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2017.4.10
視力が下がり続ける中オペラも出来なくなり、オーケストラとの仕事も困難となって行く中、その時点で自分の出来ることと言えばピアノの前に立って一人で演奏することぐらいである。
年齢的に歌い手としては一番声の熟す時期を迎え、人生の内のそんな時代を精一杯歌うことで味わうためには、ドイツ歌曲に限局した活動でしかなかった。
皮肉なことに、いや、皮肉と言うよりは不思議なことに視力の低下と声の成長は反比例して進み、その両者の進行は今も続いている。
そのようにして10年間の間に何度もいずみホールでのリサイタルを開催し、チャールズ・スペンサー氏を迎えてドイツ歌曲によるプログラムを組んだ。
リサイタルを企画し本番ステージまで持っていく作業は誠に大変な仕事である。
どのような曲を選び(ただ選ぶだけではなく、一つの演奏会を持って何を表現したいか、その曲たちが本当に自分に合った作品化、耳にするお客様にとってそれをどう受け取って下さるかなど多くのことを考慮し決定していかなければならない)、百万単位で動くお金の工面を行い、どのようにして800席ほどあるいずみホールの客席を埋
めるのか。
その他新聞社、ホール、スペンサー氏との対応など、それらを一人で思案し行動に移して行かなければならない。
その上最終的な自分の収入はゼロ、悪くすると赤字なのだ。
すべての始まりは自分の意志であり、宝物のように大事にして来た曲の中からその演奏会に合った曲を選び、プログラミング、演奏に至るまで全て僕次第、100パーセント自分の企画による作品である喜び、達成感がそこにはあった。
それは自分一人の部屋作りに似ている。
曲選びにはスペンサー氏の意見が多く含まれているのではと思われているようだったが、彼の意見はそこに一つとして加えられていない。
すべて僕が決定し、彼はどさっと楽譜を渡され、何も言わずただ伴奏してくれていた。
イニシアティブを歌い手に委ねるというのが彼の信念でもあるようだった。
それはある面厳しいことでもあるが、僕にはとても心地良い喜びである。
舞台に立ち、彼の伴奏で演奏しているその時間は、最も生きている喜びに満ちることのできる時間だった。
聴衆が僕の演奏を受け入れるか拒否するかはどうでもいい。
結局そういうことなんだと思う。
集大成としてスペンサーの共演でCDを作成し、10年が通り過ぎた。
その間も鍼灸治療に通い続け、僕の中での治療への憧れも膨らみ続けた。つづく





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最終更新日  2017.04.10 14:04:53
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