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2024年5月6日★★★★4月に井上夢人の「魔法使いの弟子たち」を読んだあと、次は未読の本棚に2冊残っている岡嶋二人を読むと決めていたが、GWに入り娘達が実家に帰って来てバタバタしていたこともあり、読書を中断していたが、GW後半になり、嫁さんと娘達だけで買い物するなどで、男の私は1人取り残されて時間を持て余しそうだったので、時間つぶしを兼ねて野球のスパイ行為を題材にした本作を読んでみることにした。プロ野球情報戦の暗部を鋭くえぐる傑作ミステリー。高度のデータ野球でV4をめざす新日本アトラス。これをはばもうとする他球団ではネット裏で必死の情報収集が行われていた。アトラス球団の覗き部屋と呼ばれる情報管理室スタッフが不可解な殺人事件に遭遇する。データを狙うスパイを操るのは誰なのか?(BOOKデータベースより)野球というのは基本、ピッチャーとバッターとの勝負であるが、その中でピッチャーとキャチャー間での球種やコースなどのサインがある。そのサインを盗むというスパイ行為の疑惑は日本プロ野球や本場大リーグでも数しれず行われている。しかし、本作のここまで極めたスパイ行為は刊行当時を考えても大胆であり、こんな設定にした岡嶋二人はすごいと思う。ただ、情報戦が勝負を左右することは理解出来るが流石に殺人事件まで発展するほどのものではないでしょ…加熱するのはグラウンドだけにしてほしいと思ったのが、率直な感想です。なんとも救いようのない話だが、文句なしに一気読みでした。やっぱり岡嶋二人は面白い。
2024.05.06
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2023年4月9日★★★★道尾秀介のソロモンの犬を読んで久しぶりに読書の感覚が戻って来たので、この勢いのまま次は何を読もうかと未読の本棚を眺めていると、大好きな作家である岡嶋二人とその解散後の片割れである井上夢人の作品の数冊が目にとまり、どっちにしよかと迷ったが、ここは何を読んでも駄作がない岡嶋二人の作品に決めて、手に取ったのはクリスマスイブに雪に閉ざされた山荘で殺人鬼に追われるというサスペンスものの本作を昨年の年始に読んだ「眠れぬ夜の報復」以来、1年4ヶ月振りに読んでみた。山あいの別荘でのクリスマス・パーティーへと向かった敦子と喬二。だが、夜になって到着した別荘には明かりひとつなく、メチャメチャに荒らされたリビングには、喬二の友人・小坂の血まみれた死体が!雪に閉ざされた別荘地を襲う不条理な殺意。緊迫の長篇サスペンス。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。(BOOKデータベースより)ミステリーでは定番の断絶された雪山での山荘で殺人事件が起こるという展開で、更に犯人が目撃された事をきっかけに殺人鬼に変貌して皆殺しにするため、執拗に敦子と喬二、友人をひたすら追い詰めるという、単純明快な物語でしたが私的には楽しめました。あとがきに岡嶋二人の片割れの徳山が殺人の動機を考えるべきと主張して、もう一人の井上が反対してこの展開になってたらしい。後に井上が岡嶋二人の自叙伝で駄作であったと記しているがこれはこれで普段の岡嶋二人の作品には無い展開で良かったと思う。ただプロ的には納得がいかない出来なんだろうと言う事でしょう。なんだかんだと岡嶋二人の作品は読みやすく面白い。未読の本棚にはあと2冊しかないので残り僅かな貴重な時間を楽しみたいと思う。
2023.04.09
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2022年1月9日★★★★年末に井上夢人の「風が吹いたら桶屋がもうかる」を読んでみて、年始に最初に読むのは岡嶋二人と決めていたのですが、さぁ手元にある3冊の中からどれにしようかと迷ったが、岡嶋二人は短編以外はシリーズものは殆ど書かなかったのだがその中で唯一の長編ものの「眠れぬ夜」二部作の後編の本作を前作の「眠れぬ夜の殺人」以来、約6年半ぶりに読んでみることにした。時効の壁を乗り越え、殺人犯を追う男の執念――「なぜ僕の家が狙われたんだ」16年前、押込み強盗に両親と妹を殺されたプロボウラー草柳は、偶然見付けた盗品のボールに犯人の手掛りをつかんだ。時効が成立した事件の犯人を逮捕できるか? 密命を帯びた菱刈率いる「捜査第0課」は、盗聴、変装、囮捜査と手に汗握るスパイ大作戦で、解決不能な難事件に挑む!『眠れぬ夜の殺人』に次ぐ、珍しい長編シリーズ第二作。