「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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BLUE ODYSSEY
スポルティーファイブ act.1~10
今回は『合体ロボット物』です。
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『スポルティー・ファイブ』
西暦2100年。
世界は謎の侵略者達から攻撃を受け始めた。
侵略者[レイド]によって。
1人の青年が学生服を着て、母校の教室の中にいた。
彼の名は[マギ クリス]。16歳。
突然大きな地響きがして、クリスのいた校舎の一部が破壊された。
見ると、巨大な人間型のロボットが上空より飛来し、クリスのすぐ近くに舞い降りたのだ。
ロボットは校舎を攻撃。建物はコンクリート製だったがそれが歪むように壊れた。
不思議な光景だった。まるでCGの映像みたいに目の前の空間が歪んだ。それはチーズが溶けるような感じだった。
裂け目のように見える物も空間に出現した。そしてそれはまさに空間に浮いていた。その裂け目の向こう側には別の空間が存在しているようにも見えた。
火災が発生し、学校の生徒達は校舎内の廊下を逃げ惑った。
クリスのすぐ目の前には巨大なロボットの足が接地しており、見上げるとそのロボットの全長は4階建ての校舎と同じぐらいあった。
ロボットは火器で辺りを射撃し、爆発と火災を発生させた。
火の海の中を逃げ惑うクラスメート達。
「きゃーーーーーーーーーーーーーー!!」
「うわああああーーーーーーーーーー!!」
「助けてーーーーーーーーーー!!」
クリス 「やめろーーーー!!」
そう、叫んだ所でクリスは目が覚めた……。
クリス「いったいどうしたというんだ?最近同じ夢ばかり見る。
まったく同じ映像の夢を……。」
彼は汗でシャツをびっしょり濡らしていた。
その後ベッドから起き出て、シャツを着替えてから登校した。
彼の通う学校は『青葉ガーナ学園』。
今日も平和な何気ない日常が始まる筈だった。
クリスはここの男子学生。
最近、この学校に編入して来たばかりである。
ここは新しいタイプの教育方針を持つ学校だった。成績優秀な者も多い。
ロボット工学専門のコースもある。
しかし噂では「政府の指示で、全国から生徒達が引き抜かれて集められているらしい。」と言われていた。
だが、成績優秀な者ばかりを集めているのでは無いので、どういう基準で集められているのか不明だった。
クリスはミステリアスな雰囲気を持つ男子学生として転校早々女子に人気が出た。
顔は美形。だが普段は物静かで身の上話等はあまり話さないような雰囲気に見えた。
現在、地球は地球外生命体かも知れない謎の組織より攻撃を受けていた。
その組織の目的は不明。攻撃は散発的なものばかりで、大規模かつ本格的な作戦を仕掛けて来る事はいまだ無かった。
「これはいったい何のための攻撃なのか?都市を破壊するだけで何を狙っているのかわからない。」謎は深まるばかりだった。
地球側はその組織を[レイド]と名付けた。
彼らは人型のロボット兵器を使う。それは[ザーク]と名付けられた。
全長約25メートル。巨体の割りにザークは軽々と動いていた。
レイドから地球を防衛する為に[ノアボックス]という専門組織が誕生した。
これは政府の要請を受けて編成された機関。独自の戦力も有する。
だが、この組織は一部非公式な存在でもあった。一見通常の政府から指示を受けて動いているように見えたが……、実は[ブラックガバメント]と呼ばれる[裏の政府機関]によって動かされていた。[ブラックガバメント]とは、表の政府とは別に予算承認や軍事作戦を行う組織である。
”表”は一般大衆向けを考慮して動いていたが、”裏”の方はそれに較べてはるかに実戦的で、時として冷酷な判断を下す事も多かった。
スポルティー・ファイブ [act.2]
[ノアボックス]の作戦指揮を取っているのは[郷田司令] 、39歳。
彼は若くしてこの機関の作戦司令となった。彼が実際に最前線で未知の敵と戦う事になる。
まだ実戦経験は浅いが、常に何事にも熱意を注ぐ男で、屈強の精神の持ち主だった。それで司令官に任命されたのだ。それに最近では珍しいぐらい真面目な性格の人物だった。
彼の参謀役でこの[ノアボックス]最高の頭脳であり、対レイド研究の第一人者でもある[矢樹]という男がいた。年齢31歳。
いろいろな博士号を持つ天才だが、人は彼を『マッドサイエンティスト矢樹』と呼んでいた。
彼は郷田指令とまったく逆の性格で、「彼の言動は不愉快で冷淡」とよく言われた。
頭脳明晰なのだが、「神や科学、人間の無駄な努力」を特に辛らつに批判する人物だったからだ。
誰もがそんな矢樹を嫌っていたのだが、郷田指令だけは彼の真面目な性格からか、矢樹はおろかその他一切の人間を嫌っていなかった。だから政府は郷田指令に任せる形で矢樹を預けたのだ。
どこに行っても問題児のような性格の矢樹だが、郷田指令とのコンビは割に上手くいっていた。
矢樹は基地内ではいつも白衣を着て眼鏡をかけていた。頬は少しそげ、全体的にスリムだった。
矢樹 「また攻撃を受けたようだね?
