ボロ邸生活日記

ボロ邸生活日記

2006.11.25
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裏新ジャンル「猫耳」に便乗する その1
裏新ジャンル「猫耳」に便乗する その2
裏新ジャンル「猫耳」に便乗する その3

 ジオフロントまでの道程は、街中の光景を越える地獄だった。

 折り重なるようにして倒れているのは俺達と同じ目的地へ向かっていた人々だろう。

 坂道に沿って流れる赤黒い川がその体を染め、この光景の嘘臭さをより強めている。

 「何だか、怖いね」

 いつもの口調で、俺が一度も聞いた事が無い言葉を口にした。

 「ああ。俺も怖い」

 率直な感想だった。

 そこら中に危険がうろついていると言うのに、俺達は何一つ対抗する術を持たない。

 できる事と言えば、この長い道のりで化け物や天使に見つからない事を願うだけだ。



 無傷で逃げ延びようなんて都合の良い事は許してはくれなかったらしい。

 「あ、あれ……」

 恵が指差した先の空には、天使が俺達を見て微笑んでいた。

 「走るぞ!」

 恵の手を取り、もう数百メートル先に迫ったジオフロント入り口へと駆出すと、同時に。

 風を切る音がしたと思うと、握った恵の手が重くなった。

 頭が真っ白になりそうな絶望感。

 いっそ気絶してしまった方が楽だったのかもしれないが、俺は振り向き、悪夢のような現実を目の当たりにした。

 天使が投げた剣が、恵の腹に突き刺さっているなど、冗談だ。

 ……そんな薄っぺらな希望はすぐに非常な現実に塗りつぶされる。

 恵は、いつもと同じような表情のまま、地面に磔にされていた。



 叫んでいるつもりが、声にならない。

 もう、何をしていいのかも判断できない俺の前に、天使が降り立つ。

 俺は――無我夢中で天使に掴み掛かった。

 全く、無謀だ。

 ハンターすら圧倒する天使に、何の武術の心得も無い俺が勝てるはずも無かった。



 それなのに、天使は倒れた。

 首を絞められていたとはいえ、剣で俺を貫いてしまえばすぐにでも形勢は逆転したはずなのに。

 その天使が握っていた剣は、恵の両手で固く押さえつけられていた。

 「恵!恵っ!」

 ただ混乱して名を呼ぶばかりの俺を、彼女はやはり変わらない表情で見ていた。

 何故だ?こんな、こんな事になっているのに。

 何でそんな、穏やかな顔をしていられるんだ。

 「行きなよ」

 「置いて……いけるかよ」

 やっとの事で声を絞り出す。

 「私はもう無理。早くしないと、助けたのが無駄になっちゃうよ」

 「俺は、そこまで、弱く無いよ。だから、一緒に!」

 精一杯の強がりだった。

 きっと、恵には見抜かれていただろうけど、彼女は笑った。

 「ありがとう、修二」

 それが、最後に見た恵の笑顔だ。





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Last updated  2006.11.26 01:16:45
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