July 4, 2009
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●E・F・シューマッハーは経済学者である以上に活動家である。学者の書いた本は往々にして、本人提案よりも本人以外の学説などの解説でページ数の大半が割かれているもの多い。その点、シューマッハーは実に多岐にわたる提案をしている。

●第1部の「現代世界」では仏教経済学などの考えが目新しく映る(ポランニーに言わせれば資本主義の方が歴史的には特異な経済システムであるだろう)かもしれない。第2部の「資源」が最も世界的に注目を集めた資源・環境問題に関する論述であり、化石燃料や原子力の利用に関して警告を発している。第3部の「第三世界」では開発途上国のための中間技術開発や世界200万農村対策などを具体的に提案している。第4部の「組織と所有権」では組織の所有権の公有化などを論じている。
●この第4部の「組織と所有権」では、第2章で大規模組織のあり方について触れ、第3章では私企業と対比しながら国有化に関する批判的検討を行っている。

●今回は、このうち組織の所有権の公有化に関して紹介することにした。ここには、組織の社会化に関して私が考えていたのとは異なるアイデアが示されており、未来社会への過渡的な組織のありかたのひとつとして考えられないかと思ったからである。

(2)企業の公共化に関する提案

●シューマッハーは第4部の4章の「所有権」で、R・H・トーニーの所有権についての考えかたを紹介している。

私的財産についていうと、第一の、しかももっとも基本的なことがらは、(a)創造的な仕事の助けとなる財産と、(b)創造的な仕事にとってかわる財産とを区別することである。(a)には自然で健全な要素がある。自営業者の個人財産がそれにあたる。一方、(b)には不自然で不健全な性格がある。みずから働かずに他人の労働に寄生する人の個人資産がそれである。……
「したがって、どんな形態の財産について議論しているのかを明らかにしないで、私有財産に賛成したり、反対したりするのは無益なことである」

…一部の社会主義者が、土地や資本の私有が必然的に有害だと考えているのは、保守主義者がいっさいの財産になにか神秘的な神聖さがあるとするのと同様に、愚かで独善的な形式主義である。

ここでただちに明らかになるのは、私有権の問題では、規模が決定的な意味をもっているということである。小企業から中小企業に変ると、所有と仕事の結びつきはもう薄れてしまう。私企業は私的性格を失うと同時に、地域においては社会的役割をもってくる。その役割は地域を越えてさらに広がるかもしれない。私有財産という概念自体がますますあやしくなってくる。

大規模企業になると、私有権の観念は不合理以外のなにものでもなくなってくる。大企業の財産は実質的には私的なものではなく、またそのようなものではありえない。


●端的に言えば、多数の人々にモノやサービスを提供し、多数の従業員を雇用し、その家族を養う企業を私的に所有(私物化)するというのは不合理なことであるということになろうか。

利権料、地代、独占的利潤、さまざまな種類の剰余金--といった権利は、すべて「財産権」である。こういう財産権に対する決定的な批判は……通常財産権を弁護する際に使われる論拠そのものの中にある。その論拠とは、財産権という制度の意味するものは、労働者にその労働の果実を与えることによって勤勉を奨励するということである。そうだとすると、人が自ら働いた成果としての財産をもつのがだいじであるのとまったく同様に、他人の勤労の成果である財産を手に入れることはやめなくてはならない。

大規模企業のいわゆる私有権を廃止する途はいろいろあるが、いちばんよく知られてのが、ふつう「国有化」と呼ばれている方法である。


(3)国有化の問題

大規模企業のいわゆる私有権を廃止する方途はいろいろあるが、いちばんよく知られているのが、ふつう「国有化」と呼ばれる方法である。
…その言葉は特定の経営形態、つまり政府任命の役人が現役員にとってかわり、その全権を行使するという形態を実際には指すものとなってしまった。


●と分析するが、民間企業側からの批判については、次のように反論している。

民間企業側は、倦むことなく国有化産業はもっと「責任能力」を持つべきだと主張している。これはいささか皮肉といえよう。なぜならば、もっぱら公共の利益のために働く国有企業の責任能力は、今では非常に高まっているのに反して、私的利益を追うものと自認している企業の責任能力はほとんどゼロにひとしいからである。
…と展開していき、国有化の条件を整理していくが、これについては割愛する。

●シューマッハーは、国有化それ自体が問題ということではなく、結論としては次のようなことであろうと述べている。

最後になったが、国有化のいちばんの問題点は、国有化の計画に当たる人たちが行きすぎた中央集権を好む癖のあることである。


●この必然性は組織の内部構造に原因がある。役所は外部からの批判や干渉を受け難い閉鎖的組織であり、同時に命令に基づく官僚機構であるため、組織の設立目的ではなく、組織の権限拡大など組織に貢献する人物や上司に忠実な人間が出世する仕組みになっている。
●このことは、自分の給料や役職を保証してくれるのは市民や消費者ではなく、組織の幹部達であってみれば当然あり、暗黙のうちに作り上げた組織内の論理でしか動かなくっているのである。

<参考>
◆組織一般:未来社会の組織(境界の無い世界3)

●そして次の5章の新しい所有の形態を提案する。





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最終更新日  July 6, 2009 09:56:10 AM
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