これでは的になっているだけだ。
地球はもうダメだな。いっその事、皆でよその星に脱出するかね?」
郷田指令「なんて事を!冗談でもそんな事は言わんでいただきたい。
今は大事な時なのだから。彼らとの戦いはまだ始まったばかりだ。」
今の地球上では”食料問題、大気汚染、土壌汚染”等何も無かった。
以前うるさく飛び回っていた人間には嫌われ者の小バエや毛虫と言った昆虫は絶命していた。
危険なウイルスや病原体ももういない。
小鳥は空を飛んでいてもクリーンなフンしか落とさない。
以前に較べてとても綺麗な地球になっていた。清潔感漂う環境。
いつからだろうか?この世界がこんな風になったのは。
その為、いつしかこの地球そのものが「バーチャルな世界ではないか」言われ始めた。
本物の世界はどこかに別の次元に存在するのだと言う。人類の知らない内にそれは”入れ替え”られたのだと。
「今の我々の存在はネットに繋がれたものでしかない。本体は別の場所にいる。そこからこの世界に”信号”が送られて来ているだけだ。我々は信号が実体化された物に過ぎない。
地球人類はいわば”ゲームの中のキャラクター”なのだ。」
小説家や脚本家は最近こぞってそんなテーマの作品を世に発表し続けた。
矢樹博士と郷田指令は司令官室の中で2人だけで話をしていた。
ここは盗聴マイク等が設置されないように、日々厳しい監視が行われている場所の1つである。
この中で行う会話はどこにも漏洩しない。
郷田指令「我々はまだ戦える。レイドと戦わなくては。」
矢樹 「今の地球人にとっては、レイドと戦うより”バーチャルな世界から脱出する”方が先だと思うがね。我々の本体がどこにあるのかさえわかないからな。」
郷田指令はその言葉を聞いて目の色を変えた。
郷田指令「むやみにその事を口に出さんでもらいたい!
それを知っているのはまだごく一部の者だけだ。」
矢樹 「くくくく………。真実を隠しておきたいのかね?
だが、いずれ気付くさ。誰もがな。
それにしても、いったい誰が最初にこんな”仮説”を言い始めたのだろうねえ?
その”仮説”に基づくと……、地球上には本当の人間はいったい何人いるのだろうか?
毎年、出生してくる赤ん坊の内、いったい何人が本物の人間なのか?
あれは単にコンピューターが産んだNPC(ノンプレーヤーキャラクター)ではないのかね?
いや、現にこうして話している”君と私”、どちらも”本物の人間”であると言い切れるのかね?
一方が”誰かが仕組んだコンピュータープログラム”に過ぎないのかも知れない。」
郷田指令「バカな!私には”感情”がある。NPCに感情があるのかね?」
矢樹 「本物と見分けが付かない擬似の感情表現を創り出すのはたやすい事だ。
NPCは一見しただけでは人間と区別がつかない。
現に彼らはゲーム世界の中で生きている。食事も取るし、仕事にも出かける。酒の付き合いもこなすし、グチも言える。」
郷田指令「ゲームの中か……。
だが今はゲームの話をしているのではない。この”現実”の事を言っているのだ。」
矢樹 「くくく……。現実こそゲームだよ。
世の犯罪者達を見てみたまえ。彼らは現実を”ゲーム”と見ている。だからあんな非現実的な行為が出来るのだ。」
郷田指令「……。」
矢樹 「誰か早く”本物の人間”と”NPC”を判別するような装置を作り出すべきだ。」
郷田指令「そのNPCという仮説自体が正しいかどうかまだわからんだろう?
