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2006年11月17日
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カテゴリ: 孤舟
「だが、もう少しさきくさが我らに甘えてくれておったなら、あんなことにはならなかったろうに」

「本当に。あんな寂しい死に方を……」

「それだけではないのだよ」

「なんのこと?」

 不審そうに見つめる延寿に、乙前は自分を励ますように深い溜め息をついた後に言った。

「さきくさはの、自分の子を捨ててしまったのだよ。そして、その子の孫に当たるのが、延寿、お前さ」

 延寿は驚いて目を見開いた。しばらくは声も出ない。

「お前には今まで、お前は親が誰かもわからぬ拾い子だといっておいたが、本当は違う。私が育った目井様の家には、女が一人居候しておってな。我らはその女がさきくさの娘だと思っておった。そして、その女が連れていた赤子の面倒も我らで看て来たのだが、その子は母親を捨てたさきくさをひどく恨んで、終いにはぐれて行方をくらましてしまっての。それ以来どこへいったか皆目わからなかったのだが、十年ほど前にひょっこりわたしの五条の家に訪ねて来た。そして、赤子を一人置いて行ったのだよ。今何をしているかは言わなんだが、手元で育てるのはあまりに不憫じゃと言ってな……。それがお前じゃ。おとどが是非自分の弟子にと望んだので、お前はおとどの家に預けた。それにしても、あれほど恨んださきくさと同じように、自分も子を捨てることになるとは、どういう因縁かのう」





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最終更新日  2006年11月17日 17時16分26秒
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