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2005年07月28日
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 手のひらいっぱいの大きな桃、産毛が新鮮さを物語っている。柔らかい桃よりもちょっと固めの方が私は好きだ。
 桃を見ると戦時中を思い出す。母の姉である伯母の主人は建設業を営んでいた。市の小学校の新築工事などもやっていたので、自宅も仕事場を含めかなり敷地で、その頃には珍しい地下室があった。コンクリートの階段を下りるとそこはひんやりとした空気の別世界であった。
 漬物や梅干など甕が棚に並んでいて、子供のかくれんぼの場所でもあった。
やがて戦争が激しくなり、伯父一家は田舎へ疎開して行った。小さな駅のホームの裏手で、一面桃の木が植えられていた。白桃と中には黄桃もあった。
 食料の調達もままならぬ時期、桃の季節は伯父の家に行くのが楽しみであった。汽車に乗れば、3つ目くらいであったと思うが、従姉妹たちと連れ立って20キロの道を汗を流しながら歩いて行った。
 行くのは大変だが、着けばあまーい桃がふんだんに食べられる。木で完熟した桃の美味しさはどう表現したらいいのだろう。 忘れられない味である。
 忘れられない味はもう一つある。戦時中、兵隊さんに面会に行った時、ご馳走になった軍隊の『アンパン』である。小豆餡がいっぱいのそれは美味しいアンパンであった。戦後いろんなアンパンを食べたが、あのときのあの味に勝るアンパンには出会ったことがない。
 終戦になり、伯父一家は幸い焼け残った家に戻った。その後、桃の木は切り倒され、跡地に住宅を建てて売ってしまった。今はどうなっているのか、今年は、戦後60年、一度この目で彼の地を見たいと甘い桃を食べながらそんなことを思った。





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最終更新日  2005年07月28日 21時43分47秒
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