あるいは”本物の人類”かも知れない。
…それにその事を調査するのが君の仕事だろう。
君がこの件に関しては第一人者であり、君のひらめきに全世界が期待していると言っても過言ではない。」
矢樹 「くくくく………。”本物の人類”かどうかだって?
君はまだ”人類”が特別な存在と思っているのかね?人類だけが高い知能を持つ存在だとでも?
人間の持つ思考・感情・愛情……、あれがプログラムでは無いと言い切れるのかね?」
郷田指令「プログラム?」
矢樹 「人間はもともとプログラムに過ぎない。脳というCPUの中で動く単なる計算式なんだ。
DNAを見ればその事は一目瞭然だ。我々の思考も感情も単なる数式のプログラムかも知れ無い。
”自分がここに存在する”というアイデンティティーの認識も1つのプログラムにすぎないのかも知れない。」
スポルティー・ファイブ [act.3]
青葉ガーナ学園は昼休みになった。
今日はいい天気だ。
クリスは校庭に出て、何本も植えてある木々の内、木陰のある芝生の上に座り込んだ。
彼がここに編入して来て7日目。
まだ友人などはいない。だからこうして1人で腰掛けている。
そこへ同じクラスの[委員長]がやって来た。
彼女は学級委員の委員長だが、どうもこの[委員長]とは学校以外でもそう呼ばれているらしい。これはすでに彼女のあだ名と化していた。
彼女の名は[小川 飛鳥]。16歳。
学生服の似合う少女で、長めの三つ編みのおさげを肩に垂らしていた。
委員長「クリス君!こんにちは!」
そう言っていつも堂々としている筈の委員長が少し緊張気味に笑った。
クリスは委員長の方を振り向いた。
クリスに見つめられて少し頬が赤くなる委員長。いつもと少し様子が違う。
彼女は勇気を振り絞ってクリスに話しかけたのだ。彼と面と向かって喋るのはこれが初めてである。
委員長「何してるの?昼食食べないの?」
クリスは缶ジュースを片手に持ったまま腰掛けていた。それはニンジンジュースの缶。
もう一方の手の中にはサンドイッチが1つだけあった。それは野菜サンド。
食べ盛りの筈だが、サンドイッチ1つ。しかもまったく口をつけていなかった。
委員長「なにか、ここの所あまり食欲が無さそうに見えたので心配になって………。余計なお世話かも知れないけど。」
クリス「……別に。何でもない。考え事をしていただけなんだ。だから食事の方に気が回らなくて。」
委員長はてっきり「君には関係無い事だろう?」と言われると思っていたので、少し笑った。
委員長「そこ、座っていい?」
クリス「ああ、いいよ。」
委員長はクラスの男子には委員長という役目柄よく話しかけるのだが……、プライベートな事で男子に話しかけたりはしない。
委員長「その……、私、貴方のクラスの委員長やってるの。
それで、最近貴方が昼食をあまり取らないみたいだから………、
それにいつも1人で何か考え込んでいるし………。
まだこの学校に慣れてないって事もあると思うんだけど……。
そうだ!
よかったら………、私、貴方の相談に乗ってあげようと思います。
もちろん、クラスの委員長として!」
クリス「ああ…、ありがとう。
でも別に相談に乗ってもらうほどの事でもない。
考え事って言うのは……、最近、よく夢を見るんだ。悪い夢を。」
委員長はクリスがスラスラと自分の事を喋り始めたので、意外だったと驚く反面、内心とても嬉しくなった。しかし、その嬉しさを表立っては隠しながら喋った。
委員長「悪い夢?」
クリス「ああ。」
委員長「もしよかったら……、どんな夢か話してくれない?」
スポルティー・ファイブ [act.4]
国連大使が[ノアボックス]を極秘裏に訪ねて来た。
インターネットを介してやり取りをするのではなく、直に基地まで訪ねて来るのは珍しい。
大使を招いて郷田指令の司令官室で会合をした。もちろん矢樹もいっしょだった。
国連大使「私は日本以外の各国の意見を取りまとめた代表としてここに来ました。
矢樹博士、何とかレイドを倒す方法を見つけてください。
我々は彼らの脅威に脅えています。
レイドの散発的な攻撃を一般大衆の目から隠すのはもう限界です。
何らかの説明をせねばなりません。うまくカモフラージュできるような説明を。」
矢樹 「説明ですか……?指し当っていい文句も思い付きませんな。」
国連大使「レイド研究の第一人者である貴方が何て事を!
