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2011年04月23日
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テーマ: 銀魂(1196)





ぽっぽさんから九ちゃんはぴばSSを頂きました。っていうかこれって……




【素敵な女の子】


上に長く伸びた笹林に囲まれた武家屋敷を出て、
階段を一段ずつ飛ばしながら、九兵衛は早足で駆け下りる。
しばらく歩くと民家が見えてきて、更にその中を練り歩いて行くと白い土壁が続いて、
その先の志村家、兼恒道館道場の門に辿り着く。
一人も門下生のいない、実質潰れている状態の道場。
九兵衛は門の脇に掛けられている看板の隣に寄りかかって、妙を待つ。
暫くして中から妙が出てくると、九兵衛を見て溜息を着く。
「また早く来過ぎたの、九ちゃん?」
「遅れないように・・・って思ったら」
「嘘をつけェ!!貴様が壁を乗り越えてお妙さんを覗こうとしていたのは
知っているぞ!全くとんでも無い輩ですねぇ、お妙さん」
突如後ろから現れて厚かましくも妙の肩を抱き寄せた近藤に
妙は無言で肘鉄を食らわし、手を2、3度はたく。
近藤は白目をむき顔からは血を流し、大きな音を立てて九兵衛の足元に倒れた。
「じゃ、行こっか」
妙が微笑んでそう言ったので、2人は並んで歩き始める。
妙はつい先程大男を殴り倒したとは思えない綺麗な手に洒落た財布を引っ提げ、
女らしい柄物の着物に身を包み、後ろで髪を結い、顔には軽く化粧をしている。
九兵衛は髪こそ妙より長いものの、男物の服に下駄を履き、袂には脇差を備えてある。
「次から九ちゃんには、わざと遅い時間教えようかな」
「どうしてそんな事を?」
九兵衛は笑いながら尋ねる。
「そうすれば、九ちゃんの事待たせないで済むでしょ?」
妙が困った顔をしてそう言ったので、九兵衛はいつも通り答える。
「次は、もう少し遅めに家を出るよ」
「いっつもそう言って、いっつも待ってるじゃない」

(そうだよ)
九兵衛は心の中でそう言った。
(だってワザとだもの)
妙は気づいているのかいないのか。
妙の事だから気づいているのかもしれないが、しっかりしている様に見せかけて
案外抜けている所もあるので、やはり気づいていないのかもしれない。

少し歩くと街の中心街に出る。
男も女も子供も大人も、善人も悪人も、地球人も天人も。
あらゆる人種が縦横無尽に歩き回って、まるで人の海の中を泳ぐようだ。
「見て、九ちゃん!あれ可愛いと思わない?」
呉服屋の人形が着ている服をガラス越しに指差して妙が言う。
家庭環境も手伝ってか、普段は驚くほど大人びている妙だが、
こういう時だけは年相応の女の子らしいはしゃぎ方をする。
そうだね、と九兵衛が答えると妙は九兵衛の手を引いて、店の中へと進む。
色々な服を見ては試着して、九兵衛に意見を聞いてくる。
「可愛いよ」
九兵衛は必ずそう答える。
「似合ってなかったら正直に言ってね九ちゃん」
「分かってるよ」
九兵衛は答える。
(でも、本当に似合ってるんだもの)
九兵衛はまた、心の中で思う。
九兵衛と違って、妙は女らしい服が何でも似合う。
女の服を着る機会も増えてきたし、妙に勧められて半ば無理やり女の子の服を
着せられる事も多いけれど、九兵衛は自分のそういう姿を見るのは苦手だった。
外見がどうというよりも、内面と外見の差が大きすぎる気がして、どうにも落ち着かないのだ。
妙は内面でも外見でも、女の服が、女らしさが、よく似合う。

何軒か呉服屋だの簪屋だの、若い女で溢れる店を回った後は、甘味屋に入る事が多い。
その際に妙が買い物の戦利品を持っている事は、滅多に無い。
九兵衛の目から見て、妙が欲しがっているように思えた物はたくさんあったのに。
甘味を口に運んで綻ぶ表情を見せる妙に、九兵衛は問う。
「さっきの、買えば良かったのに」
「さっきのって、どれ?」
九兵衛は何を着ても褒めるからどれの事だか分からない、と妙は冗談めかして言う。
「それに、無駄遣いは出来ないしね」
ひがみでも無く嫌味でも無く、妙はそう言った。

妙はいわゆる水商売をしている。もちろん違法では無いが
余り親が進んで子供にさせたいような、子供が夢見るような。そんな職業では無い。
もし志村家に十分な遺産があったなら、彼女はこんな事をして働いてはいなかっただろう。
好きな時に好きな物を買って、もしかしたら恋に没頭していたのかもしれない。
食うに困る程では無いけれど、決して裕福で無い彼女の財布の紐はとても固い。
「買ってあげようか」
と、妙と買い物に来る度に何度言おうと九兵衛は思った事か。
だが、どうすれば嫌味にならずに済むのか。
どうすれば妙の自尊心を傷つけずに済むのかが分からなくて、いつも何も言えない。
例え言ったとしても、恐らく妙は微笑んで、礼を言いながら丁寧に断るのだろう。
九兵衛が妙に何か与える事には誕生日だとかクリスマスだとか、そういう記念日に与るしか無い。
そんな時ですら余り値の張る物を渡してしまうと、妙がお返しする事が出来なくて困るのだ。
九兵衛は気にする必要は無いと言うけれど、妙は妙で申し訳なさを隠し切れない。

