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2026.05.09
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カテゴリ: 読書案内



【 今村夏子 / こちらあみ子 】

私はこれまでこういう小説を読んだことがない。ハッキリ言うが。
固定観念が邪魔するせいで、名だたる文士・文豪の作品でなければ、読んでいても残るものがないと考えていたからだ。
ところが最近は、肉体的にも精神的にも丸くなったのか、世の中で支持されている小説(いわゆるトレンド的なもの)も読んでみようという気になった。
例えばそれは、本屋大賞を受賞したものとか、若くして芥川賞を受賞した話題の作家のものとか。
最初の数ページで読むに耐えないものは除外するとして、何となく惹かれるものは買ってみる。
文庫本なので大抵は¥1,000以内で購入しやすい。

今回は、今村夏子の『こちらあみ子』を手に取った。
例によって最初の数ページをスルスルと読むにつれ、「これは福祉教育の啓蒙かな?」と思った。
息子が福祉の道に進んだこともあり、興味を持った。

一体何なのか?
これを今風にざっくり表現すると、「イタイ」というのだろうか?
まずは『こちらあみ子』のあらすじを紹介する。

あみ子は小学1年生。2つ上の兄がいて、両親がいる。
だが母親は後妻で、あみ子や兄の本当の母親ではない。
母は自宅で書道教室を営んでいるが、あみ子が習字をやることは禁じられている。教室に入ることもだ。
だからあみ子は、バレないように襖の陰から覗くことしかできなかった。
教室には数人の子どもたちの中に混じって兄もいた。字のキレイなのり君もいた。
あみ子は大抵、兄といっしょに登下校した。
兄は両親から妹が学校の行き帰りに悪さをしないよう見張ることを言いつけられていたのだ。
あみ子は給食でカレーライスが出されると、「インド人のまね」と言って手で食べた。もちろん家でもだ。

弟か妹ができるのは、なんとなく楽しみだったが、しばらくして周囲がそろって赤ちゃんのことをとても悲しいことだと言った。
いろんな人から「残念だったね、元気だしてね」と何度も声をかけられ、その都度あみ子は「そうよ、ほんまにがっかりしたよ」と答える一方で、兄は「うん、まぁ、はい」と返事をしていた。
学校からの帰り道、あみ子は字のキレイなのり君に、「弟の墓」とマジックで書いて欲しいと頼んだ。
それは墓を建てる木の札だった。
のり君はイヤで、ずっと渋っていたが、根負けしてしまい、あみ子から札とマジックを受け取ってしまう。

そのキレイな字を見せたくて、台所の母をつかまえ、連れて来た。
「きれいじゃろ」とあみ子が指し示す先を見つめ、母は声を上げて泣き出した。
それを聞いた兄が慌てて駆けつけ、引き抜いた木の札を持って父のところへ行った。

著者の今村夏子は学歴を公表しておらず、大阪市内の大学を卒業しているという情報しかない。(Wikipedia参照)
興味を引いたのは、大卒でありながら、その後は清掃のアルバイトなどを転々としたという経歴。
1980年生まれの彼女が、どんな思いでこのデビュー作となった『こちらあみ子』(あたらしい娘・改題)を書き上げたのかは想像の域を出ない。
本書は、第26回太宰治賞を受賞し、後に『むらさきのスカートの女』で第161回芥川賞を受賞する。

『こちらあみ子』を読んでいると、読者はすぐに主人公のあみ子が発達障害か何かなのだろうと想像する。
だが作中ではそういう背景が語られない。
時代設定も、昭和のことなのか平成初期の頃のことなのかハッキリしない。
おそらく作者にとって、そんなことはどうでもいいことなのだろう。
ただそこに、無垢で純粋、しかも悪意のない小学生の女の子が存在するだけで、周囲が疲弊していく様子が描かれている。
あみ子は悪気がない。
自分に正直に生きているだけだ。
だけどその生き方は、いわゆる常識から逸脱している。
そのことで誰かを傷つけ、迷惑をかけ、しまいには家族をバラバラにしてしまうが、本人は至ってへっちゃら。
それがあみ子の個性なのだからしょうがない。

現代は多様性を重んじ、共存・共生の時代である。
だが家族の中に、あみ子のような存在がいた時、自分ならどう対処するのか?
平然としていられるだろうか?
私たちは多様性という言葉に対して、余りにも無関心なのではなかろうか?
あるいはその言葉の意味について、じっくりと考えることを避けて来たのではなかろうか?
私自身、この問題については、あまり触れたくはなくて、どちらかと言えば表面的にサラリと流してしまいたい衝動に駆られる。

この小説は、現実から目を背けた大衆に、これでもかと言うほど痛みを突き付ける。
多様性、共存、共生なんて、実は幻想なのだと、鋭い痛みと共に思い知らされる作品なのだ。

『こちらあみ子』今村夏子・著(ちくま文庫)

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※筆頭管理人
さて吟遊さん。呻吟の末にこれを脱稿したのですが、その後は大好きな園芸作業に勤しんだそうです。

それでね、このごろはすっかり夢中になっている吟遊さんで、


花々に叱咤激励(本人は話しかけという)しつつ、水くれに勤しんでそうな。ヤバッ(^^;)

また寸暇を惜しんで草取りにも精を出しておりますが・・・


運動不足の身体には実に堪えるようで、


すっかり疲労困憊してしまうこともあるそうです、プププッ

まあ、それはいいのですが次の日の出勤の折は、電車で「立ち眠り」する始末だそうで(*'ω'*)


でも、そんなことは意にかえすそうな吟遊さんであるはずもなく、次の休日に隣の奥さんに褒められ、


すっかりその気になってるようですよ。天下泰平、よいかなよいかなぁ~

以上、吟遊さんの近況でした(^_-)

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コチラ
★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)は コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )は コチラ から


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最終更新日  2026.05.09 08:00:11


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