「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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Aquitaine et Pyrenees
Aquitaine et Midi Pyrenees (1)
パリ - トゥールーズ移動
朝のラジオで聞きかじった所では、
ピレネーを越えてAndore アンドールへ向かう道が
雪で通行止めになっているらしい。
トゥールーズから、東南東に100kmほどいった所だ。
当初、そのあたりの道をまわってこようと思っていたため、
その無念さは大きいが、それよりも
降雪による全体的な影響の方が心配である。
何よりも、パリからトゥールーズへ下りるまでには、
中央山地などの比較的標高の高い地帯があるのだ。
時間は午後4時、通常であれば高速道路を使って
およそ6時間後にはトゥールーズへ到着する。
私は、助手席に高校時代からの友人をのせ
高速道路A10に入った。
幸運にも帰宅ラッシュとなる17時前にパリを出ることに
成功したのだが、それでもOrly オルリー空港から出てくる
車によって混雑していた。彼らはおそらく空港勤務の人々であろう。
朝7時頃にも、彼らが空港に向かう姿がみられる。
A10に入るためには、パリからまずA6にのり、
Bordeaux ボルドー、Nantes ナントゥ方面のA10へ分岐していくのだが、
これをもうすこしA6に乗ったまま進むと、
ちょうどオルリー空港の脇を走る。
交通量の多いオルリー空港では、走行中の自動車の
すぐ上を交差して通過していく飛行機を見る事ができる。
車はほぼ150km/h程で流れにのって、
Orleans オルレアンまで続く平地をひた走る。
オルレアンまではおよそ1時間、そこでロワール川をわたり、
Limoge リモージュ方面へとさらに南下するのだ。
高速道路であるので、あまり景色を楽しむことはできないが、
2月現在で17時半頃におちる陽と、それにともなって変わる
空や大地の色は、長いドライブの退屈をなごませてくれる。
平地の夕暮れの美しいところは、土や枯れ草がオレンジに
照らされ、そこここに区画されているかのようにみられる
林が落とす長い影や、石造りの農家の姿が、一見単調な景色に
アクセントをつけているところだ。
また、地域によって少しずつ異なるスタイルを
見ていくのも悪くはない。
オルレアンからA71へ入り、
鬱蒼とした森に包まれたロワール川を渡り、
Vierzon ヴィエルゾンを通過、このあたりで平地がおわり、
次いでA20でChateauroux シャトルー
へと着いた頃には、あたりは完全な夜となっていた。
幸い懸念していた降雪はなく、道路の凍結もなかった。
ここまでおよそ3時間程走っただろうか。
我々は休憩とドライバー交代をかねて、Aire エールに入った。
やはり1400cc 75馬力の車で150km/hでは振動が激しい。
高速で長距離移動をするならば、少なくとも1800ccは欲しい。
その後また3時間ほどで、我々はトゥールーズへと到着した。
同乗の友人はもともとトゥールーズに居たので、市内の地図は
特に必要としなかったが、それでも少し迷う。
そして金曜の夜ということもあって、人や車が出ている。
トゥールーズという町は、大変すごしやすい。
パリと比べて小さく、中心街がコンパクトにまとまっているが、
レストランやバーの数は、とても1年では行ききれない程ある。
町並みはレンガの赤色にほぼ統一され、
明らかな地方色がみてとれる。これはスペインに近いせいだろう。
話されている言葉はフランス語であるが、
発音は仏語初心者でもわかるほどに異なっており、
時には「これはスペイン語か」と思うほどの発音もきかれる。
我々は中心街北東部にある国鉄駅から運河沿いに500m
ほど行った安ホテルへと入った。
繁華街の辺境はどこもあまり良い雰囲気はない。
街灯の数が減り、いたずら書きが増え、売春婦が立つ。
あえてそういった状態を見に行く必要はないし、
何かそのために具体的な行動を起こすこともないが、
「美しいフランスだけではない」ということは
忘れないでいたい。
実際問題としては、強盗などの犯罪に会わないための
予防策としてこうした状況を覚えておくことは必要であろう。
明日は、トゥールーズから北東に向かったAlbi アルビと
Gaillac ガイヤック、それからトゥールーズ西部の丘陵地帯
へと向かう予定だ。
Aquitaine et Midi Pyrenees (2)
Albi アルビ、Gaillac ガイアック、Tarn タルン川沿いの小旅行
写真左、アルビ。教会の下にひろがる赤い街とドルドーニュ川。