貴方を頼ってはるばるここまで足を運んだのですぞ!そんな言い方は止めてください!」
郷田指令も矢樹を睨んだ。しかし矢樹は平然としている。
矢樹 「レイドとメールでやり取りでもできればいいんですが……。まずは彼らと話さない事には始まらない。」
国連大使「まだ何もレイドとコンタクトできないのですか?」
矢樹 「ええ、いわゆる”着信拒否”と同じです。
彼らはすでに我々の言語を解読しているフシが多分に見受けられます。
だが、こちらからの呼びかけには応じようとはしない。」
国連大使「それはなぜでしょう?」
矢樹 「さあ?
だが、少なくとも彼らは友好的な存在では無さそうだ。
こちらの呼びかけにあえて応じないのは、性格が少し曲がっているからかも知れない。
だからあんな”おもちゃ”で攻撃して来るのです。」
国連大使「”あんなおもちゃ”ですと?!
”おもちゃ”だなんてとんでもない!あの兵器の攻撃は特殊です。空間の歪みを作り出す。
あの歪みはいったい何です?」
一瞬、郷田指令の表情が引きつった。国連と言えどもまだ”あの事”ははっきりとはつかんでいないのだ。
郷田指令「(矢樹博士がまた余計な事を言わなければいいが……。)」
矢樹 「さあ?そう見えさせているだけでしょう……。」
その後、国連大使は帰って行った。
郷田指令「君がまた事を荒立てるような言葉を発しないかハラハラしたよ。
………でも、国連にも知らせないのかね?この世界の事を。」
矢樹 「もちろん!まだ、そうと決まったわけじゃないからね。」
郷田指令「なんだって?冗談はよしてくれ!
君は今までこの世界が”擬似かも知れない”と言っていたではないか?!
どういう事だ?説明してくれ。」
矢樹 「くくく………。この世界がまだ”バーチャルな世界”と本当に決まったワケじゃないからね。
『今見えている世界が本物で、我々人類もまた本物である』可能性も捨て切れない。
レイドがそのように見せかけているだけかも知れ無い。
”空間の歪みや裂け目”が起きる現象は”それが何であるか”まだはっきりとは解明できていないからね。」
郷田指令「それはいつわかるのかね?早くしないと。
レイドは月の裏側に地下基地を建設しているようだ。
基地が完成すればそこを拠点として人類を攻撃してくるかも知れん。」
矢樹 「しかし焦っても仕方がない。わからんものはわからんのだよ」
スポルティー・ファイブ [act.5]
再び[青葉ガーナ学園]。
時刻はもう下校時間になっていた。
クリス「(おかしい。
最近この世界はどうなっているんだ?
何かのバランスが崩れて来ているような気がする……。
ただ何となくだが……、そう思える。何か感じるんだ。)」
クリスはまた最近の地球の異変や、レイドの意味不明な散発的攻撃の事を考えていた。
そこへ委員長が後からクリスを追いかけて走って来た。
委員長「待って!クリス君!」
クリス「ん?」
クリスは振り返った。
委員長はクリスの前で「はぁはぁ……。」と息を切らせながらかがみ込んだ。
それから頭を起こして、クリスの目を見て笑った。
しばらくして呼吸が整うと、
委員長「昼間の続きです。もう少しお話しようと思って……。」
と言った。
そこへ………、
クリスの脳裏に何か危険が迫っているような予感が走った。突然勘のようなようなものが働いたのだ。
大空を見上げると、奇妙な形の飛行機雲が流れていた。
そしてその飛行機雲を作り出している”物”は下降を始めた。
クリス「あれはなんだ?」
委員長「さあ?飛行機が墜落するところ?」
しかし、形は飛行機のようでも無い。
それはクリス達の方に向かって近づいて来るように見えた。
そして学校近くのビル群の間に降り立った。人型をした巨大なロボットだった。
クリス「”レイド”?」
突如として校舎やビルを破壊し始めるロボット!
