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………”ピシャリ”彼女の部屋のドアを開けると、彼女は俺の頬を強く叩いた。冷たく澄んで響く音だった。”もう~、のび太さんのエッチ~!!”ああ、俺としたことが。彼は慌ててドアを閉じた。寝ぼけてバスルームのドアを開けてしまったのか。ってのは冗談で、こいつはいつものお約束。うっかり八兵衛はこれで視聴率とギャランティーを稼いでいるんだ。彼女がシャワーを浴びている間に、少し眠ってしまっていたみたいだな。しかし、タオルに包まれた彼女の裸体は、日を追うごとに妖艶な輝きを増してゆくようだ。どうしてこんなにも君に魅せられてしまうんだろうか。君の部屋に泊まると、いつも思うことがある。それは、君自身の生活に、俺はどれだけ必要とされている?色々なものを犠牲にしてでも、君と過ごす時間を大切にしたいって思うんだ。例え出演者の声優が変わって視聴者が離れても、前の絵の感じが好きだったって言われてもね。”いつか君と一緒になれたらいいな”彼女の部屋の写真立てには、ディズニーランドで撮った二人の写真が飾られていた。ドライヤーで髪を乾かしている彼女の後ろで、彼は背中から抱きつくようにして、窓越しの空を見上げてみた。ねぇ、ドラえもん。幸せの意味はまだ分からないけれど、この先もずっと楽しくやっていけそうだよ。ねっ、今度どら焼きでも賭けよっか。生クリーム入りの美味しいやつ。俺と彼女がこの先どうなるか、タイムマシーンで、”賭けてみない?”俺は、きっとね…、君を幸せにするために生まれてきたんだ。
2008/03/02
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”限界”という言葉を、彼はひどく嫌う。君との電話を切ってからずっと、いつか君と二人で行った、近所の動物園のことを思い出していたんだ。そういえば、こんな話があるんだけど、君に話していたっけな?サーカスで芸をする象を育てる時の話なんだけど、子供の象は一本の木の棒と鎖に繋いで育てるらしいんだ。すると、大人になっても象はそこから逃げない。ホントは大人の象ならさ、そんな木の棒や鎖なんて簡単に引きちぎれるのに、もうそれをする気力すら無くしてしまうんだってね。子供の頃からずっと鎖から逃れるのは無理だって考えてきたから、引きちぎれる鎖も引きちぎれなくなってしまう。それが自分の中の覆せない真実になる。怖い話だよね。だからね、”限界って自分で決めていたりする”そんな話なんだけど、なんだか、君が退屈してしまいそうな、教義的で説教じみた話だよね。そんな理想論を唱えてみたところで、俺は空を飛べない。新幹線より速く走れない。似たようなことで誤魔化すことはできるけれどね。限界と非限界の境界線は、曖昧で、掴めない雲。彼はベッドに寝転がりながら、宙に舞うイメージを言葉に置き換える作業を、もう終わりにしようかと考えていた。俺はただ、自分の限界を、認めたくないだけなのかもしれない。君は、こんなカッコつけた俺のことなんて…、好きじゃないのかもしれないな。
2008/03/02
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夜眠る前に、君と電話で幾つもの言葉を交わすとき、彼はよく理想みたいなことを口にする。少なくともそれは、”自分はこう在りたいんだ”っていう表明であるだろうし、走り続けるためのゴール地点に立てた旗のようなものだと思っていた。彼は言う。”理想とは、そこに完璧には辿り着けないことを知りながらも、必死で喰らいついていく、人間のあがきみたいなものだ”過去何人もの偉人たちが、神を目指し、愛を目指して破れていったように、諦めを知りつつも本気でたどり着けると信じているような、どこまでも矛盾した思考回路が、彼の生き方には必要だった。ううん、ホントはそんな格好のいいものでもない。理想を口にすることで、小さな自分を隠したかっただけなのかもしれない。ちっぽけな自分を守るために。俺はいつも君を愛していたいけれど、君を傷つけてばかりいるよね。たとえば、夕べ、君との小さな約束を、ふとしたことで破ってしまって、俺は君にとって理想の男になるはずが、結果的には、最低の男なんだ。愛なんかよりも、信頼とか、そういったものが、現実的にはよっぽどリアルなんだろうね。君はただ、最低だね、って。俺はただ、ごめんね、って。そんな言葉のやりとりを、反射的に繰り返している。彼には、譲れないものがあった。でも、そんなもの捨ててしまえばいいと思った。現実がいつも思考を追い越してくれる。俺は、きっとね…、君を幸せにするために生まれてきたんだ。