1989年刊行。(Amazon紹介文引用)年始の仕事初めの5日からすき間時間に読み進めての読後感はやっぱり岡嶋二人の小説は読みやすいし、面白い。本作は捜査0課シリーズの二部作であり、解説で法月倫太郎氏が書かれていたが岡島二人の実質的な最後の作品となったようだ。内容的には16年前に家族全員を殺害されたプロボウラーの草柳が、時効(現在では重罪では無くなっている)が成立してしまった後に事件の真相に繋がる証拠品を発見する。だだ当時の担当刑事など警察に訴えても時効になった事件では動きたくても動けない。仕方なしに自ら証拠品の足取りを追って行くうちに犯人らしきものが見えてくるがその後の草柳の取った行動が…。菱刈が引いる捜査0課のメンバー3人の完璧な捜査から真犯人をつきとめていく展開は気持ち良く、お見事の一言である。二部作で終わってしまったのは本当に残念でならない。井上氏の相棒であった徳山氏が昨年78歳で亡くなっているが冥福を祈りたいと思います。素晴らしい作品をありがとう。
2022.01.09
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2020年12月29日★★★★今年は仕事納めが25日と早かったので年賀状や家の大掃除など早目に片付いたことで大晦日までゆっくりする時間が出来、さぁ今年の読書納めに何か一冊軽めの小説を読んでみるかと本棚から未読の短編小説を探して決めたのは大好きな岡嶋二人の今で言う便利屋さんの商売を題材にしたミステリーのなんでも屋大蔵でございますを読んでみた。世間様では、あたし“なんでも屋の大蔵”と呼ばれておりまして、ご用命さえあれば引っ越しのお手伝いから、留守中のペットの世話、雨漏りの修理までなんでも格安で承ります。こう商売をやっておりますと色々と珍妙な事件に遭遇しますもんで―鋭い勘と名推理で難事件を次々解決する便利屋・釘丸大蔵の事件簿。(BOOKデータベースより)まず読後の感想は同じ短編集の山本山コンビが活躍する「三度目ならばABC」と匹敵するほど登場人物が印象に残る作品でした。主人公はいわゆる便利屋を商売とする釘丸大蔵で本文に書かれているように引越しのお手伝いから留守中のペットの世話、雨漏りの修理まで何でもいたします。そんな大蔵が便利屋稼業を通じて遭遇した様々な事件を大蔵自身が語る一風変わった短編集である。その中で私のお気に入りはネコが行方不明となる「白雪姫がさらわれた」と大蔵が尾行されるのだがまさかの展開の「尾行されて、殺されて」が個人的に一押しです。岡嶋二人は前にも書いたが長編向きの作家だとは思うが今回も感じたが短編もなかなか面白い。未読の作品がもう片手位になったはずなので貴重な残り数冊を来年も楽しみたいとおもう。
2020.12.30
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2020年9月20日★★★★8月に今野敏の隠蔽捜査シリーズを2冊読んで以来読書から約一月遠ざかっていたので本棚から軽めの短編集を探して手に取ったのは読書を始めた頃から大好きな作家である岡嶋二人のダブル・プロットだ。若い母親が死んだ真相と赤子の行方、フィルムに記録されていた驚くべき殺人手口、遅れて配達された年賀状に隠された犯罪…日本ミステリー界の至宝・幻の名コンビ岡嶋二人による傑作短編集。既刊の『記録された殺人』に、表題作を含めた3編の未収録作品を加え、再編成した文庫オリジナル。(BOOKデータベースより)本作は解散した岡嶋二人が20年以上前に発刊した「記録された殺人」に未収録作品の3編を追加して本のタイトルを変えた新装版である。あとがきに井上夢人氏が自らが不況の中出版社も必死なのだと記されている。まずは未収録作品3編について触れてみると「こっちむいてエンジェル」「眠ってサヨナラ」の2編だが女性編集者の入江伸子を主人公にした作品でシリーズ化する予定がある事情で打ち切りとなった作品のようだ。2作とも動機も結末もひねりがいまいちでここまで短慮な女性や男性はそういなかったのではと思わせる?の作品でした。表題作の「ダブル・プロット」は岡嶋二人に新聞記事を元に短編を書いてくれと違う雑誌社からまったく同じ記事で依頼が舞い込んで来る。その意図を推理する一風変わった作品ではあるものの突貫工事的な作品のため出来の方はそれほどでもないか…元からの収録作で気に入ったのは以前の表題作「記録された殺人」でまんまと利用したはずの記録から証拠がしっかり残されていたという皮肉。今の時代にも十分通用するトリックは関心する。さらに一押しは「遅れてきた年賀状」だ。自分が同じ立場に立たされたらきっと笑えないが郵便物の転送を現代版にリメイクしてほしいほど面白い。岡嶋二人は長編向きの作家だったと思うが短編も同様に面白い。ただ謎が謎を呼ぶ長編の執筆手法をそのまま短編にも適用出来ないためか締めがいまいちに感じるが本作収録の各編ともただの寄せ集めではないことは断言出来る。次は数冊未読の長編小説を読んでみたい。
