ひばかり

ひばかり

2005/12/20
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P1010038.JPG

とは言え、年がら年中それら臓器達と
戯れて暮らしたいなどとは毛頭思わない。
よって「好き」と言うよりは
「興味深い」と言ったほうが妥当かも知れない。
あの一見無駄とも思える、色、艶、形。
実はその全てに一切の無駄が無く、意味がある。
その辺りに自分の貧困な知識の中での理解を超えた謎があり
だから興味深いのだ。


当時買い与えられた幼児向け月刊誌
「たのしい幼稚園」に掲載されていた、男の子の腿から上の半身像。
腹の部分が見開きになっていて
そこをめくると神秘の世界が覗けるのだ。

そう、解剖図。

そこには、今だかつて見た事もない物体が所狭しと
鮨詰めになっていて、子供心にも「これは」と感動を覚え
母親に実物が見たいと申し出ると、腹を切らないと見れない、という。
ならば切ってくれ、とせがむと
「そんなことしたら死んでしまうよ」
ぎくり、となった。


その言葉を聞くだけでも忌まわしい。
そんなことがあり「今で~も好き~さ、死ぬほ~どに~」
というフレーズで当時流行した千昌夫の「星影のワルツ」と共に
彼らへのときめきは胸の奥へ封印することと相成った。
出会いと同時に別れを迎えたのだ。


共に暮らし、これ程身近であるにも係わらず
普段は気にも留められず、普通に生活していれば
お目にかかる機会はまず無い。
あるとするなら例えば、車に轢かれた動物のそれであったり
映画の中でゾンビに喰われる人間のものであったりと
どうも死と関連付けた部分でしか垣間見ることが出来ない。
こうなると人はそれを隠したがり避けるようになる。
内臓だってちゃんと生きてるのに、それを忌み嫌うようになるのだ。

例えそれが愛する人のものであったとしても
ぬらぬらと気色のいいものではない。
ましてや恋人が全身の皮膚を全て脱ぎ捨て
臓器をぶりんとむき出した内臓人間となり
その変わり果てた姿で「僕だよ、愛してるよ」などと
囁いたところで、よっぽどのマニアでない限り
到底受け入れられるものではないのだ。

かくいう自分も画像や影像といったフィルターを通してなら
興味深く眺めることが出来きても、本物は直視出来ない。
恐らく目を背けてしまうだろう。

以前学生の頃、友人の紹介で肉屋の配達の手伝いをしたことがある。
それは、年末の忙しい時期だけ注文が入り次第、お得意様宅へ
自転車で配達に伺うといった単純なものだったのだけど
そこの糞オヤジときたら、俺の配達の手が空いてるのを見つけては
脂身を切って袋に詰めろだの何だの、細かくこき使いやがって
配達要員である俺が何故に安い賃金でそんな雑用までせにゃならん
とブツクサ思いながらも、それを腹に押しとどめ従うのだが
この脂身がまたヌルヌルと気色悪い。
さらにそれが豚だか牛だかの身体の一部だったかと思うと
輪をかけて気味が悪い。
おまけに切った中から黄土色したブドウの房の様な形の
得体の知れぬ臓器が転がり出てくるわで
ヒーヒー言いながら七転八倒。
そこへ「不器用な男だ」などというオヤジの小言でもって
小突き回され、昼夜二食付きに喜んだのも束の間
そんな気持ち悪いものを拝んだ日にゃ飯も喉を通らんところへ
上から下までの終始肉尽くし。
味噌汁の中にまで投入してやがる。
(自分は元々肉が苦手である)
まさに地獄の責め苦の様な数日間だったのである。

こういったところから見ても自分が「好き派」ではなく
「興味深い派」であることが伺える。

先日テレビで、内臓大好きという素人女衆が出てきて
その知識の程を競う、といった内容の番組が放映されていた。
自分は、我が振りはさておき「こいつら変態だな」
などと冷笑しつつそれに見入っていたわけだが
彼女等は一体どちら派なのだろうか?
出来ることなら無難な「興味深い派」でとどまっていて欲しい
ものである。

現在、我が家にはひょんな処から入手した人体模型が
一体あるのだが、これはいい。
幼少の頃、一度閉ざしてしまった心の扉をノックしたのも
小学校の理科室、言葉もなく無表情で
しかし圧倒的な存在感で立っていた彼ではなかったかと思う。
適度な不気味さと内臓本来が持つ造形美を
損なうことなく併せ持っている。
幽霊が怖い心霊好き、本物が嫌いな
「怖いもの見たさ的興味深い派」には、うってつけの逸品
パートのおばちゃん達による手作りの芸術作品と言えるだろう。
いや、もしかしたら内臓及び人体そのものが芸術で
模型はそれらを模した単なる贋作に過ぎないのかも知れぬ。

芸術は人が造りだすものと言われるが
人間そのものを「自然が造り出した芸術」と考えるのが
正しいのかも知れない。
P1010037.JPG
「ボクダヨ、アイシテルヨ・・・」





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最終更新日  2005/12/20 08:58:31 PM コメントを書く


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