シグマ28-70mmF2.8EX






SIGMA AF28-70mm F2.8 EX DF



エンゾーが、初めて買った大口径標準ズームである。この頃はまだ自分の中で必要なレンズとそうでないレンズの住み分けがはっきりせず、雑誌などで評価の高いレンズは片っ端から試してみたくなっていた時期だった。今考えれば浅はかな話だが、「大口径ズームは分かっている人が使う道具」という、そんなイメージにあやかりたくなったのは否めない。 

ちょうどその頃、海外に取材に行くことが次第に増えてきていたので、一本で大抵の被写体をカバーする信頼の置けるズームがどうしても欲しかったのは事実である。かと言って、キヤノンをメインに使っている自分にとって、メーカー純正のLレンズは全く手も足も出ない高嶺の花だったので、必然的にこのレンズが候補に挙がった。

当時、最も使い勝手が良いレンズと言うと、それは専らキヤノンのEFレンズを指しており、その理由は「 超音波モーター(USM)を採用しており、AF使用時にピントリングがくるくる回らず、かつフルタイムマニュアルフォーカスが可能であるから 」であった。つまり、AFでピントを合わせた後、シームレスにMFに移行できるレンズが、他にはなかったのだ。

今でこそ、各社から超音波モーター駆動のレンズが多数ラインナップされているが、キヤノンは10年近く他社に先んじており、なおかつパテントでUSMの技術を守っていたので、キヤノン以外のメーカーは、なんとかフルタイムMFに準じる機構をレンズに組み込もうと躍起になっていた。そのひとつが、シグマのDF(デュアルフォーカス)システムである。

ところがこの機構は、鏡胴にあるAF/MF切り替えスイッチをMF側に動かし、かつフォーカスリングを手前に引くことで、ようやくMFが出来るようになる仕組みだった。つまりMF移行までに2アクション必要だったわけで、ペンタックスやトキナーのクイックシフトよりもさらにひと手間多く、ファインダーから目を切らずに操作するのは事実上困難だった。
AF時にピントリングが回らないのはいいとしても、ただそれだけのために鏡胴の最大径が太くなってしまったDFシステムは不評だったため、次世代型からはこの機構は廃止されている。 

さて、DF以外の面に目を向けると、描写性能はそれほど悪くない。周辺はやや甘いものの中心部は解像感のある繊細な写りで、また現代的でコントラストも高い。逆光性能が低いのはこの頃のシグマではお約束で、光源が画面内や周辺にあると派手にハレーションやゴーストが出る。これは絞って改善する場合とそうでない場合があり、入射角によっても違うが、いずれの場合もコントラストははっきり低下する。

ただし、順光では極めて美しい写りで、抜けが良く精密感あふれる描写を示す。この順光と逆光での極端な抜けの違いは、単純にコーティングだけでなく内面反射の処理に問題があるのだろう。その後、山木社長が「いつまでも逆光に弱いシグマでいいのか」と大号令を掛けて、製品のクオリティが一変したのは記憶に新しい。

操作感は、同時期に作られていたタムロンなどと比べると、いささかズームの動きが渋く感じられる。トルクも一定ではない。ガタがあるよりはマシであるとはいえ、この辺りの多重カムの作り込みに関しては、タムロンに一日の長がある。ズームリングがボディ側に近く幅も狭いため、やや回しにくさを感じることもあるが、ストレスというほどではない。

蛇足だが、このレンズ、非常にフォルムが美しい。先太りで花形フードを備えた外観には存在感があり、廉価版のレンズとは一線を画している。特に中級機クラスのボディに装着したときに良く映える。なんだかんだ言って、結構長いことお世話になったレンズである。


                 【作 例】













長所

○切り替えが多少面倒だが、DF(デュアルフォーカス)なので、AF中にピントリングが回らないのは良い。
○ことシャープネスとコントラストに関しては、まったく不満がない。ビシッと決まると、非常に鋭利な写りをする。

短所

●確かにフレアは出易い。場面によっては、ハレ切りは必須。せめてタムロン並みの逆光耐性があれば文句ないのに…(T-T)
●ズームリングの動きがやや渋く、かつトルクが一定でない。多重カムの製造技術に関しては、明らかにタムロンが上。


スナッパーへのオススメ度 (10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆

風景派へのオススメ度 (10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆

*タムロンとの比較は避けて通れませんが、今も昔も明らかにタムロンより勝っている部分があるとすれば、
 それは「デザイン」ではないかと思います。少なくともEOSボディの場合、タムロンのレンズはやぼったくて
 どうにも釣り合いません。





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