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短い間でしたが、急遽このブログを閉じます。本編の「フラワーガーデン」が終わりましたら、「フラワーガーデン2」をこちらで始めようと思っています。引越次第、このブログを閉鎖します。短い間でしたが、有り難うございました。
2006.03.13
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入院したお蔭で私はパワーアップしたようだ。退院して家に帰るなり芳子さんに手伝って貰って、知り合いの花を栽培している農家をせっせと回った。「太一さん。こんなに沢山の球根を集めてどうしますの?」「ふふ。学生に上げるんですよ」「まぁ、それはそれは・・・・・・」芳子さんは感動したようだ。退院し、自宅療養を経てから私は大学に復帰した。学生達はざわめき、私の助手が担いできたゴミ袋のようなものに視線が集まった。「あー、君達。私の入院中のお見舞い有り難う。これは私からのお返しだ」私は学生が各々1個ずつ番号と名前の入った球根を手にするのを確認すると、マイクを握り締めた。「諸君!後期テストだが、今回はなしとする!」学生は喜び、大きな拍手と歓声に教室が揺れた(なぜか教科書も飛んだ)。「代わりに!レポートを出しなさい」急に教室は水を打ったように静まり返った。私は、コホンと一息吐き、彼らをねめつけた。「この球根を育てて、花を咲かせよ!そして、それまでの間のレポートを作成せよ。つぶさに花の成長を記録するのだ。この花は全て君達の手を必要としている。患者も同じだ。いいか、諸君。この花を患者だと思い、慈しみ枯らさないよう大切に育て上げなさい。それが、君達の今回の課題じゃ!では、メリークリスマ~ス!!」それだけ言うと、私は踵を返して教室を後にした。教室からは一斉に怒号が飛び交った。「良かったんですの?太一さん」心配して見に来てくれた芳子さんが不安そうな顔を覗かせた。「これで学生さんの恨みを買って太一さんに何かあったらと思うと、私・・・・・・」「大丈夫ですよ。それに決めたんですよ。死ぬまで、いや、死んでも『僕があなたを支えます』とね。だから、安心して下さい」芳子さんは嬉しそうに微笑んだ。私は漸く、浩介に勝らなければという呪縛から放たれたような気がした。そして、私は芳子さんをそっと引き寄せると初めて安らいだ気持ちで彼女に接吻をした。
2005.12.23
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独逸に留学してから30年近い歳月が流れようとしていた。このままここで果てるもまた人生かと知命を迎えた頃、独逸の総合大学で教鞭を取っていた私に日本から二通の手紙が届いた。1通は、K大学医学部の旧来からの友人の手紙であった。「教授として君を大学に招聘したい。この前は断わられたが、今一度、前向きに検討頂けないものだろうか」そして、もう1通は浩介からであった。「この春に入院したので、今年は独逸に行けない。お前との再会を楽しみにしていたのに、残念だ」心なしか字に弱々しい翳りを感じ、胸騒ぎを覚えた私は急ぎ帰国の途に就いた。久方ぶりに会う浩介はその手紙の内容に反し、元気だった。「なんだ、後100年は長生きしそうじゃないか。帰国して損したよ」こんな恨み節も出る位、ヤツは元気だった。しかし、ヤツの口から出た病名は私を慄然とさせた。「肝臓ガンだとさ。手術は出来ないと言われたよ」こうした中で、ヤツは決して諦める事無く精力的に治療を受けた。私は、大学での講義が終わると出来る限りヤツの顔を見に病室に足を運んだ。ヤツは私の顔を見ると空元気を振り絞って、こう言ったものだ。「事業も立て直したんだ。自分の体も立て直して見せるさ」だが、ガンは徐々に進行し、ヤツの快活な口調をも蝕み、段々、ヤツは悟りの境涯へと向かっていったように感じた。浩介が亡くなる1週間前に初めて私は30年振りに芳子さんと病室で再会した。ヤツは私と芳子さんを前にしみじみと語った。「太一、オレはな。最近は、事業の失敗も、この病も神様からのプレゼントのような気がするんだ。・・・・・・いや、強がりで言っているんじゃない。地獄も天国も己の心次第。全てがオレの中にいるんだ。事業を失敗してから、オレは家族の絆を、病に臥してからは、家族の愛情を真に得ることが出来たんだと思えるよ。今は心が凪いでいるよ」浩介は私と同じ年であったが、私の何十倍もの速度で人生の安らかな境涯を得ているように思えた。浩介の亡くなる1時間前、私はいつものようにヤツの病室を訪れた。混濁する意識の中でヤツは、私に芳子さんと息子の将来を託した。そして、「すまなかった」と言って最期の力を振り絞り、手を伸ばした。
2005.12.07
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私は独逸に留学し、昼夜と無く勉学に勤しんだ。遠きかの地の芳子さんに想いを馳せながら・・・・・・。勉学が気道に乗り、独逸での暮らしにも大分馴染んできた頃、芳子さんと浩介の結婚を知った。失意の中、私はライン川の辺に立ち、ローレライの招きにこの身を委ね様かと落胆の日々を送ったが、医学を志す身で逸れを潔しとせず、今一度、己を律し、ただただ医学への道を極めようとより一層勉学に打ち込んだ。気が付けば、独逸に留学して10年の月日が経っていた。ある日、ふらりと浩介が私の元を訪れた。仕事で独逸に来たと本人は言っていた。そして、「長年恵まれなかったが、漸く男の子が生まれたよ」と嬉しそうに報告した。この頃、浩介の事業は思わしくなく、後のことだが人の噂に失敗と借金を重ねていたと聞く。そのためだろうか。ヤツの顔には年の割には深く刻まれた皺がその経営者としての苦悩を刻んでいた。浩介は陽気に「今夜は飲もう!」と私を連れて飲み歩いた。以前とは違い、浩介からは高慢な態度は消えており、私達はただただ昔話に花を咲かせた。しかし、唯一、芳子さんの話だけは、とうとう、することがなかったように思う。「日本に、帰って来いよ!もっとお前とは語りたいよ」浩介は、豪快に笑い、私達は漸く親友としての親交を温めあったのであった。
