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2026.06.30
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タウンエースノア
昔はボルボくらいしか真面目にやっていなかった「安全性」が、世界的なブームになって、金をかけても商品性のアップにつながって採算性が良くなると判断した自動車メーカーは、そういう設計を取り込み始めた。最初は、衝突の襲撃を吸収して車体を守る巨大なバンパーがアメリカを中心に装着されていたが、せいぜい時速10km程度までしか効果がなくて、そもそもそんな速度域では死亡事故の起きる可能性は低く、廃れた。
その後は、手軽なパーツ開発ではなくて、車体そのものの安全設計へとまともな変化を遂げて、乗員のエリアを強固に補強して、車体のフロント部分が効果的につぶれて衝突のエネルギーを吸収するようなボディ構造へと舵を切った。物理学の知識を忘れた人は勘違いして、とにかく頑丈なボディにすれば安全だと考えるものだけど、例えば頑丈なエレベーターのロープが切れて落下したら、エレベーターの箱はそのまま残って、中で乗員はぐちゃぐちゃにつぶれてしまうわけで、助かるためには、箱の下に大量のプチプチの箱をぶら下げて落ちることが必要だ。そのため、最初のころは今までのボディのフロント部分の構造体に刻みを入れて潰れやすくした、いうなれば部分的に強度を落とした改造をして「衝突安全性の向上」と宣伝していた。
このような改良は、コンクリートの壁に正面衝突するような試験では良い成績を収めるものの、相手が旧来のクルマの場合は、相手は自分のボディを食いつぶして衝撃を吸収していくわけで、古いほうが危険というわけでもなかったりした。戦車がゴルフと正面衝突すれば、ゴルフがぐしゃぐしゃにつぶれて弾き飛ばされることで、戦車の乗員は無傷だ。
そのようなブームのために、本来なら室内容積最優先の設計にしたいワンボックスも、フロントにクラッシャブルゾーンを確保するべく、尻の下にある前輪を運転席の前へ移動したりした。以前乗っていたタウンエースワゴンも、マスターエースのように大きなバンパーを取り付けるのではなくて、タイヤを運転席の前へ出し、エンジンもその間へ押し出した設計の「タウンエースノア」へとモデルチェンジした。ニッサンのバネットはエンジンはそのままでタイヤだけを前へ出していたのだけど、トヨタはエンジンも前へ出したために、荷室の減少は最低限で済んだ。
ノアはとても便利で使いやすかった。ただ、商用車と同じシャシーを乗用車に仕立てる方法は、過剰品質の無駄や燃費の悪さでやがて廃れていって、ステップワゴン方式の、FF乗用車の背を高くするだけの安上がりな手法に置き換えられていった。現在の乗用車は、ほとんどが横置きFFの乗用ユースのプラットホームの上に、うんと背の高いミニバン、少し背が高くて地上高も少し高いSUV、普通の背の高さで車高の少し高いクロスオーバー、普通のセダンというバリエーションで、欧米のメーカーなんかはどんどん共通のパワートレインになって、よく言えば生産効率の高い商品群になっている。ノアは、ルシーダと並んで、そういう進化の過渡期の産物だったのだろう。





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最終更新日  2026.06.30 11:40:42 コメントを書く


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