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2006年01月23日
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カテゴリ: 露野
 私は翌日、家へ戻ってきた主に、足が治ったから多賀城へ帰ると申し出た。突然のことに主は引き止めたが、私は何度も礼を言い、荷物をまとめてその翌朝に主の家を後にした。

 あの夜以来、妻女の顔は見ていなかった。私は一目会ってからこの地を去りたいと思っていたが、私を見送る館の人々の中にも妻女の顔はなかった。

 だが、里のはずれの川に差しかかった時、侍女を連れた妻女が川の向こうに立っているのが見えた。

 妻女は私の顔をじっと見つめた。

 私も妻女を見つめ返した。

 何も言わず、妻女は私に深々と頭を下げた。

 私も妻女に会釈を返した。

 ただそれだけだったが、私の胸には迫るものがあった。

 私はそのとき思った。私はこの女が望んだ通り、きっとこの女のことを忘れないだろう。たぶん、ずっと。



 本当に、あの妻女の言った通りだった。私はあれから数え切れないほどの女に逢ったが、私を拒みとおしたのは、あの妻女ただ一人だった。私はずっと妻女のことを忘れることが出来なかった。まるで魅入られたかのように、時折夢に現れることすらある。

 私があの旅で魅入られたのは、安達が原の黒塚の鬼女でも、信夫の山の神でもなく、あの妻女だったのかもしれない。





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最終更新日  2006年01月23日 14時38分02秒
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