写真右、トゥールーズ南西近郊のとある街。教会の尖塔のつくりがおもしろい。
朝9時、我々はホテルに程近い国道N88上にいた。
中心街から離れた集落が国道沿いにつながっていっている。
赤レンガの建物にまざって、ここ1~20年ほどに建てられた
かと思われるような白い飾り気のないマンションがみられる。
ここでは純粋なフランス人はまだそれなりの人口を維持
しているようだ。小さなスーパーもいくつかみられるが、
八百屋、肉屋、パン屋などの個人商店もまだまだ元気だ。
朝市の時間にぶつかってしまったため、街を抜けるのに
少し時間を使ってしまったが、予定では12時頃までに
再びトゥールーズに戻ってくることになっている。
街を出ると、両脇に木肌の白い樹木の並ぶ街道となった。
いくつかrond point ロン・ポワン(ロータリー)を通り、
高速A68に乗る。
雲が暗くたちこめるあいにくの天気だが、
それなりの視界は確保できた。
それに昼になると晴れることはよくある。
トゥールーズから南に行くともうすぐにピレネー山脈だが、
このあたりはちょっとした丘陵地にすぎない。
所々にトウモロコシを干す柵状の巨大なケースがみられる。
トウモロコシ畑、麦畑は高速からみる風景でもっとも
頻繁にみられるものだ。近づいて土にさわってみると
また異なるが、遠くから見て通り過ぎるだけでは
まったく味気ない。
1時間しないうちにアルビに着く。
ここは以前来たときに迷ってさんざん市街地を走ったので
もうOffice de tourismeを探す必要もない。
いつごろからあっていつまでいるのかわからない
移動式遊園地も大通りの公園内に健在していた。
高速から降りてこの大通りに入り、噴水や旧市街の
入り口に広がるカフェ群をみながらさらに進むと、
下り坂から橋へと出る。tarn タルン川だ。
左後ろをふりかえると、そこには階段状にのぼっていく
赤レンガの町並みとその頂点に立つ教会がみられた。
橋をわたり終えた所に停車できる場所をみつけ、
しばらくそれを眺める。
川の流れる音がかすかに聞こえる。
みてみるとこの橋のもう少し街に近いほうに古い橋がある。
この橋は花で飾られた昔ながらの堅牢な石造りの橋で、
正面にはそびえ立つ教会、左右には広く深いタルン川がみえる。
教会はまた独特で、なにか要塞のようでもある。
左右脇の入り口部分は白い石で細かく飾られているのだが、
全体的には赤レンガの直線状の壁で囲まれている。
それがどこまでも高くそびえ立っているのだ。
我々は、この教会の脇をとおり再びタルン川をわたり、
アルビの街を後にした。
もっと時間があったならば、タルン川の上流を遡って
みたかった。ちょうどこのアルビから東に登ると
国立公園に指定された区域があるのだ。
しかし、我々は逆に下流へと向かう。
ここからアルビを見下ろすような丘沿いの県道へ入り、
ワイン生産で名のあるGaillac ガイアックを目指す。
斜面を削った県道はややきついカーブが続く。
車通りも少なく、運転そのものが軽快で楽しかった。
斜面からはタルン川と、所々に川沿いの小集落がみられた。
川にかかる橋は遠くからみるとまたきれいで、
広い川幅にかかるいくつもの石のアーチとその影が
ゆったりと流れる川の姿にアクセントを加えている。
しばらくいくと、突然ブドウ畑がみられるようになった。
どうやらガイアックの近郊に着いたようだ。
ブドウ畑は、南側に面する丘の斜面をかたどるように広がる。
畑の上にはカーブを持つと思われる広めの家屋がみられ、
これらは3方を松のような常緑樹に囲まれていることが多かった。
時折、試飲・直売と書かれた看板をみつけたので、土産にと思い
その中から一軒、建物のきれいな販売所に入る。
丘の斜面は、下にいくほどなだらかになるため、
上から見下ろすと高さのそろったブドウの木々が扇状に
広がっていくようにもみえる。
夏や秋であれば葉も茂り生き生きとしていたであろうが、
すべての葉を落とし、小枝もきられたこの
寂しい風景もまた、ブドウ畑のひとつの魅力に感じられた。
販売所では、もちろん味の表現などはできないのだが、
ひととおり試飲をさせてもらい、友人とともに3本求めた。
5ユーロほどのワインで、市価と大差ないようだが、
中間業者によって貼られるチケットなどがないことや、
実際にそのワインが育った場所を見て試飲し
選んだということが、空港の免税店や街のワイン店で
購入するのと大きく違う良い点に思われた。
ガイアックの中心街は結局丘陵地へとうかいすることで
通らず、そのままもうしばらく丘の道を楽しんで、
国道N88へと戻り、トゥールーズへと帰りついた。
Aquitaine et Midi Pyrenees (3)
トゥールーズ南西部近郊丘陵地帯