2005.12.05
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私はそれから芳子さん、あなたに会いたくて白木蓮の花の下へ何日も通った。口実の白いハンカチを握り締めて。だが、あなたはあの日を限りにそこへ来ることは無かった。そして、私が次にあなたに会えたのは、8年後の浩介の婚約パーティーの席上だった。美しい水色のドレスに身を包んだあなたがワイングラスを片手に私の前に現れた時、これは運命だと思った。あの日の熱き思いを今、告白せん!とワインを持つ手が震え、服が濡れた。そんな私の様子を見て、あなたは、「ワインでお洋服が濡れていますわ」と、やはり白いハンカチを差し出されましたね。そして、「あの時と、一緒ですわね」と、嬉しそうに笑った。「あの・・・」私がそういい掛けた時、浩介がやってきて、芳子さんの腰にそっと手を回した。「よう!太一。俺達の婚約祝いに駆けつけてくれて有り難う」私はその日の夜、酒神バッカスもかくやあらんと言った勢いで盃を重ねた。「あなたのことが忘れられませんでした~。良かったら、私とお付き合い下さぁい・・・・・・。けっ!」私は彼女に言いたかった言葉を酒の勢いを借り、虚しく独りで呟いていた。成り上がりとは言え、巨万の富を築き、財界にも顔が利いていた円城寺家の子息(いや、愚息)浩介と、一介の貧しき町医者の息子の私とでは、格が違い過ぎたのだ。芳子さんは旧華族の血を引く名家の出で、その品の良さと美しさは群を抜いており、「円城寺の大うつけに、あたらあのような美女は勿体無さ過ぎる」との町の人々の評判を聞くにつけ、家の借財の肩に嫁いだ芳子さんの身が不憫でならなかった。私は告白の言葉をぐっと呑み込んで、彼女に相応しい男になるべく、当時としても珍しい海外留学を決行したのであった。
2005.12.04
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私と浩介は生まれつき仲が悪かった。1時間と時間を違わず同じ産院で生まれた私達は、隣同士に寝かせられ、そこでも既にお互いに足を蹴りあっていたと言うからその仲の悪さは筋金入りだ。高等学校に進んでからも、「目が合った!」と、インネンをつけては喧嘩し、「影を踏んだ」といちゃもんをつけては喧嘩ばかりしていた。だけど、二人とも県下で一、二位を争う秀才振りだったものだから、大概のことは先生や親からも大目に見てもらえたものだった。頭は良いが、喧嘩三昧の女っ気なし-----。それが私達二人に唯一共通した部分でもあったのだ。そんな私にある日、マドンナが舞い降りた。学校の帰り道の通り沿いに咲く、白く美しき花に「この花は何と言う名なのだろう」とふと足を止めた。私は柄にも無く、その日習った島崎藤村の詩を口ずさんでいた。まだ上げ初めし 前髪の りんごの元に 見えし時・・・・・・その時、芳子さん、あなたが諳んじる私の声に合わせて、木の梢の隙間から私の前に現れた・・・・・・。私は心臓が爆発しそうな位、驚いたものだった。前に刺したる 花櫛の 花ある君と 思いけり私はこの2文を最後まで読むことが出来ず、ただ芳子さんの美しい女学生姿にぽか~んと見惚れてしまった。「この花は白木蓮ですわ」芳子さん、あなたはくすくすと笑うと、「お口のここに海苔がついておりますわ」と、林檎ではなく真白なハンカチを差し出しましたね。私はその時正に、フォーリンラヴと言うものを知ったのだ。芳子さん。白木蓮の妖精かと見まごうばかりの美しきあなたに、恋の矢で心臓を射抜かれてしまったのです。
2005.12.03
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私が入院したと聞くと翌日、学生達は大いに喜び、祝杯をあげた学生もいたそうな・・・・・・。「退院したら、全員、不可にしてやる」その脅しが彼らの耳に人伝に届いたのか、さらにその翌日、沢山の花が届いた。どの花も鉢、鉢、鉢・・・・・・。壮観なまでの鉢植えの花が届けられた。私に寝付け(根付け)と言わんばかりのあからさまな学生の態度に、退院後の私は復讐を誓った。「太一さん、学生さんにこんなに慕われて良かったですわねぇ」何も知らず芳子さんは無邪気に笑う。私はふぅーっとため息を吐くと、ぼんやりと、天井を見上げながら、2年前に亡くなった浩介のことを思い出していた。「太一、芳子と良介を頼むな」ヤツはそういい残して51年の最期を鮮やかに走り抜けた。亡くなる最期まで芳子さんと、息子良介君のことを気遣い、そして必ずこの病気に克つんだと意欲に燃えていた。それ故、ヤツが、私に芳子さんのことを託したのは亡くなる1時間前のことだった。私は無二の親友を失い、それから2年後最愛の妻芳子さんを得た。ヤツは日々どんな思いでこの白い天井を見つめていたのだろうか・・・・・・。私が天井を見つめながらぼんやりとしていると、芳子さんが不意にうふふっと笑った。「どうしたんですか?」「ちょっとね。浩介さんと付き合うことになったときのことを思い出しましたの」「ほぉ・・・。それは是非聞きたいですね」芳子さんは鉢植えの花に水を遣りながら、にこりと笑った。「実はね。私、昔、太一さんのこと好きだったんです」「はちゃ!!!」私は驚きのあまりぎっくり腰も忘れて起き上がろうとしてしまった。「だ、大丈夫?!」私は駆け寄る芳子さんの手を握り、「そ、それ、初耳ですが!」と、年甲斐もなく大声を上げて叫んだ。「えっ、ええ。もう、30年位前の話ですけどね。太一さんが、留学すると聞いて、実は私、空港まで駆けつけましたの。でも、間に合わなくて・・・。ショックで3日は寝付きましたわ。そうしたら、浩介さん、『僕があなたを支えます』って鉢植えの花を持ってお見舞いにきて下さったの・・・。悩んでそれから更に3日間寝込んでしまいましたわ。」おにょれ、浩介のやつ。そんなこと一言も言わなかったぞ!あいつ、墓場まで持っていきやがったって訳だ。昔、昔のことですけどね・・・と笑う少女時代の面影を宿す芳子さんを見ながら、私も昔のことを思い出していた。