2020.09.20
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2020年1月5日★★★★新年最初の読後感想は大好きな作家ベスト3に入る岡嶋二人の「三度目ならばABC」です。昨年11月頭に読み終えた東野圭吾の「希望の糸」以来、またまた出張続きで何度が読書しようかと読む本を探したりはしたのがバッタリ読書が途絶えていたここ2ヶ月でした。お正月も後半になり少し暇を持て余していたのでさぁ読書を再開するぞと本棚をさがして手にとったのは岡嶋二人の自信作でもある山本山シリーズの1作目の短編集を期待して読んでみた。幻の未収録作品「はい、チーズ!」を加え、織田貞夫と土佐美郷の「山本山コンビ」シリーズが生まれ変わった!三度の銃撃事件に隠された事件の真相、仮装パーティーで起きた暗闇密室殺人、プールを用いた驚くべき殺害方法。岡嶋二人ならではのトリックとアイデアの魅力溢れる、7編のミステリー。(BOOKデータベースより)本作は主人公のコンビが魅力的な作品で長身の「おださだお」とチビの「とさみさと」という上から読んでも下から読んでも同じな山本山(最近の若い子はしらないか…)コンビが弱小プロダクション会社の社員としてある事件を再現ドラマにするネタを取材するという内容なのだが、取材するうちに別の真相が様々な形で見えてくる…。7つの短編の中で私のお気に入りは連続発砲事件で遂に犠牲者が現れてその真相が犠牲者を狙った殺人事件だった表題作の「三度目ならばABC」と事件を再現ドラマにする撮影中に色々な謎があらわれてその謎解きを役者を含めたなぞなぞ合戦に突入する「十番館の殺人」である。他の作品も含めて言えるのは時代背景が古いので今ではこの説明では事件の真相解明とはならないだろうとは思うのだがまぁ現在と比較して読むのも楽しいものです。全編を通して物語が面白く、謎解きとしてもよく練られていると感じる。そう感じるのは山本山コンビに負うところが大きいのかもしれない。この二人は謎解きの役目はさだおなのだが、みさとの突拍子のない思考が意外と的を射ていてそこに本作の面白さを引き出していると思う。岡嶋二人の作品はシリーズ物が少ないのだが、このコンビは長編作の「とってもカルディア」で再登場を果たしているので是非読んでみたい。岡嶋二人のコメントを見てもこのコンビは特にお気に入りだったらしい。
2020.01.05
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2018年11月19日★★★★11月は出張続きにもかかわらず順調に読書を継続して本作で3冊目になるが、先月読んだダブルダウンはボクシング好きの岡嶋二人の片わらの徳山諄一が主導でアイデアを出した作品のようだが、こちらはコンピュータに超詳しい井上夢人がほほ一人で書いた作品のようで、また岡嶋二人の解散前の最終作品にもなった名作を期待して読んでみた。200万円で、ゲームブックの原作を謎の企業「イプシロン・プロジェクト」に売却した上杉彰彦。その原作をもとにしたヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることに。美少女・梨紗と、ゲーマーとして仮想現実の世界に入り込む。岡嶋二人の最終作かつ超名作。(BOOKデータベースより)まず、仮想世界をゲームに取り入れると言う発想がなんと刊行1989年という今から30年近く前の事実にまずはびっくりするの一言でした。内容的には仮想世界を使った現実とゲーム上の世界に惹き込まれて行き、読んでいる自身がその世界に迷い込んだ錯覚を覚えるほどスリリングな内容で期待した通りに楽しめた。序章の話が結末で結びつくのだが最後は結局どっちが表でどっちが裏だったのかが分からないまま終わるため、その判断は読書任せになるところが賛否両論です。わたし的には2つの結末が楽しめるのでこれはこれで良いなと思います。これで11月の読書は最低3冊という目標は達成出来たので4冊目は最近の小説を何か1冊探して読んでみたいと思う。
2018.11.20
