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2014.12.07
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カテゴリ: 邦画

幸福の黄色いハンカチ
(C)1977, 2010 松竹株式会社
映画「 幸福の黄色いハンカチ
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 寅さんシリーズで知られる山田洋次による監督作。
 仁侠映画で名を馳せていた高倉健が、仁侠映画から脱却するきっかけになった作品の一つ。
 また、歌手活動がメインだった武田鉄矢にとって、俳優活動への道を切り開いた作品でもある(起用された時点では「一発屋」と見なされ、殆ど忘れ去られていた存在だったという)。
 倍賞千恵子や渥美清等、寅さんシリーズでお馴染みの俳優らも起用している。


粗筋

恋人と失恋した花田欽也(武田鉄矢)は、自棄になって務めていた工場を辞める。退職金で車を買い、単身でフェリーに乗り北海道へ向う。網走に到着した。
 そこで、職場で恋人を同僚に取られ東京から一人で傷心旅行に来ていた朱美(桃井かおり)に声をかけ、一緒に旅する事に。海岸に立ち寄ると、写真を撮る事にした。
 二人は、偶々いた男性に声をかけ、カメラで写真を撮ってもらう。この男こそ島勇作(高倉健)だった。
 欽也と朱美は、これも縁だと思って勇作を車に乗せ、3人旅を始める。
 欽也は、朱美と肉体的関係を持ちたかったが、朱美はこれを直ちに拒否。欽也は残念がるが、それでも旅は続ける。勇作も、何だかんだで同行する羽目に。
 車中での会話で、勇作はかって暮らしていた夕張に向かっている事が明らかになる。
 帯広で、欽也は別のドライバーとふとした事で喧嘩になってしまう。勇作が相手の男を殴り飛ばし、その場を逃走。が、勇作が運転し続けた為、警察の検問に引っかかってしまう。
 この時点で、勇作は刑務所から出所したばかりで、無免許である事が発覚。最寄の警察署に連行される。そこでは、かって勇作の事件を担当した警察官(渥美清)が偶然勤務していた。その警察官の計らいにより、事なきを得たが、刑務所帰りである事が、欽也と明美にばれてしまった。
 勇作は一人で夕張へ向うと言うが、欽也と朱美はそれを許さず、3人で向かう事に。
 勇作は、自信の過去について語る。妻光枝(倍賞千恵子)との出会い、結婚。暫くすると、光枝は妊娠したらしいと言う。「もし妊娠していたら、家の前の竿の先に黄色いハンカチを揚げておく」という彼女の言葉を受けて、勇作は出勤する。仕事帰りに、竿の先にはためく1枚の黄色いハンカチを見つけた彼は、大いに喜ぶ。しかし光枝は間もなく流産。病院で、今回の流産が光枝にとって初めてではないのを、勇作は知ってしまう。勇作はヤケ酒をあおった後、夜の繁華街に繰り出し、偶然肩が当たった男と喧嘩を始めてしまい、相手を死なせてしまう。勇作は逮捕され、網走刑務所に入ったのだった。
 勇作は、出所直後の網走で光枝宛てに葉書を出していた事も告白する。「もし、俺を待ってくれるなら竿に黄色いハンカチをぶら下げておいてくれ。それが下がってなかったら、俺はそのまま引き返して、2度と夕張には現れない」と書いていた、と。
 3人は漸く夕張に到着するが、その時点で勇作は後ろ向きになり、「やっぱり引き返そう」「どう考えたってあいつが一人でいる筈がない」と言い始める。
 欽也と朱美は、そんな彼を励まし、記憶を辿るようにして光枝の住まいへと向う。
 光枝の住まいでは、何十枚もの黄色いハンカチが風にたなびいていた。
 欽也と朱美は、勇作の背中を力強く押し出し、見送る。
 勇作と光枝は、久し振りの再会を果たし、仲良く家の中に消えて行く。
 全てを見届けた欽也と朱美は、車中で自然に手を握り合い、強く抱き合い、キスをする。


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感想

 演出、ストーリー運び、登場人物、配役、風景等、良い意味でも、悪い意味でも、昔の日本映画、といった感じ。
 現在、このままそっくりリメークして公開したところで、酷評の嵐に曝されると思われる。1970年代後半に製作・初公開されたからこそ、現在も活きている映画だと言える。

