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2007.06.27
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テーマ: たわごと(27604)
カテゴリ: うちそと系
稲吉は走っていた。

稲吉はかつて親しい友人にもらしていた。自分は右翼である。この日本という国をどこまでも愛している。そして日本民族を。だが稲吉にはどうしても理解しがたいことがあったのだ。なぜ先の戦争のとき、天皇陛下は責任をとらなかったのか。そうして国体護持のためにいたずらに敗戦の受け入れを引き延ばしたのか。
それでは左翼の糾弾と変わらぬではないか。友人が冷笑する。そうだろうか、そうかもしれぬ。稲吉はうつむき、黙り込んだ。到底届かぬであろうことばをそうして体にため込むようにして、だが稲吉は思っていたのだ。たとえ陛下が責任をとり、退位をしたとしてもそれでよかった。天皇は平民となり、国体はズタズタに解体されたとしても、民族が死滅するわけではない。日本民族はそこから本当にすべき戦いを戦い、やがて誇りある再生を遂げるだろう。そうして新しい天皇陛下を押し上げることだろう。それが本当の意味の日本の再出発になるべきだったのだ。
稲吉はこうも思う。日本は国力で負け、兵力で負け、そうして道義で負けたのだ。連合国の「正義の戦い」はまやかしである。だがそれならばなおのこと、日本は「正義」を貫かなければならなかった。アジアの盟主として欧米列強の軛を解き放つために、なにより「正義」を立てなければならなかった。それなのにどうしたことだろう、アジア諸国でわれわれ日本国がしてきたことは、なんと薄汚れたことだったか。
われわれは恥辱にまみれ、しかしそこからスタートするほかはなかったのだ。だが戦後に日本がしてきたことは正反対のことだった。日本がアジアにしてきた非道の数々をひたすらに小さく見積もろうとした。日本は責任をとろうとしなかった。そうして豊かになった。これほどの恥辱はあるだろうか。このままでいて、日本人は誇りを、道義を、取り戻すことができるだろうか。

そうではない日本へ。稲吉は夢想した。
そうではない日本へ。
稲吉はナイフを腰にため、走っていた。





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Last updated  2007.06.27 23:28:53
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ウラガエル @ お久しぶりです。 suiさん どうされているのでしょう。 …
紫陽花ロック @ 鎧駅は 海に向かって断崖絶壁に駅のホームがあり…
ウラガエル @ そーですか? 育児・子育て きらりさん 「そーです…

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