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2018年9月21日★★★★9月に入ってまた出張続きとなり、またまた小説を読まなくなってしまい、前回の読後感想が8月26日だったのでなんと既に20日も経過している事に焦りを感じて、じゃぁこんな時は読みやすく、つまらない作品に今まで出会ったことの無い一気読み間違いなしの大好きな作家岡嶋二人しかないと思い、未読の中で軽めの作品を選んで久しぶりに読んでみた。フライ級・4回戦。対戦中のボクサーが突然相次いで倒れ死亡した。そして両人の体内から青酸化合物が検出された。リング上の劇的殺人を取材する週刊誌記者・中江聡介とひょんなことからコンビを組むことになった編集者・福永麻沙美。2人はボクシング評論家・八田芳樹の助言を得て、まばゆいライトの許に暗躍する様々な人間たちを知るが…。事件は二転三転し意外な人物が浮び上がる。長編ミステリー。(BOOKデータベースより)一気読みとまでは行かなかったが期待通りの面白さで出張の合間にあっという間に読んでしまいました。本作の解説に書かれているのですが岡嶋二人の片わらの井上夢人が駄作で穴を掘って埋めてしまいたいような作品と言っているようだが全然そんなに悪い作品とは思わないし、二転三転する展開に緊迫感や意外性などが合間見れてスリルとサスペンスのある作品でいつも通りに楽しく読み進めることが出来ました。確かにラストの結末が急ビッチなのと犯人の動機などがやや強引なところもあったのは確かですが…内容的には試合中のボクサーがほぼ同時に毒殺されるという超インパクトのある展開に殺害の謎と軽めのミステリとして淡々と進んで行き先を読んでいきたくなる作品でした。必ずしも評価の高い作品ではないらしいが、読む人それぞれだと思うし、私個人としてはさぁ次は何を読もうかと思わせてくれた岡嶋二人に感謝です。
2018.09.22
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2017年11月12日★★★★出張続きであまり小説を読まなくなってしまい、読後感想を書き残さなくなって何日ぐらい経過したのか先日確認してみたら、なんと7月17日に書いた荻原浩の直木賞受賞作の海の見える理髪店だとわかり、4ヶ月近く経過している事にびっくり。実は何冊か読書中(何故か読むと途中で疲れてしまい放置中)状態なんですが…。これは今まで継続してきたものが終わってしまうのではと危機感を持ち、じゃぁ疲れないで一気読み出来る作家はと考えてみると最初に浮かんできたのは解散したのが20年以上前と現役ではないがふたりで一人の伝説の作家岡嶋二人である。では未読の中で何を読もうかと迷ったが、人さらいの岡嶋と呼ばれていたぐらい名作が多い誘拐物の中で未読作の7日間の身代金を久しぶりにわくわくしながら読んでみた。プロ歌手の卵・千秋とピアニストの要之助はレコード出版を夢見るカップル。けれど千秋の父で警察署長の近石は、二人の交際が気に入らない。ある日、千秋の友人で富豪の後添いに入った須磨子が助けを求めてきた。義理の息子と実弟が誘拐され、湘南の小島で身代金を渡すというのだ。近石署長以下が大包囲した島は、もはや密室だと思われたが…。千秋と要之助の俄か探偵が活躍する青春ミステリー話題作。(BOOKデータベースより)いゃー期待通りの面白さであっという間に読了してしまいました。今までのは何だったのか…ただの体調不良かと思うぐらいです。本作は岡嶋二人の得意とする誘拐ものなのだが、それは前半部分で身代金の受け渡しが簡単に終わってしまい、その後は密室殺人に様変わりするという一作で二度美味しい構成になっている。その密室でのトリックは岡嶋二人の自信作ともなっているようだ。主人公はプロデビューを目指す若き音楽家の千秋と要之助。その二人が受け渡し場所が逃げ場のない小島での身代金2000万円の誘拐事件に巻き込まれて、密室殺人に化けた様々な謎を解決するという内容である。ただの誘拐ミステリーで終わらないあたりは、さすが岡嶋二人の真骨頂である。犯人当ては読み進めて行くと案外容易です。しかし密室でのトリックが超難しく、屋内・屋外と密室トリックが二重になっており、誰にもわからないように工夫されていて参りました。ただ犯人がヤタラと殺人を起こすところはちょっとやり過ぎ感はありましたが…そこはご愛嬌として面白い作品に間違いは無いです。私の読書を復活させてくれた岡嶋二人にありがとうという事で読後感想を締めたいと思います。さぁ次は読書途中のものを片付けるか。
2017.11.12