2005.12.03
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許せん!私は片岡君との囲碁で授業を良く忘れるが、学生から欠席されるとむかつくのだ。私が到着すると、教室の前で、授業を受ける権利を主張する学生と、それを追い返しバリケードを築く学生とが反目しあっていた。「何をやっとるんだ!君達は!!」私は群がる学生を掻き分け、一喝すると机や椅子を剥がして投げ飛ばした。「教授!止めて下さい!!我々は教授や学生とやりあうつもりではないのであります!!何もしなければ危害を加えたりはしないのであります!!」この男・・・・・・。私は自慢ではないが記憶力が常人離れしている。一度見たら、名前と顔(女性だったらついでにスリーサイズも)は決して忘れない。「君はこの大学に7年間居座っとる柳田君ではないか!こんなことをしていると来年も留年だぞ!!」「しかし、それでも私は我が身を賭してでも大学側に改善と回答を突きつけて行くつもりであります!!」「戯言を!いいか良く聞け!私はな、あの東大の大学闘争をテレビで見ていたんだ!なめるなよ!!」私と柳田君は授業をさせろ、させないで髪の引っ張り合いの喧嘩になった。「素敵!頑張って、矢部教授!」むっ!君は、出席番号24番、菊池沙織君(B80W60H85)。優を付けてあげようね。「やれ!!柳田!矢部をぶっ飛ばせ!!」むっ!!お前は、出席番号89番、山田宗一郎。不可だ、覚えていろぉ。「太一さん!おやめになって!!」むっ!!!その声は!!!「芳子さん!」私がそう言って、振り向いた瞬間、ぐきっと腰が鳴る音がした。急性腰痛・・・。別名、ぎっくり腰。素早い授業に、素早い診断で有名な私は、素早く呼ばれた救急車の中で全治2週間の自己診断を下した。あいたたた・・・・・・。
2005.12.02
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「教授!な~にやってんですか!!このクソ寒い時に扇風機入れて!!それにこの散らかった答案用紙は何ですか!!」片桐和人は私が点けていた扇風機のスイッチを切ると「おお!さぶっ」と言って暖房機の温度を上げた。「見れば分かるだろう。採点をしとったんだよ」「はぁ?!扇風機と採点と何の因果関係があるんですか?」「いいか。聞きたまえ、片桐君。理論上、一生懸命書いた答案用紙にはた~っぷりとインクが乗っている上、学生の汗と涙が結晶として染み込んでおる。ゆえに質量が重くなり、飛びが悪い。よって直ぐに落ちる。逆に、なぁ~んも苦労しとらん、つまりなぁ~んも書いとらん答案ほど質量が軽く、良く飛ぶと言うことになる」「はぁ・・・・・・( ̄ロ ̄;)」「ほれ。この境界線から向こうまでのよ~く飛んだ答案は不可で、そこから可、良、優・・・となる。これは、我が大学に延々と先輩教授から後輩教授へと受け継がれるありがた~い採点手法なのだよ。その応用編は答案用紙を紙飛行機にして飛ばすと言う少々荒っぽい採点法があるがな。はっはっは・・・」「・・・いつか天罰が下るぜ、ヤブ」私が片桐和人の冷ややかな目を無視して次の授業の準備を始めた頃、私の受け持つゼミの学生が荒々しく戸を開けて飛び込んできた。「きっ、教授!大変です!!一部の学生達が大教室の前にバリケードを築いて教授の授業のボイコットを叫んでいます!!」「何!?」私は白衣を引っ掛けると、取るものも取り敢えず大教室へと走った。
2005.12.02
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10分遅れで講義に滑り込んだものの、右手にワインボトルを握り締めていたため、Dr.矢部の「Dr.」は「ドランカー」の略だと学生に揶揄される始末。しまいには、ドランカー矢部と言う有り難くも無いリングネームみたいなものまで付けられてしまった・・・・・・。部屋に戻ると、片岡和人がテーブルの上に足を投げ出して、気持ち良さそうに惰眠を貪っていた。てぃっ!ヤツの足をテーブルから叩き落すと、悪びれた様子もなくヤツは「もう講義終わったんですか?さすが速攻、ですね。ブーラーヴォー」と言いながら、手をパンパンと叩いて大あくびをした。「あ。そうだ!芳子さんから電話です。『今日は、お夕飯はおうちでお召し上がりになりますか?』とのことです!」私は慌てて受話器を取った。「切れとるじゃないか!」「だから、伝言ですってば。また電話します、って言ってましたよ」・・・全く役に立たん電話番だ。私はこの役立たずを無視して、いそいそと帰り支度を始めた。「いいですね。新婚さんは。楽しそうで」片岡和人は両の腕を頭の上で組むと、再び足をテーブルに投げ出し、椅子をキーコキーコと鳴らし始めた。「羨ましい~だろう。お前も早く身を固めることだな。結婚はいいぞぉ」生意気なヤツは「熱い、熱い」と手団扇をハタハタさせながら勉強を教えに小児科病棟へと行った。私はヤツが去ったのをしっかりと確認すると、急いで電話に手を伸ばした。
2005.12.01
