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2005年12月31日
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カテゴリ: 600億円のユウ
当時ぶんさだが書いた詩 インプレス社DOS/Vパワーレポートより





トシキ君いやオーナーに胸倉をつかまれた絶対絶命の俺。まさに走馬灯が起こる寸前だった。
オーナーはサングラスの下から俺を覗いてボソっと言った。

「持ち場にもどれ」
「す、すいません…すぐにもどります。」
「いや、やっぱりもう少しいろ」

オーナーは俺を離すと、ユウの方を向いてこう言った。

「ユウ このハコしばらくお前にまかせようと思う
俺なちょっと入院する事になりそうなんだ…」

ユウは特に驚いた様子もなく、少し悲しそうに小さく2度ほど小刻みにうなづいた。



オーナーは俺の肩をポンと叩いて、駐車場の方に向かった。ユウはしばらくボーっと突っ立っていたが、やがて口を開く。

「最初からね。言われてたんだよね。ここはユウがしきれって…」
「オーナーどこか悪いの?」
「ん~たぶん相当悪いと思う」ユウはちょっと涙目になって笑った
「ユウには何も教えてくれないんだよ」

オープン初日、ユウは突然この巨大なバブルの城をしきる事になった。俺はあまりの事にどきどきして、由美の事やアノ人の事は頭から消えていた。それはトシキ君にびびりすぎたのか、ユウの瞳があまりにも美しかったのか、いろんなドキドキが混同してて、わけがもうわからなく…

************************************

目を覚ますとそこは見慣れないベットの上だった。ハッとしてあわてて起きる俺。ものすごい頭痛がする。どこだここ…うちじゃないことは確か…

「ん…気がついた?よかった」
「ユウ…」

「ごめんね ブン君、ほんとにお酒駄目なんだねw あんな弱い人はじめて見たよ」


俺は思い出した。ショットガンで挑発されて、飲み比べをしてしまったのだった。

「ここ…どこ?」
「ユウのマンション(*1)w」

ユウは下着一枚だけの姿だった。俺は目をそらして、部屋を見渡した。猛獣の敷物、巨大な柱状の水槽と無数の熱帯魚。3mくらいありそうな天井。家の中とは思えないようなカウンターテーブルと陳列されたお酒…。

「すげぇw」



「引っ越すの?」

「二束三文だけどね…。銀行が回収にかかってるから」

俺はあまり体験した事のないひどい二日酔いに襲われる。

「銀行?ん~ぐおっ今、何時?」
「大丈夫、まだ11時だよ。今日は休んでもいいし…お水もってくるね」

「いやいくよ。ふぃー ね…俺もしかしてしちゃった?」
「…はは うん すごかったよ。」
表情から嘘だとわかる

「嘘付けw」
「あんなに激しいのはじめて!」

俺はユウのもってきた水を飲むと、少し落ち着く。

「ね~経営きびしい?」

オープンの日から、突然しきる事になったユウは、ひいき目をさし引いてもずいぶんがんばった。
もちろん外タレのブッキングスタッフはその道のスタッフたちがいるのだけど、その接待から、慣れない英語でずいぶんがんばってたと思う。出会った時のような軽いイメージはなくなっていて、ちょっとしかめっ面が多くなっていた。客足が予想以上に鈍ってきたからだ。
 ちなみに由美は、ユウへのささやかな抵抗だったのか、サイカのカウンターレディーになっていた。俺の事はずっと無視していたけれど、そのうちキッカワ風(*2)の黒服と仲良くなっていた。

「ん~軌道に乗ってくればなんとかなると思うんだけど、もう借金も限界かな~」
「そか、今日のソウル2ソウル(*3)は絶対、客入ると思うんだけどね」

「それでも、銀行から借りた額には届かないかな」
「借金って少しづつ返していくものじゃないの?」

「うん ホントはそうなんだけど、先月あたりから突然銀行の態度が変わったんだよね…。今までニコニコ湯水のように貸してくれてたのに」

「ははっいったいいくら借りてるのさ」
「んと600億かな…」

「…」

額を聞いて絶句した。聞いたことも想像したこともない金額だ。

「大丈夫。うちつぶれても、あなたたちの身柄はエムザに任せる事になってる。」
「つぶれる?うちってそんなにやばいの?ユウ」

ユウは何も言わずに下着姿のまま僕に抱きついてきた。その手は震えていた。演技じゃない。きっと本当に怖いんだ。無限に積み上げた金の城を打ち砕かれて、何もかも失ってしまうのが本当に怖いんだ。

(最終話 カウントダウンへ続く)




(*2)キッカワ 吉川晃司の出現で80年代のいい男の概念がひっくり返った。それまでいい男の標準だった目がぱっちりしたいわゆる”濃い顔”とは逆に、しょうゆ顔が大人気となる。同じ系統として玉置こうじ、仲村トオルなどがあげられる。伝説を残して一度はこの世界を去った吉川だが、バブル時期に布袋寅泰とCOMPLEXを結成して、メガヒットをとばした。

(*3)ソウル2ソウル
 DJ型のハウスバンドの教祖的存在。ダンサブルかつソウルフル。現在の渋谷チェキラー系ファッションのルーツだと俺は思う。
(*4)エムザ
 バブル時期の巨大ホールではエムザ有明やゴールドなどが有名だ。ちなみにジュリアナ東京はもう少しあとになる。





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最終更新日  2007年07月11日 18時38分50秒
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