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2017年1月21日★★★★最近出張が多くてあまり小説を読む気になれなかったのだが、先週読んだ東野圭吾の恋のゴンドラでまた読みたいモードのスイッチが入ったみたいで、次はどの作家を読んでみるかと考えて一番先に思いついたのが大好きな作家の岡嶋二人である。未読の中でさて何を読もうかと迷ったが、デビュー当時から競馬やボクシングを題材にしたものが何冊か出ている中で電子書籍として購入していた本作を思い出して読んでみた。元世界ジュニア・ウェルター級のチャンピオン最上永吉の息子が誘拐された。彼を破ったジャクソンに義弟が挑むタイトルマッチ二日前の事だった。犯人の要求は、“相手をノックアウトで倒せ。さもなくば子供の命はない”。犯人の狙いは何か。意想外の脅迫に翻弄される捜査陣。ラストまで一気のノンストップ長編推理。(BOOKデータベースより)本作は岡嶋二人の得意とする誘拐ものだが、身代金を要求する普通の誘拐ものとは違い、犯人の要求はボクシングのタイトルマッチで相手をノックアウトで倒せ。それが犯人の要求でさもなくば、子供の命はないと…。一般に八百長といえば故意に負けることを指すが、それほど難しいことではない。しかし逆に必ず勝てと言われたら、相手は世界チャンピオンなのである…。誘拐された義兄の息子を助けるためタイトルマッチに挑む義弟の琴川三郎としては、たまったものじゃない。ただでさえ重圧がかかる世界タイトルマッチに、タイトルだけではなく義兄の息子の命も懸かっている。しかも、ノックアウトで勝てとは…。判定勝ちでは、タイトルが手に入っても子供の命がない。そんな三郎に、さらなる右腕のアクシデントが追い討ちをかけ物語は進んで行く。いやー面白かった、最高に理不尽な犯人の要求の謎や、ボクシング界の裏事情が絡んだ事件の展開はもちろん面白いのだが、本作の読みどころはタイトルマッチの撃ち合いのシーンにあり、その迫力には手に汗を握らずにはいられなかったのは私だけではないはず。ただ最後に明かされる犯人の誘拐の動機は納得したのだが、殺人までおこす動機にはちと納得出来なかった。そこが★5にならなかった理由だが、面白い作品には違いない。是非岡嶋二人ファンには読んでみて欲しい作品です。あっファンじゃない人も読んでね。
2017.01.21
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2016年9月2日★★★★前月末に読んだ井上夢人のプラスティックのあと、次はお気に入りの作家である岡嶋二人を読むと決めていたので、さて何を読もうかと迷ったが、岡嶋二人のデビュー当時の作品で競馬を題材にしたもので電子書籍として購入後、未読の本作を手にとってみた。中央競馬会に脅迫状が届いた。「10月2日、中山第10レースの1番の馬を勝たせよ。この要求を受け入れなかった場合には……」最初に2億円のサラブレッドが、治療法のない伝貧(馬伝染性貧血)の犠牲になった。密命を帯びた中央競馬会保安課員・八坂心太郎が北海道へ飛ぶ。『焦茶色のパステル』に続いて刊行された「競馬三部作」の二作目。そうとはいえ、トリックもネタもまったく別なのが素晴らしいところ。もちろん競馬を一切知らない読者もOKというのは三作品とも共通する。(Amazon内容紹介より)本作はAmazon内容紹介にあるように「焦茶色のパステル」「あした天気になあれ」の二つの競馬ミステリと合わせて三部作をなしているが、評価的には1番下に位置付けられている。読後の感想としては確かに江戸川乱歩賞受賞作の「焦茶色のパステル」や幻の江戸川乱歩賞受賞作とまで言われた「あした天気になあれ」と比較すると若干構成やプロットが見劣りする気もするが、登場人物が少なめの2作と異なり、多くの登場人物が複雑な人間関係を絡ませて描かれており、個人的には大変面白く読ませてもらった。謎解きも複雑で後半部分の主人公の八坂の指摘があるまでは全く真相はわからないままでした。また、馬伝染性貧血を扱った中央競馬会への八百長脅迫など斬新な発想や殺人事件、トリックなどを絡めて読み応えもあり、探偵役となる主人公も好感のもてる書かれ方でパートナーとの恋物語も楽しめた内容で十分満足できました。岡嶋二人の作品で未読のものは少なくなってきているが、次は何を読もうかなぁ~。
2016.09.03