 30年以上前の作品なので、現在の視点だけで観てしまうと、不可解な部分が多い。

 まず不可解なのが、ストーリー運び。
 冒頭では、欽也が失恋し、自棄になって会社を辞め、車を購入し、北海道へ向い、そこで偶々出会った朱美と旅を始める経緯が延々と描かれている。
 そんな訳で、本作の主人公は欽也と朱美で、二人の珍道中が描かれるのかと思いきや、途中で勇作が参戦し、ストーリーは彼を中心に動くようになる。
 勇作が主人公だったのか、と思って観ていると、勇作は妻と再会して退場。残された欽也と朱美が、これまでいがみ合っていたのが嘘だったかのように急接近する。
 やはり欽也と朱美が主人公だったのか、これから映画はどこへ進むのか、と思っていたら、その時点で完結。
 結局誰が主人公だったのかが、よく分からず、まとまり感がない。
 勇作をメインにした人情映画にしたいのだったら、勇作を最初に登場させ、欽也が失恋するくだり等は省くのが得策だっただろう。
 欽也の朱美を主人公にしたコメディ映画にしたいのだったら、勇作を絡める必要は全くなかった。
 ジャンルの全く異なる2本の脚本を、強引に1本にまとめてしまったかのような印象を受けてしまう。

 登場人物の描き方にも疑問点が。
 勇作は、根は真面目ながらも、不器用な為、人生が思い通りに運ばない気の毒な人物、として本来は描かれたようである。
 が、刑務所に入った理由が、妻の過去を知って自暴自棄になって赤の他人と喧嘩を始め、死なせてしまうという、下手なヤクザより性質の悪い人物。こんな男に、どうすれば同情出来るのか。妻がふとした事で男に暴力を振るわれ、それを止めに入った勇作が相手を死なせてしまった、といった同情に値する服役の経緯に、何故出来なかったのか。
 そもそも、勇作を何故受刑者にしてしまったのかも不明。朱美の尻を追い回す欽也に対し、勇作は説教するシーンがあるが、「お前が言うか?」という感情を抱いてしまう。
 勇作と光枝は、再会を果たし、今後幸せに暮らしていきますよ、と製作者は伝えたがっているようだが……。それはどうかね、と観ている方として思う。勇作が人殺しである事実は変わらないし(遺族から賠償金を請求されないか)、出所後に欽也と絡んだ男を殴り飛ばす姿からすると、性格が丸くなったとも思えない。勇作は、少なくとも最初は真面目に生きようと懸命に努力するものの、結局また暴力に走りそうな気がする。
 勇作を演じた高倉健は、長年仁侠映画に出演していて、それからの脱皮を考えていたが、思い通りに進んでいなかった。それが、本作をきっかけに仁侠映画以外の役が得られるようになった、との事だが……。
 少なくとも本作は元受刑者という役柄なので、まだ完全に脱皮していなかった事になる。

 配役にも時代を感じさせる。
 武田鉄矢は、田舎からやって来た若者の欽也、桃井かおりは都会からやってきた女性の朱美として起用された、との事だが……。
 武田鉄矢は適役と言えるが、桃井かおりはイメージに合わない。特に美人という訳でもなく、可愛さもなく、せいぜい都会にやって来て粋がっている田舎出身のイモ娘、といった感じ。そもそも桃井かおりが現在大女優扱いされているのが、自分にとっては不明、という事もあるが。

 本作が公開されたのは1970年代後半。
 高度成長期が一段落し、二度のオイルショックをどうにか乗り越え、バブルへと向い始めていた時代。
 遠い昔、という程でもないのだが、本作で映される北海道の町並みは、終戦から間もない風景をカラーフィルムで撮影した感じ。民家が、廃材を掻き集めてどうにか家っぽくこしらえたものばかりの様に見えた。
 日本という先進国でさえも、経済の発展がこの時点ではまだ全国に行き届いていなかった事を示している(現在でも行き届いている気はしない)。

 演出も、日本映画特有の、「説明的」な部分が多く、観客の想像力に任せてもらえない。
 ラストの場面も、無数の黄色いハンカチが風にたなびいているシーンを見せるだけで、光枝が勇作を待っている事が明白に伝わるのに、朱美にあえて「見て! 黄色いハンカチよ!」といった台詞を言わせ、「説明」してしまっている。当時は一々説明してやらないと分かってくれない、という事情もあったのかも知れないが、現在からすると過剰演出としか映らない。
 何故日本の監督は「一々きちんと説明してやらないと、観客はこちらの意図をきちんと汲み取ってくれない」と恐れるのか。そもそも、映画の受け止め方や解釈は、最終的には観客本人が決める事で、監督が逐一介入するのは、芸術家として未熟だという事になってしまう。

 数々の賞を受賞し、名優と称される俳優が出演している事から「不朽の名作」とされる本作だが、仮に現在は殆ど名を忘れ去られてしまった俳優が主役を演じていた場合、果たして「名作」と評価されていただろうか。


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Last updated  2015.06.21 09:44:41
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