2008/03/02
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愛の形を映した写真を、君と二人で探している。”愛してる”って言葉を、会話の中で軽はずみに言わないってことが、彼と彼女、二人の付き合いのルールだった。ドラマチックな恋愛をするためには、二人が持っているくらいの障壁が丁度良いんだろう。全てはそれを乗り越えるために与えられた愛への試練だって…そう考える時に、”二人は二人で良かった”って、そう思えるんだ。ねぇ…、君の輝きが見えるよ。それは、彼のファインダー越しに見える、彼女の放つ女性らしい柔らかな美しさ、母性的な優しい強さだったりもするけれど、それぞれの構図の中で、彼女は一層魅力的になる。出合った頃とは随分変わったねって、そんな風にしてお互いを褒め合っては、よく照れ笑いしていた。二人が二人で居る理由なんて、それぞれなんだろうけれど。信じ合い、分かり合い、憎しみが生まれそうな時こそ、それを愛に変えて、相手の全てを許し合う努力ができるような、それは綺麗な丸で、君の笑顔みたいに真ん丸で、叩くと硬くて、君を守り抜く芯のある鎧で、触ると柔らかくて、君を包み込むキメ細かい毛布で、履くと弾力があって、愛し愛されるほどに軽やかなゴム靴で。去年、君と撮ったクリスマスの写真が、まだデジタルカメラに眠っています。今度、現像して持って行くよ。俺は、きっとね…、君を幸せにするために生まれてきたんだ。
2008/03/02
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心の写真を撮ることが出来るのは、言葉くらいだろうって、信じていた。目に見えない心の模様を、こんなにもハッキリとした形で、未来に残しておけるのは、言葉くらいなんだろう。君と俺が持つ人生の写真が同じなら…君と俺が全て同じだったらいいなって思う時がある。住んできた景色、肌で感じた空気、懐かしい友人たち。君の写真の一枚一枚を彩ってきた鮮やかなインク達でさえも共有してみたいって。まるで、君が心の中に持っているカメラと、全く同じものを欲しがってグズる子供みたいかな。でも、ホントなんだ。君の心の写真を映し出すカメラをいつだって探してる。出会った頃からずっと、今まで。君が触れ、君が覗き込み、君がシャッターボタンを押した、君の匂いの染み付いた、君だけのカメラ。形が似ている同機種のものでも何か欠けてる。君の心が宿る、君だけのカメラ。うん、知ってるさ。君と俺は違う。そんなことは最初から分かってる。けどね…。そうじゃないんだ。それぞれの人生の何万枚ものシャッターチャンスの中で、君と俺が二人でピースサインをしているのが、ちょうど今だった。そこに光を感じていたい。君と俺が繋がれるいくつもの可能性を。せめて君がこれから撮る写真達を、俺に見せてくれないか?そして、よかったらこれからも、二人で写真を撮り続けたい。レンズ越しにいる自分達がいつも輝いていられるように。今日、横浜でデートをしよう。互いの感性が溶け出たようなファッションで。二人のカメラとアルバムを抱えて、楽しいことも悲しいことも、たくさんの話をしよう。あすいつものカフェでしちじにてーぶる席で待ってるよ俺は、きっとね…、君を幸せにするために生まれてきたんだ。I can together the same pictures.
2008/03/02
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