Flatのガンプラ製作日記

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ゲルググ考察(Up 04/10/06)


第2章:<考察>「あと1ヶ月ゲルググが早ければ」は本当か?
第3章:なぜゲルググのロールアウトは遅れたのか
第4章:ゲルググの実戦デビューが遅れたもう1つの理由
最終章:どのくらいゲルググの生産が早まればジオン軍は勝てたのか?

第1章:ゲルググというモビルスーツ



ゲルググである。完成度としてはかなり高い。
ジオン軍初の携行型ビーム兵器を装備したモビルスーツであり、
そのライフルはガンダムのビールライフルを凌駕する能力を持つ。
機動性も十分だ。スラスター推力だけなら、ガンダム以上。
さらにシールドにはコーティングが施されており、ある程度の
ビーム兵器に抗することが可能だ。
要は「連邦の白い悪魔」と恐れられたガンダムを追いつき、追い越せの勢いで
開発を続けてきたジオン軍の到達点とも言えるモビルスーツである。
しかし、完成がいかんせん遅すぎた。完成は終戦の2週間前。
これじゃあ、ゲルググの操縦を訓練する時間がなさ過ぎる。
その上、それまでに多くの熟練パイロットを失っていたジオン軍は
そもそもゲルググに乗せるパイロットすらまともに確保できない状況で、
最新鋭のモビルスーツに学徒兵を乗せる始末である。
それでもゲルググはア・バオア・クーの最終決戦に出撃した。
新米な上、訓練も十分に受けていないパイロットを乗せて。
そして、たいした活躍も出来ずに終戦を迎えた・・・

そのため、「あと1ヶ月ゲルググの完成が早ければ1年戦争も
どうなっていたか分からない」と言う声も聞かれる。

第2章:<考察>「あと1ヶ月ゲルググが早ければ」は本当か?



さて、考察である。確かにゲルググは高性能である。しかし、単純に考えれば
高性能=高価格である。
はたして、ガンダムに匹敵する能力を保有するモビルスーツをばんばん量産
できるだけの経済力がジオン軍に残されていたのであろうか?
仮に生産できたとして、果たしてジオン軍は連邦軍に勝てたのだろうか?

残念ながらジオン軍の国力は連邦軍の30分の1と言われている。
その30倍の国力を持つ連邦軍ですら、「ガンダムの量産は無理!そこそこの
強さのGMと援護兵器を量産した方が良い」という結論を下している。
ゲルググがガンダムの(いや少なくともGMの)30倍強ければそれはそれで価値が
あるが、残念ながらそこまではいっていない。

仮にゲルググがGMと同価格で生産できるとしても、連邦軍はゲルググ1機をGM
30機がかりで破壊すれば良いのである。ゲルググのすべてにシャアが乗っている
のならまだしも、通常のパイロットではさすがに持ちこたえられそうもない。
その上、ゲルググのほうがGMより高価なのだ・・・

結論!
ちょっとくらい強いモビルスーツがあと1ヶ月早く量産されても
敗戦を遅らせることは可能であっても覆すのは難しかった


第3章:なぜゲルググのロールアウトは遅れたのか



ゲルググが実際にロールアウト(実戦配備されて使える状態になること)されたのは
終戦の2週間前だが、ゲルググ自体の開発が完了したのは実はその1ヶ月ほど前だと
言われている。
開発は完了していたのに実戦配備されなかった!
なぜか? (ギレンの演説風)
それは「われわれが正義だからだ」ではもちろんなく、武器が開発できていなかった
からである。

ゲルググの売りはもちろんビームライフル。これを手に入れることでジオン軍は
ガンダムと肩を並べるモビルスーツを手に入れられると考えていたはずである。
しかし、ゲルググ自体は完成したが、ビームライフルが完成しない。
いや、厳密にはエネルギー供給システムの小型化が遅れていたのである。

ジオン軍はビーム兵器の小型化を重視していなかったのかもしれない。
というのもジオン軍のビーム兵器構想はモビルアーマーに統合されていたのである。
ジオン軍は大型だが、高機動力、大火力を保有するモビルアーマーによる一撃離脱戦法と
小回りの効くモビルスーツによる相乗効果を狙っていたのかもしれない。
この思想に基づいて開発されたのがモビルアーマー「ビグロ」である。
ビグロにはアムロが失神するくらいの機動性と、大火力のメガ粒子砲が搭載されており、
上記の設計思想そのものであるが、裏を返せばモビルアーマーのような大きな図体が
なければビーム兵器を搭載できないくらい小型化に遅れをとっていたということなの
である。

