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2011年12月23日
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テーマ: 銀魂(1196)





【Why don’t you give love on X’mas day?】<三>


「かんぱーい!!!」
真選組屯所では近藤の音頭に合わせて土方、沖田、銀時、新八、神楽、そして妙が杯を宙に振り上げている横で定春が部屋の隅の方で丸くなって眠たそうに欠伸をした。その一室は鮮やかに飾りつけられているものの、その端々から男所帯を思わせる大雑把さと手作りの味が見て取れた。大きな机の上に所狭しと敷き詰められた豪華な肉類に万事屋の面々は妙を除いて飛びつく。主に銀時と神楽に占拠された机に全て食われては堪らぬと土方と沖田も割って入り銀時と土方、神楽と沖田ががっちりと手を組み合って机を介して押し問答をするその下で新八は飛び散った食物を大雑把に掻き集めていた。
新八が畳の上に目を向けている間に、近藤は手早く幾らかの料理をよそうと、輪に入れず一歩後ろに下がっていた妙の隣にさり気なく近寄ってそれを渡した。
「お妙さん、どうぞ」
「あ、はい」
お妙は素直にそれを受け取ったものの食べてもいいものかと机の方に目をやったが、まだまだ決着はつきそうに無く黙々と箸で料理を口に運んだ。
「全く困った奴らですね」
近藤はいつの間にか妙の隣に腰を下ろしており、そう言って楽しそうに笑った。
「あなた程ではないですけどね」
新八は目を爛々と輝かして銀時と神楽の向こうから近藤の方へ乗り込んでくる勢いだったが妙がにこりともせずそう切り返したのを見ると、安心したのか自分も料理を取る側に回った。近藤は少々言葉に詰まったものの、いつもの事と笑って流し、頭の中で次の言葉を探していた。
「でも、今日はありがとうございます、ね」
近藤には幻か夢と思わざるを得なかったが、それでも理性では現実だという事はよく分かった。あの妙が自分に何とも素直な笑顔を向けてくれた事に溢れんばかりの感動を覚えた近藤は思わず泣きそうになり、くしゃみをする振りをして顔をそむけた。この笑顔が見れただけでも今日という日に価値があったと言わざるを得ない。だがここで終わる訳にはいかないと、近藤はちらと机の方に再度目をやり、その争いに新八も加わっている事を確認すると、妙に言う。
「お妙さん、今ちょっと大丈夫ですか?アイツらが気付かないうちにちょっと見せたいものがあるんですが・・・」
「別に構いませんけど・・・見られると何かまずい事でもあるんですか?」
「そういう訳では無いんですが・・・そうですね、できればお妙さんだけがいいな~、なんて・・・ハハ」
妙は少しだけ普段の冷たい目に戻ってしまったが、万事屋の面々がいる所為なのか又は料理が予想外に美味だった所為なのか随分と機嫌が良いようで、少し億劫そうに立ち上がると着物を直して、近藤の申し出に応じた。この時点で近藤はまたもや泣きそうになってしまったが、今度は涙が出る前にぐっと堪えた。