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私は矢部太一。某大学病院の教授にして外科医(と言う肩書き)。研究よりも、授業よりも、ワインを愛すると言う(「患者にも、生徒にもはた迷惑な」←by片岡)齢53歳。そんな私に突然、ロマンスが来るとは、いやはや長生きするもんだなぁ(感嘆詞)!「だーかーらー、やっぱ買いましょうよ!遠心分離機!いい加減、壊れてますよ、あれ!!」片岡和人は、今日も囲碁を打ちながら恩師に向かって生意気な口を利いとる。今日こそは、ヤツを打ち負かして私にひれ伏させてみせる!「そ、ん、な、カネ、はぁ、ない」パチ!「100万円の、ワインを、買う位だったら、買いましょうよっと、王手!」パチ!「んん?!そうだ!片岡君、君のその容貌だったら、新宿のほすとくらぶとやらで、直ぐに遠心分離機くらい買えるぞ。・・・稼いで来なさいよ、っと、・・・む!」パチ!「オレ、今ひとりの女に手一杯なんで、無理です。・・・・・・そろそろ投了して下さいよ」パチ!ま、また負けた。「・・・ありません」私は、「つまんないなぁ~。たまには師匠に花を持たせなさいよ」とぶつぶつ抗議を(講義はしないが)しながらワインセラーからワインを1本取り出した。「これは、DRCラ ターシュ!1989年って、10万円はするじゃないですか!いい加減にしないと、 家裁から準禁治産宣告をされるぞ!ヤブ!!」「そう言うが、君こそこの間、100万円もする私のロマネ・コンティを半分以上も飲んだじゃないか」「・・・・・・あんた、飲んでいいって言ったじゃねぇか」この片岡和人は何かと私につらくあたる。この間の単位を(優)じゃなくて、ただの優にしたのを根に持っているのだ。きっと。まぁ、いい。ここは私が大人になって、この不良少年を正しき道へと導こう・・・・・・。「なぁに、浸ってんだよ。センセ。・・・っつーか!やべぇ!!」「何だ、呼び捨てして・・・。私は矢部教授だ!!」「いや・・・・、じゃなくて、授業!!!生徒、待ってますよ、教授!!」私は齢53歳の老体に鞭打って廊下を爆走した。
2005.11.30
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「いや、それは無理だ」彼は、そう言うとベッドから起き上がった。「それぐらい、叶えてくれてもいいじゃん!」私は最後のお願いに食い下がった。「無理だよ。嫌がる女を無理矢理抱いた上、今度はその気もない女にキスしろってか?!そこまでオレをロクデナシに貶めたいか?」それもそうだけど・・・・・・。「私、かずぼんのことが好きで、今にも死にそうなんだ。だから、心肺蘇生法のつもりでさ、・・・してくんないかな?キス・・・」私は彼のベッドにコロンと横になると、「私のこと、レサシ・アン(心肺蘇生法訓練の人形)だと思ってさ」と、言って目を瞑った。「おーい。リョーコさん、頭大丈夫ですかぁ?!」彼はそう言いながら、私の頭をノックすると、鼻を思いっきり強くつまんで、「この仮病クランケには気道確保の必要すらあっりませーん!」と、笑った。「ひっどーい!けち!いいじゃん、キスくらい!」私は心底自分のものにならない彼にむかついていた。そんな私の心を見透かすように、彼は気まずそうに苦笑いした。「お前とはさ、何年経っても笑って会える同級生でいたいよ。だからさ、オレに手を出させないでくれよ」彼は机の上のバッグを肩に掛けると、「ファーストキスくらい、いつか出会う両想いのやつとしろよ」と言って部屋を出た。何もかもお見通しなんだ・・・。プライドも何もかも捨てて、子供っぽいキスのねだり方をした。だけど、私の精一杯で頑張ったんだ。もういいや!自分の恋くらい自分で蘇生してみせる。私は机の上にある高校の卒業式の集合写真の中で微笑む彼に、「いい女、ゲットし損ねたんだぞ!タァーコ!!」と呟くと、そっとキスをした。
2005.11.29
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気持ちが涙と一緒に零れ落ちた。「ごめんな」かずぼんは、目を閉じて静かに私の気持ちを拒絶した。「オレ、ハルナのことしか考えられない。あいつのことだけで、いっぱいいっぱいだから」「私が好きだって言っても?少しも可能性なし?」「なし」「ちょっと位、入る隙間も?」「1ナノメートルも有り得ない」「ひどい・・・・・・」「ごめん」彼がハルナちゃんを覚悟して抱いたことを知った時から、もう分かっていたのかもしれない。彼は彼女のことを心から愛してるんだってことを・・・・・・「俺が死んだらさ・・・・・・」「灰を海に撒けって?」私は泣き笑いながら茶化した。それもいいなと彼は笑った。「オレの体、お前に献体するから。好きに切り刻んでくれていいから」「・・・生きてる時に献体してよ!」「それはちょっと、っつーか、かなり無理だろう」私達はお腹を抱えて笑った。「失恋してんのに、笑えるなんて・・・・・・。やっぱ、あんたサイコーだわ」笑いが引いて、不思議なことに何だか憑き物が落ちたみたいに心が晴れやかになった。私は、穏やかな気持ちで最後に無理を覚悟で言った。「あのさ。最後に、ひとつだけお願い聞いて」「なに?」「老いては老後のネタ。死しては、墓場のお供ってヤツにするからさ」「なんだよ?」「・・・・・・キスして」
2005.11.29
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あの日からかずぼんは今まで以上に猛勉強を始めた。勉強をする以外は相変わらず大学病院で子供達に勉強を教えていた。彼は、ハルナちゃんを抱いたことを後悔していないよ・・・と言っていたけど、それはウソだ。彼自身が慈しんで大切に育ててきた花を無理矢理手折ってしまった・・・そんな後悔に苛まれている事は、時折見せる彼の表情からも伝わってきた。私が大学へ行く支度をし始めた頃、いつもなら先に起きてリビングでコーヒーを飲んでいるはずの彼の姿が見えなかった。私が、心配して彼の部屋の戸を開けると、彼は真っ青な顔をしてベッドの上に大の字になっていた。「どうしたの?かずぼん!」私が慌てて駆け寄ると、彼はだるそうに手を頭にかざし、「いや・・・・・・。ちょっと、一瞬、気持ち悪くなった・・・。でも、大丈夫だから」と言って起き上がろうとした。「まだ、寝てた方がいいよ。真っ青だよ!」・・・無理も無い。彼はあの日から殆ど何も食べていなかった。