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2019年09月02日
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カテゴリ: 大川 充夫
ミツオーです。2週間前にできたキズが、まだ治りません。


さて、あらかじめ断っておきますと、今回は、競馬の話ではありません。


馬も騎手も調教師も、出てきません。
かろうじて、競馬場は出てきます。というより、むしろ競馬場の話、競馬場を舞台とした話ではあるのですが。





今回の主役は…









​セミ​








です。


セミ、ご存知ですね?
漢字で書くと、蝉。
昆虫の、セミです。


セミってのは分類上は、カメムシの仲間なんだそうですな、どうでもよろしいが。



今回の話、論旨をカンタンに言うと、



​「金沢競馬場には、全国でここにしかいない、珍しいセミがいる!!」​



です。


…それ、競馬場じゃなくて、「石川県には」でしょ?
と思われるかもしれません。



けど。



本当に、日本国内では、金沢競馬場(と、その周辺ごく狭い範囲)にしかいないのですよ、そのセミは。石川県内や金沢市内の各所に生息しているわけではなく、競馬場にしかいない。




(金沢競馬場正門入ってすぐの、ケヤキの木立。ここにそのセミがいるのです)



名前を 「スジアカクマゼミ」 というこのセミ、朝鮮半島から中国・台湾、東南アジア北部まで広く分布しており、済州島にも生息しているのに、済州島に近い対馬・壱岐・五島を含め、日本国内には全くいないのだそうです。…金沢競馬場を除いては。​




この、楽天競馬日替わりライターブログに、わたしが以下のようなことを書いたのを覚えている方はあるでしょうか?


「金沢競馬場でさかんに鳴いているセミ、アレって何ていうセミですか?ご存知の方、いますか?」


2011年8月11日に更新された記事の、冒頭に書いています。


ここでわたしは、このセミについて、なかなか詳しく説明しています。
いわく、


「かなり大きい」
「一匹鳴くと他も鳴きはじめて合唱になる」
「調べた範囲では、鳴き声はアカエゾゼミに似ている」
「北関東でも関東でも東海でも関西でも聞いたことがない」


わたしがこのセミの存在に気づいたのは、おそらくコレを書く数年前、たぶん、2007~09年頃でしょう。


このセミ、何?
地元・金沢の方々はじめ、数人に尋ねたところ、



「アブラゼミでしょ?」

とか、

「クマゼミね」



などという、全く 論外 な答しかもらえず、世間のひとってセミの声に無頓着なんだな、と思い知るだけで、肝心のセミの正体についてはまるで手がかりナシ、であったのでした。



(アブラゼミ。珍しくもなんともない。撮影もカンタン)




(一方で、問題のセミは、高い位置にとまることなどから、姿を見るのも難しい。けど、撮影に成功!)




(ワカラン?赤丸の中に、その姿が写ってますでしょ?)




以来、ず~~っっっと、一人で、コレ、何ゼミなのかな~?と思いつづけてきたわたくし。



時折思い出しては、「北陸のセミ」「石川県 セミ」で検索してみたりしましたが、収穫ゼロ。



ところが近年になり、どうやらコレは、広く北陸地方に分布するモノではなく、それどころかその版図は石川県全体にも金沢市レベルにも、遠く及ばないことに気づきました。



カンタンに言うと、 このセミの声、金沢競馬場でしか聞かない
わたし自身が、北陸では金沢競馬場に最も長く滞在するため、いかにも北陸地方や石川県全体にそれがいるように錯覚していただけだったのです。​

そこで、ネットでの検索ワードを、


「石川県 セミ」

から、

「金沢競馬場 セミ」


に変えてみたところ…。


ヒットしました!
金沢競馬場とその周辺ごく狭い地域に、外来種のセミが大量発生している、という記述が出てきたのです(中には、大量に捕まえて、食べたという記事も)。



名前も 「スジアカクマゼミ」 だとわかりました。​


嬉しい、やっと判明した。

…っつか、コレ、ホントに国内でこの競馬場にしかいなかったんだ!
詳しく知りたい!