旅行計画を練っている時、ピレネーから続く丘陵地帯に
目がとまった。地図上ではこれらの丘陵はピレネーから
まっすぐ北方にいくつもの稜線を走らせている。
パリから西へレンヌの方へ行く時など、いくつもの丘を
上り下りしながらまっすぐと進む道に出会う。
トンネルを掘るほど高い山でもなく、
また迂回していく道もまたないようで、
5%以上の坂をただ直進していくのだ。
しかしながら、地図ではこれらの道は随分と曲がり
くねっているようで、どうやらつらなる丘も
それなりの標高であるようだった。
同行の友人が予定のある午後の3時間ほどは、
その辺りを散策することにした。
中心街で友人をおろし、ガロンヌ川をわたり、
広大な土地をもつ古い病院の脇をぬける。
この病院と、大きな橋、そして川岸の石畳、
これらは見事な赤レンガによってつくられており、
日中、夕方、日暮れ時にそれぞれ異なった美しさをみせる。
夜は夜で、空にうっすらと尖塔の影がうかび、
また川がゆったりと曲線を描いているために
川沿いにずっと続いていく街灯のラインがやさしい。
病院脇を通過した後、車はまず県道D622に入る。
この県道で街の中心部から郊外の住宅地を通っていく。
トゥールーズのすぐ外周は新しい何の飾りもない建物が多いが、
また離れた集落となると、地方色を感じさせる街となる。
特にここでは教会が独特で、やはり赤レンガによって
つくられているのだが、それが角張った尖塔ではなく、
円柱のようにのびていく。各階のしきりは白く塗られており、
装飾の少ない塔のあざやかなポイントとなっている。
こうした街を2~3抜けていくと、広大な丘陵地帯となる。
不思議なのは、冬の最中であるにもかかわらず、
丘が緑に包まれていることだ。これらの多くは牧草のような
背の低い草のようである。また道路沿いや家の周囲には
松のような常緑樹が多くみられる。
以前リヨンの西部郊外をドライブした時に
似たような標高差のあるいくつもの丘が折り重なる
風景をみたが、ここでは街の集落が小さく、より緑地が目立つ。
そして多くは小さい倉庫などを持つ一軒家である。
これらの家屋は旧市街にみられる赤レンガ造りではなく、
白っぽい壁にオレンジの瓦、というスタイルが多い。
雨戸にラベンダー色やあざやかな青がつかわれていて、
目を引く特徴のひとつであるようだった。
車は丘をひとつ越え、ふたつ越えしながら、
車線のひかれていない小さな県道を進んでいく。
丘が並列して直線状にのびているせいか、
県道の左右はどこまでもみわたせる。
午前中には雲で覆われていたこの一帯は、午後2時を
過ぎた頃から晴れはじめ、まだ雲は残るものの、
視界は充分に確保されていた。
ふと、右斜め前に、細い稜線上を走っていく道をみつける。
その道を降りて行った先500m程の所には、農家らしい
いくつかの棟によってなる家がみられた。
ちょうど県道からつき出た谷をみわたす見晴し台のような
そんな地形の上にできた家だ。
「上下水道はどうしているんだろう」
という疑問が不意にでてくるほどの、集落から離れた家だ。
どうしている、といって、別に井戸を使っている
というわけでもないからちゃんとひかれているわけだが、
それにしてもこういった所まで整備されていることは、
この自然の中にいるとなかなか簡単には信じられない。
思わず引き込まれ、その途中まで車を走らせるが、
2頭の番犬に吠えられた所で引き返す。
それにしても、一日の始まりと終わりをこうした
自然の中で過ごすことができるのは幸せなことに思う。
次に変えた県道は、標識がしっかりしていなかったため
一度見落としてしまった。おおよその目安を走っているので、
次の集落の名前が書かれた標識をみた所で間違いに気づく。
もう一度、通るべき街の名と県道の番号を確認する。
分岐点から到着する最初の街の名を覚えていれば問題ない。
分岐点を南方へ折れてしばらく進むと、
周囲の景色は、再び街の風景へと変わっていった。
高速道路のインターにつながる道へと連絡したのだ。
1時間程度のちょっとしたドライブであったが、
その前までフランスでも五指に入るかのような
大きな都市にいたということを忘れるような風景だった。
トゥールーズへと向かう高速にのりながら、
一度、雹を含む集中豪雨におそわれたが、
その後は、低く厚い暗黒色の雲も過ぎ去って、
きれいに洗い流された街に迎えられた。
Aquitaine et Midi Pyrenees (4)
地中海へ。
夕方の4時過ぎに友人と合流し、今夜の宿に荷物を置き、
我々はトゥールーズ東部に向かうことにした。
ここからおよそ1時間のところに、かつてスペインとの
戦争に備えていた古い城のあるCarcassonne カルカッソンヌ
という街があるので、夕暮れから夜になる城の様子を
