私の沼

私の沼

おじさんの話


薄いお茶と干菓子
食欲なんかないけれど
暇で
口に運ぶ
隣ではあまり見覚えのない
地味なおじさんが
やはりお茶を飲んでいる
季節は夏
蝉が鳴いている
もう少しクーラー強くしてくれないかな
「そういえば」
何がそういえばなのか
よくわからないけど
ここからはおじさんの話
ある日のこと
おじさんは
家から少し離れた場所にある
山間の畑に行った
そして草刈をしていた
ちょうどおじさんの目線の辺りには
山と山を繋ぐ鉄橋が走っていた
人が歩くところではなく
線路だ
そこを
なんと
近所のボケたおばあちゃんが歩いていたのだった
田舎だから
滅多に電車は通らないのだけれど
一時間に一本くらいは通る
おじさんは下から声をかけた
「あぶないよ、早く渡ってしまえ!」
すると、おばあちゃんは立ち止まり
「はぁ?」
と何度も聞き返すばかり
おじさんは困ったが
どうしようもなく
するとそこへ轟音が
おじさんは慌てて鉄橋の下まで走って行った
「豆腐みたいなもんなんだなあ、脳味噌って」
あはは、とおじさんは笑った
へええ、とわたしも相槌を打った
おじいちゃんが焼き上がるまで
もう少し



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