宇宙は本の箱

     宇宙は本の箱

道端譲


私はいつものように家族のためにパン屋に寄った。彼はついて来た。
私は角を曲がった。彼はついて来た。
「駅はあっち」と私が振り向いて言うと、「あっ」と小さな声で言った。
私が手をふると「ああ」と言った。
私はその日、彼の唇を見るともなく見ていた。血は流れていなかった。
よかった!
私はもう本は広げないだろうと思った。

彼はあれから何回来たか?
そしてある日電話があって会社に復帰したと。
「また営業をすんねん。出張やからお土産買ってきてやろうか?」
「おみやげ?いらない」

それからまた何年か音沙汰無く、ある日。

やさしさが売り物の やさしさが命取りの道端譲。

いつだったかな~夢をみたんだ。
春まだき日、真っ白すぎるシャツ。飛行機に乗った。
あの世でもこの世でも、もう決して出会わない道を選んだ人。


 四十まで待ってくれますか?

 男は待てるけど、女は待てないさー


あんたが世界で一番やさしい女。

わしが世界で一番やさしい男。

あなたは少年より凛々しい。あなたに夜があるなんて誰が信じる?好きやから悲しい。
ヒュヤキントスはアポロンに愛されたのさ。














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