というので、わたくし先日、 石川県ふれあい昆虫館 という施設へ行き、詳しいお話をうかがってきました。


(白山市にある、石川県ふれあい昆虫館)





(金属製の巨大なクワガタが迎えてくれます)




おずおずと、「金沢競馬場にしかいないセミについて、お聞きしたいのですが…」と言うと、お忙しい中、学芸員の福富宏和さんが、たくさんの詳しいことを教えてくださった上、 石川むしの会会報「とっくりばち」 に掲載された調査報告のコピーまでくださったのでした。



福富さん、その節は大変お世話になりました。ありがとうございました!



この調査報告・研究発表小論文( 『日本初記録のスジアカクマゼミ、金沢市八田地区に発生』 徳本洋・大串龍一・松井正人・富沢章)によると、金沢競馬場のスジアカクマゼミは、2001年夏、発見されました。

この年、競馬場周辺にエゾゼミがいるとの情報がよせられ(やっぱりエゾゼミに似てるんだな!)、石川県ふれあい昆虫館職員さんが現地で採集したところ、エゾゼミではなく、クマゼミによく似たセミだったと。

この標本が専門家によって同定され、日本にいないハズのスジアカクマゼミであると判明したのだそうです。

この年の調査で、このセミの生息域・幼虫発生場所・セミと樹木との関係などがある程度明らかになりました。

初めにエゾゼミがいるとの話を寄せた方は、石川県ふれあい昆虫館の元職員さんで、つまり素人ではありません。

この方がこのセミの存在に気づいたのは、この時より8年ほども前のことだそうで、その他の証言などからも、このセミが金沢競馬場周辺に現れたのは、少なくとも90年代前半か初頭までさかのぼるらしいこともわかりました。




(ふれあい昆虫館では、こんなキレイなチョウとたわむれることもできます)



(間近で見られますし、いかにもカンタンに触れそうですが、触ってはいけません。念のため)





一方で、このセミが外来種だとすると、その侵入経路が問題になるわけですが、これが全くわからない。



福富さんのお話によると、金沢競馬場のスジアカクマゼミは、DNA検査によって、台湾方面のものではなく朝鮮半島方面のものだと判明していますが、競馬場に朝鮮半島から植物を大掛かりに輸入した記録はないそうです。


経路がわからない以上、たまたま気づかれなかっただけで、古来、ここに生息していたという可能性は否定できず、そういう意味で外来種だと特定することはできないのだそうですが、福富さんいわく、


「セミって鳴きますからね。その性質上、気づかれずに古くから…というのは、ないでしょう」


とのことで、まあコレは、外来種だと思っていいらしいのです。



(ふれあい昆虫館にある、侵入昆虫の展示。ここにスジアカクマゼミも紹介されているのでした)




スジアカクマゼミは、生木に産卵します。
クマゼミなんかは、枯木に産卵するんだそうですが。



ということで、たまたま産卵された植木か何かが持ち込まれたか、幼虫が鉢植えに潜んでいたか、風に乗って来たということも考えられるそうです。


けど、発見されてから18年、わたしが気づいてからでも10年以上、認識されてからだと30年近くたっているにも関わらず、金沢競馬場のスジアカクマゼミは、その生息域を、ほとんど広げていません。


いや、徐々に広がっているらしいのですが、羽を持ち、自由に飛び回れる生き物にしては、広がり方がめちゃくちゃ鈍い。そんな生き物が、風に乗ったとは言え、日本海を越えて来るというのは、ちょっと考えにくい…と思うんですが、どうでしょうか。




それに、実はこのセミが産卵した木は、その部分が枯れるのです。
植木を輸入するのに、不自然に枯れた部分があったら、取り除きませんかね、普通?


(競馬場のケヤキにも、このように不自然に枯れた部分が。まさしくスジアカクマゼミ産卵の証拠)




それから、みなさんセミってどういう生態だと思ってます?


