吟遊映人 【創作室 Y】

吟遊映人 【創作室 Y】

吟遊映人ア・ラ・カルト

「吟遊映人」を名乗り、様々なジャンルの映画の感想を書き始めて早一年。 本来ならシネコンに出かけ、大スクリーンを前にして作品を堪能するのが映画の醍醐味と言うものだろう。

ジュースを飲み、ポップコーンをつまみながら、大衆の中の一人として喜怒哀楽を分かち合う。 それこそが映画・・・つまり大衆娯楽の原点とも言える。
だがこれほど複雑極まりない社会情勢の中、娯楽のあり方も多種多様化し、自由な形態で物事を楽しめるライフスタイルが確立された。
レンタルショップに出かけるとビデオテープが姿を消し、DVDが華やかに店頭を飾る時代になった。 パソコン一台で何もかも楽しめるのだから、デジタルの普及は実に我々に豊かな恩恵をもたらしてくれた。 ただただありがたい。 そんなわけで週末の夜、家庭の居間でお茶を飲みながらまったりDVD鑑賞に耽ることができるようになった。
そもそも吟遊映人が映画のとりこになったのは、サスペンスの神様、ヒッチコック作品と出会ってからだ。 モノクロ映像だというのに、とにかく鮮烈で衝撃的で、しかも魅力的だった。
その後は良質な古い映画をくり返し観ては、学校では教えてもらうことのないたくさんの社会学を吸収させてもらった。
そんな折、ここ一年は良くも悪くも比較的新しい映画を観る機会に恵まれた。 おかげでヒットする作品や話題となる作品には、一つの共通性があることに気付かされた。
それは、製作者サイドが望むと望まざるにかかわらず、その時期、旬の世相が作品にありありと反映されている場合、結果としてそこに社会性を帯びてくるということだ。
つまり、大衆の共鳴を得ることに成功した作品が知名度を上げ、興行的にもヒットするという図式になる。
もともと我々が映画に期待するのは“心から楽しめること”であるはずだ。 だが良質な映画は、いつのまにか知らないうちに、知識と教養を与えてくれるばかりか、最終的には豊饒なひと時を提供してくれるのだ。
吟遊映人は、そんな優雅で格調高いひと時を与えてくれた多くの映画に感謝するとともに、つたない記事に目を通していただいた通りすがりの方々、あるいは度々訪れていただいた方々に、心より御礼申し上げます。
来年も、どうぞよろしくお願い致します。
「私は映画から人生勉強、人間勉強を教えられた。」
~淀川長治より~


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