九兵衛が志村家に邪魔する事があるのと同じように、時折妙も柳生家に顔を出す。
数々の事情を知る上澄みの人間は妙を歓迎するが、
何も知らない門下生たちの中には、妙の職業を挙げ彼女を蔑視する者もいる。
妙は恐らくそのような視線にも気づいているのだろうが、その素振りを見せる事は決して無い。
それは妙の精神の強さ故か、それともただ慣れてしまったのか。
もし後者なのだとしたら、こんなに悲しい事は無いと九兵衛は思う。
慣れる必要なんて何処にも有りはしないのに。
そう思うといつも、九兵衛の中には悲しみと遣る瀬無さが込み上げてきて、泣きたくなる。

そんな九兵衛の心を解す様に、妙はいつも笑って言うのだ。
「楽しいわね」
その言葉には一片の偽りも虚勢も無く、九兵衛を安心させる。
周りに蔓延るどんな男共よりも芯の通った強さがあり
どんな蔑視にも軽蔑にも屈する事無く、妙の中では常に誇りが前にある。
どんな境遇にあろうと、その中から楽しさを見つけて生きる術を彼女は知っている。
武家の娘として、姉として、常に彼女は前を向いて歩いている。
そして時折振り返っては、九兵衛が来るのを待っているのだ。
待っている素振りなど、微塵も見せる事無く。


(ねぇ、妙ちゃん)
九兵衛は心の中で呼び掛ける。
(僕が女の子に成り切れないのは、君の所為もあると思うんだ)
口が裂けても、九兵衛は妙にそんな事を言いはしないだろうが。


ふと、九兵衛の向かいに座る妙の顔が変化した。
どうしたのだろうと思って九兵衛が背後を振り向くと、
銀時がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「こんな所で何してんだ、お前ら?」
「見れば分かるでしょう。銀さんこそお仕事は?」
「何でそういう事聞くのお前。嫌味?」
銀時はそう言いながら、妙の食べかけの甘味の皿を横から掻っ攫って食べようとする。
座ったままの妙が真横に握った拳を伸ばすと、それは銀時の腹に直撃した。
痛かったのか、銀時は腹を抱えてその場にうずくまる。
「ぐぉぉ・・・何しやがんだテメェ・・・」
「意地汚い真似はよして下さい。それでも侍ですか」
妙がぴしゃりと言い放つ。それに反発する様に銀時がぼそりと罵倒の言葉を呟くと、
妙も負けじと言い返す。喧嘩と言う程のものでは無いけれど、新八や神楽の話題まで
入り混じった言い合いの連鎖が止む事は無く、いつの間にか妙の隣の席に腰を下ろしていた銀時は
会話のどさくさに紛れて店員に甘味を注文する。
「九ちゃんと買い物してたんですよ」
「何?まな板をごまかす為のアイテムでも探してたのか?」
「・・・それどういう意味?」
「まぁ~確かに何かした方がいいよな。平らっつーか最早お前それ凹んでんじゃね?」
銀時が妙の胸の辺りに視線をやりながらそう言った直後、
妙の手は銀時の後頭部を掴み、そのままテーブルにめり込ませた。
家を出た直後近藤を殴り倒した時と同じように、妙は不機嫌そうに手を2、3度はたくと
「行きましょ、九ちゃん」
と言って、九兵衛に微笑みかけた。
店を出ると硝子窓の向こうで、銀時自身が注文した溶けゆく甘味を隣に
意識を失ったまま机に減り込んでいるであろう、銀時の銀髪が見えた。


余りにも君が素晴らしい人だから。
僕の知るどの男よりも女よりも、素敵な人だから。
もし今、君に特別な人が出来てしまったら、きっと僕は泣くだろうけれど。
そうなったら、僕が変わらねばならない事は承知しているけれど。
今はまだ、このままでいいんだ。
このままがいいんだ。


「なぁに?九ちゃん」
帰途で、九兵衛の視線を感じた妙が言う。
「うぅん、何でも無いよ」
「そう?」
「うん」
キョトンとした可愛らしい顔でそう問う妙に、九兵衛は軽く頷いてそれに答え
心の中で誰に向かってなのか、祈りを捧げる。



願わくば、世界中の誰よりも素晴らしい君が
世界中の誰よりも幸せになれますよう。





【完】







私は、まあ、姉上スキーの銀妙至上主義者なので、九ちゃんが登場した時は微妙な気持ちだったんですが、そこは空知んたまキャラ。
回を重ねるごとに、もう、

お妙さんは九ちゃんと幸せになっちゃえばいいよ!☆(≧▽≦)☆!

って口走っちゃうくらい、お妙さんを大好きな九ちゃんがかわいくって仕方無いんですが、そんな私に「ド」が100個ついちゃうくらいドストライクなSSがきちゃいました。

何気に、近藤さんと銀さんが出てるあたり、ぽっぽさんの公平っぷり(笑)に感動しつつ、空知んたまの描く女の子同士の友情ってなんかいいよねってことにしみじみしつつ……

ぽっぽさん、ありがとうございました!☆(≧▽≦)☆!

いつもいつも、原作の雰囲気ダダ漏れなぽっぽさんのSSが大好きです!



【popponoblog】

SSはこちらにまとめてます。⇒ 【頂き物(ss)】






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最終更新日  2011年04月23日 16時13分41秒
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