クリス「危ない!」
爆発が起こり、たちまち火の手が上がる。爆発の破片がクリス達の頬に当る。痛い。
クリス「ここは危険だ!早く逃げよう!」
間近かに見るロボットの姿に驚いている委員長。足が動かず、次の行動が出来ない。
クリス「逃げるぞ!」
クリスは委員長の手を取った。
委員長「待って!」
委員長はポケットから携帯電話を取り出して喋り始めた。
委員長「こちら[小川 飛鳥]です!目の前に[レイド]の[ザーク]が現れました!」
クリス「? 何をしてるんだ!とにかく逃げよう!」
委員長「私は学校ではクラスの”委員長”だけど…、対レイド防衛組織[ノアボックス]のメンバーでもあるんです。」
クリス「[ノアボックス]?」
委員長「ええ!そこはレイドと戦える超能力者を開発している研究機関でもあるんです。私はそこに所属しています。」
クリス「そうか、そこへ通報したんだな!
わかった。でも、とにかく今は逃げなきゃ!」
その時、崩れた建物のコンクリート片が頭上から落ちて来た。
委員長「きゃーーーーーーーー!!」
クリスは委員長の手を取って安全な所まで引っ張って行った。
スポルティー・ファイブ [act.6]
その頃、郷田指令がオペレーションルームに到着した。
オペレーター「司令!レイドのザークが現れました!」
郷田指令「なに!どこだ?!」
オペレーター「ここのすぐ近くです。[青葉ガーナ学園]のあるエリアに降下しました。
”小川 飛鳥”より連絡がありました。」
矢樹 「モニターに回せ。」
正面の大型モニターに都市に設置されたモニターカメラからの映像が映された。
郷田指令「何て事だ!こんな近くに。すぐに迎撃機を発進させるんだ!」
オペレーター「わかりました。」
ザークは青葉ガーナ学園を破壊した。
そして迎撃機の機影を見ると、不意に大空へ向かって飛び立った。
そのまま凄いスピードで飛行し、視界から消えて行った。
崩れ去った母校の校舎。幸いクリスと委員長は無事だった。
空にはジェット機の轟音が響く。
委員長「[ノアボックス]の戦闘機だわ。あれが来たからザークは逃げたのね。」
クリス「とにかく君が無事で良かった。
ところで…、すぐに戦闘機が来たけど、この近くに基地があるのかい?」
委員長「ええ。わりあい近くに。」
クリス「それにしても、あのロボットは何なんだ?何の為に攻撃して来たんだ?」
委員長「…………ごめんなさい。その事については今は何も言えないの。
でも…、そうだ!
貴方も悪夢を見たって言ってたでしょう!あの時はあまり夢の内容まで聞けなかったけど……。
実は私も悪夢を見てたの。かなり以前にだけどね。
今日起きた出来事とまったく同じ物を見たの。
そう、ロボットに校舎を壊される夢を……。
その事を先生に相談したら、ある日突然[ノアボックス]から人が来て、そこに入るように言われたの。まあスカウトね。
貴方が見た夢、もう少し詳しく話してくれない?もしかすると貴方も[ノアボックス]からスカウトが来るかも?」
クリス「僕の見た夢はたぶん君が見たのと変わらない。今日の出来事とまったく同じさ。映像的には何も変わらない。あのロボットが来て、校舎が壊されて………。」
委員長「ホント?!
”予知夢”!それは予知夢かも知れないわ!
以前私の見た夢も、たぶん予知夢だったのよ!」
クリス「そうなんだ!」
委員長「あの……、もし良かったら、これから[ノアボックス]へいっしょに行ってみませんか?貴方なら基地に入れてくれるかも知れない。」
クリス「[ノアボックス]の基地へ?僕は軍隊とか戦争は嫌いなんだけど………。」
委員長「でも[ノアボックス]の人達はレイドから地球を……、あっ、ここから先の話は一般の人はしちゃいけない事になってるの。」
クリス「……わかった。とにかく君がそこへ行くと言うのなら送って行くよ。
今は1人で出歩かない方がいい。いつまたあのロボットがやって来るかわからないから。」
委員長「基地の中に入りさえすれば安全だわ。そこには地下シェルターもあるし。」
クリス「わかった。とにかくそこへ行こう。」
スポルティー・ファイブ [act.7]
郷田指令「基地の警報を解除しろ。レイドは逃走した。」
オペレーター「司令!