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2016年5月28日★★★★先日読んだ綾辻行人と同様、お気に入りの作家である岡嶋二人だが作品を最近読んでいないなぁって思い、Amazonのレビューで評価が高く、以前楽天の電子書籍クーポンで買ったまま未読の本作を思い出して、早速読んでみた。次々と興信所を訪れては、およそ事件とは思われない奇妙な依頼をしていく謎の女・平林貴子。いったい、彼女の本当の目的は何なのか。やがて、それぞれの調査報告が、ひとつの輪のように繋がって隠された大事件の全容が明らかになっていく。斬新なスタイルで、読者に挑戦する華麗なるメドレー・ミステリー。(BOOKデータベースより)サブタイトルの5W1H殺人事件とあるように、6つの章だてにそれぞれ別の探偵屋に平林貴子が調査を依頼し、WHO:カメラの持ち主は誰?、WHERE:都内で大文字のVで始まる単語2語の名前で且つ緑色のマッチを置いている喫茶店はどこ? 、WHY:盗まれた車の後部シートが無くなったのはなぜ?、HOW:3本の録音テープに残されたメッセージはどのようになものか?、 WHEN:呼び出した男に「吉池はいつ戻るのか」と問い詰める。で最後のWHATで この事件の真相を解明するという流れで進んでいくという、かなり凝った作品で面白く読めた。出だしのカメラの持ち主を探す章から犯罪の匂いがプンプンと漂い、これはかなり面白い小説だなって感じて、展開を期待して次の章に移るのが楽しいみなったほどだ。この作品には主人公は登場していない、依頼者の平林貴子は物語の中にはほとんど登場しないので、強いてあげれば犯人ぐらいだろうか。それでも読み進めていくうちに徐々に謎が解き明かされ、最後にどんでん返しの真相で決着するのだか、その最後が少し物足りなさを感じた。多分謎解きの部分が説明的に語られているのが、そう感じた原因ではないかと思う。それを差し引いても岡嶋二人は面白いと再確認出来た本作でした。次はまたまた暫く読んでいない井上夢人の作品でも読んでみようと思う。
2016.05.28
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2015年8月21日★★★★岡嶋二人の著書の中、絶版になっていて電子書籍としてしか読めない作品を古本屋で二冊見つけて先に読んだ「眠れぬ夜の殺人」が面白かったので、もう一冊の本作を期待して読んでみた。読後感想としては「眠れぬ夜の殺人」より、サスペンスミステリーの本作の方がさらに面白かった。結婚式を控えシドニーから帰国した里見は、婚約者の彩子が沖縄 旅行中に倒れ入院したと聞く。しかも彩子は2日間の記憶を失い、女友だちの乃梨子は行方不明。乃梨子の兄の赴任先にともにでかけるはずだったのに、彩子が男といたという証言に動揺しながらも、婚約者を信じ真相を追い求める里見の前に立ちはだかるのは…。 南の楽園の悲しみが明かされる長編サスペンス。(裏表紙引用)岡嶋二人の後期の作品の中であまり評価が高くないようだが、私は異色のサスペンスミステリーとして好き作品にあげたい。海外勤務から結婚式を日本であげるため帰国した里見であるが、帰国早々知ったのは、盲腸を患い、そのショックで記憶を無くしたしまったという婚約者の乃梨子の容態だった。入院先での乃梨子の気になる発言から里見が乃梨子の空白の記憶を探っていくと様々な驚愕の真相が明かされていく…。というどこかの映画にあるような内容だがそこは傑作揃いの岡嶋二人である。途中に伏線を交えながらハラハラしながら読み進めると、最後は全ての謎が合理的に解説され、こんな結末だったのかと唸らされます。ちょっとまとまり過ぎる感がぬぐえないが南国を舞台にした純粋なサスペンスミステリーとして楽しめた。次は井上夢人の単独作品を読んでみようと思う。
2015.08.22
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2015年7月29日★★★★岡嶋二人の著書の中、絶版になっていて電子書籍としてしか読めない作品をつい最近古本屋で二冊見つけて買ったうちの一冊を読んでみた。片割れの一人である井上夢人曰く、取り立てて自己評価が良いわけでもなく、高いクオリティーをクリアした作品ではないらしいが、個人的にはかなり楽しめた作品だった。さすがは岡嶋二人だと思ったほどである。ちょっとしたイザコザに巻き込まれ、逃げようとして相手の体に触れたとたん、その人は倒れ、打ち所が悪く……。大都会・東京ならではの、そんな殺人事件が連続発生。だが逮捕されなかった加害者には、死者からの脅迫状が届く!動き出したのは、警視庁刑事部のマル秘部外組織。はたして犯人は見つかるか!?(裏表紙引用)単なるケンカの果ての致死事故が次々に起こる、謎の連続殺人の疑惑を追う主人公の捜査0課の面々。主人公の行動や最初から最後まで全く読めない話の展開について行くのがやっとな突飛な設定であるが、これら全てバラバラだと思われた要素が最後に見事繋がる離れ技はさすが岡嶋二人である。沢山ある長編の作品の中ではあまり知られていないようだが非常に面白くお薦め出来る。一緒に買ったもう一冊の長編「珊瑚色のラプソディ」を読むのが楽しみだ。
