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2019年09月16日
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カテゴリ: 大川 充夫
ミツオーです。だから、ナゼ中日ファンのわたしが埼玉西武ライオンズの試合結果を気にしなくちゃならんのか。



さて、先日、大井競馬場の実況席へ、原山実子さんがおみえになり、弊社実況隊の話をアレコレ聞いてくださいました。
原山さんは、週刊競馬ブックに『難読馬名に挑む実況アナウンサーたち』をテーマにコラムを執筆されるため、弊社実況隊に取材にみえたのでした。




わたくし(ども、弊社実況隊の面々)、競馬の実況をなりわいにしております。


こうした仕事をしていると、

「よくあんなに口がまわりますね」
「早口言葉みたいな馬名をよく呼べますね」

など、感心したりほめていただいたりすることがあります。



そうして中には、

「どういう名前が言いにくいですか?」
「どういう名前が苦手?」

という質問もいただきます。



…。
……。



どういうつもりで質問してるんですか?



この質問、一般のファンの方からいただいた際には、諸々のネタをふくめて正直にお話しするのですが、質問者が馬主さんだったりすると、ちょっと警戒しなくてはなりません。


もしかして、苦手なの聞いておいて、命名しようとしてます?…てな意味で。


まあ、苦手な音がある、うまく発音できない馬名がある、というのは本来はプロとして失格でして、

「苦手な名前?そんなものはありません!!」

と胸を張れなくてはならないのですが、そこはそれ、人間だもの、そういうわけにもいかないのです。





というわけで、馬名(など)で、実況アナウンサが苦戦する(こともある。もちろんひとによる)モノをいくつかご紹介(自らの首をしめることにならなければいいのですが)。




*シ・ス・ツの羅列


わたくし自身が苦手な音の羅列は、「シ、ス」と「ツ」などの組み合わせでして、


「新設診察室視察」


という早口言葉(?)は、ほとんど常に口の中で転がして訓練しているほどです(大げさ)。さあ声に出して言ってみましょう。新設診察室視察、新設診察室視察、しんせつしんさつしつしさつ…。



そんなわたくしが、苦戦していた実在の馬が、

『シツジツゴウケン』

です。
ハッキリ言って、何度発音してみても「ヨシ!ちゃんと言えた!」と思えない。
無理矢理言い切ってみて、録音されたモノを聞き直し、なんとかかんとかセーフだろう、というのを繰り返していました。


そのシツジツゴウケン号が競馬場から姿を消し、引退したらしい、と聞いたときには、本当に申し訳ないことながら、正直ホッとしたのでした。


シツジツゴウケン、攻略する前にいなくなっちゃったなあ、と残念がりつつも胸をなでおろしていたある日、地方競馬教養センターでの模擬レースを実況する機会が。


出走馬を見ると、そこに『シツジツゴウケン』の名前。


おお、こんなところで再会するとは!…っつか、またこの馬名と戦わなくてはならないとは、トホ~。と情けなく思いつつ騎手候補生たちの模擬レースを実況していたのは、内緒です。



​*それ何語ですか?​


わたくし、外国語ができません。
日本語以外にできるのは、なんとか中学校卒業程度の英語(高校以降何をやっていた?という疑問、ごもっとも)、中国語は自己紹介できるだけ、ロシア語は「これは本です」と言えるだけ、あとはナゴヤ語と関西弁をほぼ完ぺきに、栃木弁と金沢弁をちょっと、というところです。


となると、最近の、馬名多言語化の流れには対応できません。


馴染みのない音の羅列ってのは、発音しにくいこともあるものです。




ずいぶん前になりますが、友人たちと一緒に競馬を楽しもうと東京競馬場へ足を運ぶと、待ち受けていたらしい友人が、


「コレ、読んで!」


と新聞を差し出す。
見ると、その日デビューしたという馬、


『カポデテュティカピ』


いや~、初見でこのカタカナの羅列を読むのは厳しいわ~。いや、カタカナの羅列を読むのが仕事ですけどね。でも無理。
だって、どこで切るんだか、見当もつかないもん。


「Capo di Tutti Capi」で、イタリア語の「ボスの中のボス」っていう意味じゃないか、学がないヤツだな!と言ってくださるのはご自由ですが、仕方ない、ワカランもん。


こういうのは、全く言えないということはありませんが、どうにも口に馴染まないということがあります。


『ティンスクヴィル』



別に言いにくいことはありません。
けど、いきなり初見で迷いなく言えますか?

