宇宙は本の箱

     宇宙は本の箱

生きながら火に焼かれて

今、読んでいるのは本当にあったというそんな話

ある女の子が持ってきたのだ。
この子達はなぜかしら、こんな話をよく読む。
何も知らなければただの嗜好嗜癖かと思うくらい、こんな本を探してきて、
普段は活字が読めないと言ってるくせに、アッというまに読み終えて私によこす


私はなぜかを考える。
彼女達は一様に子供が欲しいと思いつつ、一方では虐待するのではないかと不安
がったりする。
考えなくてもすでに知ってはいるが、それでも、その心の不幸考える。
もう会わなくなったけれども、子供を抱く事をこわがっていたT子ちゃんの事を
思い出す。
また、母親は自分とは一緒にご飯を食べてくれず、
暗がりで一人で食べたいうクウさんを思い出す。
みな、それなりの心の勉強もしてきたし、宗教にも、何とかセミナーにも行って
いた子達だ。
それで、その時はたしかにそうだと思うのだけど、
気がつくとまた何とかセミナー行かなくてはいけなくなっている・・・
なぜですか?と私に問う。

臭いものに蓋をして、言い方まずいかな、
コップの中に泥を入れてもほおっておけばそれは下に沈んで上澄みは飲みやすく
なるよ、
その上澄みの所で、神様仏様天使様お光様・・・
何かあるとコップの水が揺れてまた汚い水。
何事もなければ、心鎮まれば綺麗な水、そんな事だろうに。

ある夜、T子ちゃんをこっぴどく怒って、
腕をつかんでひっぱたいてやろうかとして思いとどまり、
気がついたら口の中が血で真っ赤になっていた事を思い出して、
時折お酒を飲んでは「あの時ほど私があの子に優しかった事はなかったんだけど
・・・」
と言うと、首を縦にふりながら、
「T子ちゃんやカズくんやクウさんの事、いつまでも思い出すんですね」とSが
言う。
「そうだよ、あの子達も私を忘れないで手紙を大切に持ってるらしいけど、
あの子達が私を忘れても、何年たっても死ぬまで覚えてる、いつまでも考えてる

そんなのが私じゃないか・・」
そう言うとSが泣き出した。自分の事でもないのに、
「あの子達がこんな事聞いたらきっと泣きますよね」と。
(泣いてるのはアンタじゃないか~)

私から見たらSなんか全然不幸な子ではない。
この子の不幸なんか、ごくありふれた不幸である。
けれど、自分で自分が不幸なのだからそれはやっぱり不幸なのであって、
自分が親に愛されていないと思うのだから、それはやっぱり愛されていないので
あって、
心が虐待されていると感じるのだから、それはやっぱり虐待されているのであっ
て、
だから、それをね、言葉や文章には出来るし、頭で学習も出来るけれど、
それだけじゃしかた無い事なの・・・だ。
おまえがどんなに醜くても、おまえを愛さずにはいられないのだという所まで、
そこまで、誰が、どのようにつつめるか。。。
それをどのように現実で。。
一人一人の事なのだけど、一人一人の事でなく。。




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