聞いたことありませんか?幼虫として土の中に7年、成虫として一週間、とか。
さすがに成虫として一週間ということはなく、けっこう長いこと成虫の状態で生きるそうですが、幼虫として何年も土の中というのは本当だそうで。

卵が成虫として地上で鳴くまでには、数年間が必要なのです。一年では大人にならない。…それが毎年出ている。


ですが、コレも、福富さんのお話では、


「7年ということはなく、3~4年じゃないかと言われてます。17年ゼミというのもいますけどね。この長さは、幼虫時代の栄養状態によって、1年くらいは前後します。17年ゼミも前後の年に、全く出ないということはないらしいですよ」


というのです。




つまりですね、ある年、どうやってか金沢競馬場へやってきたスジアカクマゼミは、この地で繁殖し、数年後、3年後か4年後か7年後か17年後か、とにかくこのセミ固有のサイクルにしたがって、子供たちが地上へ出てきた。


さらに繁殖し、数年後に子供たちが…というのを繰り返すうち、栄養状態などの条件により、サイクルから外れる者がある程度以上現れ、それがまた繁殖し、そうこうするうちに、毎年、相当数のスジアカクマゼミが競馬場で鳴くようになった、ということなのです。




福富さんは、


「実際、金沢競馬場のスジアカクマゼミも多い年と比較的少ない年があります。が、現在、毎年セミが現れている以上、そういうズレが定着するだけの年数、たぶん何年・何十年、このセミは競馬場に生息しているわけで、見つかったのは近年でも、侵入はかなり昔のことじゃないかと考えられます」


とおっしゃっています。




そんな昔に(きっと昭和だ)、誰かが意思をもって連れてきたわけでもない虫が、どうやって侵入したのかなんて…まあ同定できませんな。




(スジアカクマゼミを紹介するパネル)





(コレがスジアカクマゼミだ!)



(腹がわ。クマゼミとはだいぶん違いますね!…なに?知らないって?)




(抜け殻も展示されています)




(競馬場のケヤキで見つけた抜け殻。お腹がわを見ないと、区別できません)






現状、金沢競馬場のスジアカクマゼミは、積極的に駆逐の対象になっているわけではありません。が、積極的に広めたいとも思われていない。

また、厳密に、国内の他の場所には全然いないのかどうかについても、今のところ確認されていない、という言い方になるそうです。



とにかく国内では金沢競馬場(とその周辺のごく狭い地域)にしか生息しない、非常に珍しいこのセミが、生息範囲を広げつつあるのか、そうでもないのか、広がるとするとどのあたりまで広がっているのか、



「地元の方や、よくここを訪れるひとに関心をもってもらって、どんな具合なのか見守ってもらいたい」



と、福富さんはおっしゃっていました。







​金沢競馬場には、国内では他のどこにもいない、 スジアカクマゼミ というセミがいます。​



毎年夏になると、その鳴き声を響かせます。



説明などには、「ジー」と鳴くと書かれていることが多いのですが、わたしとしては、「イ」に濁点をつけた感じの音に独特のビブラートをくわえ、単調に長く、 「イ(濁点)ーーーーーーーーーーー」 または、 「ジュヴァーーーーーーーーーー」 と鳴いているように聞こえます。



一匹が鳴きはじめると周囲も合唱する、「つれ鳴き」が特徴的です。



毎年、9月上旬くらいまで、競馬場正門からスタンドまでの間にあるケヤキの林立する広場を中心に、他のセミを圧倒する音量で鳴き続けるスジアカクマゼミ。



今週末くらいまでは、なんとかその声を聞くことができるのではないかと思います。



金沢競馬場へ夏にお越しの際は、ぜひその、国内の他の場所では聞くことのできない声に関心をもってみてください。このセミの声、けっこう迫力ありますよ。


それに。
全国でここでしか聞かれないと思うと、なんとなく不思議な感慨を味わうこともできますし。





(この木立に、わんさかスジアカクマゼミがいるハズなのです。姿を見ることは難しいですが)




金沢競馬場の名物として、定着しないもんでしょうかねえ。


んで、



「国内でここだけ!スジアカクマゼミ賞」



というレースをやってみるとか。





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最終更新日  2019年09月02日 12時00分17秒
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