きのう と きょう と あした と

きのう と きょう と あした と

2009/04/10
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カテゴリ: 小説



朝から、だいぶ海岸でゆっくりしたので古いベンツに乗り込み買い物に向かうことにした。
このベンツも友人の物。ここで生活するには、車がないと不便だということで
この別荘にオマケで付いていたらしい。
オマケとはいえどもそこはベンツ。これでバカンス気分は最高に盛り上がるのだ。

たまたま車にはちょっと自信があるので、こいつのちょっとしたメインテナンスも
ここに来たついでに診ている。
キーを差し込み軽く捻ると一発でエンジンが掛かった。当たり前のようだが
古い車はこのようなことが当たり前にならないことがある。


しばらく走ってからサングラスを掛けようと胸ポケットに手をやったら違和感があった。

いつの間にかサングラスが違う物に入れ替わっている。サングラスというよりは眼鏡。
度数は無いようだから伊達眼鏡か?
いつ入れ替わってしまったのだろうか?全く気がつかなかった。
海岸の防波堤でうたた寝している時ぐらいしか考えられない。
持ち主は探しているだろうし俺のサングラスの行き先も気になる。
あれはあれでお気に入りだったのに。
にしても派手な眼鏡だ。その辺のセレブが掛けていれば普通なんだろうが。




掛けてみた。似合っているだろうか?


右手でルームミラーを動かし自分の姿を確認し、さらにセレブ気分が盛り上がり
本格的なバカンス気分が最高調になっているところに親父から電話が来た。


「おい、お前白い眼鏡掛けてるだろ。」

いつもそうだ。開口一番用件だけ。しかもなんで白い眼鏡掛けていることまで
分かったのか不思議だ。

「なんで・・・」

ちょっとドキッとしながらも、反論しようと思ったが、親父がさらに話をかぶせてきた。



語尾を上げて話す話し方が気持ち悪い。親父は絶対変な勘違いをしている。
電話の向こうでニヤニヤしているのが手に取るように分かる。

「まあいい、その眼鏡返して欲しいんだそうだ。お前の携帯番号教えてといたから
そのうち掛かって来るぞ」

と言うとまたいつものように勝手に電話を切られた。
あぁこれで今度実家に帰った時は「あんたそろそろ、、、」という結婚話が
始まるのは間違いないだろう。

そんなことより今の心配をした方が良さそうだ。
いつまでも他人の物持っている理由は全く無いのだが、
こうも早く連絡が来るとは思ってもいなかった。

商店街の駐車場に車を収めたちょうどその時、
アドレス帳に載っていない番号から電話が来た。
アドレス帳に載っていない電話番号は仕事のトラブルか間違い電話など
大抵良くない内容が多いので、条件反射的に警戒してしまう。
特に親父の電話の後だから尚更いい予感がしない。

無愛想な感じで電話に出た。

「はい。」

こういう時は名前を名乗らないようにしている。
やはり電話に出たのは想像通りの落ち着いたトーンの声の女性だった。
必要もないのに急に緊張してしまった。

「小松崎(こまつざき)様でいらっしゃいますでしょうか。
私、二見雪乃(ふたみゆきの)と申します。」

「はい。」

「恐らく私の手違いだと思うのですが、様のお手元に白い眼鏡があるとかと思うのですが、」

「はい。」

「実はそれは私の物でございまして、」

「はい。」

さっきから俺は「はい。」しか言っていない。
いくらなんでもちょっと無愛想過ぎたかと反省。

「大変申し訳ないのですが、その眼鏡は亡くなった祖父が買ってくれた
とても大切なものなので、、、」

相当お困りのようだ。

「いや、お話しは分かりました。それじゃあ今商店街の中にいますから、
何処かで落ち合いますかね。」

「あぁありがとうございます。私もそばにいますのでそうさせて頂けると助かります。」

目の前にいい目印があったので説明した。

「この辺りにあまり詳しくないので説明が上手くないかもしれませんが
商店街の真ん中辺りに石でできた水飲みがあります。」

と、ここまで説明したところでふと見ると石柱の陰でこの島には不釣り合いな
普通のスーツを着て帽子を被った髭の男が携帯で電話をしている。
待ち合わせだろうか?誰かを探しながら電話をしているようだ。
にしても普通は相手にも見えやすいように目立った位置にいるものだが、
こいつはキョロキョロしている割りには、物陰にいるってのが挙動不審である。
気にしながらも電話を続けると、
会話の内容と口の動きが一緒であることに気が付いてギョッとした。
どうやら俺が話をしている相手はこいつのようだ。
しかもご丁寧にボイスチェンジャーまで使ってやがる。
咄嗟に奴の視界から隠れるように身を隠した。
一気に頭の中が真っ白になってきた。
一体何が起きているのか?とにかくここにいない方がよいと本能的に判断し、
悟られないよう適当に言い訳をして電話を切った。


面倒なことに巻き込まれているのは間違い無いだろうから、
温泉に行くのは止めて急いで別荘に戻ることにした。



つづく





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Last updated  2009/04/13 12:49:02 PM
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