私の沼

私の沼

子宮の大きさ





子宮の大きさ









14歳の冬
生理が1ヶ月近く
止まらなかったことがあった
わたしは学校で倒れ
保健室に運ばれた
どうしたのと先生に
やさしく聞かれても
上手く話せない
自分でもわからない
母親に病院へ連れて行かれた
たぶん精神的なものだろうと
医者は言った

わたしの故郷は雪国だ
瞬く間に1メートルくらい積もる
それは道路わきに寄せられて
灰色の壁になる
冷たく硬く汚い壁になる

わたしはそのとき恋をしていた
とても原始的な
ただ悶々と体の中をぐるぐると
恋が回ってる
そんなとき
医者が言った言葉
「好きな男の子でもいるの?」
わたしは思った
こいつを許さない、と
なぜ許せないのかわからないまま

たまに帰り道でわたしは
少年に出会う
顔見知りなので話をしたりする
なんでもない雰囲気で
でもわたしとその少年は
本当は11歳のときキスをして
体を探りあったことがあるのだ
でもそんなことはお互いにけして言わない

その日も雪が降っていた
コートのフードを被り
わたしたちは人の少ない道を選び歩く
何を話していたのかは忘れた
前後の脈絡は覚えていない
その少年は不意にわたしの目の前で握りこぶしを作った

「子宮の大きさってこれくらいなんだってさ」

急に強い腹痛に襲われてわたしは雪の中にしゃがみこんだ
痛い痛い痛い痛い痛い
堰を切ったようにわたしは赤黒い塊を産む
雪の上に血がにじむ

気がつくと目の前に踏切があって遮断機が下りている
少年が遮断機を持ち上げ潜り抜け歩いて行くのが見える
子宮が痛いわたしは号泣する言葉は見つからない
絶え間なく降る大粒の雪の向こうに電車が走る
わたしの目の前を電車が走る
もう何も見えない
そしていつまでも走っている
いつまでも
途切れることなく














2004・11・15


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