見に行こうというものだった。
ただ、途中のサービスエリアで考え直したことは、
二人とも既に何回かそういった風景をみているのに、
もう一度行くのはどうか、、、ということだった。
というよりも、友人の気持ちが「地中海」へ
傾いているようで、すでに車に積んできた地図では
切れて表示されていない地域をしきりと気にかけているのだ。
Aire de repos(サービスエリア)内の池。
トゥールーズからはピレネーも大西洋も、地中海も近い。
そこで我々は、夕陽に映えるカルカッソンヌの城を
高速道路から遠目に眺めながら、進路をさらに東にとった。
カルカッソンヌの城の風景については、
いずれ他の機会に紹介することにする。
このあたりは、南は当然ピレネーであるが、北側にも
それなりの標高をもつ山岳地帯があり、
ちょうど広めの渓谷のような地形となっている。
それらの稜線は高度を下げながら次第に合流し、
高速道路上で小高い峠となって終わる。
ちょっとした岩稜帯を両脇にみながら、
地中海まで50km程のゆるい下り坂となる。
視界がひらけ、あたかも地中海までみえるようである。
高速道路はNarbonne ナルボンヌという大きな街で
南仏とスペインを結ぶ高速道路に合流する。
さきほどからしきりに「Barcelonne バルスロンヌ」
と書かれた標識が目につくが、それは、
バルセロナを示す仏語である。
我々はナルボンヌで高速を降り、国道に入って南下し、
湖へと向かう県道D112を目指す。
進入路を一度間違えたものの、湖の方へ向かい、
先端部へと到達した。
小さな集落がある。灰色の壁に、白や緑の雨戸が
閉じたままになっている建物が多い。
フランス人は別荘を持つ人が日本よりも多いようで、
特に海沿いなどにいくと、それがよくわかる。
ちょうど今のような風景で、おそらくは
夏のバカンスの時にしか人は帰ってこない。
いくつか、ここの県のナンバーと思われる車が駐車され、
そしてパリ近郊のナンバーもいくつかみられた。
夜になり、寂しい街灯の中を歩く老人を二人ほどみかけ、
一度だけ対向車に出会い、我々は湖についた。
ここから先は地図上では細い一本の線でかかれている。
湖から出て海を望む岬を半周する道路で、
その行き着く道路は、先ほど入ろうとしていた県道だ。
左に湖、右に海と遠い海岸線の街灯をみながら
我々はこの岬へと進んだ。
ところが、困ったことにこの道はまったく舗装されて
いなかった。舗装されていない砂上の道は、
その上、雨のせいかいたる所に大きな水たまりと、
タイヤでえぐられた穴があり、
前輪駆動の普通自動車では多少不安が残った。
「スリップしたら倒木でもかませて出よう」
などと思いながらも先を進む。
冬でなければ窓を全開にして海の空気を吸うであろうし、
夜でなければ波をみながらピクニックでもしただろうが、
どうにも冬の夜では窓を閉め切って前に進むしかない。
しかも同乗しているのが同姓の友人とあっては、
まったく何をしに来ているのかわからない状態だ。
途中ドライバー交替で外に出たが、やはり風も吹いて寒い。
街の灯も遠く、空が澄んでいたのだが、残念ながら
月がでていて星空も楽しめなかった。
もう目的は、はやく街に戻って、一刻も早く
夕飯にありつくことであった。
さて、歩くような速度で20分ほど進んだ先にあったものは、
予想と反し県道ではなく、小さなブドウ畑であった。
このような海沿いで、掘れば塩水が湧いてくるような所で
どうしてブドウ畑などを作っているのだろうと思ったが、
問題はそれよりもむしろ、道を見失ってしまったことだった。
海と反対側は、高さ5mほどの台地状になっていたので、
そこに道があるのかと歩いて登ってみても、
やはりちょっとしたブドウ畑しかない。
月のない夜であれば、ここからの星は空を埋めるであろうと
一瞬イメージが頭をよぎる。
「仕方ない、戻ろう」
そうして我々はナルボンヌの街へと帰りついたのだった。
ここで夕食をとるかどうか話し合っていると、
Narbonne-plage と書かれた標識をみつける。
plage プラージュとは浜辺のことだ。
地図ではもうはっきりとはわからないが、
この街の海辺が近くにあるらしい。
海辺であれば少なからずレストランもあるだろうし、
なによりもきちんと地中海に触っておきたい。
さっきはタイヤのスリップがこわくて、そんな
気持ちの余裕などなかったから忘れていたのだ。
我々はこの標識についていくことにした。
しかし、よくよく困ったことがおきるものだが、
10分以上走っているのに全く到着する気配がない。
むしろ、道は上に登っているのである。
そしてついに、「Narbonne-plage 15km」
といった標識をみるに至って、どうもこれは
