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2007.11.22
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カテゴリ: 仕事
産科をしていると,普通分娩から一転して,医療が必要となる場合がよく有ります.
そんな場合,直ぐに産まれそうでなければ帝王切開という運びになるのですが,もうすぐ下から(腟の方から)産まれそうな場合, 吸引分娩 鉗子分娩 といった処置を行うことがあります.

吸引分娩とは,赤ちゃん(正確にはまだ胎児)の頭に吸引器(ウンコ詰まりした時に使う便所コップみたいな器械)を着けて空気の吸引力で引っ張り出す処置で,もう一方の鉗子分娩は,同じく赤ちゃんの頭に鉗子という器械を取り付けて,介助者の力で引っ張り出す方法です.

どちらの処置も,勿論赤ちゃんを急いで出さないといけない場合に行うものですから,赤ちゃんの状態は放っておくと悪くなるばかりです.結果として医学的には迅速に上手く産まれても,赤ちゃんの予後(結果)が悪いことが有ります
これが産科の特殊な部分ですが,こういった赤ちゃんの悪い状態というのは,ほんの30分や1時間前には元気であった母児に誰でも起こりうるものなのです.もうすぐ産まれそうだけど,状態が悪い,帝王切開するにも,手術室の人を呼んでいてはとても間に合わない(1時間以上かかる),といった時に吸引分娩や鉗子分娩は欠かせない医療行為です.
医療ミス )になるんですよね,悲しいことに.
じゃ,何もしないで見ていれば,ってことを考えても,もちろん” 医療ミス ”になります.
逃げ場はありません.裁判沙汰になれば,現状では間違いなく 有罪 になります.

では,こういった急変はどの程度起こりうるものなのか??
と思うでしょう?

少なくとも5%以上,ハイリスクの妊婦さんが集まる病院ではもっと高く,優に10%は越えるでしょう10~20人に1人こんな事態になって,果たしてそんな頻度で赤ちゃんに後遺症が残ったり,最悪,死亡したりしているでしょうか?

答えはもちろん,してません.


周産期死亡率(満28周以降の死産+早期新生児死亡,出生1000あたり)は


1975年 16.0  20.7   19.4  19.9
1985年  8.0  11.2    7.9   9.9
1995年  4.7  7.6    6.9   7.5
2005年  3.3  7.0    5.9   8.5

という数字です.

世界最高 のレベルです.決して, ゼロではない のです.
分娩を扱う施設で有れば,年間にこれ位の分娩数は普通に扱いますし,最近は分娩する施設が減っている為,1施設当たりの分娩数は必然的に増えてきています.
これは,新生児の数字だけですので,妊娠・分娩母体の後遺症や死亡を入れれば,数字は当然増えます.
仮にこれらが裁判沙汰になったら・・・

どれもなり得ます.その結果に患者や家族が納得しなければ・・・
結果が悪ければ,誰かのせいにしたくなるのは人の性ですから仕方がありません.

こんな事書いて,何言いたいんだと思われるでしょうが,産科医療をしている人間は,表では新しい命を育むという前向きで楽しい仕事をしながら(ホント,楽しいですよ),背後からは1年中24時間を通じて(寝ている間も),何か不測の事態の脅威に襲われているのです.そして,これら脅威をなくす手だては,産科を止める以外にないという事実です.

安心してお産するには,安心してお産に従事できる環境も必要だということを,行政(国)や妊婦の皆さんの全てに分かってもらいたいですね.
(でも,歴然とした医療ミスは裁かれるべきだと思います)

話は回り道しましたが,今日は,産科を止めてしまった先生から産科鉗子を2個頂いて来たので,所感を交えて書いた次第です.

さぁ,これからも頑張るぞお!





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最終更新日  2007.11.22 23:22:57
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