こっそりと部屋を出て襖を閉めると、突然驚く程静かになって廊下が軋む音がよく聞こえ、時折他の隊士達の声が別の部屋から聞こえてきた。やがて真っ暗な部屋に辿り着き、近藤が明りの元を探してもぞもぞしていたが光が照らされると其処は真選組の食堂だという事が見た瞬間妙にも分かった。一体何なのだろうかと妙は思ったが、元から近藤の考えなど分かる気がしなかったし考えるのをやめて、黙って後をついていった。
人がいないので暖房の効いていないその部屋はとても冷えていて、足先に冷気が堪っていくようだったので、早く元の暖かい部屋に戻りたいなと妙が思っていた頃、あろう事か近藤は奥にあった冷凍庫を開け放して妙に見せてきた。
「俺からお妙さんに、クリスマスプレゼントです」
笑顔でそう言う近藤に妙は肩を窄めながら仕方なく中を覗き込むと、中には妙の好物が山のようにあった。顔を返せば嬉しそうな笑顔を浮かべた近藤が妙を見下ろしていたが、妙はぼそりと一言、
「こんな寒い日にアイスですか・・・」
と言った。その瞬間近藤の顔が硬直してしまった。こんな気温で無かったなら妙も素直に喜んだのだろうが、とりあえず今は冷たいものを食べたいというよりは熱いお茶が飲みたい気分だ。
一方さっきまでの威勢はどこへやら、すっかりしょげて項垂れた近藤を普段の妙なら気にも止めなかっただろうが今は幾分機嫌が良い。
「でも、有難うございます。嬉しいです、とっても」
何とも分かりやすくて現金な男だと妙は思った。自分の一挙手一投足にここまで左右される人間がこれまでにいただろうか。何ともまぁ、子供のように無邪気な顔をするものだ。
「向こうの部屋に冷蔵庫ありましたよね?」
妙はくるりと近藤の方を振り返ると、そう尋ねる。
「あぁ、はい。ケーキを入れてるやつが」
「じゃぁ一つだけ持ってかえりましょう。今はちょっと寒いから、後で頂きます」
近藤の返事に妙はにこやかにそう答えると、ラベルを見る事なく一番上にあったものを手に取った。ラベルを見てしまうと味に延々悩みそうな自分がいたからだ。そんな理由で風邪を引いたら、それこそ目も当てられない。
「早く戻りましょう」
妙は直接手でアイスを触らないように着物の上からそれを持って早足で部屋を出た。妙の頭の中は既に自分が選んだものがどの味だったのかと想像を膨らませることに夢中で隣を歩く近藤の存在を忘れていたが、近藤が何か喋り始めた事によりその存在を思い出した。
「喜んで貰えたみたいで良かったです」
妙が隣を見上げると、照れくさそうに頬を掻く近藤が其処にいた。
「新八くんと二人で食べられるようにと思って買ったんですけど、そうるすと万事屋の連中もついてきて、全部持ってかれちゃうんじゃないかと思ったんで」
初め、妙には近藤が何の話をしているのか分からなかったが、そのうちすぐに妙だけを呼び出した理由について話しているのだと思い至った。言い訳のようにも聞こえたが、確かに当を得ている理由だとも思った。
「やっぱり最初はお妙さんだけに見せたいなっていうのもあったんですけどね」
そう言って相変わらず嬉しそうに笑う近藤の顔をいつもなら拳か肘で叩き壊しているのだが、何ともまぁよく見れば中々どうして憎めない表情だと柄にも無い事を思ったのは、今日という日に少なからず自分も浮かれているという事なのだろうかと、妙は少し可笑しくなって、くすりと笑った。