Narbonneの街とは別の区域にある所なのだ、
という考えに到達した。
道はどんどんと山道に入っていき、
背の低い草に覆われた丘にそって曲がりくねりながら、
浜辺へといちおうは近づいていく。
暗くて見えにくいが、この辺りもいくつかの丘によって
つくられているようで、もし夏の昼であれば、
熱い太陽に照らされた丘と海のコントラストを眺めながら、
時速70kmで入ってくる爽やかな丘陵地の風を受けて
走ることができたのであろう。
たどりついた地中海は、ただひたすら黒く、
ひたすら寒かった。
完全にバカンスシーズンを外した海岸には人はなく、
なぜかと問いたくなるように一軒だけ空いたバーが
唯一の光源であった。
「とにかく海に触っていこう」と車をでたが、
とにかく寒い。
強い風のために、砂浜にはきれいな模様ができて、
踏むたびに砂が風に流されていくのがわかった。
思えば、ニースの方の海岸にはあまり砂浜はなく、
小石に敷き詰められた浜辺であった。
結局ナルボンヌの市街地で夕食をとり、
トゥールーズに帰ってきたのは夜の10時。
帰った先で行われていたパーティにつきあって、
眠りについたのは2時半過ぎであった。
Aquitaine et Midi Pyrenees (4)
ピレネーの麓まで。。。
面倒くさがりですいませんが、画像回転しわすれました。
部屋をかりた人のアパートです。
朝起きるとすでに10時を過ぎていた。
他の人はまだ眠っている。
雨戸を完全に閉められた曇りの日は、
冬眠でもできるのではないかというほど暗い。
仕方なくオレンジジュースを飲み、紅茶を入れ、
部屋の壁に貼ってあるトゥールーズの地図を眺める。
ドライブ好きの全ての人にあてはまるとは思わないが、
実際に旅行に行くよりも、もしかすると地図を睨みながら
「あそこが良さそうだ」と考えを巡らしているほうが
楽しいのかもしれないと思う。
そして何よりも道を覚えるのが好きだ。
出身地でない街に友達を連れ立って行ったときに、
「あぁだいたいここは分かるから問題ないよ」
とか言うのが結構好きだ。。。
結局1時間ほど遅れて他の人たちが起きる。
友人が買い物をしなければいけないので、今日は
残されたわずかな午前中をそれにあて、
どこか街中で昼食をとり、
午後は、ついにピレネーを目指すこととする。
友人は、19時頃から他のつきあいがあるため、
そのまえに軽食をすませるとして、
実質使える時間は4時間程度である。
前のニュースで、Andorra アンドラへ抜けるN20は
途中で通行止めであることがわかっていたし、
この2日間を見ても山の方はほとんどいつも雲がかかって
いたので、山へ行くのはほぼあきらめていた。
問題は、「どこまで近づけるか」である。
まずはトゥールーズからN20で東南東へ進路をとり、
Foix フォアという街まで行く。
それからは、おそらく西へ進路をかえて、
山脈と並行に走り、それなりに楽しんだら
北へ上ってトゥールーズに帰ろう、ということにした。
とりあえずはFoixまで行くことだ。
Foixまでの70kmはほとんど平坦な道が続く。
眼前にあるはずのピレネーが雲に覆われているために、
車窓の風景もありきたりに感じてしまう。
知り合いの実家がこの近くにあるのだが、
そこは、このN20から右に分かれた後県道をしばらく
走っていくところにあり、よくよく思い出すと、
昨日走ったトゥールーズ西部の風景に似ている。
そういえばその知人も、周囲に家がなく、
日常のパンは1週間にまとめ買いをし、大型冷凍庫に保存し、
食べる前日の夜にキッチンに置いておくのだと言っていた。
フランスの郊外、地方では、業務用かと思うような
大型冷凍庫を見ることが多い気がする。
Foixへあと10kmという所で急に山岳地らしくなってくる。
道路のすぐ右側に川がみられるのは、ここが
峡谷状になっていることを意味している。
川には堤防もなく、深い草とまばらな林が美しいが、
両脇の山には雲がまだかかっている。残念だ。
Foixという街は、想像していた以上に大きく、
そしてやや観光地化されていた。
たしかに街の中心部は2kmも走れば抜けてしまうのだが、
川に沿った崖のぎりぎりにまで建物が並び、
街路樹と広い歩道、中央の公園を持った大通りがあり、
ちょっとしたブランドのチェーン店があちこちにみられる。
特筆すべきは一段高くなった崖の上の城である。
やはりスペインとの戦いで必要だったのだろうか、
こんな山の中までも立派な塔をいくつも持った城郭があるのは、
ちょっとした驚きである。
さて、これからの進路であるが、
ここにたどり着く前に、電光掲示板におよそ40km程先の
街からは通行止めであることが表示されていた。
そこに至る前に、Foixの10km先のTarascan タラスカン(?)