余談だが、

ジオン軍は当初モビルスーツ開発において連邦軍より10年進んでいるとまで言われた。
しかし、連邦軍がV作戦を発動し、鹵獲したザクを徹底的に解析し、ザクを大幅に
上回るモビルスーツを開発することに成功する。しかもその際、ジオン軍のザクの武装を
大幅に上回る能力を持つ携行型ビーム兵器まで開発してしまうのである。
この辺で既にジオン軍はモビルスーツ開発に関するアドバンテージを失っていたのであろう。
ジオン軍はこれを見て、ビームライフルの開発に着手したのかもしれないが、前回も
述べたとおり国力1/30のジオン軍は30倍働く武器を作らなければならなかったのだ。
開戦時、艦船及び戦闘機しかない連邦軍に対して、たとえザクであってもモビルスーツは
まさにその国力をも覆すほどのカルチャーショックをもたらす兵器であった。
(ルウム戦役の圧勝がそれを物語っている)
しかし、両陣営がモビルスーツの量産化に成功した時点では携行型ビーム兵器を持った
モビルスーツごときでは大きなインパクトを与えることは出来なかったのである。

第4章:ゲルググの実戦デビューが遅れたもう1つの理由



まずは 1年戦争の年表 を見て欲しい。
年表を見て疑問に思ったことはないだろうか?
ジオン軍がビーム兵器の生産を開始したのは11月下旬、ゲルググが
ロールアウトされ始めたのは12月中旬である。
で、ソロモン攻略戦は12月24日でア・バオア・クーは31日。
ロールアウト後のはずなのにソロモンには1機もゲルググが配備されず、
わずか1週間後のア・バオア・クーにはしっかり配備されている・・・。
なぜ?
ソロモンが陥落すれば後がないのは明らかである。
なりふり構っていられないはずでロールアウト直後だろうが訓練が
足りなかろうが多少なりともゲルググが配備されてもおかしくない。
しかしアニメを見る限りソロモン戦ではゲルググは登場しておらず
セイラもア・バオア・クー戦で自身の射撃を身軽にかわすゲルググを
見て「さすがジオンの新型・・・」と漏らしている(直後に撃破して
いるけどね)。
ここに至ると、理論的な説明は不可能である。あるのは腹黒い謀略の
匂いである。
ここでジオン軍の体制を見てみよう。総帥にギレン、その下に宇宙攻撃軍、
突撃機動軍、地球方面軍と3軍体制になっており、それぞれ軍団長にドズル、
キシリア、ガルマが任命されている。
ガルマは分かりやすいが、ドズルとキシリアの分担は異常である。
なんとモビルスーツをキシリアが担当し、艦艇をドズルが担当している
のだ。本来連携して運用されなければならないモビルスーツと艦艇が
別の軍になっているのだ。ガンダムヒストリカによるとモビルスーツに
否定的だったドズルと積極的に運用を図るキシリアが対立し、ギレンが
軍を分割したとある。
ゲーム「ジオンの系譜」のオープニングを見る限りルウム戦役を指揮した
のはドズルであり、ルウム戦役の勝利はモビルスーツの活躍に他ならない
わけで、ドズルがモビルスーツに否定的だったとも思えないがキシリアと
の対立が深刻なものだったのは間違いないようだ。
そう考えるとソロモンを防衛していたドズルのもとに最新鋭機のゲルググは
おろかザクすら増強されずビグザム1機だけだったのも納得がいく。

ドズルは見捨てられたのだ。

かくしてゲルググの実戦配備は遅れ、ソロモンはあっけなく陥落した。

余談だが、キシリアの態度は戦争に勝つ気がないように見えるため、理解
しがたいが、キシリアは(マ・クベは)あの頃にはすでに戦争で勝つ気は
なかったのであろう。自身がいかに良い条件で終戦を迎えられるか、という
政治的、経済的な勝利を目論んでいたのであろう。
でなければソロモンが陥落したと知って、「ソロモンが落ちた、か」なんて
冷静に言っていられないはずである。

最終章:どのくらいゲルググの生産が早まればジオン軍は勝てたのか?



