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2006年07月07日
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カテゴリ: 読書感想
しみじみと、い~いお話でした。著者渾身の傑作と言う言葉に偽りなし!
(感想、いつも以上に無駄に長いです・汗)

クライマーズ・ハイ
男は人生の岐路に立たされた


『1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは──。あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。』

2つの物語が交互に語られます。
2002年、衝立岩を登る約束を果たせないまま逝ってしまった安西の息子と、17年ぶりに衝立岩に挑戦しようとする物語と、1985年、悠木が日航ジャンボ機墜落事件の全権デスクとして過ごしたの嵐の7日間の物語。
今、まさに衝立岩に登ろうとして、そして登って。そんな中、主人公悠木が17年前に思いを馳せるたびに、場面は17年前の日航ジャンボ機墜落事件当時に戻ります。

「十七年の熱風が胸に蘇る」
「乾いた日常をあの事故が一変させた」
「十七年前のあの日、悠木の興奮は極限までに達した」
「拒絶。そして、誘惑―。あの日、覚えた感情に似ていた」


こんな書き方をされると、嫌がおうでも、17年前のその時、何が起こったのか気にならないはずがないじゃないですか。
作品世界にぐいぐいと引き込まれ、ページを繰る手がやまない。う~ん、横山秀二、さすがテクニシャン!と思わず唸らせられました。 くっそう、やられた!横山秀夫の思う壺だよ!

さて、未曾有の大事件である日航ジャンボ機墜落事故をメインテーマに置きつつも、主人公は現場へは向かいません。事件現場としての群馬県にいながら、物語中、一度として御巣鷹山という墜落現場には足を踏み入れることはない。


印象に強く残るのは、17年前の7日間の激動の日々。毎日当たり前のように読んでいる新聞ですが、それが毎日毎日、できあがるまでにどれだけの人が動いているのか。信実を伝える、そのことがどれだけ難しいか。どの事件を一面にするかで起きる、政治的な駆け引き。様々な思惑が入り乱れ、渾身の原稿は社内の派閥抗争によって日の目をみることはない。それでも、己の思いに突き動かされ、たとえそれがスクープを物にしたいという野心であったとしても、見たものを感じたものを書かずにはいられない。
新聞社内の様子がリアルに書かれて、手に汗握る臨場感でした。
とりあえず、毎朝、雨の日も風の日もかかさず届けてくれる配達の人に感謝をすることから始めようと思います。(とは言っても、その時間に起きてるこたないんですけどね。←え?)

ところで、一つ気になったのが望月のエピソード。
これって必要だったのかと思わないでもなかったです。日航ジャンボ機墜落事故、父子の確執、安西の死、主人公の過去、さらに自分が死に追いやった(と思いこんでいる)新人記者の望月。
一つの作品の中にテーマをぶちこみすぎた気がしないでもなく、特に、望月のエピソードは従姉妹である望月彩子が新聞に投書しようとするシーンを書きたいためだけに無理やりひねり出した気がしました。ネタバレ反転→とか色々無理やり感を感じてしまったんですよね。
ただ思うのは、彩子は、きっと横山さんの願いが一番こめられてるキャラに違いないということ。横山さん自身は、新聞記者から作家へと転進したわけですが、自分がかつて働いていた報道という現場で、命の重みを知っている記者が、今この瞬間にも第一線でがんばっていて欲しい、そんな強い願いのようなものをひしひしと感じました。きっと、自分が記者だった頃、こんな風に誰かに背を叩かれたかったんじゃないかな。
このエピソード自体は違和感を感じるものではありましたが、だからこそ、横山さんの熱い思いが伝わってきたように感じました。

独り善がりな感想かもしれませんが、そう思います。

ただただ、すごいとしか言いようのない作品でした。すごい、すごいよ、横山秀夫!
横山秀夫、懇親の長編というコピーは、嘘でも誇張でもなかったよ!




ところで、主人公が登ろうとする立川岳の衝立岩ですが、実際どんな感じのとこだろうと調べてみました。→ 谷川岳・一ノ倉沢衝立岩中央稜 Heaven Site
怖っ( ̄□ ̄;)!!
私には逆立ちしたって無理です。うへえ!
あと、作中述べられている衝立岩にまつわる事件について、ウィキペディアにありましたので、興味のある型はこちらからどうぞ。→ 谷川岳ザイル銃撃宙吊り遺体収容事件

最後に、本書のメインテーマの日航ジャンボ機墜落事故について。

事故から数年たってからの報道は記憶にあるものの、21年前の当時のことはあまり記憶にありません。当時の自分は、あまりにも子どもで、世間を騒がすニュースよりもその日に見るアニメの方ばかりを気にしていたはず。
今の自分だったら、あの時、事件を受けとめることができただろうか。

本書の登場人物達は、自分たちのテリトリーの中で、 大久保事件 連合赤軍事件 という2つの事件よりも大きな事件が起こるはずはないと思っていました。けれど、ある日、航空機単独事故としては、今だに世界最大の日航機墜落事件の渦中に突如として巻き込まれます。

地下鉄サリン事件 阪神・淡路大震災 新潟県中越地震 JR福知山線脱線事件 ………。これ以上ひどい事件は起こらないだろうという思いは限りなく裏切られ続け、大小を問わず事件・事故は起こり続けています。次々起こる事件や事故に流されるままの日々ではありますが、事件の報道に触れて、見て、聞いて、心揺さぶられる自分がいることも確かな事実なわけで。

つらつらととりとめもない考えが頭の中をぐるぐる。

その状態のまま、ふらふら~とウィキペディアで検索をかけ( 日本航空123便墜落事件 )、亡くなられた方の遺書の全文を読んで号泣。

「幸せな人生だった。」

そんな一言を自分だったら書けるだろうか。悔やみごとばかりになるんじゃないか。特別じゃなくてもいい、一歩一歩、確かな足跡を残しながら、生きていきたい。そして、最後には幸せな人生だったといって眠りにつきたい。

亡くなられた520人の方たちの胸によぎったであろう思いの深さに想いを馳せつつ、謹んで哀悼の意を捧げます。

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最終更新日  2006年07月07日 21時33分27秒
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