から西に折れるD618が魅力的であった。
地図上では標高1250mの峠を越える、カーブの多い道で、
見晴らしも良さそうであったが、やはり雪が心配で、
また時間の余裕もあまりないということから、やはり
Foixから太い線で書かれたD117をとることとした。
たしかにそこかしこにはっきりと雪が積もっている。
これで一番高い所でも標高600mであるから、その上に
行くのはやっかいであっただろう。
チェーンを巻いて通ることは可能だし、
道の整備もかなりなされているので(塩撒き、除雪)、
不可能ではないが、いずれにしても雲の中に
入ってしまえば楽しさは半減ではすまない。
我々は時折、時折通り過ぎる街の風景を遠くにみながら、
よく整備された県道を走り抜けていく。
St. Girons サン・ジロンというFoix程の大きさの街で、
北へ向かうD627へと進路を変えた。
この街はFoixと比べると観光的な要素が全くなく、
ただのコンクリートのアパートが並ぶだけに見える。
やはり何か普段の生活と違うものを見たいという
意識が強いのだろうか、「古い町並み」というよりも、
「古く見せる町並み」に気を引かれてしまいがちだ。
D672は、山間に開かれた道を曲がりながら、
トゥールーズへと向けて徐々に標高を下げていく。
やはり、同様の風景でも国道と県道では
景色の見え方が全く違ってくる。
道路のすぐ近くから見えるし、街も近い。
午後もだいぶ時間が経ってきて、
昨日と同じように雲が晴れてきた。
太陽が西へ傾き、正確な間隔で並ぶ街路樹が
その影を道路上へ落とす。
一日がまた足早に過ぎ去っていこうとする。
夕暮れのそう長くない時間は、緩慢な長距離ドライブの中で
目の前の風景をダイナミックに変えてくれる。
この時間はむしろ、運転自体単調であった方がいい。
景色も、山岳地帯よりも、平地や丘陵地のほうが、
木や家や雲などの影がみわたせて好きだ。
トゥールーズまでの高速でまた、一回通り雨にあった。
高速の最高速度が130km/hから110km/hになるが、
それでもまだ早すぎるほどで、
タイヤが急激にたまった水にとられる。
友人を街中におろし、私は家族と合流するために
国鉄駅前のホテルの近くに駐車する。
明日はもうトゥールーズを離れる。
家族の到着を待ちながら、私はまた地図と睨み合っていた。
Aquitaine et Midi Pyrenees (5)
Bayonne バイヨンヌ方面、大西洋に出る(1)
朝9時に友人とホテルで落ち合う。
家内にとってトゥールーズは随分久しぶりなので、
ちょっと街を流してから出ることにした。
駅前のホテルから運河沿いに北へ向かい、
すぐに左へ折れる。デパートなどが立つ大通りの右脇を、
5階ほどあるアパートに挟まれながら市庁へ向けて進む。
日曜の朝で全く人気がないが、この辺りには、
小さなブティックやレストランが立ち並ぶ。
トゥールーズのレストランは、大きな都市にありながら、
価格が安めだ。どうも、学生の数は他よりも多いから、
という話しがある。
また、タパスというスペインの小皿料理を出す店が多い。
これらをちょこちょことつまみながら、
日本のビアガーデンのように大量にのまず、
ぬるくなったビールをいつまでも飲むのだ。
店は採算とれるのだろうか。。。
左、夜の市庁舎前広場。右、夜の駅前。
市庁舎前広場は、周囲を赤レンガの建物で囲まれた
およそ100mx200mほどの広場で、
地面がきれいな石板で覆われている。
そこからはやや放射状に小さな道がのびていて、
狭い道の両側に10テーブル程の小さな店が立ち並ぶ。
これらの建物は歴史を感じさせるというものではないが、
古くから残る街並みの中で人々の活気が今も生きている
ということがおそらく、暗い感じの小道を快適にしている。
一方通行に悩まされながら、ガロンヌ川沿いへでる。
街路樹越しに、対岸には赤レンガの病院がみえる。
堤防の上の広い散歩道と、狭い車道、
ひしめき合うように立ち並ぶバーの数々が、
この川沿いの一区画のにぎわいを想像させる。
橋をわたり、高速へ通じる国道に入る。
川をわたってからあまり経たないうちから、
街は急に暗いイメージになる。
トゥールーズも大都市のひとつとはいえ、
パリなどに比べるとやはりまだまだ小さい。
