GOAL通信

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2006.07.13
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カテゴリ: 雑記



 父が某直木賞作家と同人をやっていた関係で、私は物心ついた時からあらゆる書籍に囲まれて育った。
 幼き日の私の記憶には、何かを書いているか本を読んでいるか、いつも真剣な表情の父の姿があった。
 本も随分もらったような気がする。

 学生時代、本は山のように読んだ。小説から哲学、思想まで、解った気になり格好つけていた。
 キルケゴオル、ボオドレエル、サルトル・・・・。解らないまま蔵書は増えた。
 古書店に通い、全集や文庫を買いあさった。文学でも大江、筒井、安部、倉橋、中井などはすべて揃えた。
 本を開く時のインクの匂い。毎日が好奇心だった。


 自信作を父に見せたが、笑われた。欠点を幾つも指摘された。悔しくてその後何作も書いた。大学でも文芸の機関紙に作品を幾つも発表した。
 本を読み、文章の深みを学び、知識を蓄えながら、深夜、スタンドの灯りの中で闇雲にペンを走らせていた。本との付き合いがより深くなった期間だった。

 その後私は大手書店に20年近く勤務した。後半は店長として毎日100名を超える従業員を統率していた。
 坪数500、年商20億。毎日現場の先端で、1万冊近い本を捌いた。
 出版社の関係者とも付き合いが深まり、売れる本のノウハウを随分版元の編集部に伝授した。毎日営業担当が来て、情報をメモしていった。
 雑誌などの取材も多数受け、写真も載った。私の本を出そうという企画が立ち、3度ほど原稿は書いたが、いずれも最終で見送られた。

 教育、学参、児童というジャンルには何か心をくすぐる魅力があった。
 ちょうど子供が幼児期に差し掛かり、幾つもの本を伝票で購入しては与えた。
 息子の誕生日もクリスマスも、プレゼントはいつも本だった。包みを開けると中は絵本であり、物語であり、学習ものだった。
 息子は喜んで夢中になって開いていた。
 ちょうど私が父に受けた洗礼のように。


 息子のみならずそれは客にも向けられた。ブックフェアという形で幾つもテーマを組み、店頭に並べた。
 小道具で演出し、ポップにオススメの言葉も添えた。子供たちと接し、お客の相談にも随分乗った。
 今でも名作、良書を挙げろと言われれば、湧水のように数百のタイトルが思いつく。あれも、これも、懐かしい・・・・

 これはエピソードだが、ハリーポッター第1巻が出る前に事前情報が書店に伝わり、私は出版社(静山社)に初回1000冊くれと頼んだことがある。
 版元の担当は、そんなに売れるわけがないと笑っていたが、私は真剣だった。このストーリーとロマンは必ず売れる。まだ誰もが見向きもしない、発売3ヶ月前の話だ。


 子供の成長と共に買う本は絵本が物語りになり、物語が学習ものに代わっていった。
 徐々に本との係わり合いが大きく変化していった。教育や学びというものを実践してみたいと思ったのはその頃だ。
 版元の学参担当との交流も深まり、様々なセミナーにも参加した。
 学習というテーマに対する知識は持っていたのだろうか。今この仕事をしていて、当時の経験に助けられることがよくある。

 我が家には本が溢れているが、一冊一冊にみな思い出がある。
 数年前かなりの数を処分したが、それでもまだ数万冊が家の中に眠っている。そろそろ時代にそぐわない置き土産になりつつある。
 読書は人間に深みを与え、自らの道への指標となる。
 挫折した時、たった一行の言葉に救われることがあるという。
 以前より、教室で読み聞かせや読書コーナーの展開を考えているが、なかなか仕組みが作れないでいる。

 昔の版元仲間に頼んで、移動図書館でもやろうか。
 子供たちの歓喜の声とともに、夢はふくらむ。





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最終更新日  2006.07.14 03:11:28
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