2015.07.29
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2015年6月11日★★★★幻の江戸川乱歩賞受賞昨の「あした天気にしておくれ」を先に読んでいたが本家江戸川乱歩賞作の本作を比較しながら読んでみた。前作はメイントリックの実現可能性が問題となり受賞にはいたらなかったが本作は、そういった不確かさを排除し、選考員にこれでどうだと言わんばかりの同じ競争馬を題材にした物語である。この作品で二人で一人の作家、岡島二人がミステリー界に満を持してデビューする。東北の牧場で牧場長と競馬評論家・大友隆一が殺され、サラブレッドの母子、モンパレットとパステルが銃撃された。隆一の妻である香苗は競馬の知識は一切持っていなかったが、夫の死に疑問を抱き、次々と怪事件に襲われる。一連の事件の裏には、競馬界を揺るがす恐るべき秘密が隠された いた。(裏表紙引用)まず読み終えた感想としては、驚きやトリックなどを比較すると前作である「あした天気にしておくれ」の方に軍配が上がるのでは無いかと感じた。ただ女性二人を主人公に事件に巻き込まれていく仮定やその解決までを丁寧に語っている点などが読後感をスッキリさせてくれて気持ちよい。パステルには一体なにが隠されているのか様々な伏線が有り、どんどん読み進めていき、最後の意外な真相に驚いた。競馬を題材にした小説であるが、全く知らない人にもお薦めする。それだけは間違いなく言えます。
2015.06.12
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2015年2月11日★★★★密かに日本に持ち込まれた猛毒クラーレをひょんなことから気弱な男が拾ってしまう。自分は実は世の中で一番強いのだと錯覚し、なにを思ったか巨人対阪神戦に沸く東京ドームで塗った矢により殺人を起こしていく。5万6千人の大観衆の面前にもかかわらず犯行現場の目撃者は皆無でクラーレの出所もわからず凶行は繰り返される。後半は実行犯よりも腹黒い人物がクラーレによる殺人を利用しようとし、物語が一気に急展開していく。果たして結末は…。本作は完成した日本初の東京ドームに合わせて企画されたものらしい。実に25年以上も前の小説なので出てくる選手や監督が原、篠塚、岡田、王監督、村山監督と往年の名選手や監督で懐かしい。この年代を知っているだけに自分がいかに年をとったんだなぁって想わせてもくれました。終わり方にはちょっと不満は残りますが実行犯を超悪者にしたくなかった著者の気持ちもわからないわけじゃない。次作ももちろん読みますよ。まだまだ読んでない作品が沢山あるんですから。期待してます岡嶋二人さん。
2015.02.11
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2014年12月5日★★★★幻の江戸川乱歩賞受賞昨である本作を読んでみた。「焦茶色のパステル」で江戸川乱歩賞を受賞した前年に最終候補まで残ったが選考会で本作のメイントリックの実現可能性が問題となり絶賛されながらも受賞にはいたらなかったという。だが岡嶋二人によるあとがきによれば応募時点では実現可能だったらしい。全く手を加えずに出版されたのはそう言った経緯からである。そのメイントリックとは私には全く想像もつかない競馬場システムの盲点を突いた究極のトリックなのである。殺人事件は起きない競走馬の誘拐といったテーマ扱った岡嶋二人の独特な傑作長編である。伏線の巧みさとその結末までのドラマに感心させられっぱなしで本当に面白い。競馬を知る人もそうでない人も関係なくお薦めできる。病みつきになりそうで怖い。
2014.12.05
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2014年11月28日★★★★本作は誘拐ものを得意とする岡嶋二人の作品の一つで、今回誘拐されるのはデビューしたての売り出し中の新人歌手である。事件の裏には芸能関係者や企業スポンサーの様々な思惑が潜んでおり、その駆け引きと犯人の誘拐時のトリックが上手く描かれて読み応えのある小説に仕上がっている。警察がマスコミや芸能関係者、スポンサーに振り回される姿は滑稽である。コンビを解消しているため、もう新作が読めないかと思うと寂しいが本当に岡嶋二人の小説は面白い。東野圭吾と池井戸潤と同様病み付きになりそうだ。次は幻の江戸川乱歩賞受賞昨の「あした天気にしておくれ」を続いて読んでみるつもりだ。