多分、寝てもいなかったんじゃないだろうか。私は、もう黙って見届けるのが限界だった。「・・・・・・もう、いいじゃん」「え?」「もう止めればいいじゃん」「・・・・・・」「かずぼん、ちっともハッピーって感じじゃないよ!」「・・・・・・オレはハッピーだよ」「ハルナちゃん、他に好きな人がいるんでしょ?!そのコにあげればいいじゃん!!」かずぼんは肘で上半身を支えるように起き上がると、私に手を上げようとした。「殴れば!」私は彼を睨みつけた。すると突然彼は、一瞬呆気にとられた顔をしたかと思うと、そのまま膝を抱えてくつくつと笑いだした。「な、なによ?!」「いやぁ・・・・・。昔、似たようなことをオレに言った女がいたなって思い出してさ・・・。そいつもこぇ~のなんのって・・・」「そいつって」「チューボーんときのモトカノ」彼は体を丸めると膝に顔を埋めながら「はぁ~」と吐息を漏らした。「悪りぃな。リョーコ」彼は顔を膝に埋め、両腕で膝を抱えながら私に謝った。「???何が?」「・・・・・・お前、俺のことが好きなんだろう?」そう言うと、彼はゆっくりと顔を上げ、真っ赤になっている私の目を見つめた。
2005.11.29
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翌日から、私は熱を出して寝込んでしまった。あの日、飯島剛に謝罪すると私は重い気持ちで駅に向かった。その時、初めてお財布を忘れていることに気付いた。私は仕方なく、というよりは半ばヤケになって豪雨の中マンションまで歩いた。「バカじゃねぇーの。電話すりゃ迎えに位行ってやったのに!オレ、迎えに行かないほど鬼畜じゃないし」医者の卵のかずぼんは私の頭にべしっと濡れタオルを置くと、またあのニヒルな笑いを浮かべた。ああ、チクショー。やっぱ、好きだ・・・・・・。「あの日、用があるとか言ってたけど、ハルナちゃんとあの後逢ってたの?」熱の勢いを借りて、一番聞きたくないことだけど、でも一番気になることを私は聞いてしまった。「ああ。会った」かずぼんは本棚に手を伸ばしながら、私の部屋にある辞書を手に取ると「借りるよ」と言って部屋から出ようとした。そして、ドアノブに手を掛けると「オレ、あいつ抱いたから」と私に背を向けながら言った。「え?!抱いたって・・・・・・」「半ば、無理矢理だったけどな」私はショックのあまり言葉が出なかった。「どうしてそんなひどいことを・・・・・・」「抱かなかったら俺は一生あいつの『いいおにぃちゃん』のままで、あいつがトオルってヤツのものになるのを指をくわえてみているだけなんだ。だけど、抱けば一生憎まれても、あいつの中でオレは『男』として刻まれる・・・・・・。同じ後悔をする位だったら、オレは後者を選ぶ」私はそこまで悲壮に満ちた彼の決意の前にもう言葉が続かなかった。「でも、そんな卑怯なオレをあいつは愛していると言ってくれた。・・・・・・地獄のような天国だな」そう笑うと、彼は目を伏せたまま部屋を去った。
2005.11.28
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かずぼんが珍しく「ドライブに行こう」と言った。トビキリのおめかしをして、さり気なく彼の車の隣りに乗った。私はこの状況に舞い上がって、お財布を忘れていることにも気付かなかった。かずぼんが連れて行ってくれたのは海岸線沿いのとあるプリン屋さんだった。ビーカーに入った大きなプリンを二人で頬張りながら、海の上を飛ぶカモメを見ていた。暫くすると、「遅れてごめん!」と言いながら、同じクラスの飯島剛が入ってきた。何故彼が?!と言う疑問は直ぐに解かれた。かずぼんは飯島君がいかにいいヤツかを説明すると、「じゃ、オレ、用があるから」と席を立とうとした。私は、テーブルの下で膝の上に引いたハンカチを強く握り締めると、去ろうとする彼に向かって叫んでいた。「私!好きな人いるから!!」かずぼんは、「え?!」っと小さく声を発すると驚いたように振り返った。「その人、恋人いるけど・・・・・・。私、奪うつもりだから!」「・・・・・・こぇー、オンナ・・・。ま、健闘を祈るよ」「本気だから!!」「・・・・・・」彼と私の目が正面からぶつかった。勘のいい彼のことだ。さすがに気付いたかもしれない。「へぇ~・・・・・・。やれるもんなら、やって見なよ」彼の目は冴え冴えとして、冷笑さえ浮かべているように見えた。
2005.11.27
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片岡和人は他の人から見れば、きっとすごく女慣れをしている男だという印象を受けたと思う。実際、彼を古くから知るの友人達の語る彼の過去の女性遍歴は凄まじいものだった。だけど、私が彼と一緒に同居してから見た女性の影はハルナちゃんただ1人だった。彼とハルナちゃんはきっと上手く行くだろうと内心私は落胆していた。ところがある日、彼の口から、ハルナちゃんには彼以外に想いを寄せている男の子がいるらしいと言うことを聞いた。ごめん。かずぼん。正直、私、ラッキーとか思っちゃった。フラれろー!諦めろ!とか思って喜んじゃったんだ。だけど、かずぼんは凄く無口になるし、時折、苦しそうな目をしていることに気付いたんだ。そして、溜息の数だけかずぼんが、私が入り込む隙間も無いくらい、ハルナちゃんのことを想っている事が伝わってきて・・・・・・。私も苦しくなった。それだったら、ハルナちゃんと上手く行ってハッピーな顔を見せてくれる方が私も諦められるし、その方が、温かい気持ちで祝福できるのかもしれないのに・・・と自分勝手にも、そう思っていた。私はハルナちゃんになりたかった。彼の視線を釘付けにしておきながら、それでも他の男の子がいいと言う彼女を理解できないでいた。私が彼女だったら、かずぼんをこんな風に苦しめたりしない・・・・・・。私は、息が苦しくなるほど、彼女を羨み、そして嫉妬した。
2005.11.27