”小川 飛鳥”が基地のゲート前まで来ていますが…、民間人を1人伴ってます。
彼も基地内に入れてもらえるのかどうか聞いて来ました。どうしますか?”避難の為”と言っていますが?」
郷田指令「民間人を入れるのは許可出来ない。
基地関係者の小川君なら入れてもいいが……、
敵が去ったとは言え、今基地に”関係無い人物”を入れるワケにはいかないのだ。」
矢樹はモニターを操作して、そこに映った[小川 飛鳥]ともう1人の人物を見ていた。
矢樹 「恋人か?くくくく………、面白い。彼は誰だね?」
オペレーター「資料によりますと、同じ青葉ガーナ学園の生徒です。名前は[マギ クリス]。[小川 飛鳥]のクラスメートの男子生徒です。
彼は1週間前にこの学校に編入して来ました。
超能力者レベルは”5”。ただし、まったくの未開発ですが。」
矢樹 「レベル5か。未開発者の潜在的能力としては最高クラスだよ。よし、わかった入れろ!」
郷田指令「待て!安易に入れるな!もっと調査してからでないと!」
矢樹 「他に[マギ クリス]のプロフィールは?」
オペレーター「特筆すべきは………、彼には5歳までの記録がありません。
出生不明です。小学校に入学してからの記録しかありません。
両親の記録や彼を出産した病院の記録…、全てがありません。」
郷田指令「なんだって?!」
矢樹 「警察のコンピュターにアクセスするんだ。そこで調べろ。」
オペレーター「それはもうしました。でも記録が無いんですよ。」
郷田指令「高いレベルの情報になっているのかも知れんな。」
オペレーター「そのような可能性は低いと思いますが……。」
矢樹 「くくくく………、ますます面白い。」
郷田指令「笑い事ではない。彼は敵のスパイかも知れん。」
矢樹 「”敵”?レイドの事かね?彼らはスパイなどする生物だろうか?」
郷田指令「なに?」
矢樹 「彼らの正体はまだわからない。
あるいは”彼ら”と呼ぶのも適切ではないのかも。
[レイド]は単にコンピュータープログラムに過ぎないかも知れんからな。」
郷田指令「……。」
矢樹 「それに忘れては困る。[小川 飛鳥]の能力を。
彼女は予知が出来るのだ。なにか悪い事が起こりそうになると事前にそれを夢で見る事が出来る。
見たまえ。今の彼女の楽しそうな顔を。
あの表情から[マギ クリス]は敵ではないとわかる。」
モニターでは楽しそうにクリスの周りの行ったり来たりしてる委員長の姿が映っていた。
郷田指令「しかし……、今回、この基地を含むエリアは初めて敵からの直接攻撃を受けたのだ。その直後に現れた人物を安易に基地内に入れるわけにはいかん。」
矢樹 「では私が許可しよう。」
郷田指令「なに?!」
矢樹 「[スポルティー・ファイブ]の候補メンバーとして向かえ入れる。」
郷田指令「ばかな!」
矢樹 「パイロットはまだ揃っていないし、彼はレベル5。ちょうどいい。またとない人材だ」
郷田指令「しかし!」
[ノアボックス]の基地は物々しい警備に守られていた。
車輛を伴ってではなく人間が直接この基地に入る場合の入り口は、分厚い壁の横に設置されたシャッター付きの小さなゲートからのみ。
その横に駐在する警備員は矢樹からの命令を受けて[マギ クリス]を通す事を許可した。
スポルティー・ファイブ [act.8]
初めて基地内に入ったクリス。
内部は真っ白で実に堅実そうな造りの建物だった。通路が縦横無尽に走り、それがかなり奥まで続いていた。ここには地下基地も広がっている。
通路内はどこも空調が行き届き、静かな震動音がしていた。あまりの広さに他の人間に会う事もあまりない。
クリス「すごい所だ」
委員長の後をクリスはついて行く。彼女は慣れた感じで、通路を奥へ奥へと進んで行く。
通路内の各ブロックごとの入り口のゲートでは、クリスは警備員から借りた臨時のセキュリティーカードをかざしたり、手の平で指紋認証を受けたりした。
基地は各ブロックごとに分けられ、隔壁に守られていた。一部が敵からの攻撃や侵入を受けたり、火災等の緊急事態が発生しても、シャッターが下りて他のブロックへ被害が広がらない仕組みになっていた。
各ブロックのゲートには最新設備の固いセキュリティーシステムがある。おまけに各種警備カメラが随所に備わっており、クリスも常に監視されていた。
自分を追尾するカメラの視線に気が付くクリス。
クリス「……………………。」
委員長「気にしないで。あれはいつもの事だから。」
委員長が基地内の[自室]に彼を案内しようとしていると、彼女の携帯へ連絡が入った。
意外にもそれは矢樹からだった。
「クリスを連れてオペレーションルームまで来い」と言うのだ。
委員長「わかりました。」
委員長は少し嫌な顔をしながら通信を切った。
委員長「”貴方もいっしょに来てください”って。」
クリス「ああ、聞こえた。それはいいけど。でも、どうしたの?その顔。」
委員長「顔?!あーー、これね!あははは!
