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六歳下の従妹が久しぶりに実家の平内に帰ってきた。高校生のとき青森の私の家に下宿していたことがあるので、亡き母への線香を上げながら、しばし歓談となった。その折、受験生当時の話となって、歴史年表を覚えているかとか、古典の出だしを覚えているかといった話題になった。仏教伝来538(ごさんぱい)、とかいい国作ろう(1192)鎌倉幕府とかいうやつである。枕草子の話になったときに彼女が、昔朝日新聞のコラムに大変面白い、草紙もどきが紹介されていたというので、あとで携帯のメールに入れて貰ったら、これがほんとうに笑える。津軽弁で言うと「煮だってしまう」。そろそろ春らしい日差しになってきたので今日は、それをご紹介しようと思う。夏はボーナス 清少納言(時のかたち)ミレニアム特集草紙、たはぶれに書き付ければ、千年の物にたちまじり、はづかしきなんどもぞ見る人はし給うなれば、いとあやしゅうぞあるや。新聞のコラムに「これになにを書かまし」など、のたまいしを、「現代の事情をこそ」と申ししかば、「さは、得てよ」とて、たまはせたりしを、いと物おぼえぬ事ぞおほかるや、おのづから見ゆる事を書きつくさんとす。『春は人事異動。やうやう近くなりゆく窓際、すこし赤字増えて、傾きだしたる社運の細くたなびきたる。夏はボーナス。下落傾向はさらなり、闇(やみ)もなほ狸(たぬき)算用のおほく計算違いたる。また、ただ一円二円など、ほのかに増ゆるもをかし。飴(あめ)などもらふもをかし。秋は前期決算。夕日の傾きて崖(がけ)の端いと近うなりたるに、空の懐に響くとて、三人四人、二人三人など転職急ぐさへあわれなり。まいて借りなどの積もりたるがいと少なく見ゆるは、いとをかし。資金はてて、風前の灯(ともしび)、虫の息など、はたいふべきにあらず。冬は勤めをやめて。不幸の降りたるは、いふべきにもあらず、預金通帳のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、求人誌など急ぎ求めて履歴書もてわたるも、いとわびし。暇になりて、気のゆるびもていけば、再起の火も白き灰がちになりて、わろし』書き連ねたれど、すさまじきものなれば、はづかしとおもいゐたりて詠めり。世をこめて草紙のそらねははかるとも世におほかたの責はゆるさじ。(宮廷公務員・エッセイスト)2000/06/29、朝日新聞 朝刊、17面
2008.03.04
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