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私は、徐々に片岡和人に対しての想いが募っていった。笑うとちょっと右端の口角がちょっとだけ上がる所とか、煙草を吸う時、少しだけ苦そうな顔をする所とか、照れ笑いした後に、目線を上げた時の顔がセクシーなところとか、・・・とにかく、彼に恋をせずにはいられなかった。だから、あの日、ドキッとした。「かっずぼ~ん!たっだいま~!!」私が、マンションに帰ると、いるはずの彼の気配が無かった。「おーい!いるんでしょ。夕飯買って来てあげたぞぉ。一緒に食べよー」そう言いながら、ドアをノックして、彼の部屋のドアノブに手を掛けた。・・・鍵が掛かっていた。寝ているのかな?私がリビングで夕飯を食べようとし始めた頃、片岡和人は部屋から現れ、それから程なくしてハルナちゃんが泣き腫らした目で出てきた。二人の間に何かあったことは明白だった。私はそれから数日経ってやっぱりどうしても気になって、あの日のことを彼に切り出してみた。正気では聞けないかもしれないから、ビールを買って、二人で飲みながらさり気なさを装って。「あのさ。言いたくなったら言わなくてもいいんだけどさぁ・・・・・。ハルナちゃんと何かあった?」「・・・・・・」「ハルナちゃん、泣いた目をしてたから気になって・・・」「・・・抱いた」「ん?」「抱いたんだ」この彼の言葉はとてもショックだった。でも、私は努めて平静を装って、質問を続けた。「え?!ついに・・・ヤッちゃったの?!」軽く聞いているように自然に振舞ったけど、声が上擦っているのが分かった。「いや、正確には未遂だけど・・・」「そーだったんだ。それで・・・か」私のビールを持つ手がカタカタと震えた。
2005.11.26
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片岡和人は、驚く位勉強熱心だった。夜中もテスト前でも無いのに、煌々と灯りを点けて勉強をしていた。成績がとても優秀だと言うことで、良く交換留学の話も出ていたようだけど、彼は頑ななまでに固辞し、黙々と日本での医学の勉学に勤しんでいた。そんな勉強熱心な彼も講義が終わると物凄い勢いで、教室を後にしていた。きっと、ハルナちゃんとデートでもするんだろう・・・・・・当時、私はそんな風に考えていた。ところがある日、彼が私から講義ノートを借りたいと言っていたくせに、それを忘れて猛ダッシュで帰るから、ついに後をつけてしまった。ハルナちゃんとラブラブなところをみてどうするつもりなの・・・・・・私は行動と相矛盾する考えに動揺していた。でも、そんな私の心配とは逆に片岡和人が向かっていたのは病院だった。「え?なんで、インターンでもないのに・・・」私が、彼の後を付いて観てみると彼は立派に小学生や中学生の教師をしていた。私は側を通り掛った看護士さんを捕まえると、「彼はいつもここに来ているんですか?」と尋ねた。「彼?ああ、カズト先生ね!そうね、高校生の時から毎日かしら・・・・・・。ここで先生をしているか、でなければ矢部先生と囲碁をしたり、リハビリセンターで患者さん達のサポートをしているわ」と、気軽に応えてくれた。そうだったのかぁ。やばい。どうしよう。こんなにかっこいいとこ見せるなんてずるい。どんどん好きになってしまいそうで・・・どうしよう。
2005.11.25
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「オレ、片岡和人。あんたは?」「私は、崎山涼子。リョーコでいいよ」「ホントは、男が良いんだけど、もう時間ないし、あんたさえ良ければ決めたいんだけど」ホントは、男が良い・・・って、もしかしてこのヒト、ホモ??と思ったけど、言葉を飲み込んで、「宜しくお願いします」と頭を下げた。「じゃ、同居に際しての条件は、干渉なし、セックスなし、でどう?」「お・・・・・・、おっけぇ」なんて露骨に言うヒトなんだろうと、ドキリとした。でも、この彼が言うとサラっと自然体で聞き流せるのが不思議だ。翌日、彼も私もマンションのリビングを通って振り分け式の右と左に引っ越してきた。彼は手伝いと言うことで、1人女の子を連れてきた。「こいつ、ハルナ。まぁ、オレの妹みたいなもん・・・かな?」彼女はちょこりと挨拶をした。流れるようなさらさらとした栗色の髪に、くりくりとした可愛い目をした女の子。・・・つまり、私とは真逆タイプ。男の子が真っ先に好きになるタイプだ。彼もハルナちゃんが手伝ってちょこまかと動く様子を愛おしそうに見つめていた。・・・なぁ~んだ。そう言うことか。いるんじゃん。カノジョ。一目惚れから2日目で失恋なんて・・・。
2005.11.25
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「片岡和人・・・か」私は「ルームシェアしませんか!」の張り紙を大学の掲示板から剥がすと、そのマンションへと向かい、目指す部屋の呼び鈴を押した。「はい。どちらさん?」「あの。ルームシェアの張り紙を見てきたんですけど・・・」鍵を開けて中から出てきた男性に私は息を呑んだ。・・・か、かっこいい・・・・・・。野性味がある独特な声といい、澄んだ黒目がちの瞳といい凄くいい・・・。全部が私の好みだ。そうだ。この人、誰かに似ている・・・。俳優の何て言ったっけ。思い出した!柳楽優弥って子を大人にしたらきっとこんな感じだ。「君、女の子に見えるんだけど・・・。男とルームシェアしても平気なの?」気だるそうに玄関のシューズボックスに寄り掛かりながら、彼は尋ねた。・・・しかも大あくびしている・・・。でも、背は高いなぁ~。きっと185cmはあるかも。私が見惚れてると、「・・・聞いてる?君?」今度はあくびを噛み殺しながら尋ねてきた。「あ。えーと、平気よ。今まで男と同棲もしたことあるけど、トラブルなし」「へぇ~!かっちょいー!」彼はヒューと口笛を吹いた。・・・同棲なんて、口からでまかせ言ってしまった。男とルームシェアなんて平気ってことを強調したかっただけなんだけど、やり過ぎた。ホントは、このボーイッシュなショートヘアとさばさばした性格が災いして、カレシいない歴19年を更新中なのにね。
