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広い野があった。切り開いてみるとよく肥えた土地で、田や畑を作るのにこれほどよいところはない。
切り開いた男はハタノキミといったが、一人ではやりきれないからお前も手伝え、食わしてやるぞ。と言って、人を使って田畑を広げていった。稲はようやくとれ始めた。ハタノキミはもう嬉しく、命にもかえるほどその田を大切にしていた。
ところがある年のこと、毎晩のように苗が荒らされる。夜中に何者かが来て食い荒らすのである。ハタノキミは「これから、交代で田の番をしろ。そして田を荒らす奴をひっとらえろ。」といいつけた。ところがどの男も夜が更けると深い眠りにおちてしまい、朝になって気がつくと苗が食い荒らされていた。
ハタノキミはひどく怒って
・・・・・
長い旅の挙句にこの土地を見つけたこと。
葦が茂ったこのあたりを空腹でよろよろしながら切り開いていったこと。
水をひくのに長い水路をコツコツ掘ったこと。
そしてようやく稲が取れるようになったこと。
・・・考え出すと眠気は吹っ飛んだ。
そして夜もすっかりふけたころ、野のはてから金色に輝く不思議な生き物があらわれた。
その姿は暗くざわめく野と、うっすらと光る空の間を軽々と飛び跳ねながら
近づいてくると、ハタノキミの田の側でぴたりと止まった。
みれば金色に輝く大鹿である。鹿は首をさしのべて、稲の苗を片端から食べ始めた。
「こやつ、よくも苗を食ったな!」ハタノキミは鹿に飛びついた。
鹿は驚いてハタノキミを振り落とそうと矢のように駆け出した。それでもハタノキミはしっかりと首に抱き着いて離れようとしなかった。
・・・とうとう鹿はひざをついた。
ハタノキミはひらりと飛び降りると剣を鹿の首に押し当てて
「命の糧の、稲の苗を食い荒らした憎いヤツめ!」と鹿を殺そうとした。
すると鹿は「どうかわたしを殺さないでください。もし命を助けてくだされば、子供たち、孫の代まで、決して田を荒らさないよういいつけますから。」と言った。
「その誓いを忘れるな」と、鹿をはなしてやった。
それからというもの、田は守られて稲はすくすくと育ち、秋には重い穂を垂れた。
こうして年月が流れた。
広々とした野の果てまで今では田であった。刈り取られた稲は束ねて積み上げられていた。中には米にもせず、そのまま腐れていく束もあった。
ハタノキミは長者であった。
酒を醸し、餅をついて、今日は取り入れの祝いの日であった。男たちも女たちも、みんな楽しい祝いの日だった。
その時、ハタノキミがよろよろと酔った足取りも危なげに立ち上がった。「やいやい、お前たち静かにしろ。このわしが腕前を見せてくれるわ。
その餅を木にくくりつけろ。餅をまとに、矢を射てみしょう。」
餅が木にくくりつけられた。
ハタノキミは、弓をきりきりとしぼり、ヒョウと矢を射放った。矢はみごと、餅のまとにぶっすりと突き刺さった。
「見ろ。一発で射抜いたぞ。」
ハタノキミはふんぞり返り、人々はわっと声を上げたが、その声はそのまま凍りついた。
射貫かれた餅は、みるみる白い鳥となって空へ飛び立ち、そのまま空の果てへと飛び去ったのである。
不思議なことに、その後、田んぼには一粒の稲も実らなくなった。
田は荒れ果てて、やがて葦が生い茂り、元の広い野に戻って、ただ風が吹きすぎるだけであった。
(松谷みよ子の「日本の神話」(講談社)より参照。
一部わかりやすいように表現方法を変えています)
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特に正月の鏡餅は魂のシンボルでもあります。
だからこそ、神様にそなえたり、
人間が食べることで新たな力を授かるのです。
(ここまで)
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