと舞い上がった。





野上 「ふーーーーーーーーーーーーーーーー」










 次の日……、

イーグル翼「お手柄、野上君!君にしては!」

野上 「最後の”君にしては”って部分が気になるんだけど!」

イーグル翼「あははは!細かい事は気にしない!
さあ、渚ちゃんにアタックだ!君は渚ちゃん救出に一役買ったんだからね!」

野上 「でも……。」

ふと渚ちゃんを見ると………、
植木の柵の鉄パイプの上に止まっていた。
そこに性懲りも無くクラッシャー高橋がやって来て、またモーションをかけ始めた。

クラッシャー高橋「渚ぁ!オレがお前を助けたところ見ただろう!オレといっしょになろうや!」

渚 「フン!」

クラッシャー高橋は体をすり寄せたが、渚ちゃんはそれをかわして大空へ飛びたった。
クラッシャー高橋はパイプから滑って地面に落っこちた。





バタッ!





クラッシャー高橋「あれ~~~~~~~~~~!!」








そして渚ちゃんはそのまま野上君の方へ飛んで来た。

野上 「(え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!

なっ、渚ちゃん~~~~~~!!)」

渚ちゃんは野上君らがいる噴水の縁に舞い降りた。
本当に美しい鳩だった。

野上 「(こんな間近で渚ちゃんを見れるなんて……)」

イーグル翼「(今だ、野上君!今こそ、勇気を持って告るんだ!!
チャンスは今しかない!)」

翼君は方足を上げて野上君を背中をグイグイ渚ちゃんの方へ押し出した。




すると、渚ちゃんは……、


トントンと縁の上をスキップするようにして……、


翼君の所に行った!




そして、口ばしで翼君の首筋を突付いてみたりした。

渚 「~vvvvvvvvv」





イーグル翼「うーーーーーーーーーんw」











THE END











野上 「そんなあーーーーー!!僕はいったい~~~~~~~???!!」








この物語はフィクションです。
登場する人名等は実在の物と一切関係ありません。


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