歩いて散策するのにちょうど良いくらいだろうか。
高速に入る。
ここからはBayonne バイヨンヌまで一気に進み、
そこから南に県道をいくつか変えながら丘陵部を通り、
スペイン国境すぐ隣のSt. Jean-de-Luz サン・ジャン・ドゥ・リュッツ
へ降りる。この海岸線の街からすぐ北東のBiarritz ビアリッツ
まで、Corniche コルニッシュと総称される崖状になった
見晴らしの良い道路を通っていくことにした。
そして、昼食をBayonneでとり、その後は、180kmほど
離れたBordeaux ボルドー近くの村のホテルへ行く。
早めにホテルに行って、その辺りをゆっくりと散歩したり、
ホテルレストランでの食事を楽しむ日にする。
もし晴れていたら通っていたであろう、高速A64の南側は
やはりまだ深い雲で覆われていた。山の影はまるでない。
なだらかな丘が両側に広がる高速を進むと、1時間ほどで
Lourdes ルゥードゥ北側の街Tarbes タルブに着く。
Lourdesは日本ではルルドと呼ばれており、
聖母マリアの奇跡の水で知られている。
しかし街は完全に観光化されており、奇跡の水を汲むものも、
マリア像にかたどられたプラスチックボトルという有様だ。
さまざまな医学的に説明の困難な治験記録を持っており、
現在であっても信心深いキリスト教徒たちが巡礼している。
トゥールーズから2時間程経った所で、高速道路が終点に
近づいてきたため、Aireに入る。
日本でも同様だろうが、フランスではトイレ事情がより
困難であるため、高速のサービスエリアのよく整備された
トイレを使うことが多い。
道路は海岸に向けて最後の降下へ入る。
街がひろがっているのが見える。
だんだんと雲が晴れてきて、幸いにもそれらの雲の間から、
雪をかぶった青い山の稜線を垣間みられた。
パリにいて、こうした雪山を見ることのなかった私にとって、
ピレネーを去る前の最後の贈り物のようであった。
A64が終わり、自動車専用道路のままD1へつながった。
Bayonneへの出口の標識を通り抜け、Sortie5から、
D755、D3と南下する。なだらかな丘の稜線上の
カーブの連続する70km/h道路を上っていく。
そこで、まわりに見える家屋の顔つきが
まったく異なっていることに驚く。
茶色の屋根に白い壁、そして真っ赤な雨戸だ。
家は平屋よりも2~3階立てのものが多く、
アルプスの山小屋のような雰囲気にも似ている。
これらは果たして個人の所有する別荘なのだろうか。
D4に入って、Sare サール(?)という街に入る。
多くの車は左のD406に曲がっていく。
彼らは峠をこえてスペインへと行くのであろう。
ここから渓谷状の道を20km行けば、もう国境である。
我々はこのままD4をとり、峠へ至る。
左手に緑に覆われたひときわ高いきれいな三角形の丘が見える。
それをまくように左方向へ進路をかえながら、
道はやがて坂を下りきって、高速道路の下を通過し、
N10へと出る。
地図上でCorniche Basque コルニッシュ・バスクと書かれた
海岸線上の道はD912。国道から細い道を抜け、
D912に合流してから少し走ると、突然景色が広がるのだ。
Aquitaine et Midi Pyrenees (5)
Bayonne バイヨンヌ方面、大西洋に出る(2)
St.Jean de Luzへと向かうCorniche(断崖の眺望の良い道路)
は、海面からはやや離れすぎているような印象もあったが、
それでも充分に大きな海の存在を感じさせてくれていた。
右に左へとなだらかに曲がっていく道路は、
木のない丘の頂上からやや下りた所を、あまり高度をかえず
快適につくられていた。
ほんの10分程度の道であったが、随分と気分転換ができた。
Bayonneに向かう途中、豪華なバカンス都市として知られた
Biarritz ビアリッツを通っていく計画はどうだろうか、
という話しがでた。
この冬の寒い時期でもあるし、もともと我々はそれほど
豪華な旅をしている訳ではないので、どう見ても
その街の前評判と目的がそぐわないのである。
海沿いのきれいな街、というのは、明日にもまた行くであろう
との意見がまとまり、やや押し迫ってきた時間を