音の並びに馴染みがない。ワインの名前になってるらしいので、そっちに詳しい方にとっては何てことないんでしょうけども、聞くとコレ、エトルリア語らしく(神への捧げものという意味)、そんな言語知らん!と言っても許してもらえるんじゃないかと思うのですが。


こういう、音の並びが英語的でないモノは、思い込みで間違って読んでしまったり覚えてしまったりするので、要注意。ウチの子どもがいつまでたってもモイネロ選手を「モネイロ、モネイロ」と言っているのを笑えないことになりかねません。




​*「ロレる」​


業界用語なんだろうと思うのですが、ラ行の音と「ダ・デ・ド」の組み合わせをハッキリ発音できないことを、「ロレる」と言います。

エメラルド、シンデレラ、メロディーなどが「ロレり」系の単語です。これが苦手な方は少なくないと思います。


わたし自身は、エメラルドもシンデレラもメロディーも、それほど不得意ではありません。
が、一度、川崎のレースで、 『ファイナルレザルト』 が粘るところへ 『ラビーエメラルド』 が追い込んで並んでゴールしたときには、我ながら頑張ったと思ったものです。


はい、言ってみましょう。


「ファイナルレザルト、ラビーエメラルド、並んでゴールイン!」






​*引っ張られる​



主に拗音に起こる現象だと思うのですが。



何てことないんです。
何てことないハズの音の組み合わせなのに、お隣の音に誘われるように、つけちゃいけないところに拗音をくっつけてしまうことがある。



『チャンスザチャンス』


涼しい顔して言えますか?



わたしは言えなかったんです。
練習で何度言っても、


「チャンスジャ、チャンスジャ、…チャンスジャチャンス、ちが~う!」


となってしまい、さすがに本番でコレはまずいというので、ややゆっくりと、


「チャンス ザ チャンス」


いや、ここまで間をあけることはしませんが、そのくらいの気持ちで呼びました。



こうした現象は「ナントカ ザ ナントカ」によく起きるようですが、それに限りません。


目下、わたくし自身の攻略対象として最上位にあるのが、



『フォルデュラン』



練習では言えるのに、レースになると「フォリュデュリャン」になってしまったり…。
むう。次は涼しい顔で「フォルデュラン!」って言ってやる!(プロとして当たり前)



そして引っ張られるという分類でいいのかどうか、有名な、



『カルビアブリカルビ』



ですが。
わたくし自身はコレに苦戦したことはないのですが、もちろん細心の注意をもって扱っています。気を抜くと、

「カブリ」


と、初手から間違うことになります。






​*何とか座​


有名な、



『アンドロメダザダゾ』



ですが、わたしはモノを知らないので、そもそもアンドロメダ座という星座があることを知りませんでした。…というのはこの際関係ありませんが、それを「だぞ」と断定されても困るわけです。



ここでこの「アンドロメダザダゾ」をうまく言う方法を伝授しますと、ちょっとアンニュイな気分になり、首をわずかに右に傾け、右斜め前2メートルあたりの床にむけて、放物線を描いて落っことすように、口をあまり開けずに、「アンドロメダザダゾ」と言うと、まあまあ上手に言えます。



ただしこの方法で実況するわけにはいきませんので、もちろん仕事ではハッキリと発声しています。練習の量がモノを言います。




ちなみに原山さんもコラムで触れていらっしゃいますが、赤見千尋さんの騎手としての最後のレースがうつのみや競馬の「ぎょしゃ座特別」というレースでした。



わたしはモノを知らないので、そもそもぎょしゃ座という星座があることを知りませんでした。…というのはこの際関係ありませんが、いきなりそれをレース名にされても困るわけです。



散々練習して本番に臨み、首尾よく「ぎょしゃ座特別」と発声することができたわたくし、帰宅しようと競馬場事務所付近を通りかかると、番組担当職員さんが、えも言われぬ笑顔で、

「大川さん、言えましたね~、ぎょしゃじゃ特別」

確信犯か!しかも言えてへんやないかい!



先日、赤見さんが、原山さんのコラムをお読みになったのでしょう、わたしを見つけると笑顔で近づいてきて、

「初めて知りましたよ~、わたしの最後のレースがぎょしゃじゃ特別って」

知らんかったんか!しかも言えてへんやないかい!






なんだかだんだん怖くなってきました。
こういう難しい音やその組み合わせを研究されて命名されると、ちょっと困るのです。

しかし、実況アナウンサたるもの、

「難しい?そうですか?」

「言いにくい?そうですか?」

と、涼しい顔してハッキリ・きっぱりと、全部の馬の名前(と、それ以外のすべての言葉)を発声しなくてはなりません。

練習に練習を重ねて、なんとかかんとか毎日を乗り切るのです。




(馬名がわんさか書かれている、出走表)




(そこに色をつけて、レース実況用資料の出来上がり)








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最終更新日  2019年09月16日 17時17分13秒
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