宴もたけなわ、皆が各々の手に料理やら酒やらを好きに持ち飲むなり食べるなり話すなり、陽気にざわめく集団の中で、阿伏兎は突然前方から何かを手に持って走ってきたまた子に飛びつかんばかりの勢いで話しかけられた。少女という程に幼くもなく、かと言ってまだ女とは言い切れない微妙な年頃の彼女は室内とは言えこの寒空に随分な薄着をしていて、腹を冷やさないのだろうかと人事ながら心配になった。人の名前を覚えているのかいないのか、阿伏兎の事を「おっさん」と呼ぶ彼女は手の中に持っていたそれを阿伏兎に渡して「頼みがある」と言った。
「コレで『愛してるまた子』って言ってください!!」
微妙な年頃の女の子からの予想外の「頼み」に、らしくもない裏返った間抜けな声を出してしまったが、そんな自分を誰か責められるというのなら教えて欲しいと阿伏兎は思った。彼女の言う「コレ」とは、それに向かって喋るとこの船の総督さんの声が出てくるというアレなのだが、幾らなんでもその頼みはご遠慮願いたいと阿伏兎が思っていた時、側でご馳走を何十人分か平らげたばかりの神威が口を挟んだ。
「うーわ。君って痛い子だったんだね」
いつもの白々しい笑顔を浮かべている神威に、少しも怯む事なくまた子は言い返す。
「黙ってろアホ毛野郎!お願いするっスおっさん!!」
胸の前で手を組んでそう請うたまた子の頼みを無下に断る気にもなれない自分の性格が嫌になりつつ、もし断ったらどうなるんだろうと阿伏兎は考えた。何せこの年頃の、それも女の子というのは扱いが難しいのだ。もしかしたらその腰に刺した2丁の拳銃で撃ってくるかもしれない。大袈裟かとも思うが、彼女の属している団体の事を思うとあながち冗談とも言えないだろう。たとえ撃ってきたとしても自分がそれによって死んだり負けたりする事はまず無いだろうが、その後一体どうしたらいいんだ。彼女はこう見えてこの団体の幹部の一人であるし、傷つける訳にはいかない。面倒くさい事態になるのは真っ平だ。事を穏便に運ぶ為にも、彼女を刺激するような事はしない方がいいだろう。そう考えた阿伏兎は神威に呼びかける。
「俺は嫌だよ」
しかし阿伏兎が神威を呼び終えるより先に、やはりあの腹立たしい笑顔を浮かべてそう言い切った己の上司に阿伏兎は軽い殺意を覚えたが、その殺気が漏れるともっと面倒な事になりそうなのでそこは年の功で穏便に済ませた。それにしても何だってこの女の子はわざわざ自分のような「おっさん」に頼みに来たのだろう。もっと若くて親切な仲間がこの船には幾らでもいるだろうに。そんな阿伏兎の考えを見透かしたように、また子は口を開く。
「あたしは幹部だし、船の連中にそんな事頼む訳にはいかないんス。ナメられる訳にはいきませんから。でも万斉先輩はやってくれないし、武市先輩なんてもっての他だし、おっさんしかいないんっス!」
「左様で・・・」
阿伏兎はまるで逃げ道を塞がれてしまったようだった。ナメるとかナメられるとか考えてる辺りがまた子供だなぁなどと考えながら深い深い溜息をついた後首を縦に振ると、また子はそれはもう嬉しそうにはしゃいで阿伏兎に背を向けて立った。顔が見えると別人だという事を意識してしまうからなんだろうなと阿伏兎は思い、早い所終わらせてお帰り願おうと、また子の背後から例のそれを口に当ててボソリと頼まれた言葉を言い終えると、また子は凄い勢いで振り返って言った。
「ナメてんスかアンタ!もっと感情込めるっス!喋り方も全然違う!」
何という事だ。まさかダメ出しされるパターンが存在したなんて。
加えてよく見てみるとまた子は手に携帯電話を持っていた。まさか録音していたのだろうか。総督さんの為にもやめてあげて欲しいと人事ながら阿伏兎は思いつつ、こんな小娘相手にどう感情を込めろと言うのだと、心の中で悪態をついた。
「何バカな事してるんですかあなたは」
そう言って阿伏兎に助け舟を出したのは武市だった。侍というのとはまた少し違った人種に思えるこの人間を妙な雰囲気の男だとは思いつつ、阿伏兎は嫌ってはいなかった。少なくともこの船に乗っている間一番頼れるのはこの男だと阿伏兎は認識していた。
「先輩には関係無いっス!さぁおっさん!もう1回!」
「早くしなよー阿伏兎ー」
前言撤回である。別に頼りにはならない。武市の言葉は任務ならいざ知らず、このような雑談においては何の効力も持っていないのだという事を阿伏兎は学んだ。それに加えて後ろから面白がって追い討ちをかけてくるスットコドッコイが己の上司だなんて信じたくないと思った。人事だと思ってこの野郎。
そんな事をぐるぐると考えながら立ち尽くしていた阿伏兎の眼前には既に言葉を聞く体勢を整えたまた子がいて、阿伏兎は眉間の皺を手でほぐしながら今度こそ最後にしてやろうと、持てる力の全てで持ってろくに話したことも無い小娘に愛の告白をしてのけた。
「・・・・・・・・っきゃあああああああ!!!!」
「ギャハハハハハハ!!!!!」
顔を真っ赤にして歓喜の声をあげたまた子の姿を見て、どうやら上手くいったようだと阿伏兎はほっとして息をついた。その後ろで阿伏兎の言葉を聞いてなのかまた子の狂喜乱舞する様子を見てなのか、机の上で笑い転げている上司に心底嫌になると同時に、現在また子の携帯から例の言葉が繰り返し再生されているであろう今の状況を見て、阿伏兎は心からこの船の総督さんに申し訳無いと思った。









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最終更新日  2011年12月23日 07時09分57秒 コメントを書く
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