2005.11.25
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啓太は叩かれた頬っぺたを押さえながら、「ファーストキス?!なのか」と、更に間抜けな顔で言った。「まじ!まじ?まじ?!」啓太はすんごく嬉しそうに質問を畳み掛けた。「まじで!」私はヤツの右頬もぺちっと叩いた。「じゃぁ、っさ。つぐみはどういう風にしたいんだよ」と、急に真顔で聞くから、「そうだなぁ~。やっぱ、桜の花びらが散る中で・・・っていいかもなぁ~~」なんて、言ってみた。「おい!待て!今、11月だぞ!5ヶ月も先じゃねーか!!」「それ位、待てよ。こっちなんて、17年も待ったんだから」私達はお互いに睨み合いながら、そして笑った。「よし。分かった。じゃ、4月桜の下でだな。すっげーキスしてやるからな!期待しろ!!」そう言うと、啓太は私のほっぺにキスをした。「まっ、まぁ。今はこれで我慢すべっ。うん」と、耳まで真っ赤になりながら、独り言を言った。私は「ばぁーか」と言うと、啓太の首に手を回し、唇にちょこんとキスをした。「桜が咲くまでなんて、私だって、待てないし・・・・・・」私は真っ赤になって啓太を上目遣いで見つめた。啓太は嬉しそうな顔で、「オレも・・・無理」と言うと、指で私の頬の輪郭をなぞり、私にとろけそうな位、優しいセカンドキスをしたんだ。
2005.11.25
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啓太は深~~~い溜息を吐くと、遅刻切符をヒラヒラさせながら言った。「つぐみ。まぁ、まずは気長に友達から始めよう・・・」「え?!既に友達だと思ってんだけど」「え?!じゃ、じゃぁ、とりあえず恋しよっか」「え?!恋してんだけど・・・」「え?!誰に?」私はそろりと人差し指で目の前のドンカン野郎を指差した。「オレ?!」「オレ!」「なんで、それを早く言わねぇーんだよ!」「いや、先に今、言われたし・・・」啓太はサイコーに間抜けな顔して、相好を崩しながら、「うわぁ~、まじぃ・・・・・・?すんげー嬉しい・・・・・・いつから??」と、ニヘラけた。「ずーーーーーーーーーーーっと、前から。あんたがカノジョと付き合う前から」次の瞬間、めちゃくちゃ盛り上った啓太はそっと頭を傾けると顔を近づけて、キスをしようとした。私は、両手で咄嗟にヤツの唇を押さえつけた。「何だよ・・・。この手ゎぁ?」「いや、何となく・・・・・・」「キスさせろよ!」「じゃ、もっと、盛り上げろよ!私はファーストキスなんだから!!」と、言うと同時に啓太の左頬に大きな平手の手形をつけてしまった。
2005.11.24
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「ちょっと待ってよ!」私が叫んでも啓太のヤツは無視した。私は慌てて、靴を脱ぐと啓太の頭めがけて投げた。スパコーン!やたっ!命中!啓太は振り向くと烈火の如く怒った目をしていた。「てんめぇ!やっぱ、コロス!」啓太は猛ダッシュして私の元に戻ってきた。「待って!冷静に!!冷静に・・・」「させねぇのはてめぇの方だろう!」「ってか、カノジョは?付き合ってるじゃん、今」この話題を持ち出すと啓太は突然トーンダウンして、「ふられた」と、ぼそっと言った。「げっ!何で???もしかして・・・失敗した?」今度ばかりは啓太のゲンコツを交わし切れなかった。「お前といるとさ・・・・・・、オレって、常にアドレナリン大放出じゃん?したらさ、なんか物足んなくてさ。他のオンナが。なんか、こう・・・手応えがないっちゅーの?」「それって、コクってんの?おとしめてんの??」「だけど、なんかお前ってやっぱさ、凶暴じゃん。冷静になったら、まだ止められるっちゅーか、間に合うっちゅーか」すると体育座りをしながら、話している私達の目の前で、校門がガラガラと閉まる音がした。「いや、もう間に合わないだろう・・・」そう言いながら、センセーが遅刻者切符を私達に手渡した。
2005.11.24
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す、好きって言った?!もしかして、それ私のことを好きって言ったの?そう言いたくてもあまりのぶっ飛びな展開に声が出ない。「何、パクパクしてんだよ。てめぇは金魚か?!」「きっ、金魚言うな!そっちこそ、なに、カミングアウトしてんだよ!」「おっまえなぁ~!オレをオカマにでもする気か?間違った使い方してんじゃねぇーよ」これはもしかして、コクハクタイムってヤツ??ウソでしょ。マジで??「ホントに、マジで・・・、マジで、コクってる?」そう言うと、私は、啓太の頬にそっと両手を当てた。そして、思いっきり渾身の力を込めて引っ張った。「いっでぇーーーー!!!!なにすんだよぉ!!!このバカオンナ!!!」「やっぱ、これって啓太なリアクション!間違いない。」「・・・・・・いや、やっぱ、さっきのは忘れてくれ、ってわけで失礼」ヤツは、敬礼するとそのままスタスタと門に向かって歩き出した。
2005.11.24