2章で述べた結論を再掲する。

結論!
ちょっとくらい強いモビルスーツがあと1ヶ月早く量産されても
敗戦を遅らせることは可能であっても覆すのは難しかった


この結論は「終戦1ヶ月前ではジオン軍はすでにモビルスーツに関する優位性を失っており、
ビーム兵器を有するモビルスーツをいまさら作っても、事態を好転させるまでには至らない」
ということである。

というわけで今回のお題である。はたしてどこまで遡れば歴史は変わったのだろうか?
まず考えられるのは、サイド7を襲撃する際にすでにゲルググだったら・・・
これは結構良いかもしれない。ザクでは素人が操縦しているはずのガンダムに赤子の手をひねる
ようにやられたが、ゲルググなら逆にガンダムがひねられたかもしれない。
かくして、RXシリーズは全滅、ホワイトベースも破壊。めでたしめでたし・・・
・・・
・・・
となれば良いが、仮にRXシリーズを破壊できたとしても戦争に勝ったわけではない。
年表には書いていないが、7月にはGMの試作機ができている(量産化開始は10月)。
RXシリーズの実戦データがなくなってしまうのは確かに惜しいが、連邦軍はRXシリーズで戦局を
覆そうとしていたわけではない。GMによる物量作戦が狙いである。
RXシリーズは確かに1年戦争の終結の早期化に多大な貢献をした。しかし、RXシリーズが、アムロが
いなければ戦争が終結しなかったわけではない。連邦のメインはガンダムではなくGMであり、
一人の英雄の奮闘ではなく、その他大勢のみなさんの地道な努力である。
試作機&データ収集機が大活躍したのは連邦からすればうれしい誤算にすぎず、裏を返せばいつ
RXシリーズが破壊されても、構わなかったわけだ。
(もちろん多大なコストをかけて作ったわけで痛いことは痛いが)。

極端に言ってしまえばガンダムを破壊しても戦争には勝てないのだ。

最後の手段。1年戦争開始時まで戻ってみる。
開戦直後、ジオン軍はルウム戦役で連邦軍を圧倒した。モビルスーツを持たない連邦軍には有効な
対抗手段がなかったのである。ジオン軍の使用している機体がザクでもこれである。ゲルググなら
すごいことになっていたであろう。
しかし、問題が2つある。
・連邦軍は開戦前からジオン軍のモビルスーツの存在を薄々察知していたようだ。
 ただし、その危険性を理解していたのはレビルだけであり、連邦の多くはその存在を軽視していた。
 その結果がルウム戦役であるが、仮にルウム戦役の際に使用するモビルスーツをゲルググまで
 洗練させようとすればそれだけ時間がかかる。時間がかかればかかるほど連邦にモビルスーツの
 危険性を察知される可能性が高くなる。ザクが完成した時点あたりがモビルスーツの存在を
 隠しておく限界だったのではないだろうか?
・モビルスーツが強くなれば戦闘に勝つのは容易になる。しかし、戦線を維持するためには頭数が
 必要である。ザクですら地球圏の戦線をある程度広げたところで慢性的な不足状態に陥った。
 ゲルググにしたら1機の能力は上がるかわりに数は減ることになるだろう。
 これではますます地球圏で「戦争に勝つ」ことは難しくなる。
 (戦線を狭めることで負けないことは可能かもしれないが、それだけでは意味がない)

以上から考えると、艦艇相手であればモビルスーツはザクで十分であり、ザクの完成時に開戦を
決意したのはベストなタイミングであったろうと思われる。

しかし、ジオンの国力を考えれば電撃戦で早期終戦を迎えられなかった時点で敗北ということだった
のであろう。戦いが長引き、戦線維持が必要な戦争になってしまうと、ゲルググをどのタイミングで
作ろうがジオン軍の敗北は想定されていたことなのかもしれない。

最初にも述べたが、ゲルググの完成度は非常に高いものがあり、性能、コストパフォーマンス
どれをとっても一級品のモビルスーツと言えよう。
しかし、一年戦争において活躍の場を見出せなかったモビルスーツでもあった。

いとあはれなり、げるぐぐ。

ゲルググシリーズはこれで終わりです。


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