情が深まる理由






 なぜ女の子は、女同士で手をつなぐのだろう?
 僕はそれがずっと疑問でした。
 ただ、ただ、不思議でした。
 何故つなぐのか? 何度か聞いてみた事もあります。
「う~ん、わかんない」「なんとなく」「なんとなく」
 でも、答えはこんな感じ。
 わかんないのはこっちだよぉぉおおおお! と悶絶していたある日、僕は見てしまったのです。


 赤になったばかりの横断歩道に、僕はいました。当然ですが、信号が青になるのを待っていたのです。
 道路を挟んで向こう側には女性が二人、おなじように信号が青になるのを待っていました。たとえるなら、映画のNANAみたいな二人でした。ホンワカしたのと、ツンツンしたのと。
 二人は手をつないでいました。僕がそれを不思議だなぁ~と思って眺めていると、ホンワカした人が突然バックの中から何かを取り出そうとして、つないでいた手を離したのが見えました。急に離されたツンツンした人の手は行き場を失い、そのままその場で漂っています。それからしばらくして、ホンワカした人のバック関係の用事が済んで、その手がフリーになりました。しかし、二人は手をつなごうとしません。いや、よく見ると、ツンツンした人の手は、ホンワカした人の手に触れるか触れないかの位置をずっと漂っています。おそらくツンツンした人は手をつなぎたいのでしょう。でも何故かホンワカした人はそれを拒否するように無視。僕はその二人の手の展開を、ハラハラドキドキしながら興味深く眺めていました。

 そして、信号が、青に変わった、そのときです。

 ホンワカした人はツンツンした人の手をサッと握り、歩き出したのです。その瞬間、ツンツンした人もそれを分かっていたかのように歩き出しました。二人は、同時に歩き出したのです。


 僕は思わずガッツポーズをとっていました。
 口の中で小さくですが、「よしッ!」と言ってしまいました。
 我慢したつもりですが、かなり笑顔になっていたと思います。
 疑問が解けたような気がしたのです。何故、女同士で手をつなぐのか? 分かったような気がしたのです。 
 理屈ではなく感情で理解できたような気がしたのです。

 あえて言葉にするのなら、それは恋人同士の感覚と似ていると思いました。別に彼女たちがレズだと言うつもりはありません。愛情も、友情も、同じ『情』であると、そう思ったのです。

 僕は長年の疑問を解くきっかけをくれた彼女たちに感謝したい気持ちでいっぱいでした。ありがとうの気持ちでいっぱいでした。
 が、
 ふと見ると、彼女たちは僕に対して、ひどく不快なモノを見るような視線を向けているではありませんか! 
 なぜなんだ! 盗撮か! 昨日トイレ中に鼻をほじっていた姿が世界中に流されているのか!? とかオドオドしてしまいましたが、考えてみれば納得です。
 赤信号の間中ジーーーとしていたのに、青になった途端、よしっ! とか叫びながら、ものすごい笑顔でガッツポーズをとる男。
 不審者です。完全に。
 僕とすれ違うとき、彼女たちは、お前は青信号がそんなに嬉しいのか? 生まれてはじめての青信号か? そんな不信感でいっぱいの表情を向けてきました。

 そんな彼女たちは、最初よりも、ずっと強い力で手をつないでいたと思います。



 ええっと、要するに、何が言いたいかというと、共通の敵とか障害がみつかると、『情』って深まるものなんですね。


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