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朝、私がガッコーに行こうとしたら、目の前を啓太のヤツが歩いていた。・・・バイクどうしたんだろう。そう思ってはっとした。いいじゃん!そんなこと!!後姿見るだけで、むかっ腹立ってくる。スンゴイ勢いで私はヤツの隣りを駆け抜けた。「おい!つぐみ!!」無視無視。「待てってば!」無視無視無視。「オレが呼んでんだろう!!」無視無視無視無視。「少しはオレの話も聞けよ!」・・・・加速装置!!「あんにゃろ!元野球部の俊足をなめんなよ」私達は校門までバス停4駅を全速力で駆け抜けた。「はぁ、はぁ、はぁ・・・。な、・・・なん・・・で、お・・・いかけて、はぁ、はぁ、くんのよ!!!」「し、っしっかた、はぁ・・・はぁ・・・ない、っだ、はぁろぉ!!」(解説)つぐみ「なんで追い駆けてくんのよ!」啓太「仕方ないだろう!」(以上)「言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」私はチョップの形を作って身構えた。「分かったよ。言うから、お前も聞けよ」「おう!」「・・・・・・・じゃなくて」「だからなん何なのよ」啓太は、今まで見た中で最も最悪のブッスイ顔をして言った。「はぁ~。ったく!何を血迷ってこんなオンナ好きになっちまったんだろう・・・」
2005.11.23
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今日帰りに啓太が珍しくバイクに乗せてやるから帰ろうって言ってきた。ホント、珍しい。「カノジョは?」「カンケーねぇよ」「ふーん・・・」「何だよ?!」「喧嘩した?」私は啓太に思いっきりみぞおちにけりを入れられた。「これでも女の子なんだぞ!大事にしろ!!」「だったら、それらしくしろ!!」「そんなんだから、カノジョと喧嘩するんだよ!」そう言ったら、啓太のヤツ、ぷぃっとそっぽを向いて、「おめぇなんかもうぜってぇー後ろに乗せてやらねぇ・・・」「え?だって今、乗せてくれるって言ったじゃん」「気が変わった。1人で帰れ」・・・1人でバイクに跨って帰っちゃった。なん!なんなんだよ!!乗ってけって言ったり、乗せねぇーって言ったり。そんなんじゃ、こっちだって素直になれないじゃんか。「あー!このおねぇちゃん、泣いてるよぉ」小さい子供が私を指差した。あんなヤツの言ったことで泣いてたまるか!喧嘩上等!買ってやろーじゃん!!
2005.11.23
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私には2つ年上のアネキがいる。リョーコって言って、今、男と同棲中。おっと、違う同居って言ってたっけ。K大の医学部に言っているんだけど、家が遠いのでマンションを借りているんだ。そのマンションを男のヒトとルームシェアしてるとか何とか・・・。それって同棲とどう違うねん( ̄ロ ̄;)啓太はリョーコ姉が家に帰ってくると、必ずうちにやってくる。ショートカットの姉御肌。ちょっと切れ長気味の二重が美しいと評判。啓太はそのアネキに憧れているらしい・・・。曰く、「てめぇとは大違いだ!」だとさ。悪かったな。アネキみたいにキレイじゃなくて。私がすねていると、アネキのヤツ、「啓太のこと、好きなんでしょ?そんなままの態度だと、いつまでも伝わんないぞ!」って言いながら、ふーっと煙草の煙を私に吹きかけた。
2005.11.23
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「乗れだぁぁぁ~!?ざーけんな(人の気も知らないで)」私は啓太の無神経さになんか腹が立って、背中を・・・蹴った。「おっまえなぁ~!いってーだろぉ?人の親切を踏みにじりやがって!」啓太は服についた土埃を払うと、「可愛くないオンナ!」と言いながら私にウェスタンラリアートをかますと、首に腕を巻きつけ、引き摺るように家まで連れて帰った。「葉っぱ如きの分際で!いいか!!今日のことは恩を売ったんだからな!覚えとけ!それから!!死ぬほど感謝しろ!!」私達はお互いに「ばーか!」と言い合ってあっかんべぇをしながら別れた。・・・・小学生か私は・・・。もう、きっと告るなんてゼツボー的だ。そんなことしたら、啓太はきっと抱腹絶倒で、とっとと死ぬだろう。あーもぉー。なんか余計に、モーレツにむかついてきた。
2005.11.22
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「おい!葉っぱ!!」多摩川の土手をこそこそ帰っていると、啓太が私の頭にバッグを投げつけて言った。「大丈夫かよ!?舞台から落ちた時、足くじいたんじゃねぇの?」「葉っぱは今、ヒジョーに落ち込んでるんです!そっとしといて!」・・・カワイゲのない葉っぱだ。可愛い女の子なら、目をキラキラさせて、きっとこう言う・・・。「啓太君、心配してくれて有り難う!」この一言が言えるか言えないかがカノジョになれるかなれないかの分かれ目だな、きっと。・・・それ以外にも要因はあると思うけど。啓太は「ん!」と言って顎をしゃくるとしゃがみ込んで、「おぶってやるから乗れ!」と命令した。
2005.11.22
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私、つぐみ17歳。トリエなし。胸なし。彼氏なし。そんな私の唯一の幼なじみの啓太は、同じく17歳。スポーツ良し。頭良し。顔良し。だ・か・ら、彼女あり。し・か・も、チョー可愛い。つ・ま・り、私とは大違ーい。今朝も、彼女をバイクの後ろに乗せてM高校までラブラブタンデム。こんなヤツに悔しいことに片想い歴17年。その啓太が今年の文化祭の王子様役に当然選ばれた。私はその啓太が乗る馬に蹴られる葉っぱ役だ。少しでも存在をアピールしようと思って、葉っぱなりに考えて、跳ねた。・・・ウケタ。いつも私はこんな風に脇役。啓太が脚光を浴びている間もせっせとなんとか光のオコボレに預かりたくて、ピョンピョン跳んでいるんだ・・・。啓太には分かるまい!でもいつか主人公になって、啓太とラブラブになれたら幸せなんだけど・・・。っつーか、彼女いるけど・・・・。願わくば、セカンドじゃなくて、トビキリの本命になりたいな。
2005.11.22
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