私の沼

私の沼

雪に埋もれた街の片隅の


庭に置いてある白いブランコに
雪が積もり
境目が見えなくなる
向かいの医院は
とても静かな内科
高熱が出たわたしは
抗生物質を貰いに行く
山のふもとは
山が音を吸い込んでしまうので
とても静かだ
国道なんかには負けない
雪も音を吸い込む
しんしんと
空気は凍りつく
白い息を吐き
音のしない世界から
湯の湧く家に帰り
奥へ
小さな四畳半は
北向きの窓
ストーブが赤々と燃えている
全身が痛む
わたしは本を持ったままベッドに丸まって
読み疲れて眠る
雪に埋もれた
小さな暖かい世界
そこがわたしのすべてだった
確かなものは何もないのだと
まだ知らなかった





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