矢樹博士から連絡があるとちょっとねーーー。
どうしてもこうなるのよ。
あの人なんか性格がねーーー。
ここだけの話、あの人、よく周りから『マッドサイエンティスト矢樹』なんて呼ばれてるしーーー。
かなりの毒舌よ。
私達を”物”扱いしたりするし。」
クリス「”物”?」
委員長「あの人、私達をただの実験体だと思っているみたい。時々そんな口のきき方をするわ。」
委員長とクリスが乗った移動エレベーターはオペレーションルーム手前のフロアに着いた。
委員長「何を言われてもカッとなっては駄目。あの人の毒舌はいつもの事だから。
まともに受けてケンカなんかしちゃ駄目よ!」
クリス「わかった。」
スポルティー・ファイブ [act.9]
オペレーションルーム前のゲートが開いた。
そこはまるでロケットの発射管制室みたいな場所だった。
いろいろな計器類が並び、数名ほどの人間が真剣な眼差しでモニター画面を見つめていた。
その中に1人、椅子に持たれてこちらを睨む男がいた。彼は眼鏡の向こうから鋭い視線を発していた。その男だけ他の者と違って”白衣”をラフに着ている。
クリスは一目見てそれが『マッドサイエンティスト矢樹』だとわかった。
矢樹はクリスに話しかけて来た。
矢樹 「君が[マギ クリス]か?委員長とはどういう関係かな?」
委員長「(えーーーーーーーーーー!!”関係”???!
そんな事いきなり聞く?挨拶さえまだなのに!)」
矢樹は何の前置きも無く喋った。
クリス「”クラスメート”です。」
委員長「……………………。」
矢樹 「いつごろからの知り合いなのかね?」
クリス「今日からです。」
委員長「(今日?)」
確か、クリスがこの学校に初めて来た日も、学校の教室内では一応会っているはずだが…………。
クリスの返答は委員長にとっては少し厳しいものであった。
矢樹 「君はなぜ小学校に入学するまでの記録が無いのだ?」
矢樹は無遠慮にズケズケと質問した。
委員長「(もーーーー!何なのこの質問攻めは?!
それに最初に自己紹介ぐらいあってもいいでしょ?!クリス君にとっては”貴方は今日初めて対面する人”なのよ!)」
委員長の憤慨をよそにクリスは落ち着いて話をした。
クリス「戸籍その他の事ですか?なぜ無いのか僕にもわかりません。
それに僕が物心ついたのはその後からです。それ以前の記憶は一切ありません。」
矢樹 「戸籍などは自分で調べたかね?」
クリス「ええ、調べました。しかし、わからなかった。」
矢樹 「じゃあ、両親については?」
クリス「わかりません。”いない”としか……。」
矢樹 「フッ。」
その時矢樹は面白がって笑った。
委員長「……。」
矢樹 「まあ、いいだろう。
電化製品を買う時に、いちいちその生産工場名や製造工程をとやかく質問する者もいないだろうから。
要は役に立てばいいのだ。
よし、決まりだ!
