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2007.08.27
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カテゴリ: カテゴリ未分類



 まだ民家の明かりが遠くの林の隙間からぼんやりと見えていた。

急なカーブも傾斜の激しい坂も富永はサーキットさながらに

走りぬけたあとスピードを緩めて一息ついた。

「わっはっはは・・・」と富永の高笑いが突然、闇の中で響く。

佳乃子も悪いことと思いながらもこのスリルと

あの広大な畑の中のキャベツのたった一つや二つぐらいと言う言い訳と

罪悪感が脳裏を掠めたがそれも富永の笑いでどこかに消えてしまった。

佳乃子は富永に感化されそうだ。

今、高値のキャベツがあれば、毎朝、モーニングで使うサラダが助かる。

なぜだろう?

この年になってもまだ悪がきのように楽しんでいる富永が面白くなってきた。



翌日の晩もその次の晩も晴天と月明かりで富永はドライブと称して農道を走った。

狙いをつけてはねぎ、かぼちゃ、トマト、キュウリを盗んだ。

富永が盗んできた野菜は翌日の定食の材料になった。

「ママ、ここの野菜はなぜ土がついているの?」ウェイトレスが不審げに聞く。

「農家の知り合いから頂くのよ」

佳乃子は笑いながらすらっとうそが飛び出してくる自分に驚く。

富永は時々、釣りにも行き大量といえるだけの魚も釣ってきた。

喫茶店を開店してから、ますます水を得た魚のように

飛び跳ねて楽しんでいるのは佳乃子より富永の方だが、

佳乃子も富永の水しぶきを心地よく感じるのは所詮、

二人は似たもの同士と言えようか。

今日も朝9時前。富永が外から呼ぶので行くと

大きな魚を釣ってきて自慢げに披露した。

大きさは大小さまざまだが大きいのは30センチ以上もある。

「すごい~なんていう魚?」と佳乃子が驚いて聞くと

富永はいかにも威張った口調で

「アイナメだ、このくらいは朝飯前よぅ~」と

いつもの苦虫かんだ顔が赤くなってほころんだ。

「マスターはすごいですね~~まるで定食屋をするために」

とさっきまでのうれしそうな顔が一変して不機嫌になった。

ウェイレスも馬鹿なほめ方をして・・と佳乃子はおもった。

ただ盗人みたいなことをしても富永は自分は

そんなちっぽけな人間ではないと思っていないところが抜けていてこっけいだ。

佳乃子は今日の献立はアイナメの煮付けにキュウリとイカの酢物、

キャベツとにんじんのサラダに決めた。

すると3人のウェイトレスの中では一番年上の宮沢が
昨日の肉じゃがが余っているからそれにジャガイモを

2,3個足してそれを出した方が無駄がないというのだ。

どこの店でもそういうことはしているから

そこまでしないと生き残れないと言う。

宮沢は始めからほかのウェイトレスとは違って本気で

店のことを考えてくれているようで何かと佳乃子にこっそりとアドバイスをしてくる。

スナックのママとステーキハウスのマスターはいい材料で

作ることばかり考えていたような気するが

この宮沢は今までも喫茶店で定食をメーンに出す店で働いていたので

無駄のないやり方を佳乃子に耳打ちした。

そういえば、昨日の肉じゃがが残っている。

すっかりそれを忘れていた。

急遽、それを献立にくわえて、キュウリとイカの酢の物は明日に回すことにした。

つづく
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最終更新日  2007.08.27 17:23:27
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