第五章




Aさんはしばらく考え込んでいたけれど、
やっと重い口を開きました。

「僕はまだ22歳で若いから、収入も少ないし、
今は君の事を支える自信がないんだ。
本当にごめんね…。」


彼を困らせてしまう事も想像していたし、答えも想像出来ていた。
でも、実際に彼の口からそう言われてしまうと、とてもショックでした。

22歳の若さの彼、
結婚に対してトラウマを持っている彼。
たった一年足らずの付き合いで、
おまけに違う国から来た私と結婚を決めるなんて簡単な事じゃない。
私もわかっていました。

それから、
彼が旅たつ迄の残りの日々を2人は楽しく過ごしました。
彼はいつも考え込んでるみたいに暗かったけど、
私は出来るだけ笑顔で明るく彼に接した。

そして彼をホノルル空港で、見送る日がやってきました。

最後まで笑顔で、
お互い泣かないで別れました。

私は彼が飛行機に乗り込んだときに、
後から、後から涙があふれて
空港のトイレに駆け込んで泣きました。

彼がいなくなってぽっかり心に穴が開いた私。
寂しさと戦いながら英語だけでも上手になろうと
以前にも増して勉強に打ち込みました。

友達のSちゃんに付き合って、気晴らしに
遊びに出かけたりもしたけど、心は上の空。
もう、ハワイにいる事すら辛かったし、
私の心は日本に帰国する準備が着々と出来ていました。

誰に誘われても出かけることもなかった。
バイトと勉強に明け暮れる毎日でした。

それからしばらく経ったある日。
Aさんから一通の手紙が届いた。

中にはチェック(お金)が入っていた。
金額は450ドル。

何だろう???



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