2014.11.28
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2014年11月23日★★★★コンピュータによる相性を判断し、相手を紹介する結婚相談所のオペレータの夏村絵理子は恋人が登録者の中にいることを見つけてしまう。その登録内容と恋人の言い分が食い違っていて何かがおかしいと不審を抱く。調べていくなか、その結婚相談所の登録者が相次いで起きていた不審死、正体不明の何かが動いていると絵理子は気づいたのはソフトウェアによる仕掛け、トロイの木馬であった。不審を探り始めた同僚の死、殺人は次々と実行されていく。その犯人は思いも寄らない人物だったのだ…。 岡嶋二人の著書の中でITテクノロジーを使った代表的なものは「99%の誘拐」があげられるが、本作も同じくITそれもソフトウェア犯罪を題材した作品である。こういった作品が多かったのは著者の片割れの井上夢人がコンピュータに強かったのが主な理由だそうだがソフトウェア業界で生きてきた自分にとっても実に興味深く楽しめた一冊だった。 岡嶋二人を解散後、井上夢人になってからも数冊でているので順に読んで行きたい。
2014.11.23
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2014年10月16日★★★★日本推理作家協会賞受賞のチョコレートゲームを読んで完全にお気に入りの仲間入りをした岡嶋二人の次なる作品に選んだのは密室、シェルターの中という超密室空間の中だけの話である。実際の殺人は密室外で起こるのだか裕福な家庭のわがまま娘が事故と判断された事件を殺されたんだと疑わない母親が事件当日一緒にいた4人におまえたちの誰かに娘は殺された と書き残して核シェルターに閉じ込めたところから物語は始まる。当の4人は誰も殺人なんかしていないと思っているのだから話は前に進まない。4人が一つ一つ当時を振り返っていくと全員に殺人を起こす機会はあった事はわかって行くのだが…。結末は本当に犯人は4人の中にいたのであるが、それが犯人探しの推理をした男 だとはひねくれ者以外誰も思わなかっただろ う。真相が判明したあと閉じ込めた母親が警察に連絡し、自殺するなど理解に苦しむ部分もあるが岡嶋二人の代表作で有ることは変わりはない。良くできた本格推理小説である。
2014.10.17
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2014年9月23日★★★★吉川英治文学新人賞受賞作の99%の誘拐以来、8ヶ月ぶりに読んだのがこれまた代表作で日本推理作家協会賞受賞のチョコレートゲームだ。まずタイトルが本書の謎解きのキーワードとなる。中学生が工場の空き地で死体となって発見される。次々に中学生が惨殺されるが、その犯人が自分の息子では無いかと小説家の近内はうたがってしまう。やがてその息子が自殺を図るのだが、近内は息子が犯人では無かったのではと真相解明に一人孤独な闘いを挑んでいく。探偵役の父親と容疑者の息子という珍しい構図で、最後に父親の執念で真犯人を探し出すが、その裏には予想もつかない真相があったとは‥‥。中学生がこんなことをとショッキングな真相が待っているが、今の荒廃した中・高生でも驚きは間違いなしの力作である。あとショッキングな内容ではあるが、終わり方は実にスマートで気持ちが良い。
2014.09.23
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2014年1月29日★★★★ずっと気になっていた岡嶋二人の代表作で吉川英治文学新人賞受賞作をついに読んでみた。本書は今から25年以上前に書かれたとは思えない程のコンピュータを使っての遠隔操作を駆使したハイテク技術の完全犯罪を描いた物語である。通信に今はもう殆ど使わないモデムが出て来るが今読んでもこんな事が可能だろうかと思える程よく考えられた傑作だと思う。父親の恨みを晴らした生駒慎吾の爽快感が伝わってくるのは私だけだろうか。
2014.07.22
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