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2004年04月30日
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 映画史上の最新作が「キル・ビル」であるとすれば、「ローマの休日」は、その映画史の、ほぼ中間点で作られた作品である。「キル・ビルVol.1」公開当時に「ローマの休日」がリバイバル公開され、50年を経た2作品を同時期に鑑賞できたわけであるが、この2作品は実によく似た作られ方をしている。
 まず、「ローマの休日」であるが、楽しい舞台が開幕されるような軽快な音楽でスタートする。これは、劇映画が舞台の類似ジャンルであり、延長線にあることを示したというより、その引用であろう。
 タイトルが終わり、本来ならばドラマがスタートするはずであるが、まず登場するのは、「パラマウント・ニュース」のタイトルである。この映画が製作された当時は、映画館で本編と同時にニュース映画が上映されていた。それが、本編の前に上映されていたことを考えれば、「ローマの休日」本編が始まった途端に、ニュース映画のタイトルが全面に出たことで、観客は、もしかしたら、びっくりしたはず。これはかなり遊びの要素が入った構成ではなかろうか。

 映画史という観点でみると、40年代で映画文法とそれに基づく美学は完成したと言われるが、50年代初期に作られたこの作品では、それまでに確立された映像表現術がすべて活用されていると思われる。この映画では、それまでに確立された実に様々な映画術が披露されている。セリフ、ナレーション、あるいは字幕などを一切使わ
ないで、ヒロインのアン女王をはじめとして登場人物たちの心情やおかれた状況を見事に表現しきっている。
これは、冒頭のアン王女のレセプション・シーン、それと対照的に描かれるラストの記者会見のシーンを見れば明らかであろう。また、それによって作家自身の思想や態度を表明しているのである。

 では、「ローマの休日」から半世紀を経た「キル・ビル」では、どのようになっているのだろうか。

「ローマの休日」の時代と現在の差は、映画の本数、つまり数々のジャンルの作品群が、ある視点によって系統立てられたことであろう。つまり、映画史に残る作品だけではなく、プログラム・ピクチャーと言われる作品群を系統立てて見ていく映画ファンや無名であるが、その中の名場面や登場人物たちを取上げる映画ファンたちが
出てきたのである。つまり、映画史に残る作品だけではなく、映画史に埋もれた作品群を通して自らの思想を表現する、あるいは新しいジャンルを組み立てていく作家が出てきたのである。スティーヴン・スピルバーグやジョージ・ルーカスはその魁であり、クエンティ・タランティーノもまたそうした映画ファン出身の作家である。

「キル・ビル」について進めよう。

 ウィリアム・ワイラーが、「ローマの休日」で、映画が演劇の延長としていること、そして、映画においてそれまでに確立された技法をフルに活用して「ローマの休日」という新しいドラマを作りあげたように、タランティーノは、過去において自分が愛した様々なプログラム・ピクチャーを寄せ集めて、「キル・ビル」という映画を作り上げたのではなかろうか。どちらにも共通しているのは、映画への愛と遊び心である。

 こうしてみると、ロマンティックでヒューマンな「ローマの休日」と血まみれのアクションの「キル・ビル」は、一見して異質な映画のように見えるが、それはあくまでも外見上のことであり、創作原理はほとんど同じなのである。
 映画を、そこで描かれる物語やテーマに即して論じることは、映画を読み解くひとつの方法でしかない。そこでは映像表現という大事なポイントが見失われてしまう。
映像表現技術やそこに引用されている作品などを追ってみることも大事である。その観点から見ると、その映画の思わぬ側面が出てくる。

それを「映画史的観点」とすれば、そこからは「映画は越境と繰り返しによって成立する」という定理が導き出される。そこから導き出されることは、一見、無限にあるような映画は、ごくわずかの映画を繰り返して作られているにすぎないということである。

 さて、「キル・ビル」であるが、Vol.1には、否定的な意見の方が多いようである。
 私の周囲での否定論で最も説得力のあるものは「過去のプログラム・ピクチャーの引用やパロディなどによって、タランティーノの映画愛はよくわかるが、それらを超えて新しい美学を生み出していない」というものである。 
「キル・ビル」賛美を表明する私も、この意見には同感である。
確かにタランティーノの映画愛の集大成ではあるが、オマージュをささげた過去の作品への批評にはなっておらず、新しいものは生み出していないと思う。

さて、「キル・ビル」は、「ローマの休日」のように50年後も観客を熱中させることができるであろうか?






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最終更新日  2004年04月30日 00時29分42秒
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