君は今日から[スポルティー・ファイブ]のメンバー候補だ。詳しい事はその[小川 飛鳥]聞いておけ。以上だ。」
委員長「(”電化製品”?私達って、電化製品なの?)」
矢樹は一方的に話し、それが終わるとさっさとそこから退室した。
委員長「(もーーーーー!なんてヤツなの!クリス君じゃなくて、私の方が切れちゃいそうだわ!)」
クリス「[スポルティー・ファイブ]?」
クリスは委員長に質問した。
委員長「え?ええ、そのう………、それについては”超”トップシークレットの筈なんだけど…………。
まあ、メンバーになるんだったら喋っていいのかな?」
クリス「僕はまだ”メンバーになる”とは言っていない。」
委員長「ええ、そうね!ごめんなさい!
”知らないチームのメンバーになれ”ってのもおかしな話だわね。
わかったわ。これから私の自室に来て。詳しく説明するから。」
スポルティー・ファイブ [act.10]
2人でこの基地内にある[小川 飛鳥]の自室に向かった。
そこは寝台列車のコンパートメントぐらいの広さのある小さなスペースで、中には机が1つとパソコンが1台あるだけだった。
委員長「折りたたみ式のベッドとロッカーが壁に収納してあるから、これでも意外に広いのよね。
貴方もメンバーになればここと同じような部屋が1つ与えられると思うわ。
もっとも、ここは休憩に使用するぐらいだけど。後、何かに付けてよく待たされる事もあるから、その時はここにいるわ。」
クリス「ところで、さっきの話だけど…………。」
委員長「ああ、[スポルティー・ファイブ]って何なのかって事ね?
でも、よく考えると……、まだメンバーと決まったわけでは無い人に喋っていいのかしら?
いつもうるさく言われてるのよね、その事は。秘密厳守の誓約書もサインさせられたしーーー。
んーーー、でも説明しないとメンバーになってもらえないしーー。
わかりました!言うわ!それ、兵器の名前よ。」
クリス「兵器?」
委員長「そう、戦闘機。その戦闘機に乗るパイロットの事を”メンバー”って言ってるの。」
クリス「パイロット?」
委員長「ええ、その戦闘機でレイドと戦うのよ!」
クリス「なぜ僕が乗るんだ?正規のパイロットがたくさんいるんだろ?ここは軍事基地じゃないか?」
委員長「それがその……、[スポルティー・ファイブ]って乗り物は、超能力を使える人間でないとその秘めたるパワーを使えないのよ。」
クリス「”秘めたるパワー”?」
委員長「私もまだ詳しく教えてもらってないので、うまく説明出来ないんだけど……。
”超能力を持つパイロットがスポルティー・ファイブに乗ると、その性能を使い切る事が出来る”って、あのマッドサイエンティストさんが言ってたわ。
実は……、私には超能力があるの。」
クリス「君に?」
委員長「ええ。なんだか言うの恥ずかしいなあ。」
そう言って委員長は頬を赤らめた。
クリス「超能力ってどんな種類の?透視が出来るとか?」
委員長「予知夢を見る事が出来るの。貴方がレイドの夢を見た事があるように、私もその夢を見たの。ほら、”悪夢を見た”って言ってたでしょ。その事。
いつもいつも都合よく見れるってワケじゃ無いけど。
その夢で予言が出来るの。
この基地の検査で、それははっきり超能力だと診断されたわ!」
クリス「じゃあ、僕のも…。」
委員長「もしかしたらそうよ。」
クリス「それで、”メンバー候補に”なんて言われたのか。」
委員長「それに私には少しだけサイコキネシス(念動力)みたいなパワーもあるの。
変に思わないでね。引いちゃうかな?こんな能力持っていると。」
クリス「いいや、僕にもあるよ。」
委員長「え?!」
委員長は目を丸くした。
クリス「僕も念じるだけで少し物が動かせる。シャーペンとか消しゴムとか。それが精一杯だけど。」
委員長「あはは!同じねーーーー!良かったあーーーー!
私、貴方に変な女の子に思われたくなかったんだーーーーー。
フゥ~~~~!
そっかあ、だからあのマッドサイエンティストさんは貴方に興味を示したんだ。」
その後も委員長はクリスと親しげにいろんな話をした。
基地の簡単な説明から、軍規やメンバーの訓練等について……。
夜になって都市にかかっていた警報が解除されたので、2人は基地を出て自宅に帰る事にした。
続きます。
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