稼いでいくことにした。
Bayonneは、ハムの名前で時折みかけることもあったので、
おそらくは食事をするにしても居住者価格で食べられるだろう、
という予測のもと訪れてみることにした。
サンドイッチを食べるのもいいが、せっかくなので、
もし郷土料理的なものがあったら試してみよう、ということだ。
高速出口からしばらく、おなじみの感じのあまり良くない
一帯を抜けて中心街へと入る。
この街にはAdour アドゥールという川が流れており、
そこにかかる大きな橋と、やや暗い感じのする原色系の家々、
そしてやや一段高くなった所へ尖塔をつきあげる教会が
ひとつの絵のようになった場所だ。
日曜日であったという事もあり街は閑散としているが、
大通り沿いにひとまずカフェレストランのような所をみつける。
Brasserie ブラッスリーというやつで、
カウンターがあり、そこでコーヒーやビールを飲む人がおり、
なかなか入るのをためらわれるような、場所だ。
しかしながら、実際に自分でカウンターで立ちながら
飲んでいると、入ってくる人をつい、見てしまうから、
カウンターの人々に一斉に見られて、よそ者扱いされるような
気持ちになるのは、ちょっとした錯覚であろう。
(そう思わないとごはんも食べられない)
いちおう、この辺りのバスクという名前と、バイヨンヌという
名前が入った料理があったので、注文する。
ソースが、トマトソースにタマネギやら何やらが入った、
あまり「独特」というほどのものではなかったので、
拍子抜けした気持ちにもなったが、実際はそんなものだ。
昼を適当にすばやく切り上げ、今日のホテルへと急いだ。
ホテルはここから180km。一度ボルドーまで上り、
そこから南東に折れて20kmほど行く。
ガロンヌ川沿いのワインの産地だ。
高速A63が、しばらくして国道N10になる。
ほぼ平らな道を、ひたすら進むのみである。
左手には広大な松林がひろがっている。
その向こうには海があるのだ。
時折海辺の街へと曲がっていく車を見た。
途中、曇っていた空が動きはじめ、だんだんと雲の色が
薄くなっていった。
これは午後になっていったという時間のせいなのか、
それともピレネーから遠ざかっていったためなのか、
はわからなかったが、これから向かうホテルでは、
周囲をちょっと散歩して歩こうと思っていたので、
この天気の好転は本当にうれしい。
ボルドーからA62へ乗り、料金所を出た後で
Sortie3のLangon ロンゴンで降りる。
ホテルは、川向こうの小さな街、St. Macaire サン・マケール
である。下りてすぐに合流したN113の左には
SNCFの線路がみえている。そして川では、
みごとな赤レンガのアーチを描いていく。
ここで電車が通ったらまたきれいなのに、と思いながら
右手から右後ろを見ると、また、Langonの教会を中心とした
街並みが、ガロンヌ川の一段上に広がっているのが見える。
やはり、風景の中に、川だとか海だとかの要素が加わると、
その変化によってより多様で美しい風景ができるのだろう。
St.Macaireからは、あらかじめインターネット地図で
2つの縮尺でプリントしておいてもらったものを見ながら
ホテルへと進む。
小さな旧市街だが、見上げるような石の門をくぐり、
普通自動車でもぎりぎりなくらいの道を徐行していく。
ひしめくような黄土色の石でつくられた家の壁が、
このひっそりとした旧市街の静かさを暗く守っているようだ。
車は直進していき、日のあたる教会の前にとまった。
教会も決して大きなものではないが、脇には小さな回廊があり、
芝生の緑と、建物の濃い黄土色、影の色と太陽の色で、
その小さな空間にさまざまな色彩を容れた不思議な空間だった。
我々はホテルに荷物を置き、その石造りの旧市街を軽く散歩し、
ゆっくり風呂に入り、食前酒を飲み、きれいに飾られた
夕食をとった。
余裕を楽しむならば、このように17時にはホテルに着いて、
その夕暮れと夜を楽しみたい。
そうした場合、田舎旅行の好きな我々は、思い切り
市街地から離れた所にあるホテルに泊まることにしている。
次ページへ続く
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