January 7, 2009
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カテゴリ: 現代社会の問題
●資本主義経済以前の社会では市場はモノの交換の場以上のものではなく、貨幣は価値尺度・交換手段にすぎなかった。異なる社会の間や社会内の片隅に市場があったにすぎない。
●利子貨幣の意志を全面展開しているのが資本主義経済である。この経済システムは市場の論理を元々は市場の外部に存在していた社会の隅々・人間生活全般にまで拡張しようとしている。現代にあって、この資本の命令に最も忠実な思想が新自由主義といえる。

●資本主義社会の市民の権利は「機会の権利」であるため、様々な権利や自由はすべて「持てる者の権利・自由」であって、持たざるものには「実体としての権利」はない。

●新自由主義は規制緩和によって市場の自由の極大化を目指すが、この結果は格差の拡大をもたらす。競争に敗れた者は自己責任をとらされる。元々私的所有物が少なかった者も貧しい親を持ったが故の自己責任とされてしまう。
●私的所有物(私有財産)に依存しない生きる権利のためには、社会の外側が市場を制御する必要がある。人間の生活は本来この市場の外側にあるものであり、市場の唱えるブルジュア的な市民権ではなく、実体的な社会権によって維持されなければならない。

●市民権の強化を訴えてきたのが保守・新自由主義の政権(英国のサッチャー、米国のレーガンやブッシュ、日本の小泉政権)であり、この対極にあるのが社会権を強化してきた北欧諸国の社会民主主義政権である。
●新自由主義では、どのように経済的な繁栄がもたらされようとも、決して経済的にも精神的にも豊かな社会が実現できないどころか、今回のような金融恐慌の招来や環境破壊が避けられない。
●世界同時不況を機に、新自由主義が退潮に向いだしたのは好ましいことではある。新自由主義者の中谷巌は「資本主義はなぜ自壊したのか」で「転向」を表明している。とはいうものの、新自由主義には根深いものがあり、社会権を強化するための高負担・高福祉社会を明確に目指す風潮には未だ至っていない。

●下記の本は哲学塾シリーズの講義形式の本であるが、語り口調の文体で具体的かつ理路整然としているので分かりやすいのではないかと思う。



新自由主義の嘘


●ハイエク等の新自由主義が如何なるものであるか、小泉政権が行った「改革」とはいかなるのであったかが分かるであろう。
●著者が言及しているわけではないが、社会権が要求するものには所得保障としてのベーシックインカム、医療、高齢者・障害者・自動福祉、教育などの社会的サービスがある。新自由主義はこれらを市場化・民営化や自己責任化することを要求するが、社会権はこれらの無料化を要求する。

●私が新鮮に感じた、というよりも認識を新たにしたのは、著者の「私的所有物としての能力は疑わしい」という件である。
●資本主義市場経済は全てのモノを私的所有物として処理しようとする。もちろん、個人の能力も私的所有物として扱う。しかし、著者は次のように言う。

他者の「おかげ」で自分の能力(私的所有物)があるということは、私的所有物だとは言いながらも、他者の「おかげ」だという点では、自分の私的所有物である面が少なくなるからです。
…一般に、自分の労働能力(私的所有物)は他者に「負って」はいても、市場では、この他者に「負って」いる面は忘れられます。
…こうしてみると、当然だと思われがちな能力の私的所有にも疑問符がつきます。逆に、共同という私的所有の反対のことを、個人の能力についても考える必要がでてきます。


●ミルトン・フリードマンは… 両親から授かった才能で稼ぐのは良いが、両親から相続した財産で高収入を得るのは許せないという根拠は何処にあるのだろうか …と居直るが著者によれば、このような個人の才能そのものが社会的なものである。

●著者はどのような社会が望ましいかについては具体的に論じているわけではないが、「共同・共生全般を『能力』の共同性から考える」ことをヒントにしている。
●経済システム、社会保障制度、環境問題の全てが閉塞状況にある中で、なにが問題であるのかをクリアにしてくれる貴重な講義内容である。





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最終更新日  January 7, 2009 03:13:42 PM
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